討伐依頼
エリス達の村を後にした私とノエルはアクアースという街に訪れていた。
水の都と呼ばれるだけあって、水が綺麗な街ね。
「この水の都、アクアースでは深い傷でも癒す事が出来る秘水を使用したポーションが有名ですよ」
秘水…。
確か、エリスの部屋にあった図鑑で見たわね…。
手に入れる事も困難な正に聖水と呼ばれている水…。それはどんな病でも治す効果があるって…。
でも、それほど貴重な水を使っているんだから、そのポーション高いんじゃ…?
「うぇっ⁉︎」
私はポーション屋に売られていた秘水のポーションの値札を見て、思わず情けない声を上げてしまい、他のお客さんからの視線も飛んでくる。
だって仕方ないもの…。
このポーション…百万ゴールドするんだもの。
集まる視線に耐えきれなくなった私はノエルと共にポーション屋から逃げ去るように後にした。
ポーション屋を後にした私達はクエスト施設へ足を運ぶ。
そろそろ資金の方も尽きそうになってきているし、そろそろクエストをこなしてゴールドを稼がないと…。
「何か手頃なクエストはないかしら?」
「そうですね…。これなんてどうでしょう?」
ノエルからクエスト書を手渡され、それを受け取り、読んでみると…。
「…〈ザイガンの谷付近に出没するスティールモンキーの討伐〉、かぁ…」
《スティールモンキー》…。
確か、目をつけた標的から色々な物を強奪する猿…だったわね?
「最近、この辺りでも被害が多発している様です」
「…よし、これを受けましょう」
私達は受付でクエスト申請を行い、クエスト施設を出て、ザイガンの谷へ向かった…。
ザイガンの谷…。
谷底は深く、普通の人なら落ちてしまえば、そこで生命を落としてしまうほどの深さらしい。
運良く生きていたとしても、谷底は技能無使用エリアという技能が全く使えないエリアが広がっている。
それはつまり、どれほど強い冒険者や騎士でもこの谷底に落ちてしまえば、技能の使えない一般人と同じになる。
幸いにもここのモンスターはそれほど強くないみたいだけどね…。
「スズカ様、谷底に落ちない様お気を付けてください」
「わ、わかっているわよ!」
もしかして、ノエル…。
私がドジだって、思っているのじゃないでしょうね?
「まさか、その様な事は思っていませんよ」
心読まないでよ。
まあ、《スティールモンキー》の生息地は谷底じゃないからまだ安心できるけどね。
そんな事を話していると私達の周りに十数の気配を感じる。
「…スズカ様」
「…ええ。行くわよ、ノエル!」
私達の持つ荷物を奪おうと集団で襲いかかってきた《スティールモンキー》達に対し、ノエルは《ウインドカッター》で斬り裂いて行く。
そして、近くにまで接近してきた《スティールモンキー》達は私が太刀で斬り伏せる。
私とノエルの攻撃で次々と《スティールモンキー》達を倒していく。
それでも《スティールモンキー》の数が減る事がなく、次第に私達は息を切らし始めた。
「キ、キリがない…!」
「こ、これが…《スティールモンキー》討伐が困難な理由、ですか…!」
そう、一体の《スティールモンキー》の強さはそこまで強くなく、少し腕の立つ一般人でも倒せる程のモンスターだ。
だけど、《スティールモンキー》の討伐ランクは決して低いモノではない。
その理由は簡単…。
《スティールモンキー》は必ず集団で行動する。たとえどれだけ強くても、無数の数で押されれば勝つ事は厳しくなる。
「ノエル…! どうするの…⁉︎」
《スティールモンキー》の攻撃を防ぎつつ、私はノエルに問いかけると彼は《ウインド》で《スティールモンキー》達を吹き飛ばしつつ、私に視線を合わせた。
「スズカ様! 周りにいる《スティールモンキー》を一箇所に集めてください!」
「…わかった!」
ノエルに何か策があると、言われて私は目の前の《スティールモンキー》を蹴り飛ばし、ある技能を発動する。
「《ヘイトリアクション》!」
使用した者にヘイトが集まる技能、《ヘイトリアクション》を使用した私に向かって、周りにいた《スティールモンキー》達は一斉に群がってきた。
…って⁉︎ 群がってきた数が数百近くを越えているのは気のせいかな⁉︎
というか、後方で待機していた《スティールモンキー》もいたの⁉︎
間近にいた《スティールモンキー》の攻撃を防ぎつつ、《スティールモンキー》が全て、集まりきった事を確認した私は一度、近くにいた《スティールモンキー》を仰け反らせ、地面を大きく蹴り、《ハイジャンプ》で跳躍した。
「ノエル!」
私の掛け声に呼応したノエルが大きく叫んだ。
「《バーストエクスプロージョン》‼︎」
集まった《スティールモンキー》を中心に大きな爆発が起こり、数百匹いた《スティールモンキー》を全て呑み込んだ。
「…わ、わぁ…。案外エゲツない攻撃ね…」
あまりの威力と衝撃に上空から見ていた私は思わず、顔をひくつかせた。
暫くすると、爆煙が晴れ、数百匹いた《スティールモンキー》は1匹残らず、消えていた。
恐らく、爆発に巻き込まれて、消し飛んだんだと思うけど…。
そのまま地面に降り立った私は周囲を確認する。
少し、爆発の影響で草が焦げているだけで特に大きな被害もなさそうね。
《スティールモンキー》の増援も…ないわね。
ふう、やっと終わったわ…。
少し息を吐いた私は同じく息を吐くノエルに手を振る。
「流石ノエルね! お疲れ様!」
私の声にノエルも笑顔で返そうとしたが…すぐにノエルは表情を変え、私に叫んだ。
「スズカ様、避けてください!」
「えっ…⁉︎」
ノエルの言葉に首を傾げた私の足下…地面から一体の《スティールモンキー》がナイフを握り、飛び出してきた。
え、嘘っ…⁉︎ まさか、倒し損ねた《スティールモンキー》がいたの…⁉︎
「スズカ様!」
「っ…⁉︎」
《スティールモンキー》は飛び出した勢いのまま、ナイフで私を突き刺そうとしていた。
既にナイフは目の前…ノエルが動き出そうとしたが、間に合わず、私の防御も間に合わない…!
攻撃を受ける…その覚悟を決めた私…。
…だったが…。
突然…本当に突然、何かが上空から飛来し、《スティールモンキー》を押し潰した…。
嫌、押し潰したというより、拳で地面に叩きつけた…。
ゴキュ! ボゴォーン! という音共に地面に激しい衝撃と砂埃が立ち込め、その衝撃に私は後方へ吹き飛ばされた。
な、何が起きたの…⁉︎
その場に尻餅をつき、未だ起きる衝撃に耐えながら、目をこらえその先を見る。
そして、その砂埃が晴れたその先には…。
「…」
「なっ…⁉︎ えっ…⁉︎」
そこには紺色の瞳に橙色のポニーテールの少女が立っていた。
年齢的に…10歳ぐらい…?
「あ、あの…あなたは…?」
少女に問いかけた私…。
すると、少女はボソリ、と呟く様に言った…。
「ターゲット確認…直ちに排除します」
それだけ呟くと少女は私に向かって突っ込んできた…。




