力の代償
気がつくと俺はまたもや暗闇の中にいた…。ワルガンが去った後、そう言えば、血を吹き出し、気を押しなったんだったな…。
「…ってか、何でまたここに…?」
『それは貴様が倒れた理由を説明する為だ、人間』
俺の前に何かが現れる…。それは…。
「ガラン…⁉︎」
そう、ガランが変身していた《ドラグネス》だった。
『不愉快だ。私をあの様な貧弱な人間と一緒にするな』
え…? それじゃあ…この声は…!
「過去に存在した…《ドラグネス》本人なのか…⁉︎」
俺の反応に《ドラグネス》はやっとわかったのか、と息を吐いた。
「ど、どうしてお前が⁉︎」
『だから、言っただろう?貴様が倒れた理由を説明する為だと』
俺が倒れた…あぁ、血を吐いて倒れたアレか。
『アレは灼焉の魔眼の影響で倒れたんだ』
「大きな力には…危険が伴う…」
『何だ、わかってんじゃねえか。…まあ、デモン技能なんて上位技能を使えば、そうなる。…使い過ぎには注意って事だ』
…最悪、死ぬ可能性もある…。
『それにしても貴様はこの力に対し、恐怖や後悔がないみたいだな』
「…元々自分から望んで手に入れた力だからな。力の代償ぐらいあるのはわかっていたさ」
俺の言葉を聞いた《ドラグネス》はほう…、と興味深そうに頷いた。
「それにしても…どうして、灼焉の魔眼の説明をお前が…?」
『何言ってんだよ? お前は俺の力を吸収したじゃねえか』
…はっ…⁉︎
「待て待て! どう言う事だよ⁉︎」
『そのままの意味だっての。お前は俺の力を技能複写の力で複写したじゃねえか』
技能複写を使った…⁉︎ いつ⁉︎ 何処で⁉︎
…いや、待て…確かあの時…!
そう言えば、ガランの身体から光の様なモノが俺の中に入っていったな…。
「もしかして…ガランから出た光の事か?」
その言葉に《ドラグネス》は頷いた。
「だが…特殊技能や技能を手に入れていないが…」
『当たり前だ。私が貴様をまだ認めていないのだからな』
…えぇ…?
「ちょっと待ってくれよ! 〈モンスタードラッグ〉によって、モンスター化した人間の技能は取得できないんじゃなかったのかよ⁉︎」
『灼焉の魔眼の力だ。これを使えば、人間が変化したモンスターや上級や超級のモンスターの技能を取得出来る様になる』
…成る程、だが、通常の技能複写と効果が全く違う様だな。
「つまり、灼焉の魔眼を発動している状態で技能複写を発動すれば、強力なモンスターの技能を取得できるが、それなりのレベルや権利の取得も必要という事か」
大きな力を手に入れる為にはその本人も強くならなければいけない…。わかりやすい様で難しいな…。
「…お前の技能を取得する為にはお前を納得させるしかないって事か」
『その通りだ』
そう簡単に力ってのは手に入らないモノだな…。
『そろそろ話は終わりだ。お前の目が覚める』
「《ドラグネス》…」
『勘違いするなよ、麻生 アルト…。私は貴様の味方となったワケではない。…少しでも気を緩めれば、私がお前を中から食い破る』
「望む所だ。…逆にお前を認めさせてやるよ。少しでも俺が強くなってな」
ニヤリ、と笑った俺を見て、《ドラグネス》はフッ、と笑った…。
『ならば、見せてみろ。麻生 アルト…。貴様の強さをな…』
そう言い残し、俺に背を向けた《ドラグネス》だったが、何かを思い出した様に振り返った。
『…一応、言っておく』
「ん?」
『あの様な小癪な人間から…私の力を解放してくれた事に感謝する』
その一言を残し、《ドラグネス》は姿を消した…。
…何だよ、案外いいヤツなんじゃねえか。
そんな事を思っていると、俺は光に包まれた…。
俺が目を覚ますと客室のベッドで俺は横になっていた。
周りを見渡すと俺が寝ていたベッドに顔を伏せて寝ているアイリとリフィルの姿が見えた。
「アイリ…リフィル…」
身体を起こし、今まで看病していてくれたのだろう…。二人には…悪い事をしたな。
二人の頭を撫でようとすると、扉が開かれた。
「ア、アルト様…?」
入って来たのは花が入った花瓶を手に持ったエルスカーネが入ってきた。彼女の背後にはメリル、アイム、マギウス、ルルもいた。
「アルトさん⁉︎」
「お前…起きたのか⁉︎」
喜んでくれるのは嬉しいが、あまり大声を上げると…。
「ふみゅ…?」
「…アルト…?」
ほら、リフィルとアイリが起きちまった…。
「「アルト!」」
「おあっ⁉︎」
二人に勢い良く抱きつかれ、俺はベッドに倒れ込んだ…。
「お、お前等…!わかったから、抱きつくのはやめてくれ!」
「心配させるアルトが悪いんでしょ⁉︎」
「血を吐いて倒れて…私達がどれだけ心配したのかわかっているの⁉︎」
そりゃ、心配させちまったけどよ…。
俺はメリル達に助けを求める視線を送ったが、アイムとマギウスには視線を逸らされ、エルスカーネには苦笑で返され…さらにはメリルとルルには何故か睨まれた…。
「わかった…わかったから…!悪かったよ、二人とも…」
二人を何とか落ち着かせるとアイムが問いかけて来た。
「マスター…あの時の力は何?」
アイムに尋ねられ、俺は答えた…。灼焉の魔眼やデモン技能の事を…。
「まさか、かつて失われたデモン技能を使用出来るようになるとは…」
「でも、その代償も大きい…」
俺の話を聞いたメリル達は普通に驚いていた。
まあ、かつて失われた技能を使えるようになれば、驚くのも無理もないか。
「アルトさん…あまり、その力は使わないでください」
メリルが心配した様に俺に|灼焉の魔眼を使うなと言ってきた。
確かにこの技能は諸刃の剣と同じだからな…。
「勿論、わかっているさ。だからこそ、この力に頼らない様になる様に俺はもっと強くなる。…みんなを守れる様にな」
俺が微笑むとメリル達もクスリ、と笑った…。
すると、扉をノックする音が聞こえ、扉が開かれるとそこから入ってきた人は…。
「見舞いに来たが…どうやら元気そうだな。無事で何よりだ」
傷の手当てを終えていたオルレスト・ブーム様だった…。
「オルレスト様…」
入って来たオルレスト様は俺の前に立ち、そして、俺の目を真っ直ぐと見続けている。
「麻生 アルト殿…」
何を言われるのかと、少し身構えた俺…。だが、次にオルレスト様が取った行動に驚く事になる。
「この国を救って頂き…真に感謝する…。そして、申し訳なかった…!」
何と、彼は俺に向かって、頭を下げてきた…。国の王様がだ。
「ちょ⁉︎ や、やめてください⁉︎ 頭をお上げください、オルレスト様⁉︎」
オルレスト様の突然の行動に俺は戸惑いつつも彼に頭を上げてもらう様にお願いをすると、彼は頭を上げる。
「実はそなたに…頼み事があるのだ」
「た、頼み事…?」
一体…何なんだ…?
「アイリと…我が娘の…婿となってくれ」
は…?
「え…⁉︎」
「ハアァァァッ⁉︎」
俺とアイリはオルレスト様の前とか関係なく、声を上げ、驚いてしまった…。




