能力確認
《サイクロプス》を倒し、喜びの声を上げていると、硬く閉ざされていた扉が開いた。
ようやく出られる、と息を吐き、立ち上がろうとしたその時だった。
「アルトさん!」
妖精から人間の姿に戻っていたメリルが目元に涙を浮かべながら、部屋に入って来た。そして、勢い良く、駆け出し…。
「おあっ⁉︎」
俺にダイブして、抱きついてきた。その勢いに俺は地面に倒され、頭をゴツン、と打った。
俺を押し倒したメリルは何度も俺の名前を連呼する。…あの扉の向こうで俺を心配してくれていたみたいだな…。
「あ〜、心配かけて悪かったな、メリル。俺はもう大丈夫だ」
未だに泣く事をやめないメリルの頭を撫でながら、彼女を宥める。その後、彼女を落ち着かせた俺はこの部屋で起こった事を全て話した。
《サイクロプス》の事…。
新たな力、技能複写を手に入れた事など、全てだ。
「技能複写…? その様な技能は聞いた事ありませんが…」
「変な声が聞こえてきて、俺の力を与えたんだよ」
変な声…、とメリルは考えだす。しかし、考えが纏まらず、俺に視線を戻した。
「技能複写とはどの様な技能なのですか?」
「その名の通り、相手や物の技能を複写出来るんだ」
物は試し…と。
俺は近くにあった岩を見つけ、手を翳して、技能複写を発動する。
岩から複数の光が出現、毒沼の時と同様、その光は俺の中にへと入り、頭の中に文字が刻まれた。
〈特殊技能《石化無効》 《石化》を獲得〉
〈技能《ロックブラスト》 《ロックスラッシュ》 《ストーンウォール》《ストーンドーム》を獲得〉
…ん?
特殊技能に矛盾が生じているぞ。石化無効なのに石化とはどういう事だ?
試しに《石化》を発動すると、俺は石化する。
うん…息もできるし、苦しくもない。
「っと、まあ…これが技能複写だ」
石化を解除する。すると、目の前のメリルは何故か目をキラキラ、と輝かせる。
「す…凄いです! 格好いいです! 私にも試してみてください!」
そういえば、生き物に対しては試してなかったな。
技能複写を発動し、メリルの技能を複写しようとした…。
だが…。
「ん? あれ…?」
文字が浮かび上がって来ない…?
その後も何度か試したが、新たに技能を獲得する事はなかった。
「ダメだ…」
「使用回数があるのでしょうか?」
使用回数か…。
取り敢えず、俺達はこの部屋から出る…と。マングースの様なモンスターが襲い掛かってきた。
「《サンダーマングース》か!」
モンスターに対してはどうだ…?
《サンダーマングース》に対して、技能複写を発動したが、またもや文字は頭の中に浮かんで来なかった。
やはり、メリルの言葉通り、使用回数があるのか…?
そんな事を考えていると、《サンダーマングース》は電撃を浴びせてくる。
俺は石化で電撃を防ぎ、リボルバーガンを構え、最後の一発の弾丸を発射した。
勿論、技能《ロックブラスト》を発動してだ。
銃弾は鉄の塊となり、《サンダーマングース》に着弾、そのまま《サンダーマングース》は絶命する。
経験値を得た俺はもう一度、技能複写を発動する。すると、頭に文字が刻まれた。
〈特殊技能《電撃付与》 《麻痺無効化》を獲得〉
〈技能《サンダーナックル》 《サンダースラッシュ》 《サンダーブラスト》《サンダーボルト》を獲得〉
…獲得できた…?
「今度は獲得できたぞ」
「ど、どう言う事なのでしょうか…?」
「わからない。兎に角、先に進むぞ」
俺達は階層を突き進む。勿論、モンスターはゾロゾロ、と現れ襲いかかって来るが、メリルの援護も受け、倒していく。
そして、第50層にまで到達する。
ここまで技能複写を検証してみて分かった事は…。
・生きているモノには使用できない。
・恐らく、使用制限はない。
・同じ様な技能を持つモノからは、得る事はない。
…これぐらいだ。
この第50層にまで到達して、得られた技能は《ヒール》《バリア》《俊足》《クイックジャンプ》だ。
《俊足》は素早さが上昇し、《クイックジャンプ》は一気に相手へ詰め寄る事のできる技能だ。
第51層へ繋がる階段…その目の前にカウボーイの帽子を深々と被ったモンスターがいた。
《マグナムキラー》…。
二丁のマグナムで狙った獲物を必ず殺すガンマンのモンスターだ。
腕をクロスさせ、《マグナムキラー》は俺達を睨み…その二丁のマグナムを連射してきた。
《バリア》を発動し、連弾を防ぐ。
俺の背後にいたメリルは跳躍し、俺を飛び越えると《ファイアボール》で《マグナムキラー》に攻撃を仕掛ける。
だが、その《ファイアボール》を避けながらも、奴はマグナムの連射をやめない。
撃ちながら避ける…器用な奴だな。
…だったら…!
俺は手を翳すと頭上に雷雲を形成する。後は準備を…。
だがそこで《マグナムキラー》が新たな動きを見せる。
次々に分身して、俺とメリルを取り囲んだ。そして、複数の《マグナムキラー》は一斉に連射した。
その一斉発射にバリアでは防げないと思い、俺は《ストーンドーム》を発動し、岩のドームが俺とメリルを覆った。
岩のドームが一斉発射による攻撃を防いでいく。
「アルトさん…これからどうするのですか?」
「安心しろ。もう準備出来ているからよ」
フフ、と得意げに笑った俺は静かに呟く。
「《サンダーボルト》!」
ドームの音で落雷が落ちる音が聞こえ、辺りに地響きが起こった。
「え、えっ⁉︎ 何が起こったんですか⁉︎」
突然の地響きに大いに戸惑うメリルだが、それに俺はニカッと笑う。
何が起こったのかを見せるために、ドームを解除すると周りにいたはずの《マグナムキラー》の分身は消え去り、本体は感電し、絶命していた。
「《サンダーボルト》…。強力な技能だな」
《サンダーボルト》の強力さを見にしめながら、俺は《マグナムキラー》に技能複写を発動し、頭の中に文字が刻まれた。
〈特殊技能《狙撃》 《銃弾無制限》《分身》を獲得〉
〈技能《ディメンションバレット》 《ツインバレット》 《バレットミサイル》を獲得〉
《狙撃》に《分身》…それから、《銃弾無制限》、か…。
ん…?
「《銃弾無制限》⁉︎」
おいおい…どんなチートだよ…⁉︎
驚く俺をメリルがジト目で睨んでくる。
「な、何だよ?」
「チートは嫌いです」
「女神のお前が何言ってやがる⁉︎」
俺のツッコミがダンジョン内に響き渡る…。
俺とメリルは言い合いを続けながら、次の階層への階段を進んだ…。




