デモン
灼焉の魔眼を発動させた俺を見たメリル、リフィル、アイリは目元に涙を浮かべる。
「アルトさん!」
「…待たせて悪かったな、みんな。俺はこの通り大復活だぜ?」
何事もないと、両手を広げている俺に《ドラグネス》は話しかけてくる。
『バカな…⁉︎ あれだけの攻撃を受けて、どうして無事なのですか⁉︎』
「さあな。謎の声が助けてくれた…的な?」
『ふざけないでください! そんな曖昧な回答で納得できるワケないでしょう⁉︎』
「いや…お前に納得してもらってもな…」
相当悔しかったのか、《ドラグネス》は拳を強く握る。
『それにしても、その眼は何ですか⁉︎』
「…さぁ?」
『…あくまでシラを切るといるのですね…。ならば…!』
《ドラグネス》は俺に向けて、数発火炎弾を放って来た。
「アルト!」
仲間達が俺を心配して、声を上げるが、俺は逃げもせず、手を向かってくる火炎弾に向け…衝撃波を出して、消滅させた…。
『何ッ…⁉︎』
「…さて、今度はこっちからいくぜ!」
エンゼッターを構え、一気に《ドラグネス》に斬りかかる。だが、俺の攻撃は見えない障壁に激突する。
何度も防がれた嫌になる障壁…だが、俺はエンゼッターを持つ腕に力を込めると、障壁に音が入る音が聞こえ…数秒後には完全に音を立てて、割れた。
障壁が割れ、消滅した事により俺の攻撃は《ドラグネス》の身体を捉え、奴の右腕を斬り裂いた。
ボトリ、と奴の右腕が落ちると同時に痛みが来たのか、悲痛の声を上げる。
『グッ…! そんなバカなの事が…!』
「そんなバカな事があるんだよ!」
ニヤリ、と笑った俺は右手の親指に齧り付いた。
すると、当然親指から血が溢れ、手を伝い、地面に落ちてくるのを確認した俺は叫ぶ。
「《デモン・ブラッドランス》!」
俺から溢れ出た血が固着していき、小さな槍へと変化し、真っ直ぐ《ドラグネス》に向かい、複数の血の槍は奴の肉体を貫く。
その場に膝をついた奴に接近した俺は右手を開き、奴の身体に当てた。
「《デモン・ダイナマイトブレイク》!」
俺の手から衝撃波と爆発が起こり、それに巻き込まれた《ドラグネス》は大きく吹き飛ばされ、壁を貫いた。
壁から頭を引き抜き、ゆっくりと立ち上がりながら俺の使用している技能に覚えがあるのか、目を見開く。
『デモン、だと…⁉︎ どうしてあなたがその技能を⁉︎ その技能はかつて存在した魔族が使用していたこの世から消えた技能のハズ⁉︎』
へぇ…この力は魔族のモノだったのか…。
『どうしてあなたがデモン技能を扱えるのですか⁉︎』
「だから…謎の声にもらったって言っただろ?」
『(謎の…声…? もしや…! いや、伝説には彼女の肉体は魂と共に消滅したはず…!)』
思考を巡らせていく《ドラグネス》に構わず、俺はブレッターの銃口を奴に向ける。
「《デモン・リアリゼイションブラスト》!」
技能名を叫ぶと、銃口が複数に具現化され、無数の銃弾が奴を襲った。
さらに俺は何もない状態で蹴りの仕草を取る。
「《デモン・エアシュート》!」
空気が集まり、一つのボールとなって、俺はそれを蹴り飛ばす。
空気のボールは《ドラグネス》に激突し、奴は壁を突き破り、城外へと追いやられる。
空中で歩く事が出来る《デモン・エアウォーク》を発動し、奴を追いかけ、奴は空中で停止する。
『まだです! これしきの攻撃!』
「タフだな…! 《デモン・コピークリエイト》!」
今度はエンゼッターがもう一つ作成され、左手でそれを掴み、二刀流で奴を何度も斬り裂こうとする。
