会合
長かったコルドブーム編もこれでラストです!
イヤー、本当に長かった…笑
俺の過去の事を話すとメリルの方から嗚咽が聞こえてくる。
「おいおい…お前が泣く事か?」
「だって…大好きだった人が目の前で…」
「…まあ、歌音の死を何とか乗り越えようとしたが…酷かったのはその後だったな」
「何が合ったのですか?」
…忘れるワケない…。歌音が死んだ事による罵倒の嵐を…。
「…歌音に想いを寄せていた奴等が流した噂…。俺が歌音を見殺しにしたという情報の影響で、俺に待っていたのは罵倒の嵐だった」
「そんな…!」
「…当然かもな。俺は歌音の側にいたのも関わらず、彼女を救う事を出来なかった…。俺が無力だったから…歌音を助けられなかったんだ…」
悔しそうに拳を握る俺…。
「アルトさん…」
「俺は大好きだった女を守れなかった…。そんな俺が不可能を可能にするって…笑えるよな?」
自分に対する皮肉の言葉を口にすると壁の向こう側からメリルの否定する声が聞こえてきた。
「笑えません!」
「え…」
「その経験があったからこそ…今のアルトさんがあるのではないのですか⁉︎」
今の俺…。
「誰がアルトさんを罵倒しようが、私達はアルトさんの味方です!」
「メリル…」
「だから、アルトさん…。これからもみんなの不可能を打開してください。あなたは…可能の星のリーダーなのですから」
…全く、俺はいつもメリルに元気付けられるな…。
「そうか…。ありがとな、メリル」
「はい!」
恐らく満面の笑みを浮かべているであろうメリルを思い浮かべつつ、俺達はそれぞれ上がり、就寝した…。
翌日…。
コルドブームにメルド様とリィル様…そのボディガードにヴェイグとルークさんが来ていた。
「アルト! 無事で何よりだ!」
メルド様とリィル様の護衛をそっちのけ、ヴェイグが俺達に話しかけてきた。
おい…ボディガードが護衛対象をそっちのけにするなよ…。
「心配かけて悪かったな、ヴェイグ…。それよか、良いのか? メルド様達についていないで」
「それはルーク隊長が就く。私の仕事は君のフォローだ」
俺のフォロー…?
「どうして俺のフォローなんかに…?」
ヴェイグに疑問をぶつけると彼はアレ?、と首を傾げた。
「聞いていなかったのか? この会合の最後…君にも国民に対して一言話をしてもらうようだよ」
…ハァッ⁉︎ 何だよ、それ⁉︎
「聞いてるワケないだろ⁉︎ どうして俺も国民に話をしなきゃならないんだよ⁉︎」
「それは君がこの国を救った英雄だからだ」
「あ、成る程…」
「それなら納得」
「するなぁッ‼︎」
コイツ等…他人事だと思って…!
そして、ついに会合室でガイールとコルドブームの話し合いが始まった。
「初めまして、メルド・ガイール殿。…ワシはコルドブーム国王、オルレスト・ブームです」
「ガイール国王、メルド・ガイールです…。さて、話なのですが…」
「その事について、まずは謝罪したい」
謝りたいとオルレスト様は立ち上がった。
「この度…我々の不注意にリフィル皇女とそちらの国民達を巻き込んでしまい、誠に申し訳ない…」
何と、国民も見ているこの会合でオルレスト様は頭を深々と下げた。
その行為には国民達は勿論、俺達やメルド様達も驚いた。
「許してもらえるとは思っておりません。何せ、言葉通り生命懸けだったのですから…」
オルレスト様の言う通りだ…。実際、俺も一歩間違えれば死んでいた可能性もあったからだ。
「ですから…どの様な罰もお受けします。…ワシにこの国の国王から失脚しろと言うのなら…ワシはそれをお受けします」
…オルレスト様…⁉︎
「そ、そんな…!」
「自分で国王から降りるって言うなんて…」
「それ程本気…」
オルレスト様、あなたは…!
「ですが、国民やアイリには罪はありません…。もし、ワシに国王を辞めろと言うのであれば…メルド殿、この国をお任せしたい」
「お父様…」
「…何をお思いなのかは存じませんが、私は罪を追求致しません」
メルド様の言葉にオルレスト様は驚いた。
「メルド殿…」
「変わりと言っては何ですが、我々ガイールと同盟を結んでいただきたい」
同盟か…。今まで敵対国同士だったが、うまく行くのか…?
「こちらこそ…よろしくお願い致します」
何事もなく、メルド様とオルレスト様は握手をした…。
「…どうやら上手くいったようですね」
「敵対国同士が手を取り合って共に生きていく…。これはどっちの国も変わりそうだな」
マギウスの言う通り…二つの国が変わっていくのはこれからって事だな。
「さて、最後に…この国をお救い下さった麻生 アルト殿に話をしてもらおう」
…マジで来たよ…。
「アルトさん、頑張ってください!」
「無様を晒さない様にね」
ヴェイグの奴…覚えていろよ。
ため息を吐きながら、俺はモニターの前に立った。
「コルドブーム並びにガイールの国民の皆様…俺はギルド、可能の星のギルドリーダーをしています。麻生 アルトと申します」
このモニターの先で…両国の国民達が見ているんだろうな…。
「皆さんは魔虎牙軍が表立って行動し出した事に恐怖を抱いていると思います。…正直、俺も恐怖に包まれています」
メルド様達は沈黙を貫き、俺の話を聞いている。
「ですが、約束します。…俺達が必ず、魔虎牙軍の野望を阻止します。彼等を倒す…そして、皆さんを守ってみせます。不可能だとお思いの方々もいらっしゃると思いますが…俺達は可能の星…。不可能を打開し、可能に変えるギルドです。これからも俺達は皆さんを守る為に戦います!」
頭を下げた俺…。俺自身には聞こえなかったが、両国の国民から歓声の声が上がっていた様だ…。
その後、会合後のパーティーが行われ、俺はアイリとリフィルに囲まれ、酒を飲んでいた。
「明日になったら…アルト達は帰ってしまうのよね?」
「…ああ。依頼が溜まってる可能性もあるからな」
「そう…」
寂しそうに俯くアイリの肩に手を置く。
「また遊びに来るって!」
「その時は私も一緒に行くわ!」
「アルト…リフィルさん…うん!」
アイリの笑顔を見て、俺とリフィルは微笑んだ…。
今回の会合でガイールとコルドブームの蟠りが全てなくなったワケではない…。だが、時期の皇女であるリフィルとアイリならば、この二つの国を変えてくれるだろう…。
そして、翌日…。俺達はアイリ達に見送られ、コルドブームを後にするのであった…。
ーガイール領のある学園に一人の女子生徒がいた。
彼女はモニターに映るアルトの姿を見て、クスリ、と笑う。
「麻生君…随分頑張っているみたいね」
「…それで、どうしますか? スズカ様…」
「決まっているわ」
モニターを切ったスズカという男は背後に立っていたスーツの男に告げる。
「彼に会うわ。…彼の力になる為に…」
魔術師の杖の様なモノを握りしめた彼女の瞳には前の世界の服装に身を綴んていたアルトの姿が映っていた…。




