エリス・マナフィー
森の中をモンスターを倒しながら、進んでいた私とノエル。
だんだん、レベルも上がってきた事を確認しつつ、そろそろ町か、村が見えて来てもおかしくないな、とノエルと話していた。
「そろそろ町か、村が見えてきてもいい頃ですね」
「ええそうね。取り敢えず、目的地に着いたら、宿で一泊して食糧とかを調達しないとね」
「同時に情報も仕入れましょう」
…あのね、ノエル。気楽に話しながら、《フレイム》でモンスターを焼き付くのはやめなさいよ…。
と言いながら、私も太刀でモンスターを斬り捨てているんだけどね。
さてと…そろそろ日も暮れそうだし、早く進まないとね。
そう思い、足を進めようとしたその時だった…。
ガサッと聞こえたので、その方向を見ると私とさほど変わらない歳の少女が必死に走っていた。
その彼女を追いかける様に五体のカマキリのモンスターが走っていた。
「アレは…《サイズマンティス》!」
「あのままじゃあ、あの女の子が…! 行くわよ、ノエル!」
「かしこまりました!」
私とノエルは逃げている女の子と《サイズマンティス》達を追いかけた…。
数分後…私達は彼女達に追いつき、《サイズマンティス》の攻撃を弾いた…。
「大丈夫?」
「う、うん…」
《サイズマンティス》達に襲われていた少女に問いかけると彼女は頷いた。
それを確認した私は《サイズマンティス》達に太刀を向け…勢いよく立ち向かった。
《サイズマンティス》達の鎌は確かに鋭く、斬り裂かれただけで真っ二つになりそう。
でもだからこそ、《サイズマンティス》達の攻撃は大振りで避けやすい。
一応、何が起きてもいい様にノエルには少女を守る様に立ってもらっているわ。
ノエル達に視線を向けていると雄叫びを上げながら、《サイズマンティス》がその鎌で私を斬り裂こうとするが、太刀で受け止める。
「へぇ…女の子に奇襲を仕掛けようとするなんて…ダメな子ね!」
太刀を持つ手に力を込め、鎌を弾くと同時に姿勢を低くし、ガラ空きとなった《サイズマンティス》の身体を真っ二つに斬り裂いた。
斬り裂かれた《サイズマンティス》の一体は消滅し、二体、三体と連続で襲いかかってくる。
遅いわよ!
襲いかかってくる《サイズマンティス》四体の攻撃を次々に太刀で受け流した私は《スラッシュ》で一気に四体斬り裂いた。
一体ずつ《サイズマンティス》が消滅した事を確認した私はフゥ、と息を吐きながら、太刀を鞘へ納め、経験値も入った事も確認する。
そして、振り返り、尻餅をついていた少女にニコリ、と笑いかけ手を差し伸べた。
「怪我はない?」
「あ、ありがとう…」
ポカン、としていた少女の手を取り起き上がらせた。
「うん! 見る限り怪我はなさそうね! 良かった!」
「その…あなたは?」
「私? 私はスズカ・シャーネルよ。彼はノエル。今私達は町か村を探していたの」
ホント、偶然見つけられて良かったわ!
「村ならこの近くにあるよ。私もそこで暮らしてるから」
「え、そうなの⁉︎」
おぉ! それは好都合ね!
「じゃあ、その村へ連れて行ってくれない? 私達、食料とかが欲しくて」
少女に村の案内を頼んだけど、彼女は渋った顔をする。
…何か困り事でもあるのかな?
少し俯いた彼女は顔を上げる。
「わかった。いいよ」
「ありがとう! えっと…」
「あ、私の名前はエリス・マナフィー」
「エリスね! よろしく!」
私達はエリスと握手した後、彼女の案内で歩き出した。
歩きながら私はエリスから話を聞く事にした。
「エリスはどうして、森の中にいたの?」
「…。少し用事でね」
…理由は話さないのね。さっきの渋った顔と何か関係があるのかしら…?
「スズカは冒険者?」
「いいえ、私は冒険者ではないわ」
「…冒険者じゃないのに強いんだ」
うーん…そこまで強くはないのだけれど…。
「…着いた」
え、もう?
エリスの言葉通り、村が見えた。
「エリス!」
そこへ私達の下に一人の女性が走ってきて、エリスを抱きしめた。
「…お母さん」
あ、エリスのお母さんなんだ。
「怪我はないの⁉︎」
「うん。この人達に助けてもらった」
エリスから離れたエリスのお母さんは私とノエルを見て、頭を下げた。
「そ、そうだったんですか⁉︎ ありがとうございます! 娘を助けていただいて!」
「い、いえ! 同然の事をしただけなので! それよりもこの村に宿屋とかありませんか?」
「その…申し訳ありません。宿屋はないんです」
え、嘘…⁉︎
「そうなんですか⁉︎ どうしよう…」
まさか、宿屋がないなんて思わなかった…。
「それでしたら、私達の家でお休みください! 部屋もそれなりに余っていますので!」
「え…でも、ご迷惑では…?」
「大丈夫ですよ!」
どうしよう…こう言ってくれてるし、このままじゃあ、野宿になりそうだし…。
私はノエルを見ると彼も視線を合わせてきて、頷いてきた。
「じゃあ…お願いします!」
私とノエルはエリス達に連れられて、彼女達の家へ招かれた。
お風呂に入らせてもらい、夕食は本当に楽しく、美味しかった。
そして、寝る部屋はノエルは一人部屋、私はエリスの部屋で彼女と一緒に寝る事になった。
「はぁ〜! 楽しかった! 誰かとご飯食べるなんて久しぶり!」
「…スズカの両親は?」
「…私の両親は私が幼い頃に亡くなったの」
「…あ、ごめんなさい…」
お父さんとお母さんが亡くなった時の事を思い出す私にエリスは申し訳なさそうに謝ってくる。
「気にしないで! それでも、私は一人じゃないから…」
「強いね、スズカは」
「そ、そうかな? そう言われると照れちゃうなぁ」
まあ、実際そこまで強くないけどね。
そのまま私とエリスは眠りに着いた…。
異世界の生活…大変だけど、楽しいモノもあるわね!
