指名手配
レベル上げをしていた俺達の前にコルドブームの騎士達とガランが現れ、何とガランは俺達が獣人形態のエルスカーネを操り、奴を襲ったと口にした。
勿論、襲われたのは俺達の方で、エルスカーネを操ったのも奴自身だ。
「ふざけんじゃねえぞ、テメェ! エルスカーネちゃんを獣人形態に変化させて、襲わせたのはテメェだろ⁉︎」
嘘の事実を聞き、怒りを露わにするマギウス…。
だが、そんな彼の怒りに怯える素振りを見せたガランはヒイッ⁉︎、と声を上げる。
「ほ、ほら! 図星を突かれて怒っていますよ!」
怯える演技に騙され、騎士達は俺達を更に険しく睨みつけてくる。
「ひ、卑怯ですよ…!」
「何と卑劣な…!」
ガランの卑劣な嘘にはメリルとルルも怒りを込めて、奴を睨む。
「…だが、目撃情報は彼だけだ。…確かなる情報を得る為にお前達には同行を願いたい」
…どうやら、完全にガランを信じきっているワケではなさそうだな。
「一先ず、その猫の亜人を我々に手渡し、お前達もついてきて欲しい」
俺達とエルスカーネを別々で連れていくつもりかよ…!どうするか考えていると、俺はある邪悪な視線に気がつく。
その視線の正体は騎士達に守られる様に立っているガランだった。奴は騎士達に気づかれない様に不気味な笑みを俺達だけに向けていた。
正直言って、その不気味な笑みに背筋がゾクリ、と震える。
すると、隣に立っていたエルスカーネがコートの裾を掴んできた。
彼女に視線を合わせると、怯える表情で俺を見上げてくる。その表情は正に、助けてくれと言わんばかりである。
ダメだ…此処で奴等の言いなりになれば…隙を突かれ、エルスカーネがまたガランの手に…!
それはまたエルスカーネを苦しめる事になる…。だったら、俺の…俺達のやるべき事は…!
背後にいるメリル、アイム、マギウス、ルルに視線を移すと彼女達は俺の考えを悟り、頷いた。
「…すみませんが…エルスカーネを貴方達に渡すつもりもなければ、俺達も捕まるつもりもありません」
「…そうか。それでは致し方ないな。抜剣!」
騎士隊長らしき男が叫ぶと他の騎士達は剣を抜く。
俺は小声で相手を傷つけない程度にぶっ飛ばすぞ、とメリル達に伝え、俺達も戦闘態勢を取った。
「殺すな! 相手の戦意をはぎ取り、拘束しろ!」
騎士隊長らしき男の言葉が戦闘開始のゴングとなり、騎士達は俺達に襲いかかってきた。
俺達は迎え撃ち、襲い来る騎士達を薙ぎ払っていく。
「《シールドブーメラン》!」
「《エレキブラスト》!」
エルスカーネとマギウスは《シールドブーメラン》と《エレキブラスト》で騎士達を吹き飛ばしていく。
俺とアイムもエンゼッターの峰部分と拳で相手をしていく。
メリルはルルを守る様に立ち、《リフレクト》で騎士達の攻撃を反射していく。
「つ、強いぞ、コイツ等⁉︎」
「犯罪者の分際で!」
俺達は犯罪者じゃねえっての…。それにしてもガラン…覚えてやがれよ…!
