ワルガン・ラフティ
俺達の前に現れた魔虎牙軍の首領…ワルガン・ラフティ…。
奴の存在はいるだけで威圧感があった。
「まさか、《ドラグネス》になったガランを倒すとはな。流石は今まで俺達の邪魔をしてくれた男だぜ」
パチパチ、と手を叩くワルガンに俺は灼焉の魔眼を解除しながらもエンゼッターを奴に向ける。
「だから、そう身構えるなよ。…俺はお前と戦いに来たんじゃねえんだからよ」
戦う意志はないとケラケラ、と笑うも奴から殺気と威圧感が消え去る事はない。
「…じゃあ、何しに来たんだよ?」
「来た理由は二つ…。まずはお前という男を見に来たんだ」
俺を…見に来た…?
「何度も俺の仲間や協力者の邪魔をしてくれたからな、お前は…。しかもウチの幹部であるガランさえも倒しやがったからな。流石に挨拶も含めて、会っておこうと思ったんだ」
ガランが魔虎牙軍の幹部だと…⁉︎ そうか…通りで部下の配置が的確なワケだ…!
「それにしてもデモン技能か…。お前、本当に人間なのか?」
何を言い出すだよ…。
「俺は紛れもない人間だ」
「そうか。…さて、ここに来た理由二つ目だが…麻生、俺達の仲間にならないか?」
何だと…⁉︎
「お前達の仲間…? つまり、俺に魔虎牙軍に入れって事か⁉︎」
「そうだ。ウチの幹部を倒したんだ。勿論、その穴を埋めなくちゃならねえのも事実…そして、お前の力は俺を含め、全員が評価している」
「…」
「あ、一人が嫌ならば、お前のギルドの仲間も連れて来ていいぜ」
どんな条件を突きつけられようと俺の答えは決まっている…。
「断る」
「…意外にあっさり答えたな」
「俺達は困っている人達を助け、不可能を可能に変えるギルドだ。…お前達の仲間にはならない!」
俺の覚悟の言葉を聞いたワルガンは面白くなったのか、声を出して笑った。
「そっか、そっか! いや〜、合格だぜ!」
合格…?
「試してやったんだよ。お前が怖気ついて俺達の仲間になるんだったら、此処でお前を含め、仲間全員を殺してやろうかと思ったが、やはりお前は俺達の仲間にならない方を選んだか」
「お前達は多くの生命を奪った…見逃してはおけない!」
お前達を見逃す事は出来ない…それを聞いたワルガンは不敵な笑みを浮かべる。
「それは俺達、魔虎牙軍に喧嘩を売るって事で良いのか?」
「そもそもすでに何度も交戦しているだろ? それに喧嘩を売るではなく…宣戦布告だ!」
「アルトさん⁉︎」
宣戦布告…そう、あの魔虎牙軍に対し、俺は宣戦布告をした。その事にメリル達は驚くが…。ワルガンはまたもや声を上げて笑う。
「ククク…! お前には恐怖ってモノを感じねえのかよ? 相手は聖凰騎士団と並ぶ組織だぞ? それに宣戦布告するって、正気か、お前?」
「…そうでもしないと…今まで散っていった生命に示しがつかない」
「…へぇ…」
何度か、頷いたワルガンは息を吐いた。
「それなら…次からは俺達が全力でお前達を潰してやるよ。…まあ、ウチには汚い手を使う奴もいるが…少なくとも俺はお前を全力でまっ真正面から潰す。お前との勝負は楽しめそうだからな」
「受けて立つ…! これ以上、無益な生命を散らさない為にも!」
睨み合った俺達…。奴の発する殺気と威圧感に押されながらも俺は顔を逸らす事はなかった。
「生命を散らさない、か…。だったら、いい事を教えてやる。…俺達、魔虎牙軍はコルドブームから出て行ってやる」
奴等がコルドブームから出て行く…?
「この国はガランが仕切っていたからな。奴がいなくなったから、この国に居座る必要はねえ。…だから、もうこの国は自由だ」
ワルガン・ラフティ…単純な悪い奴ではないのか…?
