姉と妹
15の攻撃から俺を守った16…。
何故彼女が俺を守ったのか…。
確かに、俺は彼女達をキーズから解放するとは言ったが、彼女が俺を守る理由にはならないはずだ。
ましてや、今の行動は彼女のマスターであるキーズへの反逆となる。
それなのに何故…。
俺を守った16は真っ直ぐ15とキーズを見る。
「シ、16、貴様…!これは何の真似だ⁉︎」
「申し訳ありません、マスター。彼を殺すワケにはいかないのです」
「16…」
彼女は本当に俺を守る気でやったのか…。
すると、彼女は目線だけを俺に向ける。
「貴方には約束を守って頂きたいので」
「お前…」
そうか…。
アイツは本当にキーズから解放されたいんだな…。
「16、約束とは何?マスターに逆らって、無事でいられるとでも思っているの?」
「話す気はないわ、15。…マスター、お聞きしたい事があります」
16の問いにキーズが興味深そうな顔をする。
「何だ?言ってみろ」
話を聞こうと、再び王座に座るキーズ。
それに対し、16は静かに問い出す。
「マスターは…。1達を囮として…最初から彼女達が破壊される事を見越して、彼女達を麻生 アルト達と戦わせたのですか?」
「そうだ。お前達のデータは取ってある。いつでも新しい物が造れるからな」
それを聞いて、16は顔を俯かせる。
「…貴方は…私達に心があるとお思いですか?」
「つまらん事を聞くな。お前達は私に造られた魔導人形。ただの道具だ。…お前達の様な鉄の塊に心をなどあるはずがないだろう?」
コイツ、本人達の前でなんて事を…!
「では、最後の質問をします…。貴方は、私達でさえも使えなくなったら、処分しようとお思いですか?」
「当然だ。私に尽くさないガラクタなど不必要だ。そんな物を処分しようが私の勝手だ」
16は小さく身体を震わせる。
…もう我慢できねえ…!
「…では、私は貴方には抵抗します!」
俺が声を張り上げようとしたが、その前に16が顔を上げ、声を上げた。
その彼女を見た俺や15は驚く。
「16、貴女…」
それを聞いたキーズが声を出して、笑い出した。
「フハハハッ!製作者である私に歯向かうと言うのか…。そうか、そうか…」
尚もククク、と笑い続けているキーズだが突然、豹変し、叫んだ。
「鉄屑如きが意気がるな!15!この鉄屑を処分しろ!」
それを聞いた15は一瞬、苦い顔をしたが、すぐに16を睨んだ。
「了解」
「麻生 アルト…。貴方は手を出さないでください。15は私が倒します」
そう言い残し、16は15に突っ込んだ。
彼女達はお互い、左腕を鋼鉄の腕に換え、パンチをぶつけ合う。
さらに、右腕も鋼鉄の腕に換え、ラッシュをぶつけ合う。
「貴女には私のデータもある…。だけど、最強の私には勝てない」
「それでも勝てないワケではない」
強力なパンチをぶつけ合い、二人は距離を取る。
「貴女…まさか、麻生 アルトに何かされたの?」
「何もされていない。強いて言うのであれば、彼から心を教えて貰った」
「心?私達は機械よ。心なんてない」
俺の教えた心という言葉を15にも投げかけるが、彼女に否定される。
心という言葉を否定した15は左腕を剣に換え、16に斬りかかる。
すぐさま、16も左腕を剣に換え、攻撃を防いだ。
次に剣をぶつけ合う二人。
金属音が鳴り響き、どちらも一歩も引かない戦いを見せる。
このままでは何もならないと二人はまた距離を取った。
「15、貴女は嘘をついている」
「嘘…?」
「貴女には心がある。そして、それを理解している…。でも、貴女はそれを認めようとしていない」
「…」
「貴女にもあるのよ…。優しい心が…」
「その様なモノはない!」
声を上げ、再び斬り付けてくる15の攻撃を左腕に切り替えた盾で防いだ。
「私達は魔導人形!マスターの道具よ!道具の私達が心なんてあるはずがないの!」
