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ジョブ無し転移者の技能複写  作者: カイト・レイン
最速太刀使いの技能拝借
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麻生 或都


 夢を見た…。

 これは過去の私の光景…?


 一年前…。

 私の学校ではイジメが起こっていた。

 複数の女子生徒が一人の女子生徒に対して、虐めて、多くの生徒が不登校になってしまっていた。


 学校の先生達も見て見ぬふり…。その先生達の反応に私は嫌気がさした。

 生徒を守る立場の先生達も自分達の学校に汚名がたてば、生徒が入ってこなくなるから。


 そして、イジメの矛先はついに私の友人で幼馴染である愛美に向いた。

 愛美は愛らしい見た目で優しく、男子生徒に人気があり、その事が気に食わなかったのだろう。


 私が愛美に対してのイジメに気づいたのは、クラスメイトの一人がイジメ集団に愛美が連れ去られる所を教えてくれたからだ。


 私はその場に行くと、イジメ集団の一人が愛美の髪を掴み、壁に押し付けていた。


「や…めて…!」


「止めるワケないでしょ?」


「男達に色目を使って…ウザいのよ、アンタ!」


 勿論、愛美は色目など使っていない。

 そもそも、彼女は男や女など関係なく、接している。

 完全に勘違いしている。


「アンタ、気に食わないから…少し痛い目をみてもらうわよ?」


「い、嫌…!」


 今にもイジメ集団達が愛美に手を上げようとしていたが、私が声を上げる。


「やめなさい!」


 その叫び声に反応し、手を上げようとしていたイジメ集団達は手を止め、振り返る。

 同じく、愛美も目を開けて、私を見て、目に涙を溜めながら、微笑んだ。


「鈴香ちゃん…!」


「…波城さん…。何? 邪魔しないで」


 ザッと、私を取り囲むイジメ集団達だったけど、私はリーダーらしき女子の腕を掴み、関節技をかける。


「痛っ…! は、離して!」


「これ以上、愛美に危害を加えるなら…容赦しないわよ!」


 そう叫びながら、私は掴んでいた女子の腕を勢い良く話すとイジメ集団達は私を睨みながら、走り去っていった…。


 私は愛美に駆け寄り、無事と知り、安堵の息を吐いた。

 だけど、同時に先ほどまでイジメ集団達がいた場所を眺める。


 彼女達…これで諦めたとは思えない…。







 それから数日後…私の嫌な予感が当たるのはそう時間が掛からなかった…。


 また愛美がイジメ集団達に連れ去られたと聞き、私は愛美が連れ去られた場所まで急いだ。


 私が着くとイジメ集団の他に複数の男の人達もいた。


「来たわね!」


 イジメ集団のリーダー女子が私が来た事を確認すると、不敵な笑みを浮かべ、愛美の髪をグッと掴み、見せつけてきた。


「鈴香ちゃん…!」


「愛美!」


 愛美を助け出そうと身を乗り出した私の道を遮る様に男の人達を立ち塞がってくる。


「おっと、先には行かせないぜ?」


「そこを退いて!」


 それでも私は先へ進もうとしたけど、男の人の一人が私の肩に手を置いてきたので、投げ飛ばした。


「私に…触らないで!」


「こ、この女…!」


「やっちまえ!」


 男の人達は一斉に私に襲いかかってきた。

 私は襲いかかってくる男の人達の攻撃を受け流しながら、返り討ちにしていく。


 …だけど…。

 

「調子に…乗るなァ!」


 先程の様に掴んできた男の人を投げ飛ばそうとしたけど、男の人は力任せに私を投げ飛ばした。

 それにより、私は地面に倒れてしまい、複数の男の人達に踏まれたり、蹴られたりする。


 完全にリンチ状態の私は反撃する暇もなく、蹴られ続ける。

 そして、髪を掴まれ、壁に向かって投げ飛ばされ、壁に激突する。


「鈴香ちゃん!」


 イジメ集団のリーダー女子が手を離した隙を突いて、愛美が離れ、私に駆け寄る。


 私はクッ、と声を上げながらイジメ集団達や男の人達を睨みつける。

 だけど、彼女達は私達を嘲笑うかの様な視線を送り、男の人達はゆっくりと私達に歩み寄ってきた。


 私達を見る目が下劣な目に変わる。

 その目を見て、私と愛美の頭の中で危険サイレンが鳴り響く。


 このままじゃ私達…!

 気がつくと愛美は私をギュッと抱き締めてきた。


 その愛美を見ると恐怖の表情を浮かべ、私を見つめてきた。

 …正直、私も怖い…。向けられた事のない下劣な視線に吐き気も襲ってくる。


 でも…それでも…!

 私まで弱気な表情を浮かべるワケにはいかない…!


 私も愛美をギュッと抱き寄せ、歩み寄ってくる男の人達を睨みつける。

 先程、投げ飛ばされた事で私では男の人達の力には勝てない…。

 だから、睨む事しかできない…。それが何の抵抗にもならない事がわかっていたとしても…。


 そんな事を考えている間に男達は迫ってくる。


 何としてでも愛美だけは守りたい…!

 でも、このままじゃあ…!


 私は…私自身が情けない…!

 大切な友達も守れなくて…守らないといけないのに逃す方法も頭に出てこない…!

 女だからという理由では言い訳になる…。


 だから、それは言わない…言いたくない…!

 言ってしまえば…その時点で私は負け組になるから…!


 負けたくない…!力で負けたとしても…気持ちでは…!

 私は…逃げたくないの!


