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ジョブ無し転移者の技能複写  作者: カイト・レイン
第三章 帝都ガイール編
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リフィルの涙


キーズに勝利した俺はリフィルとメリルを捕らえていた鎖を破壊する。


「アルトさん!」


自由の身となったメリルは俺に駆け寄ろうとしたが…。


「アルト!」


駆け寄る前にリフィルが抱きついてきた。

その行動に俺達は驚き、メリルも足を止めてしまう。


「ちょ、おい!リフィル、離せ!」


王女なのに冒険者の俺に抱きつくのはどうかと思うぞ!

嫌、ホントに…!


しかし、俺に抱きついていたリフィルの顔を見て、言葉を止めてしまう。


「ありがとう…!怖かった…!」


目に涙を浮かべ、俺の胸に顔を埋めている。

…そうか。

あの時は強がっていたんだな…。


流石に断りきれず俺はメリルと顔を合わせ、微笑む。

そして、リフィルの頭を優しく撫でた。


それを見ていた16(シックスティーン)は何か納得した様な表情をし、何度か頷いた。


「麻生 アルトは女性泣かせ…」


「おい」


人聞き悪い事言いやがるな…。

すると、そこへグレンが駆けつけた。


「アルト!…って、何だこの状況…?」


リフィルが俺に抱きつく光景を見て、首を傾げるグレン。


「おぉ、グレン!勝ったんだな!」


「おう、何とかな!」


「という事は11(イレブン)達も…」


グレンの勝利の報告を聞いた6(シックスティーン)は俯く。


姉である11(イレブン)達も失ったのだ…。

当然の反応だろう。

俺はリフィルに抱きつきながら、16(シックスティーン)の頭を撫でた。


すると、彼女は頬を少し赤く染めながら、俺の手を退ける。


「やっぱり、女性泣かせ」


「やかましい」


元気付けようとしてやったら、これだよ…。


「取り敢えず、此処から出ようぜ」


「あ、ちょっと待ってくれ!」


この施設から出ようとした俺は停止した15(フィフティーン)を抱き上げる。


「…彼女の墓だけでも作らせてくれ」


「…!」


せめてもの彼女の墓を作りたい…。

その言葉に16(シックスティーン)は驚く。


そんな彼女に笑いかける。


「手伝ってくれよ?16(シックスティーン)


「…うん!」


笑顔で頷いた16(シックスティーン)…。


キーズの身柄をグレンに任せ、俺と16(シックスティーン)15(フィフティーン)を連れ、崖を登り、彼女の墓を作った。


「…よしっ、これでいいな」


「うん。きっと15(フィフティーン)も喜んでる…。(お姉ちゃん、私…行くね)」


俺達は16(シックスティーン)の言葉に微笑んだ…。





その後…。

俺達はアクアースへ戻るとギル隊長や騎士達が駆け寄って来た。


どうやら、待っていてくれた様だな。


「リフィル様!」


「みんな…心配をかけてごめんなさい」


ちなみに先程泣き付かれた事は黙っていてくれと言われた。

顔を赤くしていたし、相当恥ずかしかったんだろう…。


そして、アクアースの市長も出てきて、今回の件を話した。

勿論、16(シックスティーン)事は伏せてだ。


ザイガンの谷の件は解決したとだけ伝えた。

そのまま俺達はアクアースを後にし、帝都ガイールへと戻って来た。


城に入った俺達だが…。


「って、何だこれ⁉︎」


俺の一言目がこれだった。


城の中には何十人という騎士が整列している。

そこにはルークさんの姿もあった。


俺達の帰りに気がついたルークさんは話しかけてきた。


「アルト⁉︎何故お前達が…⁉︎」


…まさか、リフィル達を助け出した事を知らないのか…?

一応、キーズによって囚われていた事はギル隊長が報告したと聞いたが…。


って事は…ギル隊長…。


「助け出した事は報告していないんですか、ギル隊長…?」


「…すまん。王女の無事が嬉しすぎて忘れていた」


おい…。

報告はしっかりしてくれよ。


「私なら、大丈夫です!ここに居るアルト殿達に助けて頂いたので!」


それを聞いて、城の騎士達は喜びと安心の声を上げる。

そして、俺達はルークさん達の案内で王座の間に入った。


王座の間に入るとメルド様が王座に座っていたが、リフィルの顔を見て立ち上がった。


「おぉ、リフィル…!無事だったか!」


ん…?メルド様の隣の王座にドレスを着た女の人が…。


「ご無事で何よりです、リフィル」


「ご心配をおかけして申し訳ありません、お父様、お母様」


スカートの裾を持ち上げ、頭を下げるリフィル…。

…って、お母様と言ったか、今…?


