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ジョブ無し転移者の技能複写  作者: カイト・レイン
第七章 コルドブーム編
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アルトの過去


 オルレスト様から告げられた言葉…。それには俺達は大いに驚いた。


「な、何をおっしゃっているのですか! オルレスト様!」


「そ、そうです! お父様! …どうして私がアルト何かと…!」


「何かとは何だよ⁉︎」


「だ、だって…!」


 口喧嘩を始めた俺とアイリを見て、更にオルレスト様は大いに笑う。


「息もピッタリではないか! ワシも早く孫が見たいモノだ」


 孫って…気が早すぎるだろ…。


「アルトさん…」


「人気者は辛いですね」


 何故、ジト目で俺を見るんだ? メリル、ルル?


「…どうだ? アルト殿。娘は美しいであろう?」


「それはまあ…可愛いですが…」


「か、かわっ…⁉︎」


 …やっちまった。何か言葉ミスったか?


「あー…兎に角、言うと…! アイリに俺は似合わないんですよ」


「…アイリが不満という事か?」


 父親として、今の言葉に不満を持ったのか、凄まじい殺気を向けてくるなぁ…。


「…いえ。アイリはお世辞なく美しくて優しいです…。ですが、俺と人生を共にすれば…必ず不幸を見ます」


「ア、アルト…?」


「…ちょっと外の空気を吸ってきます」


 歌音の事を思い出した俺は悔しそうに歯軋りをして、逃げる様に病室を後にした…。







 病室から出たアルトを見送ったメリル達は互いの顔を見合った。


「不幸を見る…どうしてアルトはそんな事を…?」


「…わかりません…。(そう言えば、前の世界のアルトさんの事を…私は詳しく知りません…。前の世界で…何かあったのでしょうか…?)」


 アルトが出た扉を見つつ、メリルは前の世界のアルトの事を考えるのであった…。







 身体の体力が回復した俺達は二日間、コルドブームに滞在する事になった。

 何でも、明日にメルド様とオルレスト様の会合が開かれる様で俺達はその護衛を任される事となった。


 魔虎牙(まこうが)軍がこの国から出たとしても、油断はできないからだ。


 みんなが寝静まった夜…俺は風呂に入っていた。余程寝過ぎていたのか、寝付けなかった。


「…結局、技能複写(スキルコピー)灼焉の魔眼(レッド・アイ)の時に聞こえてきた声は何だったんだ…?」


 声はそれぞれ別の人物だった…。技能複写(スキルコピー)は男、灼焉の魔眼(レッド・アイ)の時は女…。


 知らなければいけない事が沢山あるが…。           

 兎に角今は魔虎牙(まこうが)軍をどうにかしないとな…。


「…そこにいるのはアルトさんですか?」


 風呂場の壁の向こうからメリルの声が聞こえてきた。…メリルも入っているのか?


