侵入
アクアースへ戻った俺達は気を失っていたギル隊長や騎士達に《ヒール》をかける。
すると、彼等は目を覚まし、キーズが裏切り者で、リフィルとメリルを拐った事を話した。
「やはり、キーズ殿が…!それに魔導人形の開発まで彼が関与していたとは…」
してやられた、と拳で壁を殴りつけるギル隊長。
それを横目に俺はリフィルを拐った理由を話す。
「あのキーズって男の目的は帝都ガイールを乗っ取る事だ。リフィルはその人質ってワケだな」
「アルト!早く、あの二人を助けに行こうぜ!」
今にも助けに行きたい、というグレンを俺は落ち着かせる。
「落ち着けよ、グレン。助けに行きたくても奴等の場所が……いや、待てよ…」
そう言えば、16は反対側の道を進んでいた…。
なら、その先に何かがあるはずだ。
「グレン、ザイガンの谷の底へ降りるぞ」
「…お前が言うからには何かあるんだな?…なら、行こうぜ!」
こう言う時にコイツは頼りになる。
「アルト君、我々もいくぞ!」
ギル隊長に続き、騎士達もリフィル達の救出作戦に参加しようとしたが…。
「いえ。貴族の居なくなったこの町を狙う奴等がいるかも知れません。騎士団の皆さんはこの町の防衛に専念してください」
アクアースの防衛に当たって欲しい…。
そう頼む俺だが、騎士達は納得のいかない声を上げる。
しかし、ギル隊長は目を閉じ、静かに呟いた。
「…君達ならば、王女様達を助けられるのだな?」
「…必ず」
俺の目を見たギル隊長はクスリ、と笑い振り返る。
「お前達、町の住人を守るのが我々の仕事だ!王女様達は彼等に任せる!」
ギル隊長…。
「任せるぞ、冒険者所君!」
これは…失敗出来ないな。
「さあ、行こうぜ!アルト!」
「ああ!」
拳をぶつけ合った俺とグレンはザイガンの谷に向かう。
騎士達の声援を背に受けながら…。
谷に着いた俺達は早速、崖を下り、始める。
そして、底へ着いた俺達は谷底を見渡す。
「へぇ、谷底ってこんな風になっていたのか…」
興味深そうに辺りを見渡すグレン。
俺は16が歩いて行った方を見る。
この先か…。
俺達は歩き始め、途中モンスターに襲われるが、返り討ちにして、先に進む。
暫くした後、一番奥まで辿り着く。
しかし、そこは見渡す限り、壁しかなかった。
「ん…?おい、行き止まりだぞ?」
「…いや、此処には何かあるはず…。っ?」
空気の通りが不自然だと、思った俺は一つの蝋燭を取り出す。
アイテム、〈キャンセル・キャンドル〉…。
幻影や洗脳の技能を解除できるアイテムだ。
〈キャンセル・キャンドル〉に火をつけると煙が立ち込め、俺達の前方に大きな施設が現れる。
「建物が出てきたぞ⁉︎」
「幻影で姿を眩ましていたか」
これで漸く、足をつかめた。
俺達は施設の中に入って行った…。
それを前回、この谷で俺を見ていた男と少女が見ていた。
「…」
「えらく不機嫌そうな顔してるじゃねえか」
不機嫌そうな表情をする少女を茶化す男。
「…女神のクセに人間に捕らえられるなんて、甘いわ…」
「まあ、それは言えてるな。…んで、助けに行くか?」
「冗談言わないで。私達の目的はあくまでも監視よ」
「へいへい」
少女の返答に男はつまらなそうに息を吐き、二人は崖の上から飛び降りた…。
俺達が施設の中に入った頃…。
施設の奥ではメリルとリフィルが鎖により囚われていた。
メリルは脱出を試み、リフィルはずっとキーズを睨んでいる。
「リフィル様。そろそろ睨むのをお辞めになってはどうです?」
「…私は貴方を絶対に許さない!何をされても屈しはしないわ!」
彼女の気迫にキーズは少し押されるが、すぐに笑みを浮かべる。
「その余裕の表情が悲しみに変わる所を早く見たいモノです」
すると、13が現れる。
「マスター。施設内に侵入者です」
モニターが表示されると施設に侵入した俺達が映り出される。
「アルト!」
「アルトさん!グレンさん!」
俺達の姿を見て、メリルとリフィルに笑顔が戻る。
しかし、キーズはククク、と笑う。
「あの幻影を破るとは…冒険者も侮れないな。11、12、1314。警備ロボを従え、奴等を消去しろ」
「「「「了解」」」」
キーズの命に11達は頷き、その場を去った…。
しかし、モニターに映る俺を16が浮かない表情で見ていた事を15以外、誰も気がつかなかった…。
奥に進む俺達だったが、気づかれたのか、警報が鳴り響いて、警備ロボが襲いかかってきた。
人型のロボットでやり辛いが、何とか、斬り伏せていく。
するとそこへ、11、12、1314が現れた。
「麻生 アルト、グレン・アビス…。ここで消去する」
11達を見て、俺達も警戒する。
それと同時にこの施設こそがキーズ達の隠れ家という確信を得る。
「ここがアイツ等の隠れ家で間違いない様だな」
「そうみたいだな。じゃあ、アルト。此処は俺に任せて先に行けよ」
グレンは残って、11達との戦いを請け負うと言ってきた。
勿論、俺は反論する。
「だが、お前…!」
「リフィル王女を守るのはお前の依頼だろ?それにメリルもお前も相棒だ。…女を待たせんじゃねえよ」
グレン…。
「わかった…。頼んだぞ、グレン!」
グレンの決意を無駄にはせず、彼に感謝して、俺は11達を通り過ぎ、奥に進む。
「させない」
だが、それを阻む様に11達が俺に襲い掛かるが、グレンが攻撃を防いでくれた。
「おっと…お前等の相手は俺だぜ!」
剣身に炎を纏わせて、グレンは叫んだ…。
グレンが戦闘を開始した頃、俺は襲いかかってくる警備ロボを薙ぎ払い、ある部屋へと辿り着く。
「まだ続くのかよ…!」
早く奥にたどり着かないと…!
そう思い、再び走り出そうとしたその時、俺の真上から何かが落下して来た。
突然の奇襲を避けた俺は奇襲を仕掛けてきた者を見て、顔を険しくする。
「やっぱりお前も立ち塞がってくるか…」
その者は水色のツインテールの髪に緑の瞳をした少女が立っていた。
頬を伝う汗を拭いながら、俺は少女の名前を叫んだ…。
「16…!」
そう、俺の前に立ち塞がっているのは、谷底で言葉を交わした16だった…。