「初めまして、冒険者の方々…。私はリィル・ガイール…。メルドの妻で王女です。前回は急ぎの用事があり、挨拶が出来ず、申し訳ありませんでした」


「い、いえ、そんな…!」


頭を下げるリィル様に俺達は焦って、膝を付き、頭を下げる。


「アルト殿…リフィルをまたもや助けていただき、誠に感謝する」


「いえ、リフィル様を守るのは俺への依頼でしたので…」


「…そう言えば、報酬の方の話だが…」


あ、あぁ…ギルドホームの事か…。

軽く忘れていたぜ…。


「既にソナタ指定の場所に建設済みだ」


「え…?」


既に建設済みって…。


「ソナタならば、この依頼を必ずこなしてくれると信じての対処だ。…迷惑だったか?」


「い、いえ…!ありがとうございました!」


それはありがたい…。

すぐにでもギルドホームが出来そうだな。


「さて、その者がザイガンの谷で通行人を襲っていた者だな?」


話が16(シックスティーン)に行き、彼女はビクリとするが、すぐに頷く。


「はい。…私はどの様な罰も受け入れます。…私はそれだけの事をしてしまったので…」


確かにキーズの指示とは言え、通行人を危険に晒した事は事実だ。

その罪は消えないだろう。


すると、周りの貴族や男爵達は16(シックスティーン)を大罪人として、死刑にしろ、と叫んでいた。


それに対し、メリルやグレン、リフィルが何かを叫ぼうとしたが、メルド様がそれよりも前に口を開く。


「アルト殿に罰はお任せします」


「え…?」


「メルド様…」


微笑んだメルド様の表情を見て、俺は全て察した。

あの人も16(シックスティーン)を守ろうと…。


「では、謹んで俺が彼女に罰を与えます」


立ち上がった俺は16(シックスティーン)の前に立つ。


全てを受け入れる様な表情で俺を見上げる16(シックスティーン)…。

しかし、身体は少し震えている。


暫しの沈黙の後…俺は口を開く。


16(シックスティーン)…。お前に対しての罰を言う…」


貴族や男爵達がザワザワと騒めきだす。

その騒めきを気にせず、俺は言葉を続けた。


「俺の…俺達の仲間になれ」


「え…」


俺が出した罰に彼女は困惑した。

思っていた罰とは違ったのだろう…。


「これから俺とメリルはギルドを建ち上げる…。だが、メンバーが他にいなくてな…。お前にはそのメンバーになって欲しいんだ。勿論、メンバーになったら、きっちりと働いてもらうからな」


「…うん!」


その言葉に彼女は微笑み、笑顔で頷いた…。


周りの貴族や男爵達は納得がいっていない様な表情をしていたが、知った事か。


16(シックスティーン)との話が終わり、メルド様が再び、話し出した。


「して、ソナタはいつまでこの国へ滞在するのだ?」


「…明日にはこの国から出て、インルリの街へ戻ろうと思います」


「…そうか。ならば、今日は城で一夜を過ごしてくれ。…パーティの準備もすぐに行おう」


「ご配慮、ありがとうございます!」


そう。俺達は明日にでもイズルリの街へ戻ると決めていた。

いつまでもこの街に止まる意味もないからな。


しかし、俺のその発言を聞いていたリフィルは驚き、暗い顔をしていた事に気がついた…。

その夜…ガイール城ではパーティーが行われていた。


ちなみにメリルがまたもや酒に手を出そうとしていたので全力で止めた。

後、グレンとギル隊長、ルークさんは酒の飲み比べをしている。


…いつ潰れるか実物だな。


しかし、この場にリフィルの姿はなかった。

彼女探していると、城の外で夜空を眺めているリフィルの姿を見つける。


俺は自分の分の酒と彼女の分の酒を持ち、外に出る。

そして、リフィルに話かける。


「折角のパーティーだ。楽しまなきゃ損だぜ?」


「…アルト…」


俺は酒の入ったグラスを彼女に手渡す。


「メリルから目を離していいの?彼女の酔い方は異常なんでしょう?」


「まあ、酔っていたらお仕置きをするだけだ」


「やり過ぎない様にね」


意地悪な笑みを浮かべる俺に呆れ、溜息を吐くリフィル。

彼女と乾杯して、夜空を眺めながら、酒を飲む。


暫く、沈黙が続いていたが、リフィルによって破られる。


「…ねえ、アルト」


「何だ?」


「…お願い。この町に残って…私の専属ボディガードになって!」


「お、おい…⁉︎」


俺に詰め寄り、そう言い放つリフィルに俺は戸惑う。

まさか、そんな願い事をされるとは…。


「私は貴方とこれからも…」


…悪い、その先は言わせられない…。

そう思い、俺は彼女の言葉を遮る様に口を開いた。


「すまない。それは出来ない」


「どうして…⁉︎」


彼女の申し入れをはっきり俺は断る。

確かに嬉しい事だ。

王女自ら専属ボディガードにスカウトされる事は…。


「…お前が困っている様に他にも困っている人達が沢山いるはずだ…。だから、俺はその人達の力になりたい。…だから、お前ばかりを助けていられないんだ」


目を落とす俺…。

リフィルも俯くがすぐに顔を上げ、笑顔で俺の背中を叩く。


「もう、それならシャキッとしなさいよね!それから、また会いに来なさいよ!これは約束だからね!」


「ああ、必ず来るよ」


それに俺も笑顔で答える。

すると、リフィルは俺から目を逸らし…。


「ちょっと寒くなって来たから、私は人先早く中に戻っているね!それじゃあ…」


そう言い残し、彼女は小走りで城の中にへと戻っていく…。

彼女の目に涙が浮かんでいた事に俺は気がついてたが、俺は何も言えなかった…。


走り去るリフィルを見送り、夜空を眺める。


「女性泣かせ…。16(シックスティーン)の言葉も間違っていないな…」


今日は満月か…。

綺麗だな…。


俺はある人物の顔を思い出し、目を閉じた。


「歌音…俺はうまくやれているよな…?」


俺の問いに誰も答える事なく、俺は酒を飲み干し、城の中へと戻った…。


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