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ジョブ無し転移者の技能複写  作者: カイト・レイン
最速太刀使いの技能拝借
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説教


 17(セブンティーン)と呼ばれる少女から襲われた時から数日が経った。

 この数日身体を休めた為、身体は回復し、ノエルと一緒にレベル上げをしていた。


 17(セブンティーン)に負けて改めて、気づいた…。

 この世界の負けは私達の世界で言う負けとは違う…。

 試合で負けると言う意味とは違い、下手をすれば生命を取られていた…。


 正直、少し怖かった…死が目の前に迫っていたあの時は…。

 自分自身の何処かで、異世界では無双が出来るほど強くなれる…そう思っていたのかも知れない。


 だけど、現実は物語の様には上手く、物事は進まない…。

 結局、私達の世界でも異世界でも…努力しなければ生きてはいけないって事ね…。



 今も私とノエルは大きなカエルのモンスター…《ウィップフロッグ》数匹と戦っていた。

 《ウィップフロッグ》はその名の通り、長い舌を鞭の様に動かして、攻撃してくる。


 鞭の様な舌を避けたり、斬り伏せたりして、《ウィップフロッグ》達に近づいていくが…。

 何のひねりもない真っ直ぐな突進で突き進んでいた所為で背後にもう一体の《ウィップフロッグ》の舌が私に迫っていた事に気が付かなかった。


「スズカ様!」


「え…っ⁉︎」


 ノエルの声で背後を振り向き、漸く、舌に気付くけど、既に舌は目の前にまで迫っていた。

 私はくっ、と声を漏らすとワザと足を縺れさせ、仰向けに態勢を崩す。


 仰向けにゆっくりと倒れながら、私は迫ってきていた舌を真っ二つに切り落とし、倒れる際、受け身を取って、そのまま私に攻撃してきた《ウィップフロッグ》に接近する。


「《ターンスラッシュ》!」

 

 空中で身体を横に捻り、技能(スキル) 《ターンスラッシュ》を発動し、《ウィップフロッグ》の肉体を真っ二つに切り落とした…。


 《ウィップフロッグ》は消滅し、私が地面に着地したと同時にノエルも技能(スキル)を発動する。


「《メテオレイン》!」


 強力な隕石の雨を降らせる《メテオレイン》で残りの《ウィップフロッグ》を一掃した…。


 全滅した《ウィップフロッグ》と手に入れた経験値を確認した私…。

 レベルはもう十五ほどになっていた。


 太刀を鞘に戻し、軽く息を吐いていたノエルに駆け寄る。


「ノエル! やったわね! 私達のしょ…」


 私達の勝利、と言おうとした私の言葉は私の頬を叩かれたパチン、という音で掻き消された…。

 驚きのあまり、足を止めてしまい、叩かれた頬を抑える。


 何故、叩かれたのか理解できず、ノエルに視線を合わせると…。


「何故、考えも無しに突っ込んだのですか‼︎」


 今まで聞いた事のないノエルの怒鳴り声に私はビクリ、と身体を震わせ、目を見開く。


「あの数の中に飛び込んでしまえば、背後から攻撃される事はあなたでもお分かりでしょう⁉︎ 何故、あの様な真似を!」


「だ、だって、怯んでたから…それに、結果的に上手くいったし…」


 声を震わせながら、心配ないと口にする私だが、この言葉が不味かったのにすぐ気がつく。


「上手くいった、ですか…。まさか、この様な事でこれからも戦っていくつもりですか? 戦いを…異世界を舐めるのも大概にしてください‼︎」


 怒気の籠もった怒鳴り声にまたもや私はビクリ、となり、少し後退りをしてしまう。


「わ、私は舐めてなんか…」


「もし、足が縺れずにあのまま攻撃を受けていたら、どうするつもりだったのですか⁉︎ 治癒で治る程度の傷ならば、まだいいです! ですが、致命傷の様な傷は治らないんですよ⁉︎ 治癒技能(スキル)だって、万能じゃないんです! それに此処はゲームの世界とは違って、コンティニューができないんですよ!」


 ノエルの一言一言に私は反論できないでいた…。

 しかし、言い放ったノエルは息を落ち着かせると今度は落ち着いた口調で話す。


「あなたが気を失ってしまった時…気が気でありませんでした…。もし、わたしの治癒技能(スキル)で治らなければどうしようかと何度も思いました…。スズカ様、あまり無理はなさらないでください…。私はあなたを導く為にこの世界へ来ました。…私は、あなたを失いたくないのです」


 私を包み込んでくれる様な優しい言葉…。


 そうか…ノエルは私の為に…。

 ずっと看病してくれていたのもそれが…!


