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ジョブ無し転移者の技能複写  作者: カイト・レイン
第三章 帝都ガイール編
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16《シックスティーン》


ザイガンの谷の奥底…。

俺は魔導人形(サァリィ・ドール)の少女と共に落下した所だ。


あの後、なんとか受け身を取ったが、打ち所が悪かったのか、俺は気を失った…。


そして、どれだけの時間が経ったのかわからなかったが、俺は意識を取り戻した。


目を覚ますと、そこには俺の顔を覗き込んでいた少女がいた。


「…生存確認。…大丈夫?」


俺の無事を確認すると、小首を傾げる。


「…あぁ、お前に斬られた所は痛いけど、大丈夫だ」


身体を起こし、辺りを見渡す。

周りには俺達を覆う程の絶壁…。


さらには壁はゴツゴツとしていない為、よじ登る事も不可能だ。

技能(スキル)も…やはり、使えないか…,


どうやって、この壁を登るか…。

それを考え込んでいると、少女が話しかけて来た。


「ねぇ…」


「ん?どうした?」


「…どうして、私を助けたの?私は貴方を殺そうとした。貴方にとって、私は敵…」


何だ、そんな事か…。

俺は頭を掻きながら答える。


「特に理由なんてないよ」


「え…?」


その答えに少女は理解が出来ないという顔をする。


「確かにお前は俺の敵だ。…でも、見捨てていい理由にはならない。そんな事をすれば…もう後戻りが出来なくなるからな」


前世のある事件を思い出しながら、俺は軽く拳を握る。


「…理解不能。私は人間ではなく、魔導人形(サァリィ・ドール)…。マスターによって、開発された道具…」


《《道具》》…。

その言葉を発した少女は悲しそうな表情をする。


「道具、か…。確かにお前は人間によって作られた存在だ。…でもよ、お前は俺の心配をしてくれたじゃねえか。敵である俺の心配を」


それを聞いた少女は目を見開く。


「否定…。私は心配などしていない」


「心配していない人間が〈大丈夫?〉…って、なんて聞かないぞ?」


心配していた事を否定したが、すぐさま反論され、口籠ってしまう…。


「それにお前は本当は優しいヤツなんだな」


「…どうしてそう思うの?」


「…さっきも言ったが、お前にとっても俺は敵だ。なのに、気を失っていた俺を殺そうともせず、介抱してくれた」


またもや少女は黙り込んでしまう…。

こうして見ていると本当の女の子なんだけどな…。


「お前、名前は?」


魔導人形(サァリィ・ドール)アームドシリーズ、16号機。名称はA16(シックスティーン)


A16(シックスティーン)…。

しっかりとした名前も与えられないとはな…。


「じゃあ…16(シックスティーン)だな」


名前を呼ばれた事に顔を逸らした16(シックスティーン)は指を指す。


「この先…登れる壁が見えてくる。そこから上に上がる事が出来る」


指差す方向を見た俺は再び、16(シックスティーン)へ視線を戻すと彼女は指を指した方向とは反対方向へ歩いていた。


16(シックスティーン)!」


「…次に会うときは敵同士」


俺の呼びかけに振り向かないで彼女は足を止める。


「そうだな。またな、16(シックスティーン)!」


またな…。

その言葉を聞き取った16(シックスティーン)は拳を軽く握り、身体を震わせて…歩き出し、暗闇にへと消えた…。


その後ろ姿は寂しさを出していた…。


暫く彼女を見送った俺も歩き出そうとすると、コンディションブレスから音が鳴る。


応答すると、メリルの声が聞こえてきた。


『漸く繋がった…!アルトさん、大丈夫ですか⁉︎』


「メリルか?心配かけて悪いな。俺は何とか大丈夫だ」


俺の無事を知るとメリルから安堵の声が漏れる。


「あの魔導人形(サァリィ・ドール)の少女と一緒に落ちたので心配しました…。それで、今後どうしますか?」


「俺も何とか、地上に上がる。お前達は先にアクアースに向かってくれ」


「わかりました。では、アクアースで合流しましょう」


通話を切り、歩き出そうとした俺の前に十数体の《ゴブリン》が歩いてくる。


まあ、そう簡単にはいかないよな。


「悪いが通らせてもらうぜ…。仲間が待っているからな!」


鞘からエンゼッターを抜き、俺は駆け出した…。


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