「メリル…? お前も寝付けないのか?」


「はい…。何となく目が冴えてしまって…」


 だが、これはこれで気不味いな…。


「あの…アルトさん。少しお聞きしてもよろしいでしょうか?」


「…何だ?」


「私…前の世界のアルトさんの事を何も知りません…。イネスさんには資料も見せてもらえませんでしたし…」


 女神の所にはやっぱり、転移者や転生者の資料とかあるのか…。


「アルトさんと共にいると、不幸になるとは…どう言う事なのですか?」


 …そこが気になっていたのか…。


「…そうだな。お前には話しても良いかもな」


 お湯の水面に浮かび上がる自分の顔を見つつ、俺は語り出した…。

 好意を寄せていた女性…村雨 歌音の事を…。







 ー数年前…。

 これは俺がまだ十四歳だった頃の話だ…。


 俺には幼馴染がいた…。村雨 歌音…。昔から良く遊んでいた彼女に俺は淡い好意を寄せていた。

 彼女が笑った顔…喜んでくれた顔…。それを見るだけで俺も嬉しい気分になる。


 今日はテストが返される日だった。全教科の答案用紙が返されると歌音が駆け寄ってくる。


「ねえ、アルト! テストどうだった?」


 満面の笑みで問いかけてくる歌音…。余程テストに自信があるようだな。


「…そこそこの出来だ。ほら」


 帰ってきたテスト全てを彼女に見せると何故か引きつった顔をしだす。


「どうしたんだ、歌音?」


 引きつっている理由を知っているが、知らない風に俺は問いかけると手に持っていたテストを俺の机に、バァン!、と叩き付ける。


「ま、また負けたの⁉︎」


 負けたと悔しがっていたので、机に叩きつけられたテストに目を通すと全て八十点代だった。


 …俺は全て九十点代だったが…。


「残念だったな、歌音。また俺の勝ちだ」


「そ、その勝ち誇った顔…! ホントにムカつく〜!」


「誇っているんじゃなくて、勝っているんだよ」


 うぬぬ、と唸っている彼女が面白くなり、俺は笑いを堪える事ができなくなった。


「つ、次は見てなさいよ!」


「はいはい」


 この何気ない時間…俺はずっと続けばいい…。そう思っていた。


 授業が終わり、俺は歌音と一緒に帰宅する事にした。


「ねえ、或都?」


 帰宅途中、不意に歌音が俺を見て、話しかけてきた。

 俺も彼女に視線を合わせ、話を聞く事にする。


「或都ってさ。将来の夢とかあるの?」


 将来の夢か…。

 ないんだよなぁ、それが。


「ないな。…っていうか、今生きる事に必死すぎて、将来の事なんて考える暇がない」


「えぇ〜? それなら目標とかはないの?ほら、何かしたい事とか!」


「…一日一日を懸命に生きたい」


「…それもうお年寄りが言う事だよ…」


 苦笑しながら、溜め息を吐く歌音に逆に尋ねる。


「じゃあ、お前の将来の夢は何なんだよ?」


「うーん…誰かのお嫁さんになる事?」


「それは…将来の夢に…なるのか…?」


 お嫁さんになるって…。

 まあ、歌音だっていつかは誰かと結婚はするとは思うが…。


「嫌、夢がない人に言われたくないよ」


 それは将来の夢とは言い難い、と告げてやるが、不満そうな表情で顔を逸らした。


「それならさ、或都! 私が或都の将来の夢を決めてあげる!」


 人の将来の夢を勝手に決めるなよ…、と俺は呆れる。

 だが、少しはどんな夢を言ってくれるのか、興味はあったので尋ねてみる事にする。


「それで…? どんな夢にしてくれるんだ?」


「うーん…じゃあさ! ずっと…私の事を守ってくれる…とかはどう?」


 微かに頬を赤く染め、笑みを浮かべながら、俺の夢の候補を話してくれた。

 その彼女の笑みに見惚れてしまった俺は言葉が出なかったが、数秒後に我を取り戻し、問いかける。


「…お前、それって…告白のつもりか?」


 告白、その単語を聞いて、歌音はアタフタ、と慌て出す。


「そ、そんなワケないでしょ⁉︎ だ、誰が或都に告白なんて…」


「そうだな。こっちだって願い下げだぜ」


 顔を逸らしながら、ボソボソ、と呟く歌音。

 俺も悪態をつくが、本当は少し嬉しさもあった。


 …勿論、冗談だと言う事はわかっているが…。


 俺の悪態の言葉を聞き、頬を膨らませ、怒った表情を浮かべた歌音はポカポカ、と俺の右腕を叩く。


 正直、全然痛くない。

 怒る彼女の頭にポン、と俺は手を置いた。


 そんな俺の行動にポカン、となった歌音は俺を見上げる。

 その彼女の表情を見て、クスッ、と笑った俺はすぐに口を開く。


「いいぜ」


「え?」


「守ってやるよ。お前の一人や二人…」


 我ながら、小恥ずかしい事を言ってしまったので俺は照れを隠す様に顔を逸らしながら言った。


 これ以上は限界だと、歌音の頭から手を離そうとするが、彼女に腕を掴まれた。

 突然の行動に俺は戸惑うが、彼女は満面の笑顔を向けてきた。


「じゃあ、約束だね! 絶対に守ってね!」


 小指を突き出してきて、指切りを求めてくる彼女に俺も微笑み、指切りをした。


 …守さ。

 何があっても、絶対に…。



 

