転移した先で
俺達を助ける為に箱の中から現れたリフィルにアルシエルさんとアイリは戸惑う。
「えっと…坊主、この嬢ちゃんは知り合いか?」
「あー…」
知らないとは言え、別国の皇女を嬢ちゃん呼びか…。どう答えようかと迷っているとリフィルがスカートの裾を上げ、挨拶をする。
「初めまして…私はリフィル・ガイール…。ガイールの第一皇女です」
「えっ…⁉︎」
「ハァッ⁉︎ ガイールの…第一皇女だと⁉︎」
面を喰らった顔をしているなぁ…。まあ、当然か。
すると、アイリも同じ様に挨拶をする。
「こちらこそ…私はコルドブームの第一皇女、アイリ・ブームです」
敵対国同士の第一皇女が揃ったってワケか…。
「にしてもリフィル…どうしてお前が此処に?」
「どうしても何も言ったでしょ? 私は貴方達を助けに来たのよ」
「助けに来たって…どうして?」
すると、リフィルは難しそうな顔をし、俯いた。
「実は…貴方達がコルドブームでお尋ね者になった事がガイールにも情報が出回ったの」
何だと…⁉︎
「どうしてその様な事に…⁉︎」
ガイール出身である俺達がお尋ね者になったと知れば、メルド様達が動く…。
それは敵対国同士であるガイールとコルドブームの争いを加速させる事となる…。
それがガランの狙いか…!
「国同士の争いに乗じて…この国を乗っ取るつもりか…!」
「ガランの狙いはガイールとコルドブームの戦争…!」
「そ、そんな! そんな事すれば、多くの死者が出てしまいます!」
「ガランの野郎に他人の生命なんて関係ないんだろうな…!」
ガランの思惑に俺達は怒りを覚え、険しい顔をする。
「今、お父様達やヴェィグ達がみんなを落ち着かせてくれているけど…時間の問題よ、アルト」
…これは一刻の猶予もないな…。
「つまり、早くオルレスト様に本当の事を伝え、俺達の冤罪を晴らさないとダメだという事か…」
チンタラしていたら俺たちの身もガイールとコルドブームも危険だ…。
そして、俺達が捕まればそこでゲームオーバー…難易度が高すぎる鬼畜ゲーだな。
「…ごめんなさい」
今後についての話をしようとしたその時、俯いていたアイリがポツリ、と呟いた。
この国の…ガランの仕業で俺達のガイールまで巻き込んでしまった事に申し訳なく思い、彼女は目元に涙を浮かべる。
「私達の所為で貴方達や貴方たちの国の人達を巻き込んでしまって…なのに、私は一人ではどうする事も出来ない…貴方達に、頼る他なにも…!」
皇女として…この国の事を想っている彼女の気持ちは俺達にも伝わってくる…。
だからこそ、俺は彼女の頭を撫でた。
「心配するな。元は俺達がアイツ等に喧嘩を売った事が事の始まりなんだ。…それに、今の一件を見逃す事なんて出来ねえ」
「アルト…」
「絶対に…全部守りきってやる! この最悪な不可能を打開し…可能に変えて、な?」
「ありがとう…本当に、ありがとう…!」
嬉し涙を流し始めたアイリの頭を今度はリフィルが優しく撫でた…。
すると、扉を叩く音が聞こえ、アルシエルさんが外を覗くと、コルドブームの騎士達の姿があった。
「…! 坊主…!」
この場所も勘付かれたか…!