 私は…なんて最低なの…?

 心配してくれていたノエルの想いも知らずに一人で強くなろうと焦って…ノエルを心配させて…!


「ノエル…」


 気がつくと私は涙を流していた…。

 ノエルの優しさに嬉しくなったのもそうだけど、自分自身のバカさが悔しく、情けなかったからだ…。


「ごめん、なさい…! ごめんなさい…!」


 泣き出した私を見たノエルは優しく微笑み、私をそっと抱き寄せた。


「わかっていただければいいのです。…あなたは一人ではありません…。ずっと一緒です」


「うん…うん…!」


 遂に私は耐えきれなくなり、泣き声を上げながら、ノエルに泣きつくと彼も私の頭を撫でてくれた。

 まるで泣きじゃくる妹をあやす兄の様に…。


 ノエルの胸の中は…凄く暖かった…。


「共に強くなりましょう…。私達、二人で…」


「ええ…!」


 私の泣き声が辺りに響き渡り、涙でノエルの服を濡らし続けるが、ノエルは気にせず、ずっと私を抱き寄せ、頭を撫でてくれた…。





 数十分後…。

 私は眠りについてしまう…。





 泣き疲れ、眠りについてしまったスズカをおんぶで背負いながら、ノエルはアクアースの宿屋ヘ戻っていた。


「(ふふっ、強気なスズカ様もあの様なお姿を見せる時があるのですね。流石は女の方です)」


 クスリ、と笑みを浮かべながら、歩くノエル。


「ノエル…」


 暫く歩いていると、スズカがボソリ、と寝言を述べる。


「必ず…守るから…」


「…ええ、私もですよ」


 そのままノエルはスズカを連れ、アクアースの宿屋へ戻った…。






 翌日…。

 目覚めて、朝食を取っていた私は顔を真っ赤にしていた。

 理由は言うまでもなく、昨日泣いてしまった事だ。


 子供の様にノエルに泣きついてしまい、更には泣き疲れて寝て、ノエルに背おわれて、宿屋に戻ってくるなんて…。

 穴があったら入りたい…!


「ス、スズカ様…? 気にしすぎでは…」


「私だって、プライドってものがあるのよ!」


 まあ、昨日に関しては私が悪いんだけどね…。



 少しして落ち着き、これからの事を話し合おうとしたその時だった。


「アンタ達…強くなりたいんでしょう?」


「え?」


 突然、赤毛の女の人に話しかけられ、私とノエルは彼女に視線を移す。


「失礼ですが、あなたは?」


「ごめんなさいね。私はルビィ・アーコス。実は昨日あなた達が《ウィップフロッグ》と戦っているのを見ていたの。…あなたが泣いていた所もね」


「うっ」


 ノエル以外にも見られていたなんて…!


 恥ずかしさで悶える私を見て、ノエルは苦笑するもルビィさんへ質問を続ける。


「それで、私達にどの様な御用で?」


 ルビィさんは自身の席から持ってきたであろうカップを持ち上げ、残った紅茶を飲み干し、クスリ、と笑った。


「あなた、強くなりたいんでしょう?」


 ルビィさんのその言葉に私とノエルは顔を見合わせ、首を傾げた。

 そんな二人を眺め、フフッと笑みを浮かべたルビィは話を続ける。


「ついてきて。あなた達にいい場所を教えてあげるわ」


 承諾を言わせず、ルビィさんはズカズカ、とレストランを後にした…。

 状況が飲み込めず、罠かとも思ったけど、私達は仕方なく後を追う事にした…。


 私達はルビィさんに連れられて、町外れの森を突き進み、森を抜けるとある岩崖が見えてきた。


「崖…?」


「まだまだ…本命は此処からよ」


 ルビィさんが崖の岩を少し押すと、ガチャリ、という音が鳴り響いて、目の前の大きな岩が右にズズズ、と移動し、入り口が見えてきた。


「な、何なのこれ…⁉︎」


「さあ、入って」


 まだ説明してくれないなんて…。

 まさか、何かの秘密基地とか…?


 崖の中に入って行き、奥へ進んで行くとまたもや大きな扉が見えてきた。


 ルビィさんが扉に手をかけ、押した。

 ギギギ、と音を立てながら、扉が開くとそこには…。


「…えっ⁉︎」


「コレは…!」


 見えてきたのは大きな部屋にある様々な歯車のついた装置だった…。


「ル、ルビィさん…? 此処は一体…⁉︎」


「ようこそ、私の特訓場…ルビィ修練場へ…」


 あまりにも凄まじい光景に私とノエルは開いた口が塞がらなかった…。


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