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キノコ鍋は本当に美味しく、一滴残らず耐えらげてしまった。後片付けなどは俺がやると言い、スズカとアレイナは自分達の部屋へ戻っていった…。
後片付けを終えた所でヴェイグが帰ってきた。
「ふぅ…今日も疲れた…。教師の仕事も楽じゃないね」
疲れた様に椅子にドスン、と座り込んだヴェイグに思わず苦笑してしまう。
「まあ、頑張っているんじゃねえのか? ヴェイグ先生」
疲れているヴェイグに入れた紅茶を差し出すと、彼はありがとう、と笑顔を作り受け取った。
俺から受け取った紅茶を啜るヴェイグ。
「疲れているんなら、今日の偵察は俺が行ってくるぜ?」
「…いや、騎士として、此処で休むワケには…」
「その騎士様は仕事を終えたオッサンみたいにため息を吐くのか?」
変な意地を張るヴェイグに言う。
わかった。俺が悪かったからジト目で睨むのはやめてくれ…。
「…わかった。今日の所はお言葉に甘えて休ませてもらうよ」
本当に疲れているのか、随分と聞き分けがいいな…。
「じゃあ、休んでてくれ。先に寝ててくれてもいいからな」
休む様に伝え、俺は偵察に向かった…。
一応、事件現場を重点的に調査しているが、今日までこの偵察で事件が起こる事はなかった。
「やっぱり、犯人はこの時間帯を警戒し出したのか…?」
…犯人はやはり、俺の事を既に知っているという事か…。これはいつも以上に俺達の周りを気にしないといけないな…。
「…あっ。そう言えば、ヴェイグにキノコ狩りの件を話すのを忘れてた! …まあ、アイツも疲れていたし、明日でもいいか」
さて、異常がなければ戻るとするか…。
ってか、学園長もヴェイグにもう少し、偵察のしやすい仕事を回してやればいいのに…。
「…⁉︎」
ヴェイグに同情しながらも、寮へ戻ろうとしたが、不意に複数の何かの気配を感じ、俺は気配の下に走った。
気配の量からして、三人…ついに尻尾を掴んだぞ…!
気配の場所に着くと覆面を被った三人の奴等がいた。見ため的にテロリストみたいだが…。
「お前等、此処で何やってんだ⁉︎」
「しまった…!」
「見つかったのか…⁉︎」
「撤退するぞ!」
逃げるつもりか…! そうはさせるかよ!
「逃すかよ!」
撤退し始める覆面達の上空に雷雲を出現させ、叫んだ。
「《サンダーボルト》!」
雷雲が発せられた落雷が覆面達に直撃し、三人はその場に倒れた。
威力は抑えたし、死んではないだろう。
感電し、倒れた覆面達の下へ歩み寄った俺は三人の覆面を外す。
…三人共、男か…。
幸い、まだ意識が残っていたのか、俺はブレッターを突きつけながら、事情聴取を始めた。
「質問には答えてもらうぞ。感電による麻痺で動けないだろうからな。…お前達が行方不明事件の犯人か?」
尋ねるが男達は口を閉ざし、顔を背けた。あくまでも答えない気でいる。
仕方ない…、と俺は軽く息を吐き、男の一人の頬を掠める様に一発発砲した。
「…殺しはしない。だが、このまま黙秘を続けるなら、少し痛い目を見てもらうぞ」
男達は怯えだすもまだ口を開こうとしない。更に俺はブレッターの銃口を突きつける。
「わ、わかった! わかったから待ってくれ!」
観念したのか、男の一人が漸く口を開いた。
「じゃあ、聞くぞ? 行方不明事件の犯人はお前達か?」
「ち、違う! 俺達は命じられただけだ!」
つまり、コイツ等の親玉があの《スライムソルジャー》という事だな。
「行方不明になった人達は生きているのか?」
「い、生きている!」
「何処だ!」
「そ、それは…!」
行方不明者達が生きている…それなら、まだ助ける事が出来れば…!
奴等に場所を問い詰めようとしたその時だった…。
何処かから現れたスライムが男達三人を包み出した。俺は三人から離れ、エンゼッターを構える。
「い、嫌だ…! うあ゛ァァァァッ‼︎」
男達三人は完全にスライムに呑み込まれ、《スライムソルジャー》となってしまった。
「チッ…! クソッ!」
油断した…! 口封じの為に邪魔される事の警戒を怠っていた…!
