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ジョブ無し転移者の技能複写  作者: カイト・レイン
第八章 聖ミリアルド女学園編
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陥れる者


 聖ミリアルド女学園の制服は青色をベースに黄色のラインの入った服だ。

 忘れてはいけないのは此処は女子校だ…。つまり、基本は中に白いカッターシャツに上に青色のブレザーを来て、同じく青いスカートを履くのが普通だ。


 だが、俺は男…つまり、ズボンという事だ。学園長の話では特別に作ってもらったそうで、まだこの学園唯一のズボンらしい…騎士団の力って恐ろしいな。


 そして、今…一時限目の授業が終わり、息を吐いた俺の元にクラスメイトの女子が三人ほど来た。


「ねえねえ、麻生君!」


「質問してもいい?」


 …転校生にはよくある質問タイムってヤツか。


「構わないぜ」


 断る必要もなく、頷いた俺を見て、クラスメイトの三人が笑顔になる。


「…っと、質問するのはいいけど、三人の名前を教えてくれないか?」


 まず名前を聞かないとダメだからな…。


「あ、ごめんね! 私はマリル・クラウスだよ!」


「カナリア・システィね!」


「フェルト・シャルネットだよ〜! よろしくね、アルっち!」


 ポニーテールの子がマリル・クラウス、眼鏡をかけたセミロングの子がカナリア・システィ、サイドテールの元気な子がフェルト・シャルネットか…。


「よろしく。クラウス、システィ、シャルネット。俺の事はアルトでもいいぜ」


「じゃあ、私達も名前でいいよ!」


「こちらこそよろしく、アルト君!」


「あたしはアルっちって呼ぶからね〜!」


 アルっちって…まあいいか。


「それで、何を聞きたいんだ?」


「うーんとね…アルト君は彼女とかいるの?」


 クラウスが質問してくる。ありきたりな質問だな。


「いないぜ」


「どうして男の子のアルト君がこの学園に?」


「…悪い、俺もよくわかっていないんだ」


 カナリアの質問には誤魔化すように答えた。行方不明事件を調べる為とか言えないからな。


「アルっちはご飯作れる?」


「作れるぞ」


「デザートは⁉︎」


「作れる」


 デザートを作れると聞いたクラスメイト数人がおぉ! という声を上げる。


「アルっち! 今度ケーキ作って!」


「私も!」


 ほ、本当に女の子って…甘い物が好きだなぁ…。


「わかった! わかったから!」


 テンションが上がるクラスメイト達を落ち着かせたが、デザートを作る約束をしてしまった…。

 この人数分…骨が折れそうだ…。


 ため息を吐きながら、俺は三時限目の授業を受ける事にした…。




 三時限目が終わった後、俺はトイレを済まし、教室へ戻ろうとしたその時、声をかけられた。


「ちょっといいかしら、麻生君?」


 彼女は…確かにアレイナ・リングベルト…。同じクラスのクラスメイトだ。

 金髪のウェーブの髪が特徴のクラスの人気者だと聞くが…。


「リングベルトさん…だったよな? 何か用な?」


「…私は…麻生君…」


 突然、リングベルトが俺に近寄り、髪を撫でる様に触れてきた。


「私は…あなたに興味があるの」


 相手を誘惑する様な彼女の声に俺は警戒を始める。まるで女性の魅力で男を堕とすかの様な状況で俺を見続ける。


「興味…? どう言った意味での興味だ?」


「勿論…男として、よ」


 髪から伝い、胸に手を置いてきたリングベルト…。

 成る程…。やはり、コイツは俺を誘惑して堕としにかかっているな。


「お願い…私の男になって…。私と一つになろう?」


 耳元でそう呟くリングベルトの両肩に手を置いた俺は彼女を引き離した。


「悪いが俺は君と一緒になる気はない…。だから、君の頼みは聞き入れられない」


「どうして? こんなにもあなたの事を想っているのに…」


 悲しそうに目元に涙を浮かべる彼女を突き放す様に俺は言い放つ。


「本当に想っている人間は…相手を陥れる様な態度を取らない。それに…君が俺の何を知っていて、何を想っているんだ?」


「…」


「何も君が嫌いなワケじゃない。まず君とは…友達になりたいんだ」


「…そう。わかったわ」


 まるで相手を見下す様な視線を向けてくる彼女は俺の前から立ち去った…。


 アレイナ・リングベルト…注意しなければならないな…。






 昼休みとなり、昼食を早く済ました俺はアイムの様子を見に行く為、一年の教室にまで来ていた。

 妙な視線が集まるなか、アイムのいる1ーAの扉を開けるとまたもや視線が集まる。


「すみません、アイムはいますか?」


「あ、此処にいますよ! お兄さん!」


 一人の生徒がアイムのいる方向を見た。

 …ん…? お兄さん…?


「アルトお兄ちゃん!」


 スタスタ、とブカブカの制服を揺らしながら、アイムが俺の元に駆け寄ってきた。


「様子を見に来てくれたの?」


「あ、ああ…。まあ、な…。ってか、随分と馴染みがあるみたいだな」


「もう慣れた」


 慣れたって…あの人見知りのアイムが…⁉︎


「お兄さん!」


 すると、今度はアイムのクラスメイト達が駆け寄ってくる。

 だから、お兄さんって何なんだよ…?


「聞きました。アルト先輩は優しいお兄さんだと!」


 クラスメイト達の中心にいた緑髪の少女が話しかけてきた。

 優しいお兄さん…? って、まさか…!


