隠し部屋での絶望
ダンジョンに入った俺達は攻略を進めていた。襲い掛かってくるモンスターも問題なく相手に出来ていた。
だが、そこで俺は一つ、疑問に思ってしまう事がある。
…敵が弱すぎる…。
このダンジョンはまだ誰にも発見されていない。だが、この様な簡易なダンジョン、発見されていてもおかしくはない。
「アルトさん、どうかしましたか…?」
考え事をしていた俺が気になったのか、メリルが顔を覗かせる。
「…いや、何でもない」
疑問は消えないが、奥に進む以外…確かめる方法はない。
進むとするか…。
少し奥に進むと、俺達を待ち構えていたのはトラップだった。だが、それを俺達は難なく、クリアしていく。
途中、メリルが引っかかりそうになった事は余談だ。
暫くした後、俺達は軽く休憩を取る事にした。モンスターが現れない事を確認し、一息つこうとするとメリルがある提案を持ちかけてきた。
「アルトさん。私はそこまで疲れていないので、妖精の姿で奥を探索して来ます!」
「分かった。危険だと思ったら、戻って来いよ」
「はい!」
返事をしたメリルは妖精の姿へとなり、奥の方へとヒラヒラ、と飛んで行った…。
それを見送った俺はその場に座り込もうとした…その時だった。
背後の岩壁に違和感を感じ、岩壁に触れる。
すると、一つの岩がスイッチの様に押し込まれ、岩壁の中心に縦線の様なモノが現れ、左右に開かれた。
「隠し扉って事か…?」
岩壁が左右に開かれて、目の前には扉があった。
こんな分かりにくい隠し扉が本当にあるとはな…。
この時の俺は好奇心に駆られていたのかも知れない。
この扉の奥には何があるのか…。本来ならば、メリルの帰りを待つ所だが…。
俺は扉に手をかけ、開けてしまった。ギギギ、と音を立て、扉は開き、奥には暗闇が広がる。
俺は息を呑み、扉の中へと入る。中に入ると周りの明かりが点灯し、部屋は明るくなる。
部屋の中心まで足を進めた俺は部屋を見渡す。
宝箱は…なし。これと言っての罠もない…。
ただあるのは…。
大きな毒の沼だけだ。しかし、部屋の端に見つけてはいけないモノを俺は見つけてしまった。
それは骸骨…それもモンスターではなく、人の形を留めている。
白骨化した遺体…⁉︎
「な、何なんだここは…⁉︎」
毒でダメージを受けたのか…?
いや、流石にこの様な分かりやすい大きな毒の沼に落ちる奴はいない。
では、何故…?
俺の頭に何かの危険信号のサイレンが鳴り響き、すぐさま、この部屋から出ようとしたが…。
扉の方へ視線を送るとズシン!、と大きな音を立て、扉が閉まってしまう。
「しまった…!」
俺はすぐさま扉に駆け寄り、開けようとするが開かなかった。閉じ込められてしまい、他の脱出口を探そうと背後を振り返った…。
「ッ…⁉︎」
目の前には先程まで存在してなかった巨大な何かがあった。
その巨大な何かは大きな一つ目で俺の事を凝視してくる。
まるで獲物を見つけた獣の目の様に…。
相手の存在に息を呑んだ俺はゆっくりと口を開き、目の前の存在の名を口にした…。
「《サイクロプス》…⁉︎」
巨大な一つ目をギロリと、動かしたモンスター《サイクロプス》は雄叫びを上げる。その雄叫びだけで、俺は軽く吹き飛ばされそうになる。
相手が動く前に無限鞄からあるモノを取り出す。
ステータスコープ…。
モンスターのレベルや属性、相性などが見られるアイテムだ。
俺はステータスコープを掲げ、目の前の《サイクロプス》に合わせる。すると、モニターが現れ、《サイクロプス》のステータス画面が表示された…。
そのステータス画面を見た俺は言葉を失った。
レベル96…⁉︎
どうしてそんな上級モンスターがこのダンジョンに…⁉︎
戸惑う俺に構わず、《サイクロプス》は拳を振り下ろしてきた。
それを横に回避する俺だが…地面を削る程の拳の衝撃に俺は吹き飛ばされたが地面を転がり、何度か立ち上がる。
衝撃だけで、この威力かよ…!
すぐさま、メリルに連絡する為にコンディションブレスを起動するが、圏外となっている。
ガルナからは聞いていたが、本当に連絡が取れないとは…!
こうなったら…!
今度は指輪の様なモノを取り出す。
エスケープリング…。
これを掲げ、「エスケープ」と叫ぶと、ダンジョンの外へワープできるアイテムだ。
「エスケープ!」
…本当ならば、ここでワープする…。だが、ワープは起こらなかった。
「なっ…⁉︎エスケープも出来ない…⁉︎」
エスケープ無効化の部屋なのか、ここは⁉︎
そしてここに来て俺はある事に気がつく。
白骨化した遺体、マップに記載されていたなかったダンジョン…。
その全てが一本の線に繋がった。
「そうか…。このダンジョンは発見されなかったんじゃない…! 発見されても、この部屋で脱出できなくなった多くの冒険者は《サイクロプス》に襲われ、アイツの餌食になったのか…!」
流れる汗が止まらず、俺は今、恐怖に襲われている。この部屋から出る為には奴を倒さなければならない…。
だが、アイツのレベルは96…。80以上も差がつき、セイラ・グルントの時とは格が違う…。
どうすればいい、と俺は思考をめぐらせていくが、答えが出ずにいる。
そんな俺に構いなしと、《サイクロプス》は攻撃を仕掛けてきた…。




