戦う覚悟
スノウさんに助けられた私は未だモンスター達と戦っているであろうノエルを見ると…。
「ご無事で何よりです、スズカ様」
何事もなかった様にこちらへ歩いてきていた。
…もしかして私よりもノエルの方が強かったりする?
あっ、彼、男神だった事忘れてたわ…。
「ええ、ノエルも無事で良かったわ」
一通り、無事を確認し終えた私達は話をする事になった。
「さて…スズカさん。どうして君達が此処にいたんだ?」
私は村で起こった事をスノウさんに全て話した。
「成る程…奴等が村の人達に酷い事を…確かに見逃せないね。そして、発信機を頼りにここまで来たというワケだね?」
一通りの話を聞き終えたスノウさん。
変わりに私もスノウさんが此処にいる理由を聞く事にした。
「それで…スノウさんはどうして此処に?」
「僕は掲示板に貼り出されていた依頼をこなそうとしてね。その貼り出されていた依頼というのがこの依頼だったんだ」
彼等の討伐…それがスノウさんの受けた依頼だったんだ。
それにしても二人で乗り込もうとしていた私達が言えた事じゃないけど、スノウさん一人で乗り込もうとするなんてね。
「失礼ですが、スノウ様の冒険者ランクは?」
「僕の冒険者ランクかい? Aだよ」
ソ、ソロでAランク⁉︎
「ソロでAランクですか⁉︎ 凄いですね!」
「あははっ! 少し照れくさいね。でも、僕自身は普通だと思っているけどね」
も、物凄く眩しい笑顔…。
スノウさんって、女性人気も高そうね。
「さて、そろそろ僕は行くけど、君達は戻った方がいい」
えっ…⁉︎
「ど、どうしてですか⁉︎」
「僕は依頼で来ているが、君達はまだ冒険者でもないだろ? 此処から先は危険すぎるよ」
心配してくれるのは嬉しいけど…。
でも…!
「ご心配ありがとうございます。…でも、私達は戻るつもりはありませんよ」
私の言葉を聞き、スノウさんは表情を険しくさせる。
「確かに君達は良心で村の人達を助けようとしている。それは褒められるべき事だ。…しかし、この件は良心だけで乗り切れる程甘くないんだ」
「分かっています。…でしたら逆に困っている人が目の前にいて、スノウさんは大人しく引き下がれるのですか? 怯えて下がるのですか?」
「ス、スズカ様…!」
スノウさんに対してきつい一言を口走った私にスノウさんは更に表情を険しくさせる。
「君の言いたい事はわかる。だが、僕も冒険者として、君を見逃すワケにはいかないんだ」
「…私達は冒険者ではありません。ですから、スノウさんに従うつもりもありません」
尚も引き下がらない私とスノウさんは睨み合う。
そして、数秒後…突如、スノウさんがクスリ、と笑った。
「君は…言い出したら聞かない子の様だね」
「わかりませんでした? 私は結構頑固な所があるって?」
私もクスリ、と微笑むとスノウさんは手を差し伸べてきた。
この行動が握手の為だとわかり、私はスノウさんと握手をした。
「君達の覚悟を無碍にする様な真似をしてすまない。短い間だが、よろしく頼むよ」
「こちらこそ、お願いします!」
何とか共に進める様になり、私達三人は先へ進み始めた。
木々をかき分けて進む中、スノウさんが浮かない顔をしていた事に気がついた私は彼に尋ねてみる事にした。
「スノウさん…? 浮かない顔をしてどうしたんですか?」
「あぁ、実はね…。最近、ある夢を見るんだ」
ある夢…?
