神秘的なお姉さんの正体
ブルースの攻撃を受けた俺は気を失い、そのまま拘束され、コルドブーム城まで連れて来られた。
王座の前にまで連れて来られた俺は意識を取り戻すと鎖で両腕を拘束されていた。
目の前には冠を被った男が王座に座っている…。この人がこの国の王…オルレスト・ブームなのか…?
「さて、犯罪者よ。我がオルレスト・ブームだ…。其方には話を聞かせてもらう」
国王自らの尋問か…。まあ、周りに貴族や騎士達が居るがな…。
断れば何されるかわかったものじゃないので、俺は頷く。
「では…其方は何者だ?」
「…俺は麻生 アルト。冒険者です」
「…では質問を変えよう。何故、ガイールの貴様がこの国に来た?」
何…⁉︎ 何故、オルレスト様が俺がこの国の人間じゃないと知っているんだ…?
「…何故、その事を?」
「否定はせぬのだな」
「…否定の言葉を上げても無駄だと思っただけです」
「我が国の情報網に掛かれば貴様達の事など筒抜けだ。麻生 アルト…ガイールで便利屋ギルド、可能の星のギルドリーダーをやっている…。随分と名を馳せている様だな」
…完璧だ…。そこまでの情報網があったとはな。
「それで…何故、貴様がこの国に来た?」
「オルレスト様はこの国で出現した化け猫についてはご存知ですか?」
「勿論だ。そして、その化け猫は貴様が操っていた…違うか?」
やはり、ガランの野郎の偽りの情報がオルレスト様の耳にも…。
完全に先手を打たれたってワケか…。
「違います。俺達がこの国に来たのは化け猫の調査です。…ガイールで俺達や俺の知り合いの騎士達も化け猫に遭遇し、攻撃を受けました。だから、俺達は初めて化け猫が出現した化け猫を調べる為にこの国に来たんです」
俺の話を聞くとオルレスト様はふむ、と頷いた。
「…だが、貴様の奴隷である亜人が化物に変貌したのは事実…」
奴隷だと…? 成る程、この人もそういう人間か…。
「…訂正してください」
「むっ…?」
「エルスカーネは俺の仲間です! 奴隷だと二度と言わないでください!」
怒気を込めた声に他の貴族達やオルレスト様は少し圧倒されるが、騎士達は貴様!、と俺の首元に剣を突き立てる。
だが、オルレスト様はやめよ!、と騎士達を制止させた。
「…成る程、貴様の考えはそういうモノか…」
えっ…?
少し感慨深そうな表情を浮かべたオルレスト様に俺は首を傾げる。
「では、質問を続けよう。貴様の仲間である亜人が化物に変貌したのは事実なのだな?」
「…それは事実です。ですが、彼女が化け猫になるなど知らず…ガランの手によって彼女は強制的に変貌してしまったのです」
ガランの仕業でエルスカーネが化け猫と化してしまったと話す俺だが、そこにあの憎らしい声が聞こえてきた。
「ち、違いますぞ、オルレスト様!」
「ガラン…!」
俺の隣にガランが立ち、俺の話は偽りだと言い出した。
「彼が口にした事は偽りです! 私はこの目でしかと見たのです! 彼が猫の亜人を変貌させて、我々を襲わせようとしたのを! 奴隷の館の皆様に聞いてもそうだと言うでしょう」
「テメェ…!」
偽りの情報を話すガランを俺は睨み付けるが、奴は他のみんなに気づかれない様に不敵な笑みを俺だけに向けてきた。
ざまぁみろとでも言いたげのその表情に虫唾が走る。
「それにこれが証拠です!」
ガランが取り出したのはコンディションブレス…。それからモニターが現れ、そこには俺が邪悪な笑みを浮かべ、エルスカーネを獣人形態に強制的に変貌させ、ガラン達を襲わせている映像だった。
捏造加工した偽りの映像か…!
「この様に彼は猫の亜人に我々を襲わせたのです! この映像が捏造加工をしていないのはこちらの捏造鑑定の達人貴族様が確認済みです!」
ガランの隣には金髪でちょび髭の貴族の男が立ち、ふむ、と頷いていた。
その貴族の俺を見る目…奴もガランとグルなのか…!
