橋の上
二話です
結構時間に関しては不定期になるかも…
一旦、俺が大酒飲みの男に聞いた話をまとめておこう
この世界は2025年の日本である
2020年、つまり俺が記憶が途切れた年に
世界が突然薄暗い雲に包まれ化け物が表れたこと
強大な化け物たちに対抗手段を持たない当時の人たちは
成す術も無く、殺られていき
今いるこの街が人類最後の砦で
外の世界は無法地帯
この街もそこまで平和じゃねぇって事だ
だからこそ俺は生き抜くために…
あれ?なんでそんなに生き抜きたいんだっけ…?
そんな疑問を考えている場合ではない
今は目の前の…
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そう、俺は今
あの時の人に抱きついていた
そして高らかに
「俺を子分にしてくれ!」
と要求した
…んだが
この老人
いや、老人様は微動だに動かない
突然同性に抱きつかれたのに…何故だ!?
すると老人様は重たい腰を上げるように口を開き
「お前、あの時のガキか…
小便洩らさなかったか?」
と、ヤレヤレといった口調で語りかけた
俺の事を覚えててくれたのか!
なら話は早い!
俺は捲し立てるように老人様に
「覚えててくれたんだな!
あの時の強さに惚れちまいまして!
是非子分に!
そうだ!名前を!名前を教えてくださいよ!」
と
その瞬間
老人は急に機嫌を悪くしたようで
俺を丁寧に、靴紐を解くように放った後
顔をしかめて酒場から静かに立ち去ってしまった
「きゅ、急に何なんだよ
あの老人様は…」
「アンちゃん言っちゃいけねえ事言っちまったなぁ
すまん!俺の説明不足だった!」
大酒飲みの男が申し訳なさそうにこちらへ歩いてきた
「ど、どういうことだよ」
「今の世界では名前に関することはNGなんだよ
すまんな、今から説明してやる」
さっきまで酔ってやがったくせに
急に締まったような顔で俺に向かい語り始めた
「この世界を覆っちまった薄暗い雲
あれも実は化け物だったんだなぁ
それも世界で一番恨まれてる」
「意味わかんねーよ、雲が化け物だとか恨まれてるとか」
「あの雲は"名喰い"って名前の化け物だ
俺たちが勝手に名付けた名前だが、名前の通りの奴だ
あいつの支配する世界で人は真の名を口にする、されると
強制的に灰になって消されちまう…
まるで燃えカスみてぇにな」
「…だからお前は名前ではなく
最初会った時、大酒飲みの男なんて名乗ったのか」
「ご名答だアンちゃん
そしてあの爺さん、通称銀の翁は
自分の嫁さんと息子さんを呼んじまったのさ
何も知らなかったとはいえ、相当トラウマだろう」
「そうだったのか…
ていうか何でアンタはそんな事知ってるんだ?」
「爺さんが酒に酔ってるとき聞いたんだよ
あの爺さん、見た目よりは口が軽いからな
特に酔った時は」
「見かけによらない奴なんだな…」
「ただ、あの爺さんに付いて行くのは止めておけよアンちゃん
爺さんの行くところは常に危険地帯だ
誰も命を惜しがって付いて来やしねえ」
「ん?てことは
やっぱあの爺さん強いんだな?」
「まぁな、なんせあいつは…」
大酒飲みの男が言い終わるよりも先に
酒場を俺は飛び出ていった
一刻も早く爺さんを見つけないと
そんな気持ちで俺はいっぱいだった
子分になりたいのもあるけど
失言を謝りたい気持ちも同じくらいあった
あの爺さんは凄く悲しそうな眼をしていたから…
昔はビル群であっただろう
荒れ果てた廃墟跡に様々な屋台店が
立ち並んでいる
しかし俺はそんな物にも目をくれず
爺さんが行ったであろう方角へ走っていった。
30分ほど街を走り回った後
爺さんはいた
石畳で出来た橋の上で
ボロボロになった質素な釣り竿で釣りをしていた
「爺さん、…釣りしてんのか?」
謝ろうとしたが恥ずかしくて
こんな話を振ってしまった
すると爺さんは俺に気づいたが、動じることなく
「ああ、お前も釣るか?」
と返してきた
「何が釣れるんだ?」
すると数秒、硬直し
爺さんは釣り竿を上に振り上げた
釣り竿の先にはヘドロまみれの空き缶が付いていた
「ゴミだ、ここではゴミしか釣れん」
何ともくだらない気持ちになった俺は
胸がスッとらくになり、思いを切り出した
「あの、さっきはゴメン…なさい
えっと名前に関して色々と…」
すると爺さんは予想通りと言ったような
少し柔らかい口調で
「気にしちゃいねぇよ、過ぎたことだ」
と俺を許した、こうも呆気なく
爺さんは続けて口を開き
「お前、知らなかったんだろう?
振る舞いで大体分かるからな
ところで、お前俺の子分になりたいとか言ってたな」
俺はチャンスとばかりに
「そうだ!是非頼む!
雑用なら何でもするから!」
と捲し立てる
すると爺さんは
「俺はこれから仕事なんだ
危険だ、これがしょっちゅうある
俺なんかと命を共にする覚悟があるなら
…付いてこい」
「お、おう
もう準備が万端だぜ!…です!
で、どんな仕事なんだ、すか?」
爺さんはニヤリと笑い
「悪者退治さ
感染しちまった狼の王様を狩りに行くのさ」
少し爺さんの右腕が銀色に光ったような気がした
次回はついにアクションします