出逢いと別れ
ムルナウが変化したモンスターを倒し、私達は囚われている女の子達の牢屋の鍵を見つけ、牢屋を開いた。
だけど、女の子達は警戒し、その弱りきった瞳で私達を睨みつけてくる。
私が安心させる為、彼女達に向けて歩き出すと女の子達の中心にいた子が来ないで!、と代表になって叫ぶ。
その子自身も辛い目に合っていたのに他の子達を守ろうとするなんて…。
私は他の子達を守ろうとしていた女の子に近づき、優しく抱き締めた。
「ッ…⁉︎ 離してよ…!」
抱き締められた女の子は目を見開くも、抵抗し、私を引き離そうとした。
女の子の両腕が飛び出て、私の身体をポカポカ、と叩き始めた。
その拳を全くもって痛くなく、どれだけ力が衰えているのかもわかってしまったのでより、私は強く抱き締める。
「は、離して…!」
叩くのをやめ、私の身体を押し退けようとするが、力が入らず、全く動かなかった。
「離して、よぉ…」
段々、女の子が抵抗をやめ、嗚咽混じりに声を出すだけとなった。
そんな彼女の頭を優しく撫でながら、私も声をかけてあげた。
「大丈夫。みんなを捕まえていた悪い人達はお姉ちゃん達が退治したから、もう辛い目には遭わないよ?」
「…ホント?」
目元に涙を浮かべながら、女の子は私を見上げ、首を傾げた。
彼女の問いに私は頷きという肯定で返す。
すると、彼女は安心したのか、声を出して泣き出し、私に抱きついて来た。
他の子達を守る為に強気でいたけど、やっぱり、恐怖心とかはあって、それが解放された事で吐き出されたんだね。
泣いている女の子に釣られ、他の女の子達も泣き出し、私に群がって来た。
あはは…なんか、大家族のお姉ちゃんになった気分…。
ノエルとスノウさんは微笑むだけで助けてくれないし…。
まあ、嫌じゃないけどね。
十数分後…。
泣いていた女の子達は泣き止み、私達の話を聞いてくれるようになった。
「お姉ちゃん達は私達を助けに来てくれたの?」
「そうだよ。さあ、みんな! 早くお父さんやお母さんの所に帰ろ!」
私の言葉に女の子達は大きく返事をした。
さっきまでの沈んだ顔が嘘みたいに太陽の輝きの様な笑みを浮かべる女の子達を見て、私達は顔を見合わせ、クスリ、と笑った。
その後、私達は女の子達を連れて、施設を出た…。
ーだが、私達は気がつかなかった。
施設を出た私達を見下ろす影があった事に…。
帰りはモンスターに襲われる事がなく、順調に村へ戻ってこられた。
女の子達が戻ってきたのを見た村の人達は涙を流しながら、駆け寄って来た。
女の子達も親の顔を見て、泣きながら、飛び込んでいった。
家族の再会の光景を眺めているとエリスが駆け寄って来た。
「スズカ、大丈夫⁉︎ 怪我はない⁉︎」
「大丈夫だよ、エリス!」
「本当に…良かったぁっ…!」
心配させちゃったかぁ…。
「心配かけちゃってごめんね、エリス! でも、ほら! この通り、何ともないから!」
両腕を広げて、何もない事をアピールすると、エリスは更にホッと、して胸を撫で下ろす。
「スズカに何かあったと思ったら、私…」
「ふふっ。それからあの人達は私達が倒したから、もう村のみんなを困らせる事はしないはずよ」
「ありがとう、スズカ!」
感謝の言葉を口にしてくれたエリスに続き、村の人達も感謝の言葉と私達に対して、投げかけた非難の言葉に対する謝罪の言葉を言ってきた。
「だ、大丈夫ですよ! そこまで気にはしてませんし!」
気にしていない、と私が言うと村の人達は安堵の声をあげる。
とにかく、これで一件落着ね。
村の人達の笑顔を見て、ひと段落ついたと息を吐いた。
異世界に来て、初めての体験が戦闘って…私、この先大丈夫なのかな…?
「お疲れ様でした、スズカ様」
「うん。ノエルもお疲れ様! ありがとね、手伝ってくれて!」
「何をおっしゃるのですか。私はスズカ様を導く為に共にこの世界へ来たのですよ? スズカ様と道を同じくするのは当然の事です」
ノエルって本当に真面目よねぇ…。
「村の人達の平和が戻って、良かったね。スズカさん」
ノエルと話しているとスノウさんが声をかけてきた。
「スノウさんも今日はお手伝いいただきありがとうございました! 心強かったです!」
「いやいや。君の力もなかなかのモノだったよ。冒険者になったら大活躍だろうね」
「あはは。それは言い過ぎですよ!」
笑い合う私とスノウさん…。
暫くすると、笑うのをやめ、スノウさんが口を開いた。
「それじゃあ、そろそろ僕は行くよ」
「え? も、もうですか⁉︎」
もう少しゆっくりすればいいのに…。
「ムルナウ達を倒した事を報告しないといけないしね。捕らえたムルナウの手下達は騎士団の人達が連行してくれたし、この依頼もこれで終わりだ」
「そうですか…」
もう少し話したかったな、と俯く私の肩にスノウさんは手を置いた。
「何、此処で出会えたんだ。まだいずれ、何処かで出逢えるさ。この世界で生きている限りね」
生きている限り…、か。
確かにそうね。
「…はい! 次に会う時は負けませんからね、スノウさん!」
「それは僕も負けてはいられないね。もっと強くならないと」
クスリ、と笑い、拳をぶつけ合った私とスノウさん…。
しばらく見つめ合った後、手を離し、スノウさんは別れの言葉を告げて、歩き出した。
「また何処かで!」
スノウさんが見えなくなるまで手を振った私はスノウさんが見えなくなると同時に新たなる覚悟を決める。
「スズカ様…」
「ノエル、私…決めたよ」
決めたと言う言葉に首を傾げるノエルに構わず、私は話を続ける。
それは決めた覚悟を誰かに聞いてもらう様に…。
「私…何があっても絶対に生きる! この世界で…ノエルと一緒に!」
私の新たなる覚悟を聞いたノエルもクスリ、と笑う。
「何処までもお付き合いしますよ、スズカ様」
笑い合った私達はエリス達に案内されて、エリスの家へ向かった…。
スズカ達と別れ、エリス達の村を後にしたスノウは一人、森の中を歩いていた…。
自身の掌を見た後、スノウは強く拳を握る。
「スズカ・シャーネルさんか…。ふふっ、やはり出逢いはいいモノだね」
スズカの事を思い出し、楽しい人生を噛みしめるスノウ。
だが、同時に夢で出てくる赤黒いコートを着て、金色の剣を持った青年の事も考えていた。
「…速く、君にも出逢いたいモノだよ」
拳を握るのをやめたスノウは再び歩き出した…。
ーこれから数ヶ月後、スノウはその人物と出逢え、そして彼自身の人生に大きな狂いが生じる事を、この時の彼はまだ知らなかった…。




