鏡
王座の間でオルレスト様を助け出す為、リフィルとアイリの二人はガランに挑んでいた。
「キャアァァッ⁉︎」
「ウアアアッ⁉︎」
しかし、ガランの圧倒的な力に二人はなす術もなく吹き飛ばされ、床に叩きつけられた。
「ふむ…これがガイールとコルドブームの未来を作る第一皇女だと思うと心配で仕方ありませんね」
戦闘開始時から一歩も動いていないガランは剣だけを構え、地に伏したリフィル達を見下ろす。
「アイツ…何て力なの…⁉︎」
「それでも私達は負けられない…! 負けられないの!」
何とか痛みを堪え、立ち上がろうとする二人をガランはフン、と鼻で笑った。
「力無き皇女は不要です…。私の思い通りにならないのであれば、此処で消えなさい!」
うつ伏せで蹲るリフィル達にガランは斬撃を繰り出した。動く事が出来ず、リフィルとアイリは目を閉じて、顔を逸らした…。
誰もが直撃すると思われたその時…入口付近から銃撃が放たれ、斬撃と激突し、お互いを打ち消した…。
「何っ⁉︎」
打ち消された斬撃に驚き、ガランと目を閉じていたリフィル達は目を開け、ガランと同じ場所に視線を移す。
そこには俺…麻生 アルトの姿があった…。
「「アルト!」」
「時間はかかったが、何とか間に合ったみたいだな」
ガランに向けていたブレッターの銃口を下ろし、リフィル達の無事を確認した後、彼女達を追い越し、剣を手に持つガランとその足下に倒れているオルレスト様を見る。
「麻生 アルト…!」
「おやおや…随分と遅かったですね、麻生 アルトさん。貴方が此処にいると言う事は夕暮 キリヤ君は負けたのですね」
「…良くもまあ、やってくれたな、ガラン…」
鞘からエンゼッターを引き抜き、戦闘態勢に入った。
「此処で貴方を倒し、本当のチェックメイトとさせてもらいますよ」
「それは俺に勝ってから言いやがれ!」
地面を蹴り、走り出した俺はエンゼッターを縦に振り、ガランを斬り裂こうとした。
だが、ガランは攻撃を避けようともせず、剣身をギラつかせるとエンゼッターと奴の剣の間に鏡の様なモノが出現し、鏡が縦振りを弾くと鏡の中からエンゼッターに似た剣身が飛び出て、俺の攻撃と全く同じ攻撃を仕掛けて来た。
「ッ…⁉︎」
鏡の中からの攻撃を何とか防いだ俺はバックステップして、奴から距離を取る。
視線を戻すと先程の鏡は消失していた。
「何だ、今のは…⁉︎」
明らかにガランの剣による攻撃ではない…。
だが、銃ならどうだ!
「《パワーブラスト》!」
《パワーブラスト》により強化された弾丸を十発程放った。
「おー、怖い怖い」
明らかに棒読みの言葉を述べたガランはまたもや剣身をギラつかせ、鏡を出現させた。
放った銃弾は全て鏡の中へと吸い込まれ、変わりに同じ数の弾丸が俺に向かって飛んで来た。
「…反射技能か⁉︎」
ガランの持つ技能を探りながら《バリア》で飛んできた弾丸を全て防いだ。
「さて、どうでしょうね?」
あくまで技能の事を話さないつもりかよ…!
「気をつけて! 私達もその謎の技能で負けたのよ!」
「どんな攻撃も全部返されるの!」
そう言うのはせめて戦いだす前に言って欲しかったぜ…。
だが、此処までの能力なら最早、技能ではなく、特殊技能だな、これは…。
俺の攻撃の全てはあの鏡に接触して、攻撃を返されている…。それも全く同じ攻撃をだ。
しかし、あれは返すというよりも放っている様にも見える…。
同じ攻撃を放つ…?
