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ジョブ無し転移者の技能複写  作者: カイト・レイン
第八章 聖ミリアルド女学園編
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アーマーウェイニング


 紫色のスライムに呑み込まれ、《スライムソルジャー》になってしまったリングベルトを見て、試合を見ていた客席の生徒達は恐怖の声を上げながら、避難を始めた。


 大騒ぎとなってしまった生徒達を落ち着かせて、避難させようと教師陣が対応に動く。


『キャアァァァッ‼︎』


 《スライムソルジャー》はリングベルトの声でまるで悲鳴の様な雄叫びを上げる。その雄叫びには苦痛の声が入り混じっているのが、わかる。


「リングベルト…!」


 立ち上がった俺のコンディションブレスに通信が入った。それに応答すると、ミリム学園長の叫び声に近い声が聞こえてきた。


『麻生! 何が起こったんだ⁉︎』


「わかりません! 突然、スライムがリングベルトを覆って、彼女が《スライムソルジャー》になった事はわかるのですが…!」


 突然何故、スライムが現れ、彼女を覆った…? それとも最初から彼女は狙われていたのか?


 そう試行錯誤していた俺に構わず、《スライムソルジャー》は客席で未だ避難が済んでいない生徒達に向けて、光弾を放とうとした。


「ヤバッ…!」


 恐怖と焦りであの光弾を防ぐ事が出来ないと判断した俺はエンゼッターから斬撃を放ち、《スライムソルジャー》に直撃させる。

 斬撃を受けた《スライムソルジャー》は光弾を放つのをやめ、こちらに視線を向ける。


『いいかよく聞け、麻生! 教師陣も生徒達の避難で手が足りない…。奴を止められるのはお前だけだ。出来るな…アルト(・・・)?』


 …ふっ、卑怯だなぁ…学園長は。

 名前で呼ばれては、出来ないなんて言えないじゃないか!


「勿論!」


 肯定の言葉と共に俺は《スライムソルジャー》に突っ込んだ。奴は攻撃を避けようとせず、俺を迎え撃ち、そして縦斬りを放ってくる。


 それを横に回避し、奴の横っ腹にエンゼッターの剣身を向け、《パワースラッシュ》を発動して、大きく斬り裂いた。


 斬り裂かれた《スライムソルジャー》の横っ腹は大きく切り口が出来たが…すぐにその切り口は塞がってしまう。


「何っ…⁉︎」


 再生能力の速さが尋常じゃない…!


 すぐさま体勢を立て直そうと後ろに下がろうとしたが、《スライムソルジャー》は俺の足下にスライムの破片を飛ばし、両足と地面にへばりついたスライムのせいで動きを封じられてしまう。


「しまった…⁉︎」


『キャアァァァッ‼︎』


 またもや悲鳴に近い雄叫びをあげながら、何発も光弾を俺にぶつけた。光弾は着弾と同時に起爆し、俺は痛みと爆煙に包まれる。








 客席で避難しつつ、アルトの戦いを見ていたアイムは戦いに参加できない事を悔やんでいた。


 スタジアムの周りにはエネルギー障壁が展開され、客席に被害が出ない事が仇となったのだ。


「アイムちゃん! お兄さんが!」


 光弾を受け続けるアルトを見て、シャリティアは不安の声をあげる。だが、アイムは悔しさを心の中に押し込み、微笑んでシャリティアの頭を撫でた。


「大丈夫…お兄ちゃんなら…!」


 戦いに参加出来ないのならば、彼が戦いやすくなる様にせめてもの生徒達の避難を急ごうとアイムは動き出した…。









 一方、スズカも避難しつつ、《意識共有》の中でノエルと会話をしていた。


『(どう? ノエル?)』


『(攻撃を受け続けていたリングベルト様に向けて、スライムを投げ込んだモノがいます。姿形まではハッキリとしませんが、この状況はその犯人が作り出したモノでしょう)』


「(つまり、コレは…生徒達を襲っていた犯人の仕業の可能性があるわね…!)」


 一刻も早くアルトに伝えなければと思ってたが、彼は今、あの頑丈なエネルギー障壁の内側…それも《スライムソルジャー》と抗戦中だ。

 彼女はアルトの勝利をただ祈るしかないのだ…。








 光弾を何度も受け続けていた俺は何とか抜け出そうと、足元のスライムをエンゼッターで切断する。

 漸く動けるようになった…その瞬間、俺の右足に鞭状になったスライムが絡みつき、そのまま俺を宙を舞い、エネルギー障壁に叩きつけられた後、次に地面に叩き落とされた。


 クソッ…! こんな事ならブレッターも持ってくるべきだった…!