「…みんな、此処を出よう。アルシエルさん、今までありがとうございました! この御恩は忘れません!」
「…坊主…必ず帰って来い。そして、恩を感じてんなら事件を解決して、また装備を買いに来い。約束だぞ?」
「はい…!」
拳をぶつけ合った俺達は笑い合い、アルシエルさんは騎士達の相手を、そして俺達は裏口から出た…。
「それで、どうするつもりなの、アルト?」
「一先ずこの街から出て、安全を確保する。そこで作戦会議だ」
一刻も早く作戦を立てないと時間がない…。まずは作戦を立てられる場所を探さなければな…。
「所で…アイリは戦えるのか?」
「そこまで激しい戦いは出来ないけど、援護する事は出来るわ」
それなら安心だな…。
「アルト様、もう少しで領地を出れます!」
「よし、このまま突っ切って…! ッ…⁉︎」
このまま逃げ切れると想っていたが、突然放たれた斬撃に気づき、《バリア》で防いだ。
「もう逃さないぞ…麻生 アルト!」
斬撃を放った者…オルコット・ブルースは数人の兵士を引き連れ、剣先を俺達に向ける。
「ブルースか…! よく此処に気づいたな?」
「この領域から出ようとするなどの推理は可能だ。…それよりもアイリ様を返してもらう」
「…残念だが、それは出来ない話だ」
俺もブレッターの銃口をブルースに向ける。
「今、その方を渡せば、お前達にもオルレスト様から寛大な処遇で迎えられる事が出来るだろう」
「寛大な処遇って…俺一度拷問にあっているんだが?」
拷問という言葉を聞いて、ブルースも歯を食いしばった顔をする。
アイツ自身も拷問に対してはよく思っていないんだな。
「それに…今のお前達にアイリを渡すワケにはいかないんだよ」
「ならば、力尽くで…!」
その言葉を最後にブレッターの銃撃とブルースの斬撃がぶつかり合った…。
だが、此処で時間を使うワケにはいかない…また隙を突いて退くしかない…!
「隙を突いて退こうとしている様だが、無駄だぞ」
読まれているのか…流石だな…!
「自分の騎士道にかけて…お前達を捕らえる!」
「だったら、ギルドリーダーとして、仲間を守ってやる!」
エンゼッターを抜刀し、俺はブルースと激闘しようとする…だが、俺達の間に何者かが舞い降りて来た。
その者はブルースを弾き飛ばし、俺へと振り返る。
「やる気なのは良いが…時と場所を考えて欲しいね、麻生 アルト君」
この男は…? 服装的には騎士だが…。
「アルネ!」
「ご無事で何よりです。リフィル様」
リフィルは彼の事を知っているのか…?
「リフィルさんよ…この男は?」
マギウスが首を傾げ、尋ねると目の前の騎士は名乗り出した。
「僕は聖凰騎士団所属、第二騎士隊騎士隊長、アルネ・イリフォードだ。よろしく頼む」
第二騎士隊の隊長だと…⁉︎
「君達の事はヴェィグやウィーズから聞いているよ。…此処は僕に任せてくれ。君達に会いたいという方もいるのでね」
俺達に会いたい人…?
すると、俺達の真下に魔方陣が出現し、俺達はその光に飲み込まれ、アルネを残して転移した…。
残ったアルネはブルース達コルドブームの騎士達に剣を向けた。
「聖凰騎士団…ガイールの騎士が何故この国に…?」
「我々の恩人の手助けの為だ。彼は…僕達だけでなく、君達の事も救おうとしているのだからね」
「…邪魔をするのならば、容赦はしない!」
ブルースとアルネ…それぞれ別の国の騎士がぶつかり始めた…。
方や俺達を守る為、もう片方は俺達を捕まえる為…それぞれの信念を二人はぶつけ合い出した…。
突然起こった転移により、俺達は目を覚ますとある教会の様な場所に出た。
「此処は…?」
「今のは転移技能、でしょうか…?」
「良くぞお越しいただいた可能の星御一行よ」
あたりを見渡していると声が聞こえた為、振り返るとそこには三人の人物とその奥に導師服を来た男が椅子に座っていた。
「あ、貴方様は…!」
「カーイン・ベイグ殿…⁉︎」
カ、カーイン・ベイグだと…⁉︎
「ようこそ、神眼教団へ…」
暗躍するガランや未だ動きを見せない魔虎牙軍…そして、俺達を支援するために動き出した聖凰騎士団と神、ラルクを神拝する神眼教団まで登場か…。
この一件…更なる大事になりそうだな…!




