キノコ狩り
〈モンスタードラッグ〉の影響で変化した《ダケダケ》は地面から複数の鞭を出す。だが、先程と違うのは鞭の色がバラバラな事だ。
赤や紫、黄色に銀色と緑…いったいコレは…?
「どうして…倒したはずの《ダケダケ》が…⁉︎」
「リングベルトさん、考えるのは後よ!」
「そうみたいだな…来るぞ!」
話している俺達に構わず、《ダケダケ》は色とりどりな鞭を放ってくる。それを回避し、ブレッターで《ダケダケ》を撃ち抜こうと発砲するが、鞭に防がれる。
「《スイングスラスト》!」
目の前の緑色の鞭を斬り裂こうと鎌を振るうアレイナだが、鎌が鞭に直撃し、めり込むも斬り裂く事が出来なかった。
「嘘っ…⁉︎」
鞭が硬くなってるのか…⁉︎
鞭から鎌を引き抜こうと引っ張っていたアレイナを紫の鞭が彼女を叩き付けた。
その衝撃で鎌は抜けたが、彼女は地面に叩きつけられた。
「リングベルトさん!」
複数の緑色の鞭の攻撃を大刀で防ぎながらもアレイナを心配する声を上げるスズカ。
鞭による攻撃を掻い潜り、アレイナの下に辿り着いた俺は彼女を見る。
「うっ…! ぐうっ…!」
彼女は苦しそうな声を上げ、顔色も悪くなっていた。明らかに鞭で撃ちつかれただけじゃないな…!
「どうした、アレイナ⁉︎」
苦しいのか、呻き声しか上げられない彼女にコンディションブレスを向けるとモニターに毒の表示が映し出された。
「毒だと…⁉︎」
さっきの鞭に毒が塗られていたのか…⁉︎
《リカバー》を発動して、アレイナにかけられた毒を治癒する。すると、彼女はゆっくりと立ち上がる。
「ありがとう、アルト…!」
「にしても…さっきあの鞭には毒なんて盛られてなかったはずなのにな…」
コレも〈モンスタードラッグ〉の影響か…? それにしてもモンスターに〈モンスタードラッグ〉を与えても姿は変わらず強化されるだけなのか…。
そんな事を考えているとスズカが銀色の鞭に叩き飛ばされた。
「ヤバッ…⁉︎」
吹き飛ぶスズカを俺は受け止め、彼女をゆっくりとその場に座らせる。
「大丈夫か、スズカ?…何⁉︎」
吹き飛ばされたスズカを見ると、何度右腕が凍っていた。凍った腕からは冷気も立ち込めている。
「ごめん、油断した…!」
「気にするな、待ってろ!」
再び、《リカバー》を発動し、凍ったスズカの腕を元に戻す。
「こ、今度は冷結…どう言う事なの…?」
「ッ…! アレイナ!」
冷結したスズカを見て、考え込んでいたアレイナを俺は押し飛ばすと、黄色の鞭による攻撃を受けた。
打ち飛ばされた俺は地面に叩きつけられ、何度も転がる。
「グッ…! ア、ガ…!」
何だ…⁉︎ 麻痺、だと…⁉︎
「アルト君…⁉︎」
「今度は麻痺…⁉︎」
スズカは素早く俺に駆け寄り、浄化ポーションを俺に飲ませてくれた。
それにより麻痺は治り、俺達は《ダケダケ》から距離を取った。
「…わかったぞ、奴の鞭の色の意味…!」
そう。ただ単に色が分けられているだけではなく、それぞれの色にデバフ効果が付与されている。
黄色なら麻痺、紫なら毒、銀色なら凍結…だから、その鞭による攻撃を受けた俺達にデバフ効果が働いたんだ。
それに奴は無効化モンスター…!
「厄介な能力ね…!」
「…どうするの、アルト?」
鞭を叩き斬る事が出来ないのであれば、切り抜ける事も容易くない…。少しでも隙を突かれれば、あの鞭の餌食だ…!
そう考えていると俺は奴の頭に生える枝を見る。…〈モンスタードラッグ〉を得て、鞭も変化し、あの枝も出てきた…もしかして…!
「二人とも、聞いてくれ! 俺がアイツに接近して、頭に生えている枝を全て切り落とすから、二人はその後奴を斬り倒してくれ!」
枝を全て斬り落とせば、奴は弱体化する可能性の話を二人にする。だが、二人は納得がいかない顔で抗議してきた。
「アイツに接近するって…あの鞭はどうするの⁉︎」
「鞭を斬る事が出来ないのでは、あの包囲網を切り抜ける事は簡単じゃないわよ!」
そう、簡単じゃない。だからこそ、あの方法でやる。
「簡単な事だ。鞭を斬る事が出来ないのならば…全て弾けばいいだけだ」
それを聞いて二人は驚きの声を上げる。あまりにも俺が簡単に言うからだ。
「か、簡単に言うけど…出来るの⁉︎」
「出来るか出来ないかじゃなくて、やるしかないんだよ」
「でも、枝を斬り落としても弱体化するかどうか…」
「何事も試してみるしかないだろ?」
俺の言葉に二人は呆れた様にため息を吐いた。
「アルト君って、結構考えるよりも前に動くタイプなのね」
「そうか? 結構考えての結果なんだが…」
「ふふっ、アルトらしいわね」
俺らしいとはなんだ。
「まあいいわ。その案に乗ってあげる」
「だから、必ず成功させてよ!」
「当たり前だ!」
《フォトンウイング》を発動した俺は《ダケダケ》に向けて、空からの攻撃を仕掛けた。
《ダケダケ》は鞭で俺を叩きつけようと放ってくるが、エンゼッターで向かってくる鞭を弾いていく。
読み通り…斬れずとも弾く事は出来る…!
