アレイナの変化
|灼焉の魔眼の新たな力…《アーマー・ブラックナイト》を纏った俺は《スライムソルジャー》を睨みつける。
『キャアァァァッ‼︎』
対する《スライムソルジャー》は悲鳴に近い雄叫びを上げながら、スライムを触手の様に動かし、俺に向かって打ち付けてきた。
その攻撃をエンゼッターで斬り伏せたり、避けたりして、《スライムソルジャー》との間合いを詰め寄っていくが、最後の決め手にかけていた。
「チッ…!」
救い出せる手立てを見つけられたが、このままじゃ、アイツに近寄れない…!
すると、頭の中に《ブラックナイト》が声をかけてきた。
『(麻生 アルト…《アーマーウェイニング》は体力の消費が激しい…長くは使えないぞ)』
時間はそこまでないって事か…!
「だったら…!」
此処は強引に撃って出る…!
真っ正面に突っ走る俺に向けて、《スライムソルジャー》はそれを迎え撃つかのようにスライム触手を放って来る。
それを斬り捨ててながら、接近していき…懐までに入った。
「《デモン・グングニラ》…!」
エンゼッターの剣身にエネルギーを纏わせ、そのエネルギーをドリル状に変化、回転させて、《スライムソルジャー》を勢い良く斬り裂いた…。
「ッ…! リングベルト‼︎」
すると、切り口から再び、気を失っているリングベルトが見え、俺は手を伸ばし、彼女の手を掴んだ。
「必ず…救い出す…! うおおおおっ‼︎」
腕に力を込め、俺はリングベルトを引っ張り、彼女を《スライムソルジャー》から引き抜いた。
気を失っている彼女をお姫様抱っこで背負いながら、《スライムソルジャー》を見ると…。
『ヒギャアァァァッ⁉︎』
リングベルトを失った影響か、苦しみ出し、ドロドロと溶け始め…そのまま消滅した…。
「終わった、か…」
息を吐きながら、気を失っているリングベルトの顔を見て、微笑むと同時にエネルギー障壁が解除され、教師達がスタジアムに入ってくる。リングベルトを先生に引き渡すし、灼焉の魔眼を解除すると、身体に激痛が入り、そのまま俺は意識を失った…。
ーアレイナは謎の声の提案を受け入れたと同時に暗闇に包まれ、苦しみを受けた…。誰もいない暗黒の世界…。そんな世界に彼女は囚われ、ドンドン彼女の心を蝕んでいった。
「私…やっぱり一人なんだ…」
誰かの助けが来るはずもなく、このまま此処に一人ぼっちなのかと、俯いていると、暗黒の世界にヒビが入り、音を立てて崩壊した。
先程とは対を為す程の、光ある世界にアレイナは目を見開き、目の前にある人物が現れる。
『リングベルト‼︎』
その人物は必死に自分に向けて、手を差し伸べてくるではないか…。だが、その人物はアレイナ自身が最も嫌っていた男…そして、学園から退学させる様に陥れようとした者だった。
一歩間違えれば、彼の人生は終わっていた…。なのに、彼はそんな彼女に手を差し伸べていた。
そんな彼に不思議な感情を抱いてしまったアレイナは思わず、手を差し伸べ…彼の手を取った。
彼…麻生 アルトの手に触れた瞬間、アレイナは暖かさに包まれ、心を蝕んでいた暗闇が一気に晴れたのだった…。
ーあぁ、そうなんだ…。彼は…私の事を必死に…!
