聖ミリアルド女学園に潜む影
ーガイール領にある学園の一つ…。聖ミリアルド女学園…。
此処では女子生徒達がモンスターと戦う為…そして、多くの人々を守る為、日々訓練や授業をしている学園だ。
この学園の転校生は騎士団に入団したり、冒険者になったりしている。
「ふう…。今日も疲れたぁ…」
夜遅くまで実技授業を行なっていたのか、寮へ戻る為、一人の女子生徒が夜の学園を歩いていた。
「部屋に戻ったら、お風呂に入って、明日の予習しないと…」
この後の計画を頭で軽く考えた女子生徒は歩く足を早める。
…だが。
ビチャ、ビチャ、と本来ならば聞こえないはずの水の音が聞こえる。それもまるで足音の様なテンポでだ。
「誰⁉︎」
この様な夜道で謎の音が聞こえ、女子生徒は怯えた様に振り返るが、そこには誰もいない。
「…気の所為…よね…?」
ホッと安心した彼女はゆっくりと視線を前へ戻したが、突然目の前に黒い影が存在していた。
「…えっ⁉︎」
黒い影の正体はその場にいた彼女しかわからず、その影の姿を見たと同時に女子生徒は意識を失い、夜の暗闇にへと消えた…。
ー翌日…。
昨日の女子生徒は寮にも戻っておらず、行方不明となっていた。
その情報は学園長の耳にいち早く届いていた…。
「また、この学園で行方不明者か…!」
彼女の様に既にこの学園では何人モノ女子生徒が行方不明となっている事に学園長は頭を悩ませる。
「目撃者は必ず、行方不明になってしまう…。だから、犯人の正体が掴めない…。こうなれば…!」
学園長はこのままでは学園の存亡に関わる可能性を考え、通信機を手に取る。
「もしもし、聖王騎士団ですか…?」
この行方不明事件を聖王騎士団に頼る事にしたのだ…。
ー一方、学園長からの連絡を受けた聖凰騎士団ではルーク大隊長とヴェイグやアルネ…それから前回の傷が癒えたウィーズが会議室で話をしていた。
「行方不明事件…?」
「あぁ。此処最近で何人モノ生徒が行方不明となっている様だ」
「誘拐の類…ですか?」
ただ行方を晦ましたのではなく、行方不明者が誘拐された可能性をヴェイグは考える。
その彼の考えにルーク大隊長は頷く。
「学園長の話ではどの生徒も特に学園に不満などを抱いている様子のない生徒ばかりだった様だ。…それにどの生徒も夜の間に行方不明となっている」
「…夜…。犯人の目的は何なのでしょうか…?」
話を聞いたウィーズが犯人の目的を問うが、ルーク大隊長は首を横に振る。
「それはわからん。…だが、魔虎牙軍が何かしら動いたのかもしれん」
「魔虎牙軍…」
この行方不明事件は、コルドブームの事件以来、全くと言っていいほど、動きを見せて来ない魔虎牙軍の仕業ではないかと、ルーク大隊長は口にする。
「犯人並びに目的は不明だが、これ以上の行方不明者を増やさない為にも学園長直々に我々へ調査の依頼が出た。…ヴェイグ」
「はい?」
「お前はその学園に教師として、潜入し、犯人の正体を掴んで欲しい」
ルーク大隊長の言葉にヴェイグは頷くが、ですが、と付け加える。
「了解しました。…ですが、聖ミリアルド女学園は大変大きな学園です。…私一人では全てを見回る事は手を焼くかと…」
「…うーん…僕とウィーズは別の任務があるからね…」
どこも手一杯でこの件に手を出せるのはヴェイグしかいなかった。
「…すまない、ヴェイグ。お前にしか頼めない事だ」
申し訳なさそうに謝るルーク大隊長を見て、ヴェイグは少し考える。
だが、すぐに何かを思いついたかの様に顔を上げる。
「…そう言えばいたじゃないですか! 我々に協力してくれる男が…」
「…そうだったな! よし、ヴェイグ。早速アイツ等の下へ向かってくれ。報酬に関しては私がメルド様に駆け合ってみる」
「了解。まあ、彼ならば必ず手伝ってくれると思います」
フフッと、得意げに笑ったヴェイグは会議室を後にした…。協力してくれるだろう人物の下へ向かうために…。
聖ミリアルド女学園の近くの草原にスズカがいた。
彼女は魔法杖を持ちながら、精神を落ち着かせる様に目を閉じている。
風の音がサァー、と響く中、無防備の彼女を襲おうと熊のモンスターが突然、現れ彼女に向かう。
だが、キッ、と目を開いたスズカはバックステップで攻撃を避けつつ、《魔弾》で数発放ち、熊のモンスターにダメージを与える。
それでも倒れる事のない熊のモンスターは雄叫びを上げ、その鋭利な爪でスズカを斬り裂こうとするが、スズカが発動した《バリア》で防がれる。
「パワーはなかなかだけど…まだまだね」
《バリア》で攻撃を防ぎ切ったスズカは杖で熊のモンスターを殴り飛ばした。
そして、地面に倒れる熊のモンスターに向けて、スズカは杖を向けると先端がスパークし始める。
「相手が悪かったわね、熊さん? じゃあね、《一直電雷》!」
一直線の雷が熊のモンスターを貫き、熊のモンスターは感電しつつ、絶命し…消滅した。
戦闘を終えたスズカはふう、と息を吐きながら、経験値が入った事を確認する。
「ざっとこんなモノね」
「スズカ様」
学園に戻ろうと足を動かそうとした彼女にスーツの男が話しかけてきた。
「ノエル…どうかしたの?」
「昨日の夜…またもや人が失踪したそうです」
「…また、か…」
スズカにドリンクを手渡しながら、昨日の行方不明事件について話すノエルという男。
「それを受け、学園長は聖王騎士団に連絡を送ったそうです」
「…そう。随分と遅かったわね」
ドリンクを飲み干したスズカは遅すぎる学園長の対応に息を吐く。
「聖王騎士団から騎士が一人派遣される様なのですが…」
「騎士が一人? それにしても人手不足なんじゃない?」
「…聖王騎士団は彼と友好的な関係を気づいています」
彼…という言葉を聞いたスズカは嬉しそうに笑みを浮かべる。
「という事は…彼が来る可能性があるということね!」
先程の落ち着いた様子から一変し、まるで子供の様にはしゃぎ出すスズカを見て、ノエルはクスリ、と笑う。
「ねえ、ノエル⁉︎ 彼に向けて、何か作った方がいいかな⁉︎」
「それは素晴らしい事です、スズカ様。…ですが、まずは学園へお戻りください。授業が始まりますよ」
「はいはい。わかったわよ」
今から授業かと思い、彼女はゲンナリ、しながら学園へ向かった…。
そんな彼女の後ろ姿を見つつ、ノエルもある人物と出会える事に心の中で楽しみにしていた。
「メリル…私もあなたと出会える事を楽しみに待っていますよ」
ある人物…メリルの事を思い浮かべたノエルはスズカの後を追った…。




