パーティー
シーリンの町の住人が戻って来たのを確認し、俺達は軽い復旧を二日かけて手伝った。
この戦いでの死者は0だった様だ。
その後、イズルリの街へ戻り、現在…。
俺は露天風呂に浸かっていた。
「ハァ〜!生き返る〜!」
疲れを飛ばす様に屈伸するが、そんな俺を見て、ヴェイグとルークさんは苦笑する。
「君は年寄りか」
「仕方ねえだろ?一週間近く風呂に入って、なかったんだからよ」
溜息を吐きながら、身体の至る所を解すように揉む。
「麻生 アルト君。君がマッピングしてくれたダンジョンのデータも新たにマップに表示したよ。感謝する」
ルークさんが頭を下げてくる。
…風呂ではやめて頂きたい。
「や、やめてください!頭を下げられる様な事はしていませんよ!」
それを聞くとルークさんは頭を上げた。
「ヴェイグから話は聞いていたが、器の広い男なのだな!」
ヴェイグ…。
何か余計な事言ってねえだろうな…!
「アルト君。本当に騎士団に入る気はないか?」
また勧誘か…。
「失礼ですが、答えは変わりません。それに、冒険者の方が俺には合っていると思いますので」
「ふむ、そうか…」
残念だという表情で俯くルークさんにヴェイグは笑いかける。
「ね?難しい男でしょう?」
「おい、ヴェイグ。お前、ルークさんに変な事教えてないだろうな?」
ヴェイグ「生命知らずとは教えたよ」
いや、否定はできないけどよ…。
すると突然、ルークさんの表情が真剣なモノに変わり、俺とヴェイグも表情を変える。
「それにしても…君は…その、失礼だが、無職なんだろう?そんな君が何故、あれ程の強力な技能を発動できるんだ?」
「俺があのダンジョンで手に入れた技能…技能複写の力です」
「技能複写?」
その様な名前の技能は聞いた事がないと、ヴェイグとルークさんは考える。
此処で俺はダンジョンで起きた事を全て話した。
サイクロプスとの戦闘…。
戦闘の最中、謎の声からこの技能複写の力を与えられた事…。
…そう言えば、あの声…。
一体誰だったんだ…?
「…倒したモンスターの技能を複写出来るとは…」
「その謎の声…君にも見当はつかないのか?」
「残念ながら…」
アレ程強力な技能を与える存在…。
まさか、神様…?
いや、それはないか…。
「それよりもアルト君。これはから気をつけてくれ…もしかすれば、軍が君の力を狙って来るかも知れない」
魔虎牙軍…。
確かにアイツ等なら、俺のこの力に目をつけてくるのは確実だろうな…。
「わかりました」
今その事を考えても仕方ない…。
軍が俺の敵になるのなら、容赦はしないだけだ。
風呂から上がった俺達を待っていたのは沢山の食事だった。
パーティーか…。
なんか久しぶりだな。
「にしても、一週間ぶりのまともなメシだな」
ダンジョンの時は非常食しか食べれてなかったからな。
「もう、恥ずかしいからガッつかないでくださいよ、アルトさん」
ケーキが乗った皿を両手にメリルが俺に注意をしたが…。
コイツな…。
「さっきからケーキをバカみたいに食ってるお前にだけは言われたくねえよ」
「こ、これは…!デ、デザートは別腹なのですよ!」
「…お前、ケーキしか食ってねえだわ」
「うっ…」
逃げる様に視線を背けやがった…。
そこへ、ガルナとルークさん、ヴェイグが歩み寄って来た。
「二人共、楽しんでる?」
「少なくとも、メリルは楽しんでいるな」
「ちょっ!アルトさん⁉︎」
私は別に…、と尚も顔を背ける。
「それにしても、アルト君。…君は、お酒はいける口かい?」
…っと、ルークさんがワインボトルを見せてきた。
いやいや、飲んだ事ないよ。
「いやいや、俺未成年ですよ!」
「…?アルト、君は何歳だ?」
「17だ」
俺が17歳と聞いたヴェイグ達は何を言っているんだ、という顔で俺を見る。
「アルト君、何を言っているの?」
「え?」
「ラインバルクでは酒と煙草は15歳からだろう?」
…マジで?
俺はメリルに視線を送るが、メリルも知らないと首を横に振った。
「そ、そうだったな!…いや、飲んだ事はありません」
「二人共、飲める歳ならば、飲んでみないかい?」
グラスを渡されたので、俺達はワインを飲んだ。
そして、数分後…。
「あはははははっ!ははっ!ふにゃ〜、アルトさ〜ん!」
…メリルの奴、一杯で酔いやがった…。
「お、おい。メリル!しっかりしろよ!」
「しっかりしてますよ〜?アルトさんこそ、どうして分身してるんですか〜?」
ダメだこりゃ…。
「あらあら、メリルちゃん。お酒は弱いのね」
「アルト、君は相当強そうだね」
「飲むのは初めてだけどな」
そう言い、俺はもう一杯ワインを飲み切る。
「私もまだまだ飲みますよ〜!」
「お前はやめとけ!」
「あ〜ん!アルトさんのケチ〜!」
「おわっ⁉︎」
これ以上は飲ませられないとメリルからグラスを取り返したが、相当酔っているのか、グラスを取り返そうと俺は彼女に押し倒された。
「ふふ〜。もっと飲みます〜!」
頬を真っ赤にし、俺を押し倒してまでグラスを奪おうとする。
ヴェイグとルークさん、ガルナはニヤニヤ顔でこっちを見るだけで、助けようともしないし…。
仕方ねえ…。
「…いい加減シラフに戻りやがれー!」
「ふにゃ〜⁉︎」
アイアンクローをメリルに浴びせ、彼女からは悲鳴が出る。
…だが、表情が痛そうに見えないんだが…。
…まあ、こんなパーティーもいいかもな。
この技能複写の力…この力で俺は今度こそ守ってみせる…!
大切なモノを…!