「待て…確証は無い…。だったら…!」
奴の技能の正体に気づき始めた俺はブレッターにある仕掛けを施した。
「何をこそこそ銃を弄っているのですか?」
「何、気にするな。…特に変わらねえからよ!」
仕掛けの準備を終え、再びブレッターを連射した。
その銃弾全てもガランが出現させた鏡に吸い込まれ、中から同じ数の弾丸を返される。
…飛んでくる弾丸に目を通した俺は奴の技能のカラクリを理解し、ニヤリと笑いながら、エンゼッターで向けられた弾丸を全て斬り伏せた。
「お前の技能は反射じゃねえな?」
「ほう…?」
興味深そうに首を傾げてくるガランに奴の技能の正体を言い放った。
「お前の技能は鏡…。《ミラー》っと言った所か? 鏡が受けた攻撃を複製し、放っていただけだろ?」
「…素晴らしい! まさか、私の技能に気づく方がいたとは! ですが、それで私に勝てるとでも?」
奴の言う通りだ。…いくら技能の正体が分かっても、あの《ミラー》を破らなければ意味がない。
「それなら…複製出来ないほどの攻撃を与えてやる!」
ブレッターの銃口にエネルギーを蓄積させる。
「《チャージブラスト》!」
エネルギー型の銃撃を放ったが、その銃撃も鏡に吸い込まれ、複製され、放たれた。
それを回避しつつ、何度も銃弾を連射するが、簡単に返される。
チッ…このままじゃジリ貧だな…!
考えろ…何か手があるはずだ…。
奴はあの鏡内で攻撃を複製し、同じ攻撃を返してくる…。
…鏡内で…? そうか…! この方法なら奴の《ミラー》を打ち破る事が出来る!
俺はグレネードを取り出し、口でピンを抜き、ガランに向かって投げた。
同じ様にグレネードは鏡に吸い込まれた。
「だから、何度やっても無駄なのですよ!」
俺の攻撃が無意味だと笑うガラン…。その言葉通り、鏡の中では俺の投げたグレネードが複製された。
「そう何度も同じ攻撃をするわけねえだろ! 《ブラスト》!」
《ブラスト》により強化された銃弾は鏡の中で複製されたグレネードに直撃し、グレネードは起爆した。
「なっ…⁉︎ ギャアアアアッ⁉︎」
爆発により鏡は音を立てて割れ、ガラン自身も大きく吹き飛ばされた。
「アイツの鏡が…!」
ガランの切り札を打ち破ったことにリフィル達は驚く中、ガランは信じられないと言いたげな顔をしながら立ち上がる。
「わ、私の技能が…⁉︎ 何をしたのですか⁉︎」
「簡単な事だ。攻撃が鏡内で複製されるなら、鏡内で爆破させちまえばいいんだよ」
鏡内で複製されるという能力を逆手に取った攻撃にガランは悔しそうに歯軋りをし、手に持っていた剣を強く握り直した。
「こんな事で…こんな事で私は負けない!」
両手で剣を強く握ったガランは真っ直ぐ俺に向かってくる。だが、型がなっていない…。
技能に頼りすぎた結果だろう…。
俺は避ける仕草も見せず、向かってきたガランの持つ剣の剣身をエンゼッターで真っ二つに叩き切った…。
「そ、そんな…⁉︎」
武器である剣も失い、ガランはその場に膝をつく。絶望に満ちた表情…を浮かべる奴にブレッターの銃口を突き付けた。
ガランが負けた事にアリシアも怯え、声を上げている。
「お前の負けだ。大人しく投降しろ」
殺すつもりは毛等にない…。だからこそ、降参して欲しかった…。しかし、ガランは突然、不気味に笑い始める。
「…やりますねぇ? やはり、これを使わざるおえないですね!」
そう叫んだ奴が取り出した箱には複数の量の〈モンスタードラッグ〉が入っていた。
「〈モンスタードラッグ〉だと…⁉︎」
ガランは箱の蓋を開けると、中に入っていた〈モンスタードラッグ〉の全てを口に含み、ボリボリ、と噛み砕いて飲み込んだ…。
〈モンスタードラッグ〉の効果が効いてきたのか、ガランの身体は輝きだし、骨が軋む音が大きく聞こえ、姿を変貌させた…。
「くっ…! ガラン…⁉︎」
光が消えるとそこに立っていたのは黒色の皮膚の龍人だった…。
「さあ、第二ラウンドの開幕です!」
龍人…《ドラグネス》に変貌したガランは鋭い牙を口から覗かせた…。




