敗北
かつてこの世界には勇者と魔王が世界をかけて戦いあっていた…。これはそんな魔王が病で生命を落とし、魔王の座を娘に渡す以前の出来事である…。
魔族の一人である龍人は日々、勇者一行を倒す為に力をつけていた…。そして、生きる為、彼はモンスターを喰らう。
すると、彼の身体は強化されていき、最終的には魔王と並ぶ程の力を手に入れた。
力に呑みこまれた彼は魔族に反旗を翻し、人間達と共に滅ぼそうとした…。だが、彼の企みは彼を迎え撃った1代目勇者と魔王が力を合わせ、阻止され、彼の肉体は限界を越え、消滅した…。
この戦いは決して楽なモノではなく、この戦いを機に1代目勇者は生命を落とし、その息子ノインへと託された。
同時に魔王も凶暴化した龍人の流した血を浴びてしまい、呪いにかけられ、病に伏した。
後に消滅した龍人はモンスターと認定され、《ドラグネス》という名を与えられたのであった…。
ガランが変化した龍人の圧倒的な威圧感の前に俺の身体の震えが止まらず、冷や汗が頬を伝う。
『クハハハハッ! 力が溢れ出る! これが《ドラグネス》の力だ!』
変化した自身の肉体を確認したガランこと《ドラグネス》は雄叫びを上げる。
「そんな…《ドラグネス》…!」
「かつての勇者や魔王すらも圧倒した最恐最悪のモンスターよ…!」
勇者や魔王を圧倒って…そんな存在にどうしてガランが…⁉︎
「どうしてそんな力が〈モンスタードラッグ〉に…⁉︎」
『〈モンスタードラッグ〉にはそれぞれモンスターの細胞が練り込まれているのですよ。我々、魔虎牙軍ならば、その細胞を作り出す事も容易いのです!』
ガランが魔虎牙軍のメンバー…。やはり、この一件には魔虎牙軍も関わっていたのか…!
『この力で今度こそ貴方を殺してさしあげますよ!』
「借り物の力で意気がってんじゃねえよ!」
《ドラグネス》が放って来た火炎弾をエンゼッターで斬り伏せ、奴に接近し、振り抜いた。
しかし、目に見えない障壁に攻撃が阻まれてしまい、俺は瞬時に防御態勢に入ったが…。
「グッ…⁉︎」
気がつくと俺は地面に叩きつけられていた…。
何が起こったのか理解できず、床に転がったエンゼッターを拾い、身構える。
《ドラグネス》が接近してきたのを確認し、横へ回避する。しかし、その回避した先にまで奴が回り込んでいた。
俺はそのまま奴の蹴りを腹に受け、大きく吹き飛ばされ、壁に衝突する。
「アルト!」
倒れるオルレスト様の下まで行っていたアイリとリフィルが吹き飛ばされ、壁に衝突した俺を心配する。
壁に埋もれた俺は何とか抜け出そうと身体を動かしたその時、目の前に接近していた《ドラグネス》の一撃を受け、壁を突き破って隣の宝物庫まで吹き飛ばされ、更にその状態で髪を掴まれ、何度も膝蹴りを受ける。
何度目かもわからない膝蹴りを受けた後、髪を離され、裏拳で王座の間まで弾き飛ばされた。
地面に何度も転がり、あまりの威力だったのか、口から血を吐いた。
『おやおや? 先程までの威勢はどうしたのですか?』
「…この強さ…桁違い過ぎるだろ…!」
口の周りについた自身の血を拭い、エンゼッターを強く握り締める。
攻撃力、防御力、素早さ…どれもこれものステータスが俺より格段に上がっている…。
ブレッターを取り出し、何十発か連射する。数十発の銃弾も見えない障壁により、防がれ、コロコロ、と地面に落ちた…。
『お次はこれです!』
《ドラグネス》は黒い霧の様なモノに変化し、俺に接近、エンゼッターで斬り裂こうとするが、効果はなく、包まれてしまう。
黒い霧に包まれた俺に大量の電撃が浴びせられた。
無効化技能も意味を成さない程の威力に俺は苦痛の悲鳴を上げ、黒い霧が俺から離れ、《ドラグネス》に戻ったと同時に全身に軽い火傷を負った俺はその場に倒れた…。
「クソッ…!」
全身に痛みが走る中、俺は顔を上げ、《ドラグネス》を睨みつけた…。
『どうですか? 貴方が言った借り物の力は? 力なんてね…借り物だろうと自身の物であろうと…力は力なんですよ!』
念力で俺の身体を浮かせた《ドラグネス》はそのまま俺を外へと投げ飛ばした。
「クッ…! 《フォトン・ウイング》!」
《フォトン・ウイング》を発動し、城へ戻ろうとしたが、翼を羽ばたかせていた《ドラグネス》が目の前に現れる。
『龍人なんです。飛べるのは当然でしょう?』
そう言いながら、無数の火炎弾を放ってくる。俺も光の翼を羽ばたかせ、攻撃を回避し、奴へ接近しようと試みたが、やはり見えない障壁に阻まれる。
だが、障壁に阻まれつつも、背の翼に光を放出させ、エンゼッターの剣身に光のエネルギーを蓄積させ、光の刃を構成させ、障壁を押し込む。
「うおおおおおおっ‼︎」
《フォトンスラッシュ》により、見えない障壁は音を立てて崩壊し、ついに剣身が《ドラグネス》に届き、勢いよく切り裂いた。
これでようやくダメージを与えられた…!
そう思い、斬り裂いた《ドラグネス》を見る…。
「なっ…⁉︎」
…だが、現実は甘くはなかった。
『何かしましたか?』
「う、嘘だろ…⁉︎」
《フォトンスラッシュ》が全く効いていない…⁉︎
『そろそろ飽きましたので…終わりにしましょうか』
右掌を俺に向けるとそこから赤黒いエネルギーが蓄積されていく。そして、赤黒い光線が放たれ、俺は避ける間もなく、光線に飲み込まれた…。
数十分後、コルドブームの城下町にモニターが映し出された。
ガランの手下と戦っているブルース達やメリル達はそのモニターに視線を移すとそこには《ドラグネス》となっているガランが現れる。
『ご機嫌様、皆さま…。私はガランです』
「アレが…ガランだと…⁉︎」
「《ドラグネス》…!」
ガランが《ドラグネス》の姿になっている事に驚くマギウスとアイムに構わず、《ドラグネス》は話を続ける。
『この放送を機に私は確実なる勝利宣言をさせていただきます。…何故なら、あなた方の希望は此処で散りましたから』
モニター内が少し動き、あるモノが映し出される。その映し出されたモノを見た瞬間、メリルも、アイムも、マギウスも、ルルも、エルスカーネも、そしてオルコットやアルネ達も驚愕の表情を浮かべた…。
俺が血を流し、倒れる姿を見て、だ…。
『これで…チェックメイトです』
《ドラグネス》の不敵な笑いが、モニターを通じて、コルドブーム中に響き渡った…。




