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ジョブ無し転移者の技能複写  作者: カイト・レイン
第八章 聖ミリアルド女学園編
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和解とお礼


 騎士団に連絡した数十分後、担当騎士としてウィーズが部下を引き連れてやって来た。


「やあ、アルト。また大きな事をしでかしたみたいだね」


「人を問題児扱いするな」


 明らかに悪いのは俺じゃなく、デラゴス達だろ…。


「冗談だよ。それにしても簡単に事を済ませて良かったよ」


 事を済ますって…殺し屋みたいな言い方だな。


「聞いていたバックにいるはずの殺人ギルドがいなかったんだよ。…既にデラゴス達を見限っていたか…たまたま、居合わせていなかったのか…。そのどちらかだな」


 そして、殺人ギルドが魔虎牙(まこうが)軍に繋がっているかどうか…それ次第では俺のやる事も変わってくるな…。


「その殺人ギルドについては我々の方で調査しておくよ。君は学園に戻ってくれ」


「ったく…お前が変わりに行ってくれたらいいのによ」


「ははっ! 私には君の変わりは務まらないよ」


 俺としては潜入三日で過酷な事が起きてるけどな。

 兎に角、殺人ギルドについてはウィーズ達に任せ、俺は学園に戻った…。








 ーアルトがデラゴス達と戦っている頃、アレイナはベッドで横になっていた。


 彼女はアルトが帰ってくるまで待つと言ったが、教師であるヴェイグがそれを許さず、彼女は渋々、部屋に戻ってきたのだった。


「麻生 アルト…。どうして、彼は私の為に…」


 どうして関係のない彼がここまでしてくれるのか…。アレイナにはそれがわからず、同時に胸がキュッと、締め付けられる。


 知りたい…もっと彼を…麻生 アルトの事を…。

 その感情に包まれた彼女はある事を決め、眠りについたのだった…。







 学園内に入り、寮までたどり着いた頃には既に就寝時間が過ぎていた為、各部屋の明かりも消えている。

 ヴェイグから学園長へ話が通っているので俺は堂々と寮の中に入り、部屋へ戻ると、ヴェイグが待っていた。


「おかえり、アルト」


「先に寝てても良かったのによ」


 その後、シャワーを浴びた俺はヴェイグに今回の事を話し、お互い眠りについた。





ー翌日…。



 教室に入った俺が目にしたのは通信デバイスでニュースを見ているクラスメイトの姿だった。


『昨晩、ある冒険者の活躍により、デラゴス・ムスト容疑者とその部下の人達が捕縛されました』


 ニュースレポーターは更にデラゴス達の悪事を次々と口にした。

 当然、デラゴス達の犯罪行為に同じ女性であるみんなは最低!、と叫んでいた。


「ねえ、アルっちー? ニュース見た?」


 席に座るとフェルトが話しかけてきた。


「今、みんなが見ているやつか? それなら見たぜ?」


「凄いよね! 悪徳組織を潰す冒険者か〜!」


「どんな人なんだろう?」


 マリルとカナリアも来るなり、デラゴス達を捕らえた冒険者を想像し、目を輝かせる。

 …まあ、その冒険者は目の前にいるんだがな。


 すると、スズカが教室に入ってきて、俺の隣に座りつつある視線を送ってくる。

 まるでお疲れ様、というような視線を見て、知っているな、コイツ…、と苦笑してしまう。


「あれ? アルト君とスズカさん…また熱い視線を向け合っているよ!」


「熱々だね〜!」


 やめてくれマジで。


「だから、私はアルト君とは何もないわよ」


「その通りだ。だから、変な噂を立てないでくれ」


 俺とスズカは何もないとマリル達に伝えるが、彼女達はその行動すらもニヤニヤして、聞く耳を持たない。


「…誤解は解けなさそうね。…もういっその事付き合う?」


「お前も乗ろうとするな」


 こんな所でスズカまで諦められるともう取り返しがつかなくなる…。

 そんな話をしていると教室の扉が開くとリングベルトが入ってきた。


 それによりまたクラス中は沈黙に包まれる。俺が挨拶をしようと口を開きかけたその時…。


 バァン!、と教卓の前に立ったリングベルトが教卓を叩いた。

 その彼女の行動にクラス中の皆が驚愕の表情を浮かべた。

 当然、俺も驚いているが…。


「みんな…私は今まで、腹が立ったからという理由で多くの人を退学にさせたわ…。それによって、多くの人達の人生を滅茶苦茶にした…」


 俯きながらも彼女は続ける。


「こんなので許されるなんて思ってない! みんなが私に退学しろって言うなら、私は大人しくそれに従うわ!だから…!」


 …全く…。また説教が必要の様だな。


「逃げるな!」


「っ…⁉︎」


 俺が声を上げた事にリングベルトは驚き、俯いていた顔を上げる。


「他人に覚悟を委ねるな! お前は過去を乗り越えた…だったら、罪を乗り越える事も出来るはずだ!」


 彼女には…何かを乗り越える強い意志の力がある。だからこそ、俺はあの時…過去を乗り越えられるかどうかを試したんだ。


「他人がどう言おうが、お前はお前自身の覚悟した道へ行け! みんなと…これから友達となるみんなとの壁を乗り越えろ!」


「麻生君…」


「お前はもう逃げ続けるだけの存在じゃないだろ?」


 俺の話を聞いた彼女は何かを感じ取り、目を静かに閉じる。そして、勢い良く開き、口を開く。


「みんな…本当にごめんなさい! 私はずっと過去に囚われていて、それでみんなに当たっていたの! でも、麻生君と出会って気づいたの…それではダメだって…! だから、私はまだ此処に居たい! みんながいる此処に!」


