不可能を打開する光
ーーダンジョン第99層…。
ついに俺達はここまで来れた。第51層からのモンスターは強力な奴等ばかりで、相当苦労した。
だが、お陰で様々な特殊技能や技能を手に入れる事が出来た。
まず特殊技能…。
《洗脳無効化》《自動回復》《精神統一》。
次に技能…。
《ウインドカッター》《スプラッシュ》《ブレインジャック》だ。
ここまで来ると、攻撃の幅が格段に広がったな。
そして今、第99階層のボスモンスター《ファルコンウイング》と戦っていた。
《ウインドカッター》を発動し、《ファルコンウイング》を撃ち落とそうとするメリルだが、《ウインドカッター》を受けても奴は平然と飛び続ける。
そして、俺に向けて《ファルコンウイング》は羽を刃状に形成し、飛ばす《ウイングスラッシャー》を発動してくる。
俺はそれを《毒化》で回避して、《クイックジャンプ》を発動し、奴の目の前にまで移動する。
「落ちやがれ、鳥が!」
《パワースラッシュ》を発動し、《ファルコンウイング》の翼を斬り落とした。
翼を失い、空で安定できなくなった《ファルコンウイング》は地面に叩き落とされた。
そして、空中で《ファルコンウイング》の頭上に雷雲を形成し、腕を振り下ろした。
「《サンダーボルト》!」
地面で蹲る《ファルコンウイング》に落雷が落ち、それを受けた《ファルコンウイング》は感電し、絶命した。
そして、奴の技能を複写した。
〈特殊技能《ウイング》 《緊急回避》を獲得〉
〈技能《ウイングアタック》 《突風》 《ウイングスラッシャー》を獲得〉
ん? 《ウイング》って、まさか…。
ウイングを発動すると、俺の背中に白き翼が現れ、空を飛べる様になる。
「うお〜! 凄えー!」
初めて玩具をもらった子供の様にはしゃぐ俺を見て、メリルは苦笑してしまう…。
…遊んでいても仕方ないと、俺達は第100階層の扉に手をかけようとする。
「…これでラストだ。行くぞ、メリル!」
もうかれこれ、一週間程、このダンジョン内にいるだろう。そろそろ終わりにしようか。
俺の言葉に力強く頷いたメリルを見て、俺達は扉を開けて中に入った。
部屋の中に入った俺たちの視界に入ったのは王座に足を組んで座っている赤い鎧の何かだった。
だが、その赤い鎧の何かを見た途端、焦りの汗が流れた…。
「おいおい…。このダンジョンのラスボスが、《ラファエル》って、マジかよ…!」
天使型のモンスター《ラファエル》は俺達に気がつくと、立ち上がり、剣を構え…俺達に向けて斬撃を放って来た。
咄嗟の攻撃にメリルを抱えた俺は《緊急回避》で斬撃を避ける。斬撃の威力は先程まで俺達がいた地面を抉り取っていた。
メリルを下ろした俺はメタルソードを構える。
「メリル、援護頼むぞ!」
「はい!」
俺は地面を蹴り、駆け出しながら、リボルバーガンを取り出し、《ポイズンブラスト》、《ロックブラスト》、《サンダーブラスト》を連続で発動し、毒、岩、雷の弾丸が《ラファエル》に向けて、発射される。
しかし、ラファエルは避けようともせず、バリアで弾丸を全て防ぐ。
「《スプラッシュ》!」
メリルが背後から《スプラッシュ》を繰り出すが、またもやバリアで…嫌…!
何と、メリルの放った《スプラッシュ》を跳ね返して来た。その反射攻撃にメリルは受け、吹き飛ばされる。
今のは《リフレクト》ってワケかよ…!
次に《ラファエル》は複数の光弾を俺に向けて放ってくる。
俺は《毒化》や《緊急回避》を駆使して、その攻撃を避け、《俊足》で《ラファエル》の目の前まで移動し、メタルソードを何度も振るう。
対する《ラファエル》も剣で俺の猛撃を防ぎ続ける。
金属同士がぶつかり合う音が鳴り響くが、突然、メタルソードの攻撃を《バリア》で防がれ、光弾をもろに受けてしまった。
光弾が腹に着弾し、軽く爆発を起こすと俺は吹き飛ばされて、地面に倒れ込んだ。
「ぐっ…《ヒール》…!」
メリルが痛む身体で《ヒール》を俺にかけてくれた。
そして、自身にも《ヒール》をかけようとしたが…。
「う、あぁぁぁっ…!」
翼を羽ばたかせ、上空に飛んだ《ラファエル》は《グラビティ》を発動し、メリルに重力をかけ、彼女は地面に蹲り、メリルの周りの地面もひび割れてしまう。
それ程の重力の重さと言う事か…!