盾ごと16は吹き飛ばされるが、盾を引きずり、動きを止める。
「どうしてそう言い切れるの?」
「…ッ…⁉︎」
「…私にはわかる。貴女はいつも私や1達を心配してくれていた…。それは貴女が心があるから…違う?」
16の問いに15は俯く。
しかし、顔を上げ、否定の言葉を述べる。
「違う…!私は貴女達の事を心配なんてしていない!」
左腕をガトリング砲に換え、銃弾を連射する。
16も負けじと盾で防ぐ。
「それが嘘…!貴女はいつも私達の事を気にかけてくれた!貴女は、私を妹として見守ってくれた!」
無数の銃弾を盾で防ぎながら、15に接近し、右手で殴り付けた。
軽く吹き飛び、地面に倒れる15だが、すぐさま立ち上がる。
「それが心を持つ本当の貴女…!貴女はその心に気付いていながら、ずっと否定していた!マスターに抵抗できなかったから!」
核心を突かれたのか、15は顔を険しくさせる。
「私は…私は…!」
「もう苦しまなくていいよ、15。私が貴女を助けて上げるから。…妹として…!」
「ッ…うあああああっ‼︎」
魔導人形としての15と心を持つ15が葛藤し、彼女は声を上げた。
そして、左腕をチェーンソーに換え、16に斬りかかった。
それを盾で防ぎ、鋼鉄の右腕で殴り返す。
16の鋼鉄の拳は15を捉えるが、負けじと彼女も16の頬に右腕で殴る。
そして、お互いに蹴りを浴びせ、後方へ軽く飛ぶ。
地面に転がりながらも立ち上がった両者は鋼鉄の右腕を構える。
「私を助けると言うのなら、私を越えてみなさい!16!」
「越えてみせる…!そして、貴女を…お姉ちゃんを助ける!」
言葉を発した二人は一斉に駆け出し、鋼鉄の右腕を構え、相対時に突き出した…。
お互いの腹に直撃したと思える互いの拳…。
しかし、実際は…。
「グフッ…⁉︎」
「…私の…勝ち!」
15の拳は届いておらず、16の拳が確かに15の腹を捉えていた…。
強力な一撃に15は前に倒れそうになるが、それを16が支える…。
そして、細々とした声で15は話し始める。
「フ、フフ…。効いたわ、貴女の一撃…」
「16…」
負けたはずなのに笑みを零す15を見て、16は驚く。
「貴女の言う通り…私は心を否定していた…。いや、認めたくなかったの…。それを認めてしまえば、マスターを否定してしまう事になる。…私はマスターに造られた存在だから…」
どれだけ認めたくない命令でもキーズがマスターである限り、断れない。
…何故なら、キーズが彼女達を造った男だからだ。
「でも、貴女のおかげで目が覚めたわ。ありがとう…」
「違うよ、お姉ちゃん。私だって、あの麻生 アルトに教えられたの。心の意味を…心のあり方を…」
それを聞いて、15は微笑んだ。
「そう…。良い人に出会えたわね、私達は…」
「うん。彼は私達を道具としてではなく、一人の心ある者として接してくれる…」
「まさに恩人ね…。私もこれから…ガッ…⁉︎」
これから貴女と生きたい…その言葉を掻き消された…。
巨大な爪で15の身体を貫いた者の仕業により…。
そのまま15は力を失い、ダラン、と16の横を通り過ぎ、倒れた…。
「お姉ちゃん⁉︎」
「15!」
俺達が彼女の名を叫ぶ中、その光景を見て、巨大な爪で15を貫いた者…キーズ・リファパインはニヤリ、と笑みを浮かべた。
腕が変化した…⁉︎
まさか、奴は獣人なのか…⁉︎
そして、キーズは高らかに笑い出し、16は何度も、お姉ちゃん、と叫んでいた。
それを嘲笑うかの様にキーズは口を開く。
「15《フィフティーン》…。お前も愚かなガラクタだった様だな。…敗者のゴミに存在する価値はない」
キーズの…奴のその言葉を聞いて、俺の中の何かが弾け…。
「キーズゥッ‼︎」
俺の叫びが部屋内に響き渡った…。




