無傷の勝利
翌日…。
早朝に目が覚めた俺達は再び、コルドブームを目指した。
「ほら、気をつけてね! アイリさん」
「ありがとう、リフィルさん!」
…なーんか、リフィルとアイリの仲が昨日より良くなっている様な気がする…。
まあ、喜ばしい事なんだがな…。
「アルト…そろそろ城下町付近に着く。…騎士達が警戒しているから気をつけていこう」
「そうだな。さあ…此処からが本当の正念場だぜ!」
気合を入れ直した俺達…。だが、そこへ斬撃が飛んできたのでアルネがそれを弾いた。
「今度こそ…逃しはしない!」
「ブルース…お前もしつこい奴だな!」
「やはり、衝突は免れないか…!」
呆れた様に呟いた俺とアルネは武器を手に取る。
「おい、ブルース! 俺達を戦いに来たワケじゃない! 少し話を聞いてくれ!」
「その話の場を壊したのはお前の方だろう!」
嫌、確かにそうだけどよ…!
「オルコット! 少し話を聞いて!」
「申し訳ありません、アイリ様…話は彼等を捕らえた後にします!」
騎士ってのは何でこう石頭なんだよ…!
「アルト、今騎士に対して無礼な言葉を口にしなかったかい?」
「…いや、気のせいだ!」
人の心を読むなよ、アルネ…。
「仕方ねえ…。ルルは後方へ、アイムとマギウスは他の兵士達を、メリルはその援護だ!」
俺の指示にメリル達は頷いた。
「僕達はブルース君の相手かい?」
「聞くまでもないだろ? 力貸してくれ」
「フッ、是非もなしだよ!」
みんなは俺の指示通りに動き、メリルはルルを守る様に立つ。更に俺とアルネが先陣を切って、ブルースに斬りかかり、アイムとマギウスも他の兵士達と戦い始める。
「殺さず、怪我もさせるなよ!」
「難しい注文…だな!」
「でも、やるしかない」
誰も殺さず、傷つけない…その信念の下、戦うと決めた俺達。
ただこちらの意図を理解してもらうため…その為だけに俺達は戦っているからだ。
「傷つけずに自分を倒す…? 舐められたモノだ…。ならば、此方も容赦はしないぞ!」
身体に赤色のオーラを纏わせたブルースが剣を手に持ち、俺とアルネに斬りかかってきた。
「ッ…⁉︎」
あまりの接近の速さに俺は驚くが、間一髪奴の攻撃を避けた。
「何だ…? アイツを取り巻くあのオーラは…?」
「オーラシリーズの技能だね…」
「オーラシリーズ…?」
聞き慣れない言葉に俺は首を傾げるとアルネが説明する。
「一定時間に能力を向上させる事の出来るバフ技能だ。オーラの色によって、向上する能力も変わってくる。彼のオーラは攻撃力が向上する様だ」
…どう考えても攻撃力以外も向上しているだろ…。
「それで? あれが時間切れを起こすとどうなるんだ?」
「どうもならない。…ただ一定のクールタイムが必要なはずだ」
…だったら、時間をかけるのもありだが…。生憎と時間がないんだ…!
「だから……真正面から迎え撃ってやるよ‼︎」
「その心意気…全く、君もバカだね」
煩え、バカは余計だ。
「いくぞ…麻生 アルト!」
同時に走り出した俺とオーラを纏ったブルースは激突した…。
「キリがない…!」
兵士達と戦いを繰り広げているアイムとマギウス…。傷つけれられない以上、全力が出せない為、兵士の数の多さに愚痴を零していた。
「愚痴を言っても仕方がない…。面倒なら、気を失わせるより効率の良い方法がある」
「マジか⁉︎ その方法ってのは何だよ⁉︎」
「…それなら協力して。…マギウスお兄ちゃんは敵のヘイトを集めて」
ヘイトを集めてくれと言われ、マギウスはヘッ、と笑みを浮かべた。
「お安い御用だぜ! 《ヘイトリアクション》!」
右手を上に上げ、指を鳴らすとアイムとマギウスを囲っていた兵士達が突然、妙な動きを見せる。
「な、何だ⁉︎」
「身体が勝手に…⁉︎」
兵士達は自らの意志ではなく、身体が勝手にマギウスの下へと引き寄せられる。
というより、まるでアイムなど眼中にない様に…。
「さあ…後は頼むぜ、アイムちゃん!」
「任せて」
マギウスに一斉に襲いかかる兵士達…。後の事をアイムに託したマギウスは大きく跳躍し、兵士達の攻撃を回避した。
それにより一箇所に集まってしまった兵士達に向けて、左掌からネットを発射した。
発射されたネットは兵士達を一人残らず包み、捕らえてしまう。
「《ハンターネット》…。そこらの網より強力」
「さて…後はアルト達だな…」
戦いを一通り終えた二人は未だ戦っている俺とアルネの下へ視線を移した…。
「《斬撃一閃》!」
ブルースの強力な技能が炸裂し、俺達は吹き飛ばされた。
「ッ…厄介だね、オーラシリーズは…」
「…ったく、使い始めて結構経ってるのに、まだ続くのかよ…」
これはこっちも本腰を入れないとダメって事だな…!
「…アルネ、今からは俺に任せてくれ」
「…わかったよ」
俺の真剣な視線を見てか、彼はフフッと笑い、身を退いた…。
「お前一人で自分の相手をすると言うのか?」
「不満か…? そっちもオーラが切れそうなんだろ? …お互いこれで終わらせるとしようぜ」
「…良いだろう…!」
剣に赤いオーラを纏わせたブルースはそのまま俺に向かって突っ込んで来る。
「《フォトン・ウイング》!」
それと同時に俺も《フォトン・ウイング》を発動させ、エンゼッターの剣身に紫色のエネルギーを蓄積させ、接近してくるブルースに接近した。
「《終剣一閃》!」
恐らくブルース最大の技が俺に迫って来た。
俺はその攻撃の機動を読み、間一髪回避すると今度はエンゼッターで隙を見せた彼を斬り裂いた…。
斬り裂いた後、俺達は互いにすれ違う。…数秒後、ブルースの膝が力なく、地面に着いてしまう。
「な…⁉︎ 力が入らない…⁉︎ 何をした⁉︎」
身体に力が入らず、困惑する彼に俺はエンゼッターの剣先を突き立てた。
「《ロストスラッシュ》…。相手を傷つけず、力のみを一時的に奪う技能だ。安心しろ、時間が経てば元に戻る」
さてと…、と軽く息を吐いた俺は再び、ブルースを見下ろす。
「先程の言葉通り、俺はお前達を傷つけるつもりはない…。だが、話は聞いてもらうぜ? ブルース…」
「…」
ブルースは何も答えない…。だが、身体に力が入らない為か、彼は聞き入れる覚悟の顔をしていた…。
さてと、後はカーイン様の放送を待つのみ、だな…。
俺はブルースや他の兵士達にこれまでの事、ガラン達の暗躍について話をする事にした…。




