初敗北
私に向かってきた少女は真っ直ぐ拳を突き出し、殴りかかってきた。
接近するスピードは速く、憶わず私は太刀を取り出し、少女の拳を剣身で受けてしまった。
わっ、しまった…!
剣身と拳が激突寸前で、少女の拳が傷つく事を心配してしまう私だったが、その心配は無意味なモノと変わってしまう。
ガキン、と響き渡った金属音を間近で聞き、私は目を見開いた。
何と、剣身と少女の拳は激突したままで、少女の拳を傷ついてはいなかった。
それにあのガキン、という音…。
もしかして、小手でも付けているの…⁉︎
そんな事を考えていると少女は小さく跳躍し、回し蹴りで私を蹴り飛ばした。
「スズカ様!」
地面に転がる私は見つつ、少女はノエルに標的を変え、またもや殴りかかった。
ノエルも《バリア》を張り、少女の攻撃を防いだ。
しかし、少女のパンチの威力は相当なモノだったのか、《バリア》が徐々にヒビ割れていく。
そしてパリン、と音を立てて、《バリア》が割れ、その衝撃でノエルも後方へ吹き飛ばされた。
「ノエル!」
吹き飛んだノエルに追撃をかけようと少女が動き出したけど、私が太刀で攻撃を仕掛け、進行を止めようとする。
少女も腕で太刀の剣身をガードし、またもやガキン、という音が鳴り響いた。
また防がれた…!
「あなた…何者なの⁉︎」
「何者でもない。名前なんてないから」
名前が…ない…?
「強いて言うなら、魔導人形アームドシリーズ、17号機。名称はA17」
「嫌、名前があるじゃない⁉︎」
それにしても…魔導人形…?
「魔導人形は魔力を動力として動く機械の事です!」
ノエルがムクリ、と立ち上がりながら教えてくれた。
成る程…だから、鋼鉄の腕で私の攻撃を受け止めたのね…!
「マスターの指示で此処を通る人間を排除する」
17は私の攻撃を払い、私も距離を取った。
しかし、既に17が距離を詰めてきていて、私は防御体制を取り、彼女の鋼鉄の両拳を受け止め続ける。
一撃一撃が重く、少しでも気を緩めてしまうと弾かれる…!
それに…衝撃も相当で…腕が痛い…!
そんな私に構わず、17は攻撃を続ける。
「《ファイアボール》!」
攻撃の最中、ノエルが《ファイアボール》で援護してくれた…けど…。
「無駄」
腕の振り払いだけで、ノエルの放った《ファイアボール》は掻き消された。
しかし、視線がノエルの方へ向いた為、私は攻撃を仕掛ける…。
太刀の剣身が彼女を17を捉えた…かに見えた。
「だから、無駄」
何と、目の前にいたはずの17が私の背後に立っていて、私は蹴り飛ばされた。
「ツゥッ…! 早すぎる…!」
受け身をとりながら、再び、太刀を構える。
あの子…攻撃の切り替えと身体の動きが早すぎる…!
加えて、攻撃力も高くて、厄介ね…!
「終わらせる」
そう呟いた17の姿が消え、気がつくと私の懐にまで移動して、私は彼女のアッパーを受けてしまう。
上空へ打ち上げられた私を追撃し、17は回し蹴りで私を地面に叩き落とした。
私の身体はそのまま地面に落下し、激突…。
ドゴォン!、と激しい音が鳴り響いたと同時に私は気を失った…。
「スズカ様!」
スズカが気を失ってしまった姿を見たノエルはいてもたってもいられず、走り出す。
そして、倒れるスズカに駆け寄り、抱き寄せる。
「次はあなた」
そんなノエルに構わず、17は攻撃を仕掛けてくる。
すかさずノエルは《バリア》を張るが、すぐに砕かれ、倒れるスズカごと吹き飛ばされ、地面に転がった。
「スズカ、様…!」
蹲るノエルは近くで倒れているスズカに手を伸ばす。
「必ず、私が…守ってみせます…!」
そのノエルの姿を見た17は動きを止めてしまう。
身体を少し震わせ、同じく震える手を押さえる。
その隙を見たノエルはガシッと、スズカの腕を掴んで、《テレポート》でその場を去った…。
標的に逃げられた17は辺りを一度見渡した後、深い谷底へ飛び降りて行った…。
アクアース近くの森に《テレポート》したノエルとスズカ…。
辺りに敵の気配が無い事を確認したノエルはゆっくりと立ち上がり、気を失い、倒れているスズカをお姫様抱っこで抱き上げる。
「…必ず、助けますからね」
そう言い残すとノエルはスズカを抱きかかえたまま、アクアースの宿屋へ向かった…。
スズカやノエルを撃退した17は谷底に建設されたある基地に戻ってきていた。
中には彼女のマスターであるキーズ・リファパインと姉機である15
がいた…。
「ただいま戻りました、マスター」
「ご苦労だったな、17」
「勿体無いお言葉をありがとうございます…」
嬉しそうな姿をする17を見て、キーズも笑う。
「16も別の任務で頑張っている。引き続き、頼むぞ」
「了解」
敬礼を取り、17はその場を後にした…。
それを見送ったキーズはモニターに視線を移す。
そこには先ほど彼が口にした16という少女がモンスターを狩っている光景が映し出されていた。
「ククク…誰にも邪魔はさせん…!」
キーズの笑い声が部屋中に響く中、彼に気付かれないように15が心配する様な表情でモニターに映る16を眺めていた…。