一通りの話を聞いたオルレストは息を吐き、見下した様に俺を見る。
「貴様の他の仲間はどこだ?」
メリル達の行方を尋ねてくるオルレスト様に俺はニヤリ、と笑い答える。
「仲間には見限られて、行方は知りません」
「…貴様達の信頼関係は知っている。見限るなどあるワケがなかろう」
「ですが、知らないモノは知らないです」
何度も同じ質問をぶつけてくるオルレスト様に俺は頑にも答えずにいる。
すると、彼は諦めたのか息を吐き、兵士に命じる。
「…奴を尋問部屋へ連れて行け。…そこで話をさせてやる」
その一言に兵士達は敬礼し、俺は奴等に連れて行かれた…。
その後、俺はある部屋に連れて行かれ、両腕を頭の上に重ねられ、拘束される。
そして、先程の鑑定貴族に鞭で何度も身体を叩かれていた。
既に鞭による痣が数カ所出ている。
「さあ、そろそろ限界だろう? 本当の事を吐くといい」
「だから、仲間が何処にいるかなんて知りませんよ」
そう答えるとまた鞭で打ち付けられる。それが数十分続いた時、部屋にブルースが入ってきた。
「アリシア様…そろそろお時間です」
この貴族…アリシアって名前なのか…。
ブルースの顔を見て、アリシアは舌打ちをして、兵士達と共に部屋を出た…。
それを見送ったブルースは俺の拘束を解除して、傷つく俺を背負う。
「ブルース…」
「…本当の事を話せば多少は楽になるはず…何故、お前はそこまで…」
「…それは企業秘密ってヤツだ」
俺はそのままブルースに支えられ、牢屋に入れられた。両腕には技能を無効化する鎖をつけてだ。
「夕食は置いておく…。早く出られるといいな」
そう言い残し、ブルースは立ち去った…。それを見送った後、俺は夕食を頬張る。
牢屋にいる人間にパン一つか…御馳走なのか、そうじゃないのか…。
月の光が差し込む夜…。
俺はどう脱走するか考えていた…。取り敢えず、オルレスト様と話は出来た…後は、ここを出るだけだが…。
そう考えていると小さな声で声をかけられる。
牢屋の外を見てみると何度かあった自称神秘的なお姉さんがいた。
「アンタは…自称神秘的なお姉さん…!」
「自称じゃないわよ! 全くもう…。でも、その様子なら心配はなさそうね」
だが、何故コイツが…。
「何故、お前がここに…?」
「取り敢えず、説明は後にして…」
彼女は何かを取り出すと、ガチャリ、という音が聞こえた。
牢屋の扉を見てみると何と開いていた。
「…は⁉︎ どうしてお前が牢の鍵を…⁉︎」
あまりの予想だにしていなかった事に俺は驚愕するが、彼女は人差し指を口に持っていき、しー、と俺を注意する。
「説明は後って言ったでしょ? さあ、逃げましょう!」
一足先に走り出す彼女を見て、俺は考え込むが、早く!、と急かされて結局、彼女の後を追う事となった。
暫く走った後…俺は彼女の服装を見る。…貴族の娘にしては高品過ぎる…彼女は一体何者なんだ…?
そんな事を考えていると…。
「逃がさんぞ」
振り返るとそこには数人の兵士を引き連れていたアリシアの姿があった。
「チッ、見つかったか…!」
「そこの犯罪者はともかく…いけませんな、姫様…犯罪者を勝手に逃しては」
……待て。姫様、だと…?
「姫様…?」
困惑した俺は彼女を見ると彼女は俯いていた。それも悲しそうな表情で…。
「何だ、知らなかったのか? 彼女はオルレスト王の第一皇女…アイリ・ブーム様だぞ」
ハァッ…⁉︎ 彼女が…この国のお姫様…だと…⁉︎
衝撃的な真実を告げられ、俺は大いに驚く。そして、彼女の正体を知る事…これが俺の新たな事件に巻き込まれるきっかけになる事をまだ知らなかった…。




