心の意味
15の身体を巨大な爪で貫いたキーズ…。
俺は彼女達を嘲笑った奴を怒りの目で睨む。
「テメェ…さっきの16達の話を聞いて、何も思わなかったのかよ!」
「何を思う必要がある?言ったはずだ…。彼女達を造ったのは私だ。ならば、処分を下すのも私の勝手だ」
確かに16達を造ったのはキーズだ…。
だが、彼女達にも心はある…!
「それにしても滑稽だと思わないかね?心を持たない人形風情が心を理解したなどという戯言を口にするなど」
そう言い、またもや笑うキーズ。
俺は倒れる15を抱きしめ、涙を流している16《シックスティーン》
を尻目に見る。
これ程までに怒りが込み上げてきたのは前世以来かもな…!
「何がおかしいんだよ?」
「む?」
「心を持たない?違うな…彼女達は心を持っている!例え、お前に造られた存在だとしても…アイツ等はこの世界で心を持った立派な生命なんだよ!心を理解していないお前が…心を理解しているアイツ等を笑う権利なんてない!」
真っ直ぐ…ブレない様に俺は言い放つ。
その俺の言葉を鼻で笑うキーズ。
「やはり、君の言葉は理解できない。このまま話を続けても無意味だ。…此処で、君を終わらせる…」
ニヤリ、と笑みを浮かべたキーズの肉体が変化を始めた。
徐々に身体が巨大になっていき、着ていた服を突き破り、黒い毛に覆われる。
顔も人間のモノから熊の顔に変化し、赤い瞳が俺の姿を捉える。
「この私の手でな!」
熊の獣人…。
これがキーズ・リファパインの本当の姿なのか…!
先程の巨大な爪も奴の本当の手だったというワケか…。
熊の獣人となったキーズは両腕の爪をガキン、ガキンと鳴らし、俺を威嚇する。
「悪いが、簡単に死んでやるワケにはいかないんだよ!」
エンゼッターを手に、俺はキーズに斬りかかり、奴の右爪と激突した…。
俺がキーズと戦い始めた頃、倒れた15の名を何度も呼びかける16…。
「お姉ちゃん…ねえ、起きてよ、お姉ちゃん!」
一向に口を開かない15に16は涙を流す。
漸く心という言葉で分かり合えた…。
なのに、姉である15は目の前で貫かれてしまった…。
自分自身の無力感と悔しさで押し潰されそうになっている。
しかし、涙を流す彼女の頬にゆっくりと手を当てる者がいた。
それは紛れもなく15本人だった。
「もう…涙を流すのは心ある証拠だけど…。あまり、簡単に泣くのも…どうかと、思うわよ…」
15の声が聞こえ、彼女に視線を移す。
「お姉ちゃん!」
完全停止していなかった事に気付いた15はアタフタとし始める。
「ま、待っていて!すぐに修復するから!」
彼女の修復を開始しようとした15の手に16はそっと、手を重ねる。
「聞いて、16…。貴女は…貴女よ。私達、魔導人形は壊されても新しく造る事が出来る。…でも、貴女という存在はただ一人なのよ」
「私という…存在…」
そっと、重ねていた手はギュッ、と握られる。
15の潤みを帯びた瞳は何処か優しさに包まれていた。
「貴女は…貴女の為に生きて…。魔導人形としてではなく…貴女として…」
「お姉ちゃん…⁉︎」
握る手を強める15。
それに嫌な予感を感じた16は声を上げる。
「私の…私達の分まで…貴女の信じる人達と共に…生きて…」
「ダメ…ダメだよ、お姉ちゃん!」
「貴女の、幸せが…私の、望み…」
それを言い残すと、目を閉じて15はついに動かなくなった…。
「お姉ちゃん…お姉ちゃん…!」
完全停止した15を16は抱きしめた。
涙を流し続け、歯を食いしばって涙を止めた…。
まだ薄らと涙が残る瞳には決意がこもっている。
やる事を見つけた…。
覚悟を決め、約束を果たそうとする瞳…。
それには一切の曇りは見受けられなかった…。
完全停止した15を見た俺は視線をそちらに向けてしまう。
「15…!」
何を話していたのかは聞こえなかったが、15の眼は16を…妹を心配する姉の眼だった。
あれで心がないというのは無理がある…。
誰かの為に傷ついてでも、相手を奮い立たせる…。
それが本当の心を持つ者だ…。
15や16にはそれがある…。
造られた存在でも…誰かを想う優しい心が存在するんだ…。
だからこそ…それを嘲笑ったキーズだけは許せねえ…!