 これこそが彼女の本心…。それを聞き、俺は心の中で笑みを浮かべる。


「みんなが私を避けても構わない! それでも私はもう逃げない! だから、みんな…! これからよろしくね!」


 リングベルトの話が終わったと同時にマリル、カナリア、フェルトが動き出した。


「正直…まだリングベルトさんの事、許せないけど…」


 マリルの表情にリングベルトは構える。


「でも、変わろうとしているなら話は別だね!」


「こちらこそ、よろしくね!リングベルトさん!」


「仲良くしようね、アレッち〜!」


 皆の反応にリングベルトは思わず、ポカン、としてしまった。反対や暴言が飛んでくると覚悟していたのだが、それは全くと言って良いほど逆の言葉が飛んで来たからだ。


「え…」


「何驚いてんだよ? みんなはお前と仲良くしてくれるって言っているんだぜ?」


 驚き過ぎて状況が飲み込めていない彼女に俺は説明すると、スズカも席を立ち上がり、彼女の肩に手を叩く。


「みんなはあなたにやり直す時間をくれるって言ってるの。勿論、私もよ、リングベルトさん」


「みんな…」


 皆の優しさを受けて、嬉しくなったのか、彼女は涙を浮かべる。そんな光景を頬やましく見た俺達は微笑んだ。

 その後、担当の教師が来て、授業を行う中、リングベルトが他の生徒達と話している姿を見て、担当教師も驚いた事は余談だ。





 昼休みになり、俺はいつも通りに食堂へ向かおうとしたが、リングベルトに呼び止められる。


「麻生君、ちょっと良いかしら?」


「何だ? リングベルト?」


「今から視聴覚室に来て欲しいの。勿論、何も食べずにね」


 それだけ言い残して、彼女は先に視聴覚室へ向かった…。


…うん、物凄いデジャヴなんだが…。まあ、もう大丈夫…だよな?




 とてつもないデジャヴ感を感じながらも俺は視聴覚室に向かい、視聴覚室の扉を開いた。


「来てくれたのね、麻生君」


「それで、此処に俺を呼んだ理由はなんだ?」


 呼んだ理由を問いかけると彼女はカバンに手をかけ、カバンの中から可愛らしい何かを取り出した。


「コレ!」


「ん…?」


 可愛らしい包袋を解くとそこには弁当箱が見えた。

 弁当箱を見せつけているワケじゃないよな…? それとも、中身を見て欲しいとかか?


「…えーっと…リングベルト? この弁当がどうしたんだ?」


 俺の反応に不満があるのか、頬を膨らましながら、睨んでくる。


「察しなさいよ、バカ!」


 嫌、無理があるだろ。


「…お昼まだでしょ?」


「そりゃ、お前に呼ばれたからな」


 正直腹が物凄く減っているのだが…。


「…だから、コレをあなたに食べて欲しいの」


「…もしかしてコレ、俺の分の弁当か⁉︎」


 え⁉︎ どういう事だ⁉︎ どうしてリングベルトが俺に弁当を作ってくるんだ…⁉︎


「そうよ。…あなたに食べて欲しいの」


「ま、まあ…じゃあ…ありがたく頂くよ」


 弁当箱を受け取り、蓋を開く。そして、それと同時に広がってくる食欲を唆る様な匂いに腹が減っていた俺は引き込まれる。


 弁当箱は二段弁当…上におかずが入り、下に白ご飯が入っている。

 おかずも唐揚げ、卵焼き、野菜炒めと種類が豊富だ。

 にしても、見た目で言うと満点だった。おかずの配置も綺麗で、全く崩れていない。


 対する白ご飯だが、何も混ぜ込んでいない普通の白ご飯だが、米の一つ一つには綺麗な艶が見え、米が白く輝いていた。


「…じゃあ、いただきます」


 手を合わせて、割り箸を割り、まず卵焼きに手を伸ばした。

 箸で掴んだ卵焼きを口に運び、食べると卵焼きの旨味が口いっぱいに広がった。


 次に白ごはんを箸で掴み、食べる。何の味付けを加えていないからこそ、味わえる白米の甘い味を感じ、俺はリングベルトを見た。


「…お世辞抜きに美味いぜ、リングベルト。料理…出来たんだな?」


「…一人で食べる事が多かったから当然よ。それよりも美味しくて良かった」


 安心したかの様な笑みを浮かべた彼女は自分の分の弁当箱を開き、食べ始めた。


「それにしても…どうして俺に弁当を作ってくれたんだ?」


「お礼がしたかったから…」


「お礼…?」


「あなたのおかげで私は変わる事が出来た。本当にありがとう!」


 何だ、そんな事か。


「変わろうとしたのはお前自身だ。俺は手を貸しただけで特に何もしてないよ」


「それでも、あなたのおかげで変われた事に変わりはないから」


 リングベルト…。


「改めて、これからよろしくね! アルト!」


 俺の名前をアルトと呼んだリングベルト…。笑顔で差し出された手を見て、俺は微笑む。


「こちらこそ、よろしくな! アレイナ!」


 リングベルト…嫌、アレイナの手を握り、俺達は弁当を完食した…。


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