学生
「兄妹?」
聖ミリアルド女学園へ向かう馬車の中で俺のある提案を聞いたアイムは小首を傾げた。
「そうだ。学園内では俺とアイムはそれぞれ別学年として、編入されるようでな。それなら、怪しまれない様に俺達は兄妹という設定にした」
年齢的に見れば、腹違いの兄妹と見えてもおかしくはないだろう…。
「怪しまれる様な事があるの?」
「聖ミリアルド女学園の生徒の大半は自分の実力や技能に過信しがちな所があってね…。君達の事を知らない生徒達が多いと思うんだ」
こう言ったエリート学園には必ず、上位者と下位者という分別がされる傾向がある。決して、下位者も実力不足ではないのだが、過信している上位者はその事に気が付かず、下位者を見下す…同じ学園に通う仲間なのにな…。
「まあ、突然編入してくる生徒に対し、何かと絡んでくるモノだからな。それに、兄妹の方が一緒にいても、変な噂とか立てられたりしないだろ」
「変な噂…?」
頼む、アイム。今ので察してくれよ…。
「だ、だからよ…。お前と俺が共に行動している所を目撃した奴等に俺達が付き合っているとか思われるだろ?」
「私は気にしない」
「俺が気にするっての!」
それに俺がロリ好きとか思われても困るしな…。
「でも、兄妹も似たようなモノ…」
「え?」
「ルルお姉ちゃんが教えてくれた。…いつも一緒にいる兄弟はブラコンとシスコンになるって」
アイムに何を教えているんだよ、ルル!
「流石にそうはならねえよ! 兎に角! 学園にいる間、お前は麻生 アイムだ!」
「わかった」
この先…少し不安だが、まあ…何とかなるだろ…。
「二人共、学園に着き次第、学園長室へ向かうよ。他の生徒達に見つかって、騒がれると面倒だしね。制服もそこで渡すよ」
ヴェイグの言葉に頷き、俺とアイムは聖ミリアルド女学園に着くまで学園についての資料を読んだ…。
数時間後、馬車が止まった事を確認し、俺達は外を見ると、大きな校舎が見える。
「此処が聖ミリアルド女学園…」
「資料では一応確認したが、実物を見ると、ホントデカイな…」
「さあ、二人共。着いて来てくれ」
俺とアイムはヴェイグに連れられ、学園の中に入り、学園長室の前まで来た。
「…学園の中が綺麗…」
キョロキョロと、初めてのモノを見る子供の様に目を輝かせるアイムを見て、俺も微笑んだ。
そして扉をノックし、俺達は学園長室へ入るとそこには腰まで届く黒髪にアホ毛が目立つ目がキリッと、鋭い女性が席に座っていた。
「ミリム・マーラン学園長…私は聖凰騎士団から派遣されたヴェイグ・クルスです」
握手を求め、手を差し伸べたヴェイグの手をミリム・マーラン学園長が握る。
「ふむ、来ていただき感謝します、ヴェイグさん。私がこの聖ミリアルド女学園の学園長をしているミリム・マーランです」
この人が学園長か…。
「それでヴェイグさん…この二人が…」
「はい。今回調査に協力してくれるギルド、可能の星の二人です」
「ギルドリーダーの麻生 アルトです」
「アイム…。この学園では麻生 アイム」
嫌、学園長の前では言わなくていいんだよ。
「初めましてだな、会えて光栄だ。よもや、ガイールとコルドブームを救った有名人と出会えるとは…」
「学園長、俺もアイムも調査とは言え、この学園に編入する生徒です。普通通りに接してください」
俺の言葉を聞いたミリム学園長はフッ、と笑い、煙草を吸い始めた。
「では、こちらも通常通りやらせてもらう。まずはこれを見てくれ」
席に座った俺達に見せられたのは女子生徒五人が映った資料五枚だった。
「この人達が…行方不明になってしまった生徒達ですか?」
「はい。学年も実力も性格も全く違うこの五人が行方不明となってしまった…親御さん達は大変悲しみ、こちらに注意不足と苦情も言ってきた。まあ、実際はそうなんだがな…」
悔しそうに手に持っていた煙草の箱をクシャリ、と握り潰すミリム学園長…。
確かに…目的も素性もわからない相手に大切な生徒を誘拐されたんじゃ、学園長も悔しいままだろうな…。
「だから、これ以上の被害を出さない為にもこの事件を解決して欲しい…!」
学園の名とか関係なく、生徒の為にミリム学園長は頭を下げているんだろうな…。
「勿論です、学園長。我々も全力を持って、事件解決にあたらせて頂きます」
「感謝します。…では、二人の制服を用意してある。着てくれ」
制服を受け取った俺とアイムは互いを見合った後、着替える為に別室に入り、制服を着込んだ。
「なんかこう言うのって久しぶりだな…」
別室から出た俺とアイムは制服姿をヴェイグと学園長に見せる。
前の世界以来だな…制服を着るのは…。
「…ブカブカ…」
アイムの制服はサイズがあっていなかったのか、ブカブカだった。
「済まないな、アイム…。お前に合う制服がなかったんだ」
「…別にいい」
「似合っているよ、二人共」
すると、学園長室に二人の女性が入って来た。
「紹介しよう。二人が通うクラスの担任となるコロネ・ヴィーシャとシルル・ガストンだ」
学園長の紹介の後、二人の女性が挨拶をする。
「コロネ・ヴィーシャよ。麻生 アルト君、あなたの担任になるわ。ちなみに私のクラスは2ーBよ」
「私はシルル・ガストンです! 1ーAでアイムさんの担任となります!」
この人達が俺たちの担任なのか…。
「アルト…私も一応教師として、学園にいる。困った事があったら言ってくれ」
「了解だ、ヴェイグ…先生?」
その後、俺達はヴィーシャ先生とガストン先生に連れられて、廊下に出た。
「じゃあ、アイム。此処からは別々だから、気を付けろよ」
「うん。お兄ちゃんも頑張って」
「だから、先生達の前ではお兄ちゃんって、呼ばなくても良いんだよ!」
それから先生方…ニヤニヤしないでもらえます?
アイムとガストン先生と別れ、俺はヴィーシャ先生に連れられ、2ーBと書かれた教室の前まで来た。
「私が呼んだら来てね」
ヴィーシャ先生の言葉に頷き、彼女は教室の中へと入る。
…なんか、緊張して来たな…。
「麻生君、入って!」
ヴィーシャ先生に呼ばれ、俺は教室の中に入った。
教室内に入り、黒板型のモニターに俺の名前が映し出された。
「麻生 アルトだ! 訳あって、今日からこの学園に通う事になった。まあ…よろしく」
俺の自己紹介を聞いた生徒達の一部が鋭い視線を送ってきた。…大方、女子校に男子が来た事が気に食わないのだろう…。
まあ、何人か珍しそうな視線を送って来ているが…。
先生に机を教えてもらい、その席に座ろうとすると、右隣の女子生徒が声をかけて来た。
「よろしくね」
「あ、ああ」
何だ、気のいい奴もいるんじゃねえか。後で彼女の名前を聞くとしようか…。
「じゃあ、授業を始めるわよー!」
さて、授業が終わったら、情報収集でも始めるか。
一方、1ーAで自己紹介をしていたアイムはというと…。
「か、可愛い!」
「何この子⁉︎ お人形みたい!」
「…⁉︎」
アイムは生徒達から逃げるようにすぐさま、ガストン先生の背後に隠れるアイムを見て、ガストン先生はこの子はやっていけるのかと、思わず心配してしまったそうだ…。