 こみ上げてくる恐怖の涙を必死に堪えながらも私は男の人達を睨む事をやめない。

 気持ちで負けない為にも…。


 こんな所で叫んだって、誰も助けに来ない。

 物語の様な展開など現実で起こるはずない…。

 そう思っていても…もし、この状況を一変させる事が出来る人が…私の心の声が届く人がいるなら…!

 情けなくても…これだけは言いたい…!






 ーー誰か…私達を助けて…!






 私の心の叫びが響いたと同時に男の人達の一人がボコッ、という音と共に吹き飛んだ…。


 吹き飛んだ男の人を見て、男の人達は立ち止まり、振り返ると私達やイジメ集団と男の人達と同じ学園の制服を着た男の子が立っていた。


「…女二人に寄ってたかって、何人掛だ? お前等」


 男の子は真っ直ぐ迷いなく歩いていると、男の人達が彼に立ち塞がる。


「おい。首を突っ込まない事をお勧めするぜ?」

 

「…邪魔だ!」


 立ち塞がった男の人は男の子は殴り飛ばした。

 それを皮切りに男の人達は男達に襲いかかった。


 男同士でも彼は一人…流石に武が悪いと思ったけど、彼は男の人達を圧倒していた。

 これには私と愛美、イジメ集団も驚いていた。


 勿論、圧倒されている男の人達も、だ。

 男の子の反撃に男の人達は次々と地面に倒れていく。


 だけど、男の人達も負けじと鉄パイプを手に持ち、彼に殴り掛かった。


「危ない!」


 私の言葉に反応した男の子は鉄パイプを避け、蹴り飛ばした。

 そして、遂に男の人達は全員、地面に倒れた…。


 男の子は男の人一人を殴った勢いで宙を舞った鉄パイプを掴んだ男の子はイジメ集団のリーダー女子に歩み寄る。

 その彼に恐怖を抱いた他のいじめっ子達はリーダー女子を残し、離れる。


「ア、アンタ達…! ひっ…⁉︎」


 逃げたいじめっ子達に助けを求めたが、既に男の子が女子リーダーの前に立ち、手に持った鉄パイプを振り上げていた。


 その危機を察知した女子リーダーは後退りし、壁に当たりながらも恐怖の声を上げる。


「ちょ、それは洒落に…!」


 女子リーダーの叫びに構わず、男の子は鉄パイプを勢いよく振り下ろす。

 女子リーダーは悲鳴を上げ、鈍い音が鳴り響いた…。


 だけど…。

 鉄パイプの先端は女子リーダーの顔の真横を通り過ぎ、壁を殴り付けていた。


 それでもあと少し動かしてしまえば、当たる距離にある鉄パイプを見ながら、恐怖でガタガタと歯を鳴らし、開いた口と目がワナワナ、と震える。


 そして、男の子は彼女に顔を近づけ…。


「次に同じ様な事をしてみろ…次は当てる。わかったか?」


 男の子の忠告に女子リーダーは目に涙を溜めながら何度も首を縦にブンブン、と振った。


 それを確認した男の子は女子リーダーから離れると女子リーダーは逃げる様にこの場を去って行った。

 それを見送った男の子はその場に鉄パイプを投げ捨て、私達に視線を向け、先程とは違う優しい微笑みを見せた。


「怪我はないか?」


「う、うん…。ありがとう」


 男の子の優しい微笑みに一瞬魅入ってしまったが、すぐに感謝の言葉を口にすると男の子は私に近づき、来ていた制服のブレザーを私に羽織らせてくれた。


 驚きの連続で気づいていなかったけど、よく見れば私の制服はボロボロだった。

 彼はそれに気づいてかけてくれたの…?


「よしっ、大きな怪我は無さそうだな。此処から帰れるか?」


 彼の質問に私達は頷く。

 頷きを見た男の子は振り返り、歩き出し、そのまま彼は見えない所まで歩き去った…。


 私と愛美は少しの間顔を見合わせて、不意にクスリ、と笑い合った…。

 その後、私と愛美は少し警戒をしながら、家に帰った…。






 ー翌日、私と愛美は一緒に登校した。

 カバンにはあの男の子のブレザーが入っている。

 も、勿論、洗ってアイロンもかけたわよ。


 そして、私達は下駄箱でその男の子と再び会った。


「あ…」


「ん? おはよう。昨日ぶりだな」


 またも優しい微笑みを見せてくれた男の子に私は彼のブレザーをカバンから出して、差し出した。


「こ、これ…ありがとう!」


「おぉ、洗濯してアイロンまでかけてくれたのか! ありがとな!」


 嬉しそうにブレザーを受け取った男の子はそのまま着る。


「あの…本当にあの時はありがとう!」


「気にするな。俺もアイツ等は許せなかったからな」


 尚も笑いかけてくる彼に私は何故、ポカポカした感情に包まれる。

 優しく温かい感情を感じた私…。

 彼をもっと知りたい…。


 だけど、その想いは恋心ではなく、彼を越え、次は彼を助けたいと思ってしまった。


 そんな事を考えていると、男の子は立ち去ろうとしていた。


「待って!」


 私の呼び声に彼は立ち止まり、振り返る。


「私は波城 鈴香! あなたの…名前は?」


 彼の名前を聞こうとする。


 …そう言えば私は彼とはあまり関わりはないと言っていたけど…アレは嘘よ。

 嘘をついていたのは今回助けられた事が少し、恥ずかしかったからよ。


 本当は彼は…私の生命の恩人だったの。


 その彼…。

 私の生命の恩人で越えたく、助けたい彼の名前は…。


「俺の名前? 俺は…」


 少し、クスリ、と笑った彼は名前を呟いた。


「或都…。麻生 或都だ」


 これが私…波城 鈴香ことスズカ・シャーネルと…麻生 或都君の出会いだった…。


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