「さてと…俺はそろそろ帰るぜ。お前と会えて、本当に良かったと思っているぜ? 麻生…。次にあったら、全力の潰し合いだからな?」
「…あぁ、俺達は絶対に負けない!」
尚も折れない意志にワルガンは笑みを浮かべ、《ワープ》を使用して、奴はこの場を去った…。
ハァ…宣戦布告か…。我ながら強がりすぎたな…。仲間が危険に晒される場合もあるのに、俺はどうも止まることが出来なかった…。
「アルトさん!」
エンゼッターを鞘に戻した俺の下にメリル達が駆け寄ってくる。
だが、みんなが着く前にアイリが俺に勢い良く抱きついてきた。
「アルト!」
「おあっ⁉︎」
身構えていなかった俺はその勢いに負け、アイリと共に倒れ込んだ。
「ア、アイリ…! お前な…!」
軽く背中を打ち、抱きついてきたアイリに文句を言おうとしたが…。
「良かった…! アルトが無事で…本当に良かったよぉ…!」
目元に涙を浮かばせ、嗚咽混じりに俺の身の安全を安堵している彼女を見て、俺は文句の言葉も言えず、彼女の頭を撫でようとしたその時だった…。
「グッ…⁉︎」
突然、身体が脈打ち、全身に痛みが走った。
胸の内が焼かれる様な感触に襲われ、俺は胸を抑える。
「マスター…?」
「どうしたんだよ、アルト?」
メリル達が不思議そうに首を傾げ、俺の肩に手を置こうとしたその時だった。
「…ガハッ⁉︎」
口から大量の血を吐き、地面に倒れると同時に俺は意識が朦朧とする。
「アルト⁉︎」
「アルトさん!」
ただ事ではない雰囲気にメリル達は俺に一斉に駆け寄り、声をかける。近くで泣いていたアイリも今の俺の現状を見て、驚愕し、涙を流しながら、何度も俺の名を叫ぶ。
「そんな…! ねえ、起きてよアルト!」
その言葉を最後に俺は目を閉じ、意識を失った…。俺が意識を手放した後は城中にアイリの泣き叫ぶ声が響き渡った…。
ーある森の中にキリヤとアナトスがいた。
「麻生がガランの野郎を倒したか」
ガランの死を知り、ふぅ…、と息を吐くキリヤ。
「…麻生 アルト…着々と力をつけてきているわね」
「何であろうと俺は奴を倒す」
アルトを倒す…そう告げた彼等の前にフードを深々と被った者達が現れる。
「…あのお方の期待を無碍にするな。早く麻生 アルトを殺せ」
命令口調に嫌気が刺したキリヤはハン、と鼻で笑うとフードの者達はキリヤに向けて、技能を放ってきた。
しかし、それをアナトスが防ぐ。
「…いきなり襲うって、それはないんじゃないの?」
「…その者の信仰心がない。…ならば、教育するしか他ない」
キリヤの態度に嫌気が差したのか、フードの者達は技能を放ったのだ。
「チッ…面倒臭えな…。おい、アナトス。テメェは手を出すな」
面倒くさそうに二丁拳銃を取り出したキリヤはフードの者達の前に立つ。
「俺はテメェ等に対して、信仰心なんぞ持っちゃいねえ…。俺の事が気に入らないってんなら、力で従わしてみろよ」
「その言葉…後悔するなよ!」
フードの者達は鎌を持ち、一斉にキリヤへ襲いかかる。対するキリヤは冷静にその場に立ち尽くし、二丁拳銃を発砲する…。
数分の間、森中に銃声が鳴り響き、キリヤの目の前には血を流し倒れているフードの者達がいた。
リーダーらしき者以外は既に絶命しており、唯一生きているリーダーらしき者はフードの奥で悔しそうに表情を歪ませている。
「オノレ…! 化物が…!」
「…けっ! 化物で結構…その化け物に喧嘩を売ったテメェ等が悪いんだよ」
溜息を吐いたキリヤは銃口をリーダーらしき者に向ける。
「や、やめ…!」
キリヤを静止しようとするが、彼は聞く耳を持たず、発砲した…。それにより手を伸ばしていたリーダーらしき者だったが、絶命し、腕をドサリ、と地面に落とした…。
「悪いな。…俺は化け物なんで、言う事を聞けないんだよ」
カチャリ、と構えていた銃を下ろし、絶命したフードの者達を見下ろし、キリヤは呟いた。
「だが、安心しろ…。麻生は…あの眩しい光はこの俺が消し去ってやるからよ…!」
そう言い残し、キリヤとアナトスは森の奥へと消えた…。