 エンゼッターだけで充分と慢心していた自分が愚かだった…!


 何とか足に巻きついたスライムを切り取り、俺は地面に着地する。


「このままじゃ、ジリ貧だ…! こうなったら…!」


 悪いな、メリル…! リングベルトを救い出す為に…この力を灼焉の魔眼(レッド・アイ)を…!


「いくぞ…!」


 灼焉の魔眼(レッド・アイ)を発動した俺はそのスピードを活かし、《スライムソルジャー》に接近、エンゼッターによる突きを浴びせる。


 突きを受けた《スライムソルジャー》は吹き飛ぶ。俺はそんな奴に目掛けて、俺は無数の氷柱を投げる技能(スキル) 《デモン・アイスレイン》を放つ。


 黒き無数の氷柱が《スライムソルジャー》を貫いていくと穴が広がっていく。


「っ…⁉︎」


 広がった穴の中心に気を失っているリングベルトの姿が見え、俺は攻撃を止める。

 その隙を見せてしまい、《スライムソルジャー》は再び、スライムを鞭状に変え、俺を殴りつけた。


 殴りつけられた俺はあまりの威力に地面をバウンドしながら、吹き飛び、エネルギー障壁に激突した。


「グッ…クソがッ…!」


 迫り来るスライムの触手を避けながら、俺は思考を巡らせる。

 俺の目的は奴の中にいるリングベルトを救い出す事…しかし、灼焉の魔眼(レッド・アイ)の力ではリングベルトまで…!


 どうすれば…!




 そう考えていると俺の視界が真っ白になり、目を閉じた後再び開く。すると、俺は光の空間にいて、目の前にはもうこの世にはいないはずの人物がいた。


『やあ、アルト』


「スノ、ウ…⁉︎」


 そう、俺の親友でライバルでもあるスノウだった…。


「スノウ…どうしてお前が…⁉︎」


『君に…大切なモノを守る為の力を与えに来たんだ。そうだよね?』


 突然、誰もいなかった場所にスノウが話しかけると、粒子が集まり、人型となった。

 その姿を見た俺は目を見開いてしまう。


「どうして…どうしてお前が…⁉︎ 《ブラックナイト》…!」


 そう…スノウが〈モンスタードラッグ〉の影響で変貌した《ブラックナイト》が目の前にいた。スノウと《ブラックナイト》…本来ならば、同じ場所にいないはずの二人が並んでいた。


『麻生 アルト…貴公と直接的に話すのはコレが初めてだな』


「あ、ああ…ってか、どうしてお前らが…?」


 消滅したはずのスノウと《ブラックナイト》が目の前にいる理由を問うとスノウが口を開く。


『君が灼焉の魔眼(レッド・アイ)の力を手に入れたからだよ』


『貴公に…私の力を授けに来たのだ』


 《ブラックナイト》の力を俺に…?


「どうして俺なんかの為に…?」


『貴公は…私の力を利用していた人間から解放してくれたのだ。…そして、私に変貌した彼の友人だからだ』


『アルト、灼焉の魔眼(レッド・アイ)を発動している状態で手に入れたモンスターの技能(スキル)を使えば、そのモンスターの力を身に纏う事が出来る』


 モンスターの力を見に纏う…?


『《アーマーウェイニング》…。その新たな力で守るべきモノを守れ』


 …何だか、よくわからないけど…まずは試してみるしかないな!


「わかった! ありがとう、二人とも!」


『僕達は…君の事を何時迄も見守っているよ、アルト!』


 スノウの言葉を最後に俺の視界が再び、光って、目の前に《スライムソルジャー》がいた。どうやら意識が戻ったようだな…!


「…使わせてもらうぜ、スノウ、《ブラックナイト》…!」


 力を与えてくれた二人に感謝し、右手を開き、掌に黒い光を召喚…そして、その光を俺の身体の中に押し込んだ…。


「《アーマーウェイニング…! ブラックナイト!》」


 黒い光を身体の中に押し込むと俺の身体は輝き出し、光が消えると、胸部分に《ブラックナイト》を思わせる黒い鎧を装着していた…。


「さあ、行こうぜ…《ブラックナイト》…!」


 《ブラックナイト》の鎧…《アーマー・ブラックナイト》を纏った俺はエンゼッターを再び握り直した…。


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