三体の《スライムソルジャー》は剣を持ち、斬りかかってきた。
「仕方ねえ!」
まずは《スライムソルジャー》の中から引っ張り出すしかねえ!
斬りかかってきた《スライムソルジャー》三人の剣を弾き、斬り裂いていく。
アレイナの時とは違い、そこまで強くなく、斬り口からまず一人目を引っ張り出した。
「まず一人目!」
二体目の《スライムソルジャー》の縦斬りを横に回避し、隙を見せた横っ腹を斬り裂く。
「二人目!」
開いた横っ腹から二人目の男を救出…。
残りは一体…!
仲間二人がやられ、自暴自棄になった様に暴れ出した最後の《スライムソルジャー》の攻撃は俺には当たらず、そのまま一刀した。
「これで終わりだ…!」
三人目の男を引っ張り出し、《スライムソルジャー》は全て、消滅した…。
「ったく、面倒かけやがって」
気を失っている男達三人を捕らえようと一歩踏み出したその時だった。
またもやスライムが現れ、気を失っている男達三人を包み込むとそのまま消滅した…。
「しまった…!」
情報源を消されてしまい、先程まで男達がいた場所に立つが、既に消えてしまった…。
先手を打たれたのだと、舌打ちをした。そのせいで気づかなかった…俺にもスライムが襲いかかっていた事に…。
「…⁉︎」
目の前に迫るスライムに対応が遅れた俺は呑み込まれる…そう思ったが…。
「《シャインズアロー》!」
突然、何処かから無数の光の矢が放たれ、スライムに直撃…そのままスライムは消滅した…。
「な、何だ…?」
「ご無事ですか、アルト様⁉︎」
駆け付けたのはノエルだった。
まさか、先程の攻撃はノエルが…?
「ノエル…お前、どうしてここに?」
「周辺の調査をしていたら、アルト様が見えましたので…。それよりも間に合って良かったです」
どうやら心配をかけちまった様だな…。
「まあ、お陰で助かったぜ。ありがとな」
お礼の言葉を口にすると、彼はクスリ、と笑う。
だが、すぐに表情を強め、話を続けてきた。
「アルト様…丁度あなたにお伝えしたい事があったのです」
表情が表情なだけに俺は黙って聞く事にした。
「実は、この周辺で…ワルガン・ラフティの目撃情報がありました」
「…何っ⁉︎」
ワルガン・ラフティが近くにいる…⁉︎ やはり、今回の件も魔虎牙軍が関わっている…!
「何処だ? 奴は何処にいるんだ⁉︎」
ワルガン・ラフティの居場所を知ろうとノエルの肩を掴み、問いただすが、彼は首を横に振る。
「…申し訳ありません。そこまでは…」
「…そうか」
その先にはノエルも分からないと知り、彼から手を離す。
「ですが、コレで犯人も魔虎牙軍の関係者…という可能性が出てきましたね」
「ああ。ノエル、引き続き調査と警戒を頼む。まだ存在を知られていないお前なら、奴等の奥底の情報を手に入れる事ができるかもしれない」
「了解です」
だが…何故、ワルガン達がこの学園に…? 奴等はこの学園の生徒を行方不明にして、何がしたいんだ…?
戦力強化…? だとしてもこの学園の生徒を狙う必要なんて…。
「それにしても…」
「ん?」
まだ何かあるのか…?
「…キノコ鍋、私も食べたかったです」
………………はい?
不満そうな顔をするノエルに思わず、ポカンとなってしまう。
「ノ、ノエル…?」
「アルト様やスズカ様ばかり、ズルイですよ。私も美味しいモノを食べたかったですよ」
ど、どうしよう…すごく面倒くさいんだが…。
「わ、わかった! 次は必ずお前も呼ぶから!」
「本当ですか?」
「本当だ!」
「アルト様の生命に誓って…ですか?」
面倒臭え!
「お、おう! 誓うから、拗ねるなって!」
スズカ…ノエルとよくやっていけているな…。
さて、ノエルの機嫌も戻った事だし、そろそろ寮に戻るか…。
ワルガン・ラフティ…お前達が何を考えようが俺が…いや、俺達が必ず阻止してやる…!
雲一つない星空の下、俺は寮へ戻るために歩き出した…。