「マスター…応援を呼ばれても面倒」
「そうだな…。そろそろ退くぞ! メリル!」
「はい! 《ライトフラッシュ》!」
メリルは眩い光を放ち、その光に視界を奪われた騎士達は腕で目を覆ってしまう。
視界を奪われた騎士達の隙を突き、俺達はこの場から退いた…。
視界が戻った騎士達は先程まで俺達がいた場所を見るが、俺達がいない事に気がつき、驚きの声を上げる。
「い、いない⁉︎」
「先程の隙を突いて逃げたのか⁉︎」
「まだ近くにいるはずだ! 探すぞ!」
騎士達は散開し、俺達の捜索を開始する。
「ククク…さて、何処まで逃げ切れますかねぇ…」
騎士達が必死の捜索を始める中、ガランは不敵な笑みを浮かべ、その場を歩き去った…。
何とか騎士達を撒いた俺達は街に戻る事も出来ず、街近くの森林の茂みに身を伏せる事にした。
「…さてと、逃げ切れたのはいいが、これからどうするか…」
「騎士の奴等と敵対しちまったからな…。この国で指名手配とかされたら笑いモノだぜ」
「…笑い事では済まされないのですが…」
笑顔で冗談を言うマギウスにツッコミを入れるメリル。
だが、このままでは捕まるのも時間の問題なのは事実だ…。
「一度、この国から出た方が良いのではないですか?」
「…多分無理。関所の防衛も強化される」
だとすれば、この国でどうにかするしかないな…。
すると、先程まで俯いていたエルスカーネが口を開いた。
「…済みません…。私の所為で…」
自分の所為でこの様な事態になってしまったと語ったエルスカーネの頭に俺は手を置いた。
「お前が悪いワケじゃねえよ。これは俺達全員の判断…全会一致ってヤツだ」
「そうです! この様な厄介事はもう慣れてますから!」
慣れてはダメなんだけどな…。
「皆様…」
「俺達は仲間だ! だから、遠慮するなよ、エルスカーネちゃん!」
「…はい!」
笑顔で頷いたエルスカーネを見て、俺達も微笑んだ…。
さて、本当にどうするか考えないとな…。いつまでも此処にいるワケにもいかねえしな。
「おい」
「ッ…⁉︎」
突然、声をかけられ、肩を掴まれた俺は反射的に振り返り、掴まれた手を振り解いた。
俺の肩を掴んだ者を見て、警戒を解き、驚いてしまうが…。
「お、落ち着け、俺だ! アルシエルだ!」
ア、アルシエルさん…?
どうしてこの人が此処に…⁉︎
「アルシエルさん…⁉︎ どうして此処に⁉︎」
「話は後だ。着いて来てくれ」
この人を信用出来ると俺達は彼の後を着いていくと彼の装備屋の裏側まで辿り着いた。
「入ってくれ」
勝手口から店の中に入った俺達は在庫部屋にまで足を踏み入れ、その場で休む事になった。
「ふぅ…これで何とか誤魔化せる…。ありがとうございました、アルシエルさん」
「何の。坊主達がマズイ状況と聞いて、いても立ってもいられなかったからな。にしても、騎士団相手に喧嘩売るとはなかなかだな」
人を問題児みたいに言わないでくださいよ…。
「仲間の為に身体を張るのは当然の事だと思いますが?」
「…やっぱり、俺の目に狂いはなかったな。お前さんの力になる。落ち着くまでは此処にいてくれ!」
本当に…この人にはお世話になるな…。
「ありがとうございます!」
「世話になります、旦那!」
だが、いつまでも此処に引き籠るワケにもいかない…。どうにかしなければ…。
『臨時ニュースです。此処最近出没していた化け猫を使役していた犯人の一団の正体が発覚しました。犯人の一団は今もなお、逃走を続けています。住民の方々はお気をつけください!』
名前は出ていないが、俺達が騎士達と戦った映像がテレビで放送されていた。
『国王、オルレスト・ブーム様は犯人の一団を指名手配しました。彼等を見た方々はご連絡をお願い致します』
指名手配…ついにこうなったか…。こうなったら一刻の猶予もなくなる…。
「ど、どうして私達が指名手配犯に…!」
「悪いのはガランの野郎なのによ!」
「完全に嵌められた…」
ガランの策略に悔しさを覚えるメリル達…。
かと言って俺も悔しさで拳を握っているが…。
「…指名手配犯か…。どうする、坊主? この状況が長引けば、お前さん達の立場も危うくなっていくぞ」
…アルシエルさんの言う通りだ…。それは俺達だけでなく、アルシエルさんの立場も危険になる…。
完全に先手を取られてる…。こちらからも何か手を打たないと…。
国が俺達を捕えようとしている…。そう、この国の国王が…。
…国王…? そうか…!
「先手を取られているなら…逆の手を取ればいい」
「逆の手…? 何か方法を思いついたのか?」
マギウスに尋ねられ、俺はみんなに思いついた策を話す為、口を開いた…。
「国王に…オルレスト・ブーム様に会う…。俺がワザと騎士達に捕らえられてな」
俺が提案した策にメリル達は驚愕の表情を浮かべた…。