「よそ見を…している場合か!」
「なっ…ぐっ⁉︎」
視線が15達に向いていた為、爪による攻撃を何とか防いだが、衝撃で軽く吹き飛ばされる。
そして、キーズも15達を見た後、リフィル達に視線を移す。
「何処までも、理解不能な者達だ…。ガラクタに心など不要!…それを教えてやろう!」
キーズが腕を振るうと風の爪が放たれ、リフィル達に向かっていく。
「しまった…!リフィル!メリル!」
この距離じゃ間に合わない…!
風の爪は真っ直ぐリフィル達に向かっていく…。
だが、リフィル達と風の爪の前に何者かが介入し、その何者かに当たり、爆煙を起こした。
爆煙が晴れるとそこには盾を構えた16が立っていた。
彼女が…リフィル達を守った…?
「16、貴様…!」
「マスター…私という存在を生み出して頂き、ありがとうございました。…此処までお側に居させて頂いて、本当に…お世話になりました…」
頭を下げる16にキーズは苛立ちを増やしていく。
「そうだ!私はお前の主だ!ならば、お前は私に就くすのが普通のはずだ!」
「その通りです…。ですが、私はお姉ちゃんと約束したのです…。私は…私の信じる人達と共に生きると!麻生 アルト達と共に!」
16、お前…。
「そうか…。ならば、お前も共に消し去ってくれる!」
地面を勢い良く蹴り、キーズは16に接近する。
衝撃に備え、グッ、と盾を構える16。
だが、攻撃が彼女に直撃する事はなく、変わりにキーズが吹き飛び、王座に激突した。
俺がキーズが攻撃をする前に蹴り飛ばしたからだ。
「麻生 アルト…」
「やらせねえよ…。16。お前も俺の…大切な存在だからな」
それを聞いた彼女は目元に涙を浮かべ、俺の服を掴んだ。
「敵であった私が言うのはおかしいと思うけれど…。お願い、私を…私達を…助けて…!」
そんな顔で言われたら、断れないじゃねえか…。
俺はフッ、と笑い、16の頭を撫でた…。
「約束しただろ?お前達をアイツから解放してやるって…ちょっと待ってろ、すぐに終わらせるからよ」
笑顔で口を開いた俺の言葉に彼女は頷いた。
それを確認した後、俺は振り返りエンゼッターを構える。
「ほう?私を終わらせるか…。無職如きが意気がるな!」
逆上したキーズが鋭利な爪を光らせ、俺に突っ込んできた。
それをエンゼッターで防いだ俺は爪を弾き、蹴りを入れる。
後方に吹き飛んだキーズは風の爪を複数放つ。
しかし、それもエンゼッターで全て弾き、《光波》を数発放って、奴にダメージを与えた。
「グッ…⁉︎何故だ…⁉︎私は王となる存在だぞ⁉︎それが何故、無職如きに私が…⁉︎」
完全に俺を舐めているキーズは俺に勝てない事に戸惑っている。
何度も風の爪を放ってくるが、エンゼッターで全て弾いていく。
「心の意味も理解できていないお前が王になれるはずないだろ。…国のトップに立つって言うのは…国の事を思う心がないとなれないんだよ!」
「アルト…」
俺の言葉にリフィルが呟く。
リフィルにもその心が存在している…。
彼女ならば、国を導いていけるんだ…。
11達と戦っていたグレンもトドメに取り掛かっていた。
グレンが剣を上に翳すと剣身に炎が纏われていき、巨大な炎の剣となる。
「《大・灼熱剣》!」
巨大な炎の剣を横振りに一閃し、11達四人を斬り裂いた。
斬り裂かれた彼女達は任務失敗…、と言い残し、爆発した…。
勝利を確信し、グレンの身体を纏う炎は消える。
「ふう。さあ、アルトの所に向かわないと…!」
息をついた後、グレンは奥へと足を進めた…。
キーズの苛立ちが最大級に達し、叫び出した。
「この…無職がぁぁぁぁっ‼︎」
叫びに任せて、キーズは突っ込んできた。
それに対し俺は冷静にエンゼッターを構え、《フォトン・ウイング》を発動させ、光の翼が俺の背から出現する。
そして、光の翼から大量の光を放出させ、その光のエネルギーをエンゼッターの剣身に纏わせた。
「…《フォトンスラッシュ》!」
光の刃が形成され、接近してきたキーズを斬り裂いた。
「グオォォッ…⁉︎」
それによって、仰け反ったキーズに俺は接近し、光を右拳に集める。
「《フォトンナックル》!」
光の拳がキーズの頬を捉え、俺はキーズを殴り飛ばした。
そのままキーズは吹き飛び、壁に激突し、人間態に戻りながら、気を失った…。
それを確認した俺は振り返ると、そこには16がいる。
かつての主の敗北…。
そして、ついにキーズから解き放たれた解放感。
それを受けた16は嬉し様な悲しい感情に包まれる。
しかし…自分達の為に戦ってくれた俺の顔を見た彼女の表情は不思議と微笑みに包まれた…。