何の事か分からず私が首を傾げるとスノウさんは話し始めた。
「赤黒いコートを着て、金色の剣を持った青年なんだが、顔がわからない。でも、その夢に出る彼は僕と親しそうに話しかけてくるんだ」
赤黒いコートの青年、か…。
「彼が何者かは分からないし、会えるかもわからない。そもそもこの世に存在するのかも分からないが…何故か、僕は彼と会わなければならない…そんな気がするんだ」
「その夢が正夢になるといいですね!」
「そうだね」
「…お話中の所すみません。着きましたよ」
先を進んでいたノエルの言葉に私とスノウさんはノエルが見ている先へ視線を向けると、確かに施設の様な入り口と二人ほどの覆面男がいた。
「どうやら、此処が彼等のアジトで間違いない様だね」
「どうしますか? 施設内に入る為には見張りが邪魔ですが…」
強行突破は確実にダメね。見張りに他の仲間を呼ばれたら、入り口前で戦闘になるし、彼等がどの様な規模もわかっていない以上、迂闊な行動は出来ないわ。
「彼等にバレずに行ける方法ならあります」
「それは?」
ノエルが見張りの目を盗んで施設に入る事が出来る方法を話し始めた。
「対象の姿を消す事が出来る《インビジブル》の技能を使います」
そういえばそんな技能を手に入れたって言っていたわね。手に入れたと聞いた時はすごく欲しい技能だな〜、と思ったけど。
そして、ノエルは宣言通りに《インビジブル》を使うと私達三人の姿が透明化した。
「凄いね。お互いの姿は見る事が出来るのに、周りからは一切見えない様だ」
見えない様ではなく、見えないんですけどね…。
まあ、取り敢えずコレで問題なく彼等のアジトへ潜入できそうね。
「それじゃあ…行きましょう!」
私の合図に頷いたノエルとスノウさんは私に続き、歩き出した。
施設の入り口前にいた見張りの人達は一切私達に気が付かず、私達は難なく施設内へ入る事に成功した…。
さて、此処からよ…!
見張りを切り抜け、施設内に入った私達は奥へと進んだ…。
暫く何事もなく奥へ進んでいた私達の前に大きなドアが見えてきた。
そのドアの前で立ち止まり、スノウさんがトラップか何かがないかを確認してくれたわ。
「…どうやら問題はないみたいだね」
安全を確認したスノウは私に頷きかけると私も頷き、ゆっくり扉を開くと…その先では信じられない光景が広がっていた…。
「何よ、コレ…」
扉の先には無数の牢屋があり、その牢屋の中に沢山の女の子達が捕らえられていた。
そのあまりの光景に私やノエルだけでなく、スノウさんまで絶句していた。
「彼等は捕らえていた女の子達を此処で監禁していたのか…!」
じゃあ、私達が助けてなかったら、エリスも此処へ…!
あまりにも信じられない光景を目の当たりにした私は強く拳を握る。
「許せない…! 女の子を…人を何だと思っているのよ…!」
怒りに燃える私の腕をスノウさんが優しく掴んできた。
「確かに許せない。…彼等は人のみに余る行為を行なっている…。スズカさんが怒るのも無理はないよ。…でも、だからこそ…冷静になるんだ。此処にいる人達を助け出す為にも…」
「スノウさん…」
そうよ…此処で冷静さを失ってしまえば、アイツ等の思う壺…何もかもが台無しになってしまうわ!
「…すみません、スノウさん。もう大丈夫です!」
落ち着きを取り戻した私を見て、スノウさんはそれなら良かったよ、と笑いかけてくれた。
「…どうやら、力尽くでは開けられない様ですね」
私とスノウさんが話している間に何とか開けられるか、とノエルが確認してくれたけど、どうやら開けられないみたいね。
「施設の何処かに牢屋を開くスイッチがあるはずだ。まずはそこを探そう」
「はい!」
まずは目的を決めた私達は先へ進んだ…。
進む際、私は振り返り、捕らえられている女の子達を見る。
待っていてね、かならず助けるから…!
《インビジブル》の効力で聞こえるはずもない声をかけた私は先に行ったスノウさん達を追いかけた…。