「メリル! …ンノヤロォォォォ!」
声にならない悲鳴を上げるメリルを見て、俺は怒り、《クイックジャンプ》で上空を飛ぶ《ラファエル》の目の前まで移動し、メタルソードで斬りかかる。
しかし、それは《バリア》で防がれ続けるが、腕に力を込めると《バリア》にヒビが入り、音を立てて割れた。
「喰らえぇぇぇぇっ‼︎」
《バリア》の壁を抜けた俺は今度こそ、奴を斬り裂こうとした…。
だが、刃はラファエルには当たらず、空を切った。目の前にいたはずの《ラファエル》の姿がなく、背後に気配を感じた。
「なっ…⁉︎」
まさか、《テレポート》で俺の背後を取ったのか…⁉︎
そのまま、ゼロ距離で奴の光線を受け、俺は光に包まれた。爆発を起こし、ダメージを受けた俺の身体力を失い、落下する。
「アルトさん!」
俺の攻撃により、《グラビティ》の重力操作から逃れられたメリルは落下していく俺を心配し、地面でキャッチし、すぐさま《ヒール》をかけてくれた。
しかし、俺は意識を取り戻す事はない。それ程まで奴の光線の威力は凄まじいモノだった。
気を失ったままの俺を見て、悔しそうな表情を浮かべたメリルは俺をソッと寝かせ、立ち上がった。
「(私のレベルでは勝つ事は不可能…。でも…私はアルトさんを導かなければならないんです…! だから…!)」
俺を守る様に立ち塞がったメリルは覚悟を決めた様にキッと、《ラファエル》を睨んだ。
「あなたは…私が倒します!」
勢いよく駆け出したメリルは《ファイアボール》や《ウインドカッター》を発動し、攻撃したが、全て《リフレクト》で弾き返される。
そのカウンター攻撃をかわしたメリルは尚も攻撃技能で攻撃し続ける。その攻撃に《ラファエル》は《テレポート》でメリルの目の前まで移動し、彼女を光弾で吹き飛ばした…。
メリルも大ダメージを受け、オレが倒れている所まで吹き飛んでくる。身体はボロボロで立ち上がる事も出来ず、メリルは薄れていく意識の中で俺へと手を伸ばした。
しかし、そんな俺達にはお構いなしに、《ラファエル》は光線のエネルギーをチャージさせる。
そして、それを発射した。
「(申し訳ありません、イネスさん…アルトさん…!)」
防ぐ事も出来ない、とメリルは目を瞑った。
…だが、いつまで経っても光線が当たらない事に疑問を持ち、メリルはゆっくり目を開けると…。
俺の後ろ姿に目に涙を溜めた。
「何、俺の大切な相棒を傷つけてんだよ、テメェ…!」
俺は《バリア》を発動し、光線を防ぎ切った。
「ア、アルトさん…!」
「ナイスガッツだぜ、メリル! 休ませてもらった分、今度は俺がガッツを見せる番だ!」
「で、でも…あのモンスターに勝つ事は…」
不可能、だと口にしようとしたメリルの言葉を遮る様に彼女の頭をワシャワシャ、と撫でた。
「確かに不可能に近いな。…でもよ。不可能もあるって事は可能もあるって事だよな?」
不可能に近いと分かっていても俺は笑みを止める事はない。
「だったら…その不可能…俺が打開して、可能に変えてやるよ!」
《ウイング》を発動し、上空から俺達を見下ろしていた《ラファエル》に接近した俺はメタルソードで何度も攻撃する。
しかし、そのすべての攻撃を《バリア》で防がれる。一度距離を取り、リボルバーガンを連射する。
《リフレクト》で全ての弾丸を弾き返され、それに合わせて、光弾を放ってくる。
《緊急回避》を発動して、俺は回避しつつ、詰め寄るが、あと一歩の所で《テレポート》で避けられ、離れた所で《ラファエル》は光線のエネルギーをチャージし、俺に向けて発射した。
俺はすぐさま《バリア》を張り、防ごうとするが、《ラファエル》はエネルギーの出力を上げ、光線の威力を増大させる。
そのあまりの威力に俺は押され気味になり、《バリア》も次々と音を立て、ヒビが入っていく。
真下では心配の表情を浮かべながら、俺を見守るメリルの姿が見える。
そうだ…守るって決めたんだ…!
「だから…こんな不可能に…負けていられないんだよォォォォッ‼︎」
俺は叫ぶと、白き翼が輝き出し、《ラファエル》の光線のエネルギーを吸収し、白き翼は金色に輝く。
そして、俺の頭の中に文字が刻まれる。
〈特殊技能 《フォトン・ウイング》を獲得〉
《フォトン・ウイング》…光の翼か…!
《フォトン・ウイング》の輝きで《ラファエル》の光線を掻き消し、勢い良く、奴の元まで接近する。
《ウイング》の時より、格段に空中移動速度が上がっている…!
これなら…!
メタルソードを構え、速さに乗り、《ラファエル》の身体を斬り裂いていく。
俺のスピードに対応できないのか、《バリア》を張る事も、《テレポート》する事も出来ない様だ。
そして、再び接近した俺は《スピンキック》で《ラファエル》を真下に蹴り落とした。
音を立てて、地面に叩き落とされた《ラファエル》を見ながらも、警戒を緩めない。
すると、《ラファエル》は光線を発射した。
俺は避けようとも思わず、真正面から立ち向かった。メタルソードを突き出し、俺と《ラファエル》の光線は激突し、辺りに電撃と衝撃が起こる。
暫く激突し合うが徐々に俺が奴の光線を押し返していく。
最後に《フォトン・ウイング》にエネルギーを込め、さらに輝かせると、今度こそ光線を掻き消したが、その衝撃に耐えられなかったのか、メタルソードは粉々に壊れてしまう。
「ウオオオオオッ‼︎」
それを気にしている暇はなく、ついに俺は《ラファエル》の懐に入り…《パワーパンチ》で《ラファエル》を殴り付けた…。
速度に乗った事もあり、通常の《パワーパンチ》よりも強力だったのか、《ラファエル》の周りにはクレーターを作り…俺とメリルに経験値が入った。
これにより俺達は勝利を確信し、俺はふらつく身体に鞭を打ち、技能複写を発動する事を忘れず、頭の中に文字が刻まれた。
〈特殊技能《粒子化》 《閃光》《光化》を獲得〉
〈技能《テレポート》 《フォトンビーム》 《グラビティ》《光波》《斬撃》《リフレクト》を獲得〉
新しく手に入れた力を確認した後、俺はノロノロと足を進め、王座の横に置いてあった宝箱を開けて…そのまま意識を手放した…。
最後にわかったのはメリルがゆっくりと駆け寄ってくることだけだった…。