「これなら…!」
向かってくる鞭を全てを弾いていき、奴の近くまで接近するが、奴は口を開くと無数の種による弾丸を放ってくる。
「アリかよそんなの⁉︎」
翼を羽ばたかせ、方向転換し、何とか種の弾丸を回避する事に成功し、奴の頭の上に辿り着く。
「喰らいやがれ!」
《ダケダケ》の頭の上に立った俺は生えている枝目掛けて、何度もエンゼッターを振るう。
枝は鞭とは違い、耐久力も低く簡単に真っ二つとなってしまった。
頭の枝を斬り裂かれてか、《ダケダケ》は痛みによる雄叫びを上げながら、辺りの地面を鞭で見境なく叩きつける。
その攻撃を避けつつ、アレイナとスズカも《ダケダケ》に接近していた。
「今だ!」
「行くわよ、アレイナさん!」
「ッ…! ええ、スズカ!」
始めて名前で呼び合った二人はニコリ、と笑い合い、同時に跳躍し、弱体化した《ダケダケ》をクロス斬りで斬り伏せた…。
それと同時に俺も地面に着地し、そのまま《ダケダケ》は絶命した…。
《ダケダケ》を倒した事を確認し終えたスズカとアレイナの二人は笑顔でハイタッチをする。
それを尻目に俺は技能複写を発動すると、頭に文字が刻まれる。
〈特殊技能 《胞子》 《キノコ擬態》を獲得〉
〈技能 《マッシュルームガード》を獲得》
〈デモン技能 《デモン・シードマシンガン》 《デモン・デバフウイップ》〉
…うーん…またクセの強い技能を手に入れたなぁ…。
俺が技能複写を使用したのを見て、スズカも技能拝借を発動した。
手に入れた技能を確認し終えたのか、なんとも言えない表情でこちらに視線を見る。
俺に文句がある様な顔をするな。
「取り敢えず、帰るぞ。また変なモンスターに襲われでもしたら、面倒だ」
俺の言葉に二人は頷き、俺達は村を出て、寮に戻った。
採った〈エネルギッシュマッシュルーム〉は鍋に入れ、キノコ鍋として食べる事にした。
後、他の食材は冷蔵庫に入っていたモノを使った。
「出来たみたいね。じゃあ、食べましょう!」
鍋が完成し、俺達はいただきます、とだけ言い、キノコ鍋を食べ始めた。
確かに《エネルギッシュマッシュルーム》…一口食べただけで先程の戦いの疲れがとれる様な気がしてくる…。
案外、良いダシも出ているので、鍋自体が美味しくなっている。そのダシが他の食材を更に美味しくしている様だ。
「うん! 美味しい!」
「このキノコもシャキシャキだな」
水々しくもあり、しっかりとダシの旨味も出ているので俺的には満点の評価だな。
ふと、何も話さないアレイナを見ると俯いた表情で黙々とキノコ鍋を食べていた。前髪のせいで表情がわからず、ついにはスズカが問いかけた。
「どうしたの、アレイナ? キノコ鍋が美味しくなかった?」
尋ねたスズカにアレイナは違う…、と低く呟き、ゆっくりと顔を上げた。そして、見てしまう…彼女が涙を流していたのを…。
「アレイナ…」
「違うよ…。このキノコ鍋は本当に美味しいわ…。それよりも、他の誰かと一緒に食べたのが久しぶりで…」
そうか…アレイナは今まで一人で…。
「こんなにも違うのね。誰かと食べると本当に美味しいわね!」
確実に彼女が変わってきている。過去を越え、現在を生きようとしている彼女は確実に…。
「アレイナ…今は楽しいか?」
「…うん!」
まだ目元に涙を浮かべながらも満面な笑みを浮かべ、頷いたアレイナを見て、俺とスズカは顔を見合わせ、微笑んだ…。
その頃、アルト達がいた森では、《スライムソルジャー》がいた。
『結果は良好…この力がアレば…!』
「勝てる…とでも思っているのか?」
突然、声が聞こえ《スライムソルジャー》が振り返るとそこにはワルガン・ラフティがいた。
『ワルガン様!』
「忠告しておいてやる。麻生 アルトは舐めない方がいい。奴は…本気で我々を潰すつもりだ」
ワルガンの忠告を受け、《スライムソルジャー》は頷くも、声を上げる。
『了解しました! ですが、ワルガン様…私が必ず、奴の首をあなたにお持ちします』
「期待して待っているぞ」
それだけ言い残すと、ワルガンは姿を消した…。
ワルガンがいなくなった後、《スライムソルジャー》は明かりがついていた学生寮を見る。
『麻生 アルト…必ずお前を…!』
アルトを倒す事を誓った彼の背後には複数の《スライムソルジャー》が並んでいたのであった…。