「アイム…お前、クラスメイトのみんなに何言った?」


「特に何も…。優しくて、格好いいお兄ちゃんとしか言ってない」


 結構言ってんじゃねえかよ⁉︎


「お前な…」


「お兄さん! 私はシャリティア・ガーナ…みんなからシャッティと呼ばれています! その…アイムちゃんとはお友達をさせていただいています!」


 ガーナさんか…。


「そんなかしこまらないでくれよ。それからお兄さんはやめてくれ」


「やめません! 話を聞く限り、あなたは私の理想のお兄さんなのですから!」


 いや、俺はガーナさんの兄ではないが…。


「だから、これからもよろしくお願いします!」


「あ、ああ…。よろしくな」


 すると、昼休み終了のチャイムが鳴り響く。


「そろそろ戻るよ。…みんな、アイムの事よろしく頼むよ?」


 俺の言葉にクラスメイト全員ははい! と答えてくれた。いいクラスじゃねえか…。




 教室に戻った俺は残り二授業を受け、放課後になった。

 教科書を鞄にしまい、用意された寮へ戻ろうとしたその時、リングベルトに呼び止められた。


「麻生君…二人で話がしたいから、視聴覚室に来れる?」


「構わないが…此処ではダメなのか?」


「ええ。大事な事だから…。じゃあ、待ってるわね」


 それだけを言い残すと彼女は教室を後にした…。


そんな彼女の去り姿を見ていた俺にマリル、カナリア、フェルトが話しかけてきた。


「アルト君、リングベルトさんと知り合いなの?」


「嫌、さっき話しかけられたぐらいだ」


「気をつけてね、アルト君」


「リングベルトさん…悪い噂しか聞かないんだ…」


 仲の良い相手を愛称で呼ぶフェルトが普通に呼ぶと言う事は彼女はリングベルトの事をよく思っていなんだな。


「悪い噂?」


 フェルトの呟いた言葉に俺は疑問を抱くと、右隣の席で声をかけてくれたスズカ・シャーネルさんが説明を始める。


「彼女はね、麻生君…。気に入らない生徒がいると精神的に追い詰めて、学校を辞めさせるの。それに彼女は特に…男嫌いなの」


 男嫌い…?


「どうして?」


「理由はわからないわ。…でも、行くなら気をつけてね」




 シャーネルさんの忠告に頷き、俺はリングベルトの待つ視聴覚室に向かい、着くと同時に扉を開く。


 すると、そこには窓の外を眺めるリングベルトが待っていた。


「来てくれて、ありがとう。麻生君」


「話って、なんなんだ?」


「どうして男のあなたがこの学校にいるの?」


 …やはり、俺の存在が気に入らないみたいだな。


「クラスのみんなにも言ったけど、俺だって理由を知らない」


「…そう。それとね、どうして私があの時、あなたに詰め寄ったか、わかる?」


 理由はだいたい分かっていたが、俺はさあ? と敢えてわからない様に答えると、彼女は不敵な笑みを浮かべ、ニヤリ、と笑った。


「あなたの様な男を…この学校から消すためよ!」


「何故、俺をそこまで消したがる?」


「男はみんな下劣で存在価値のない…。ただのゴミだからよ!」


「男がいなければ君も存在しない。その言葉は君の父親にも対する侮辱に…」


「私に父なんていない!」


 父親に対する侮辱になるぞ、と言うとしたが、彼女の荒げた声にかき消される。その表情は憎しみが篭っていた。


 やはり、ただ単に男が嫌いなワケではない様だな…。


「麻生君、この学校から出て行って」


「悪いが、それは出来ない」


「だったら…アンタは地獄の底まで突き落としてから消してやるわ」


 そう言うと、彼女は来ていたブレザーを脱ぎ去り、カッターシャツの胸元を勢いよく引っ張り、ボタンが音を立て、外れ、胸元をはだけさせた。

 微かに見える下着から視線を逸らした俺は彼女に尋ねる。


「何の真似だ?」


「此処で私が助けてと叫べば…あなたは終わりね」


 俺が彼女を襲った様に思わせるつもりか…! 流石にこれはまずい…!


「お前…!」


「そうよ! 怒れば怒るほど、あなたは底に落ちていくの!…じゃあ…」


 リングベルトは息を大きく吸い込み、叫んだ。


「助けてぇぇぇぇぇっ‼︎」


 彼女の叫び声が視聴覚室中に響き渡った。これはおそらく外にまで聞こえているだろう。


 どうする…⁉︎ こんな所を見られたら、終わりだ…!


「どうしたの、リングベルトさん⁉︎」


 視聴覚室に入って来たのはシャーネルさんだった。

 まずい…!


 シャーネルが入って来た事に心の中で恐らく笑みを浮かべたリングベルトは彼女に泣きついた。


「シャーネルさん…! 突然、麻生君が私を押し倒して来て…私の服を…!」


 リングベルトの嘘の言葉を聞いたシャーネルが俺を睨む。


「麻生君、あなた…!」


 此処で何かを言っても誤解させるだけだ…どうする…?


「シャーネル、俺は…」


「…大丈夫よ」


 シャーネルの大丈夫という言葉に俺とリングベルトはえ? と声を出した。


「だって…全て知っているもん。麻生君が何もしていない事も…リングベルトさんが麻生君を嵌めようとした事もね」


 キッと、リングベルトを睨みつけるシャーネルに俺達は驚いた…。


「リングベルトさん…あなたの悪事もここまでだからね」


 一言で言えば、頼りになる…。そんな事を思い、俺は思わず、彼女をずっと見てしまった…。


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