目元に涙を浮かべながら、アレイナは嬉しい気持ちになり、視界が真っ白になった…。
「ッ…?」
そして、視界が晴れるとアレイナは目を覚ました。辺りを見渡すと、学園の保健室だと知り、少し身体を起こすと、保健室にミリム学園長が入ってきた。
「おぉ、起きたか。リングベルト」
「学園長…」
「その様子だと怪我はない様だな」
彼女の言葉にアレイナは頷く。…そして、気になった事を尋ねる。
「あの…私、どうして意識を失ったのですか?」
「…覚えていないのか? お前は突然、スライムに囚われ、《スライムソルジャー》になってしまったんだ」
「私が…モンスターに…⁉︎」
自分がモンスターになってしまったと知り、驚愕する。
「何か心当たりはないか?」
「…そう言えば、声が聞こえてきたんです。その声の提案に乗ったと同時に意識が消えてしまって…」
「声、か…」
声という言葉に考える仕草を取るミリム学園長…。そんな彼女にアレイナは再び問いかける。
「学園長。その…麻生君は…?」
アルトと決闘中に意識を失ったのだ。彼の事を気にするのは不思議ではない。
「…麻生はお前を助け出した後、気を失った。どうやら、お前を助け出す為に無茶した様でな」
麻生君が…、とアレイナは戸惑うがすぐに声を上げる。
「麻生君は…大丈夫なんですか⁉︎」
「暫く目は覚さない様だが、生命なは別状はない様だ」
それを聞き、ホッと息を吐く、アレイナ。
「…男嫌いだったお前が彼の心配をするとはな」
「今なら、学園長がおっしゃっていた意味がわかります。…彼は私が見てきた男とは違うって…」
「そうか…。(まあ、それだけではないのだがな)。…では、私は行く。今日は安静にしておけよ」
そう言い残して、ミリム学園長は保健室を出ようとしたが、ふと立ち止まり、振り返る。
「あ、そうだ。麻生は隣の部屋にいる。…間違っても隣の部屋には行くなよ?」
クスリ、と微笑んだ彼女はそのまま保健室を後にした…。
「学園長…」
アルトの居場所を態々教えてくれた彼女に感謝し、ベッドから立ち上がったアレイナは隣の部屋の扉を開いた。
すると、そこにはベッドで眠るアルトの姿があった。安らかそうに眠る彼に歩み寄りった彼女は彼の頬に触れた。
「麻生 アルト…。何なの…この胸がザワザワする感じ…」
胸に手を当て、ギュッと握り締めた彼女はこの想いから逃げる様に部屋を後にし、学園の外に出た…。
綺麗な夕陽が見える丘…そこまで来たアレイナは夕陽を見る。
「綺麗…」
あまりにも綺麗な夕陽に見惚れてしまい、立ち尽くす。こんなにもゆっくりと何かを眺めたのはいつぶりだろうと少し微笑む。
「…麻生君が…目を覚ましたら、話…出来るかな…?」
そんな想いを胸にアレイナは学園に戻ろうと歩き出そうとしたが…。
「あれ? アレイナちゃんじゃないか?」
「お? 本当だな!」
「…!」
かつて聞いた事のある声にアレイナは動きを止めてしまった。…嫌、恐怖で足が動かなくなってしまったのだ。
「あ、あなた達は…!」
「久しぶりだなぁ、アレイナちゃん!」
「大きくなって、随分と美人になったじゃねえか!」
そう、アレイナは忘れる事はなかった…。何故なら、彼等こそがアレイナの母親を傷つけ、自殺に追い込んだ借金取りの男二人だったからだ…。
「あなた達のせいで…ママは…!」
「ママ…? そう言えば、お母さんとそっくりになったな」
「これなら…楽しめそうだな!」
楽しめる…それを聞いたアレイナは恐怖を抱き、一歩後ずさった。
「(私…怖がっているの…? 男に負けないって決めたのに…! 結局、私は…男に流されるだけで…!)」
ジリジリと、迫る借金取りの男二人…。アレイナは身体を震わせて、その場から動けなかった。
「あ、あぁぁ……」
まだ腰が抜けないほどマシなのだろう…。だが、少しでも力を抜いてしまえば、彼女の身体は倒れる…。そんな気がしながらもアレイナは恐怖の表情を浮かべる中、アレイナはある人物を思い浮かべた。
奴等と同じく、嫌いな男で、決闘を申し込んで、スライムに取り込まれた彼女自身を助けてくれた彼を…。
「助けて…」
彼を思い出すと胸が締め付けられ、思わず、声を出してしまった。
「助けてよ…」
こんな事を言うのは無視が良すぎるかも知れない…。それでも、彼女は目元に涙を浮かべ、声を発した。
「助けて…麻生君‼︎」
彼女の叫びと同時に彼女に迫っていた男達二人は悲鳴を上げながら、大きく吹き飛ばされた…。
そして、目の前に頭の中で思い浮かべた人物の後ろ姿があった…。
「あ、麻生…君…!」
目の前の人物…麻生 アルトは振り返り、ニカっと笑った。
「お待たせ…助けに来たぜ、リングベルト!」
彼の顔を見た途端、彼女のこころがパァっと明るくなった…。