 だが、数日後に事件が起きた…。

 学校付近に通り魔が徘徊する様になり、ウチの生徒も何人か被害に遭ってしまう様になった。


 警察も通り魔を捜索しているが、見つからず、被害者が一方的に増えていくだけだった。


 …朝、俺は登校し、教室に入ると…。


「なあ、それって本当なのか⁉︎」


「村雨さんが通り魔らしき男の人に連れ去られたって話⁉︎」


 …なっ…⁉︎ 歌音が…⁉︎


「何処にだ⁉︎」


 話をしていたクラスメイトに俺は問いかける。


「あ、麻生…⁉︎」


「歌音は何処に連れ去られたんだ⁉︎」


 クラスメイト達から話を聞き、俺はその場に向かうとそこにはナイフを向けられていた歌音と通り魔がいた。


「歌音!」


「あ、或都…!」


 何とか間に合った様だな…!


「う、動くな! 動くとこの女を殺すぞ!」


 通り魔が歌音の首元にナイフを突きつける。

 だが、その隙を突いた歌音が通り魔の腕に噛み付くと、通り魔はナイフを手放してしまう。


 ナイフが手元から離れた事を確認した歌音は俺の下へ駆け出してくる。


「或都!」


「歌音!」


 駆け寄ってくる歌音を迎え入れる様に俺も駆け出すが、歌音の背後にいる通り魔に視線が行くと見てしまう…。通り魔の手に拳銃が握られていた事に…。


「死ねェェェェッ‼︎」


 通り魔の叫びと共に銃声が鳴り響き、目の前にまで迫っていた歌音から血が飛び出て、そのまま彼女の身体は倒れた…。


「歌音!」


目の前に血を流し、横たわる歌音の姿があり、俺は彼女を抱き抱えた。

俺の服や手に彼女の血が付着するが、気にせず強く抱きしめ、俺の目から涙が流れる。


「或、都…ごめんね…。守られなくて…でも…或都が必死だったのは…わかっていた、よ」


弱々しくなっていく歌音の声…。

そんな彼女に俺は必死に叫ぶ。


「守られなくてごめんとか言うなよ!…俺だって…!お前を…守れなかった…!守るって約束したのに…!」


「フフ…嬉しい、なぁ…。その気持ちだけで…本当に、嬉しいよ…。大好きな、或都に…こうやって、抱きしめられているし、ね…」


大好きって…!


「ふざけんなよ…!こういうのは男から…俺から言うのが普通だろうが…!俺も…お前が好きだった!愛していたんだよ!」


涙を流しながら、俺の想いを歌音に打ち明かした。

それを聞いた歌音は安心した様な笑みを薄っすらと浮かべる。


「良かったぁ…私達、両思いだったんだね…。或都と一緒に…いれて、楽しかったよ…」


「何言ってんだよ!これからも一緒だ!…まだデートとかも…お前とはやりたい事が沢山あるんだよ!」


「…フフ、私も…だよ…。でもね」


ソッと彼女は涙が流れる俺の頬に手を当てる。


「私の幸せは…愛した或都が沢山幸せになる事…なんだからね」


「…俺の幸せは…お前と一緒に生きる事何だよ!歌音!」


「本当に…或都を好きになって…よかっ…た…」


最後に笑いかけた彼女はそのままゆっくりと目を閉じた…。

その目蓋はもう開かれる事がなかった…。


「お、おい…歌音…?嘘だろ?おい!…死ぬな、歌音!…クソッ…クソッ!」


彼女の…歌音の死を目の当たりにした。

だが、俺はその彼女を救う事もできず、叫ぶことしか出来なかった…。


「歌音…ウアアアアアアッ‼︎」


息を引き取った彼女を強く抱きしめながら、俺は泣き叫んだ…。


歌音を失った悲しさ…自分の無力さの悔しさ…全ての涙を込めながら…。


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