神眼教団
俺達を転移させたカーイン・ベイグと三人の導師達は俺達を見定めるかの様に見続ける。
「カーイン様、助けていただきありがとうございました」
俺が頭を下げるとカーイン様は優しく微笑する。
「いいえ、神の使徒として当然の事をしたまでです」
神…確かこの世界の神はラルクって名前だったな…。
「ラルク様の導きが貴方達を救済したのです」
「ラルク様に感謝しなさい」
導師であるアーマン・ククルとアイラック・ゴースが俺達にラルクに感謝しろと告げた。
「貴方達の今の現状を知っています。…そして、貴方達がしようとしている事も…」
そこまで知っていたのか…。
「ですから、我々も貴方達を支援します」
「ほ、本当ですか⁉︎」
「ええ…。ラルク様の世界で暗躍する者達を許してはおけません」
三人目の導師、イゴール・ニトクリウスが頷く。
「ですが…どうなさるのですか?」
「…私が真実をガイールやコルドブームの民達に打ち明けます」
首を傾げ尋ねたルルにカーイン様は答える。彼の提案には俺達も驚愕する。
「ですから、貴方達は一刻も早く、コルドブームへ戻って下さい。ガランなる者が怪しげな動きを見せています」
ガランが…⁉︎ もう動き出したのか…!
「真実の打ち明けは明日の昼時に行います。…後は民達が信じるかどうか…そして、貴方達の手にかかっております」
冤罪が証明された後は…ガラン達を止めるのみって事か…!
「…わかりました。皆さんとラルク様のご意向に感謝します」
「…あ、それとアルト殿とメリル殿にはお話があるので、他の方々は席をお外しくださいますか?」
俺とメリルに話…?
カーイン様の言葉に導師達三人は頷き、部屋から出て、それを確認したアイム達も俺とメリルを残し、部屋を後にした…。
「その…私達にお話とは何でしょうか?」
「…ご挨拶が遅れて申し訳ありません、女神、メリル様」
「え…⁉︎」
な、何だと…⁉︎ どうして彼がメリルが女神だという事を知っているんだ…⁉︎
「それと…そこの彼が女神様がお選びになった転移者の方なのですね?」
俺が転移者だという事も彼は知っているのか…⁉︎
「どうして、その事を…?」
嫌、待て…。彼等神眼教団は神の使徒だと言っていた…。それはつまり、俺が異世界の人間、そしてメリルが女神だと言う事を知っていてもおかしくはない、か…。
「異世界と新界…そこから来られた方々がこの世界の悪き者達と戦う姿は感服いたしました。…アルト殿、メリル様…どうか、これからもこの世界をよろしくお願い致します」
だ、大導師から世界を任されるなんてな…。ちょっと緊張するぜ…。
「はい。何処まで出来るかはわかりませんが…成し遂げてみせます!」
俺の迷い無き笑み…それを見たカーイン様は目を見開く。
「似ている…」
「え…?」
似ているって…誰に?
「かつて…ラルク様と同じ領域に至り…世界を脅かす魔王と戦い、その魔王と恋に落ち…聖剣と魔剣を手に、堕神『ギルムガンデ』を打ち破った勇者ノインに…」
魔王に勇者ノイン…そして、堕神『ギルムガンデ』だと…⁉︎ って…。
「おい、メリル…? この世界に魔王とか勇者がいたのかよ⁉︎」
「は、はい…。勇者ノイン様のご活躍はイネスさんからよく聞かされたので…」
って事はこの世界にも神話として語り継げられているって事か…。それに勇者と魔王の恋か…。
…また時間がある時でもその話…ゆっくり見てみたいな…。
「では、カーイン様…俺達は行きます。冤罪の件…よろしくお願いします」
部屋から出て、教会を後にすると他のみんなとアルネがいた。
「やあ、どうやら、無事にカーイン様との話し合いは終わったようだね」
「アルネ…? ブルースの奴はどうしたんだ?」
「上手く撒いたさ。…さあ、コルドブームの街へ戻るんだろ? 街までは僕が護衛するよ」
護衛してくれると言ってくれたアルネに感謝し、俺達はコルドブームへ向かった…。
だが、その光景を遠隔操作魔機で見ていたガランと奴隷の館の奴等がいた…。
「まさか、騎士隊の包囲網を掻い潜り、神眼教団の元へいたとは…運は彼等の味方をしていた様ですね」
「し、神眼教団まで奴等の味方に…本当に大丈夫なのか⁉︎」
「大丈夫ですよ。…そろそろ準備と戦力も整いました。後は彼等を倒す事が出来れば…いいだけです」
そう呟いたガランの視線の先にはキリヤとアナトスの姿があった。
キリヤは目を閉じているがアナトスの方はと言うと心底嫌そうな顔をしていた。
「(この作戦が成功すれば…私はこの国の王となる…。そして、魔虎牙軍の…!)」
ガランの不気味な笑い声がガラン達のいる部屋中に響き渡った…。
そのガランの笑い声を怪訝そうな顔で睨むキリヤは部屋を後にした…。
アルト達を見送ったカーイン様は椅子に座り直した…。
「彼が…麻生 アルト…フフ、妙なことになりましたねぇ…。まさか、彼の持っている力の中に…技能複写が存在しているとは…。やはり、彼が…。さすれば、この先の展開も貴方様は予想しているのですか? ラルク様…」
まるでこの場には居ないラルクと話しているかの様な彼の姿を見る者は誰も居なかった…。
急ぎ足でコルドブーム付近まできた俺達…。
だが、日も暮れ始めた為、野宿をする事になった。
夕食を取った後、今後の作戦を手短に話し合っていた。
「それで、どうするの? マスター」
「まずは城に侵入して、オルレスト様にアイリの無事を報告する。それからカーイン様の演説を聞いてもらう」
「…上手く、いくかな…?」
心配そうな表情を浮かべるアイリ…。
「行かなきゃ…コルドブームは終わりなんだ」
「うん…」
結局俺達は明日に備え、早く休む事になった…。
しかし、アイムは寝付けないのか、少し俺達の元を離れ、月を眺めていた…。
「眠れないの?」
「…リフィルさん…」
彼女を心配してか、リフィルが彼女の隣に座った。
「…あの、リフィルさんって…アルトの事…どう思っているの?」
突然の彼女の問いにリフィルは頬を赤く染めてしまうが、すぐにクスリ、と笑った。
「格好いい騎士様…かな?」
「騎士…」
「貴女は? アルトの事どう思っているの?」
「私は…面白い人、かな?」
それぞれの話を聞いて、二人はクスクス、と笑い合った。
「…ねえ、絶対にコルドブームのみんなを助けましょうね」
「ええ!」
ハイタッチをした後、就寝場所へ戻っていく二人…。ガイールとコルドブーム…敵対国で決してこうやって笑い合う話が出来ない筈…。
だが、彼女達ならば大丈夫なのだろう…。二つの国の未来も…。