翌日…。
何やら外が騒がしいと思い、私は目を覚ますと隣には既に着替えを済ましていたエリスがいた。
その表情は焦りに満ちている。
「エリス…どうかしたの? 外が騒がしいけど…」
「スズカ、この部屋から出ないで! 大丈夫だから!」
そう言い残すと急ぎ足で部屋を出た。
それと入れ替わる様にノエルが入ってくる。
「おはようございます、スズカ様。何やら外が騒がしいですね」
「うん、そうだね」
私とノエルはカーテンを少し開き、窓の外を見ると村の入り口に村人達が集まり、三人の男達を見ていた。
窓を少し開け、話を聞いて見る事にする。
「おい! 早く金を寄越せ! 今日の住民税だ!」
三人のうちの一人がそう叫ぶ。
あの人がリーダー格なのね。
その男達の前に一人の老人が口を開いた。
「じ、実はもう村にはお金が…」
その老人の言葉にリーダー格の男はアァッ⁉︎、と声を荒げる。
「金がないだと? だったら…女を掻っ攫って売り捌くしかねえな!」
何ですって…⁉︎
「そ、それだけはおやめください!」
「煩え、老いぼれが!」
リーダー格の男は老人を突き飛ばし、一人の少女に狙いを定めた。
…そう、エリスにだ。
「よし、決めた。テメェだ!」
「この子には手を出さないで!」
エリスを守る様に彼女のお母さんが立ちはだかるが、男達をエリスのお母さんをも突き飛ばす。
「ッ…!」
それを見た私達は怒りがこみ上げてくる。
「ヘヘッ、良い女じゃねえか!」
「い、嫌…!」
目元に涙を浮かべ、怯えるエリスを見て、私は我慢の限界となり、窓から勢いよく飛び出て、リーダー格の男を蹴り飛ばした。
「エリスに触らないで!」
「スズカ…」
私はエリスを立たせると、隣にノエルも歩いてくる。
「何すんだ、このクソガキ⁉︎」
顔を思いっきり蹴ったからか、リーダー格の男は口を切った様で手で拭っていた。
「何って…悪い虫を蹴り飛ばしただけだけど?」
「なめやがって…痛い目を見せてやるよ!」
男達三人が一斉に襲いかかってくるが、ノエルが取り巻きの二人の相手をしてくれた。
優雅に攻撃を避け、隙が生まれた二人をノエルは殴り飛ばした。
い、意外に容赦ないのね…。
対する私もリーダー格の男の攻撃をかわし、そのまま背負い投げで投げ飛ばした。
地面に叩きつけられたリーダー格の男の腕を掴み、そのまま関節技をかける。
「痛っ…⁉︎」
「これ以上やるんだったら…腕をへし折るけど…どうする?」
「わ、わかった!」
その返事を聞いて、私はリーダー格の男の腕を離す。
すると、彼は痛む腕を抑えながら、私を睨みつける。
「覚えてろ! 俺達に手を出した事を後悔しやがれ!」
そう言い残して、リーダー格の男は取り巻き達と走り去った…。
私達の罠にすでにハマっている事も知らずにね。
手を叩いた私は振り返り、エリスに歩み寄る。
「大丈夫? エリス?」
「う、うん…。ありがと」
気にしないで、と彼女に笑いかけていると…。
「なんて事してくれたんだ…」
村人達の中からそんな声が聞こえてきた。
「え…?」
「なんて事をしてくれたんだと言ったんだ!」
「そうだ! 誰だか知らないが、アイツ等に手を出して、俺達が無事でいられるわけない!」
「勝手な事するな!」
村人達が私達に非難の声を上げる。
「ちょ、ちょっとみんな!」
私達を必死に庇おうとエリスが声を上げるが、彼等は聞く耳を持たない。
「…大丈夫です。皆さんを危険には巻き込みませんよ」
その言葉に非難の声が止まる。
私の前に立っていたエリスも振り返る。
「ノエル、うまくいった?」
「ええ。取り巻きの男一人に発信器を取り付けました。これで彼等のアジトの場所もわかるでしょう」
流石ノエル。男達を殴りながら、発信器も取り付けるなんてね。
「これから私達は彼等のアジトに乗り込みます! これ以上皆さんを傷つけないためにも!」
私の言葉に村人達はザワザワ、話出す。だが、エリスが焦った顔で私に声を上げた。
「だ、ダメ! あの人達はいっぱいいるの! いくら、スズカ達が強くても危険だよ!」
心配してくれるんだね? ありがとう。
「心配しないで。一日止めてくれたお礼もしないといけないしね。…それに…」
エリスの頭を撫でながら、片方の手をギュッと握り締めた。
「…アイツ等、私も許せないから…!」
覚悟を決めた私はエリスを撫でるのをやめ、歩き出し、ノエルもその後を続いて歩いてきた。
やってやる…大切な友達を守る為にも…!
「ノエル、手を貸してくれる?」
「愚問ですね。あなたと共にならいくらでも力をお貸ししますよ」
ノエルの言葉に私は笑顔でありがとうとだけ、答え、彼等のアジトへ向かった…。