しかし、奴も抵抗し、攻撃を放ち続けてくる。俺と《ドラグネス》の互いの攻撃に辺りに衝撃波が飛ぶ。
それ程の威力なのか、間近でそれを感じているメリル達はその場から吹き飛ばされないようにする事がやっとだった。
俺と《ドラグネス》の激しい攻撃のぶつけ合い…それは徐々に俺が押し始め、奴の腕を弾いたと同時に蹴りを入れ、地面に叩き落としてやった。
ズドォン、という音と共に地面に激突した《ドラグネス》だったが、すぐに立ち上がり、右手を俺に翳す。
『《ダークプリズン》!』
黒き檻が出現し、俺はその檻に閉じ込められた。
『これで終わりです!』
《ドラグネス》は紫色の光剣を形成し、それを檻に囚われた俺に投げつけた。グサリ、と音を立て、その光剣は俺に突き刺さった。
光剣が突き刺さった所を目の当たりにしたメリル達は俺の名を叫ぶ。
『クハハハハッ! これで終わりです!』
「…言っておくぞ、ガラン」
『ッ⁉︎』
光剣が突き刺さった檻から俺の声が聞こえ、《ドラグネス》は再び目を見開いた。
「お前の敗因は相手の死体も確認せずに勝利を確信するその慢心だってな!」
檻が音を立てて、崩壊し、そこから俺が飛び出てくる。
「その慢心故に…お前は俺に勝てる事が出来ない!」
『だ、黙れェェェェッ‼︎』
恐怖と悔しさから、怒り狂った《ドラグネス》は俺を倒した事もある光線を放って来た。
その光線は俺を飲み込み、爆発した…。
立ち込める爆煙を見て、《ドラグネス》は再びククク、と笑う。
『こ、今度こそ…!』
「今度こそ…何だ?」
またもや背後から俺の声が聞こえ、《ドラグネス》が勢いよく振り返ると同時に俺に蹴り飛ばされ、地面に撃ち落とされた。
『何故だ…⁉︎ 何故私の攻撃が全て…⁉︎』
「言ったはずだ。慢心しているお前では俺に勝てないってな…! そろそろ終わらせるぞ、ガラン!」
ブレッターの銃口にエネルギーを蓄積させ、勢い良く引き金を弾くと紫色のエネルギー波が放たれた。
《ドラグネス》は《バリア》でエネルギー波を受け止めようとするが、徐々に押されていく。
『まだです! まだ私は…!』
「いいや…ここでお前は終わりだ!」
エネルギー波の威力が上がり、奴の張っていた《バリア》が音を立てて、崩壊し、エネルギー波は奴を飲み込み、奴の肉体はそのまま王座の間まで吹き飛ばされた…。
地面に何度か転がった《ドラグネス》の姿はゆっくりとガランに戻っていき、ガランの身体から何かの光が飛び出て、俺の中へと入っていった…。
今のは…何だったんだ…?
先程の光の正体がわからず、首を傾げたが、すぐに俺も王座の間へと戻った。
「そんな…! 嘘です! 私はこんな所で…!」
…後はもう捕えれば済むな…。
そう思い、俺がガランへ手を伸ばそうとしたその時だった。
「ガハッ…⁉︎」
大きな鎌がガランの肉体を貫き、血を吹き出したガランはそのまま倒れ、絶命した…。
「全く…無様な姿を晒してまでまだ生きようとするとは…生に執着しすぎだ」
突然現れた男から発せられる殺気を感じ取った俺は反射的に距離を取り、エンゼッターを構えた。
「そう身構えるな、麻生 アルト…。今日はお前を褒めに来たんだ」
「…誰だお前は?」
「そういえば、まだ名乗ってなかったな。俺はワルガン・ラフティ…。魔虎牙軍の首領だ」
ま、魔虎牙軍の首領…だと…⁉︎
ついに現れた親玉に俺は頬を伝う汗を拭き取る事も忘れていた…。




