第78話「君は世界で一番綺麗だ」
完結まで残り1話となりました。
最終話も同時投稿しておりますので、この物語の終結を見届けて頂けたら嬉しく思います。
第78話「君は世界で一番綺麗だ」
俺は深呼吸をして気持ちを落ち着かせると、目の前の扉をノックした。すると、中からは控えめに「とうぞ」と言う声が返って来たので、俺は中に入った。
そして、中に入った瞬間俺は固まった。
何故なら、俺の目の前には純白のウエディングドレスを着ていつも以上におめかしをしたルナの姿があったからだった。
そんなルナの姿を見て、俺は固まってしまう。あまりの綺麗さに言葉を失ってしまったのだ。
今日、俺とルナは結婚式を挙げることになっている。そして、その結婚式開始まですでに一時間を切っている。
先に支度を終えた俺が、ルナの様子を見に来たのだが、想像以上にルナの姿が綺麗すぎて言葉を失ってしまったのだ。
どれぐらい固まっていたのだろうか?
やがて、ルナが「あなた……どうですか? 似合ってますか?」と恥じらいながら聞いてくるまで、金縛りにあったかのように俺は動けなかった。
「あっああ。とっても似合ってるよ。あんまりにも綺麗だったから見とれてたよ」
恥ずかしかったが俺は本音を答えることにする。せっかくのルナの晴れ舞台なのだ。変に誤魔化したせいて台無しにはしたくはなかったし、ずっと待たせてしまっていたのだから。
本当なら結婚式はすぐにでも挙げようかとも考えていたのだが、色々なことが重なりなかなか出来ずにいて、それにルナも無理に挙げなくても良いというルナの言葉に甘えてしまい、結婚式を挙げないままずるずると、結婚してから七年が経ってしまったのだ。
「えへへ、嬉しいです。このウエディングドレスのデザインを決めるの、ルルネさんが手伝ってくれたんですよ」
「へぇ~、そうだったのか」
実は俺は今日までルナがどんなウエディングドレスを着るのかを知らなかったのだ。それはひとえにルナに、当日までのお楽しみして欲しいというルナのお願いだったので、俺も今日の今日まで詳しいことは聞かずに楽しみに待っていたのだ。
「オーダーメイドで作っているとは聞いてたけど、まさかルルネが絡んでいたとはな」
そう、今回のルナのドレスはオーダーメイドで、シンプルな中にもフリルなどがあしらわれていて、かわいさを忘れないデザインとなっていた。
「ルルネさんだけじゃないですよ。ロゼルダさんもお店を紹介してくれて、お祝いだって言ってドレス代を出してくれたんですよ」
「えっ!? 師匠が?」
「はい、そうですよ」
マジか。師匠がそんなことをやっていたなんて初耳なんですけど。
俺は驚きながらも、後で師匠にちゃんとお礼を言おうと心の中に刻んでいた。
まあ、あの師匠のことだから、礼は良いから若い女を紹介しろとか言い兼ねないが。
一瞬、頭が痛くなった気がしたが、俺はそれを無理矢理意識の外に追い出すことにする。
「まあ、とにかく本当に綺麗だよ、ルナ」
二十歳を越えたルナは、年を重ねるごとに魅力的な女性へとなっている。あの時から骨抜きにされていたのに、なおさら骨抜きされている状態だった。それに、ミアが生まれて四年が経つと、次第に母親としての顔が濃くなってきて、また新たな顔が見えて、なおさら俺はルナに虜にされていた。
「あなたもタキシードとっても似合ってますよ!」
「そうか? 俺としては窮屈だし、似合ってないと思ってるんだけどな」
「いえ、とっても似合ってますよ。妻であるわたしが保障します!」
ルナにそこまで太鼓判を押されてしまえば、俺はそれ以上は何も言えなくなってしまう。というよりも何だか照れ臭くなってしまったのもまた事実だ。
俺とルナが見つめ合っていると、「こほん」咳払いが聞こえてくる。音がした方に視線を向ければ、そこにはジト目でこちらを見るルルネとそのルルネの腕に抱かれているミアに、その隣にはグレンとレイに妹であるニアに俺の父さんと母さん、ルナのお母さんにお義父さん、それにルナの妹である六歳になるシャーナの姿がそこにはあった。
あ~、これって今までのやり取りを全部見られてたやつですね、はい。
俺とルナはその事実に気が付いた瞬間、二人して顔を赤くして染め上げることしか出来なかった。
そんな中でミアが「おかーさんきれー」と言う声だけが室内に響いていた。
****************************
式が始まるまで残り一時間を切っていたので、ルナの準備は急ビッチで進められていく。
俺は俺でその間に段取りなどを確認していく。まあ、その間にチクリチクリと、ルルネからはお小言を言われたのだが。
それからすべての準備が整い式はスタートした。
俺が司祭の前でルナが来るのを待っていると、そのルナはお義父さんにエスコートされて、ゆっくりとバージンロードを歩いてくる。
俺がルナが来るまでの間、会場に来てくれている人たちの顔を見ていた。
俺とルナの家族はもちろんのこと、ルルネにグレン、師匠やラーに俺の養成学校時代の友達に、南区画【スーザック】の人たち、それにあれはセシルか!? 確かに王都【キーリン】で式を挙げるとは伝えていたけど、まさか、この会場に来ているとは思わなかったな。
だけど……だけど……
俺はそんな会場の様子を見て、思わず泣きそうになってしまう。こんなにもたくさんの人たちが俺とルナの結婚式に来てくれたことが嬉しくて仕方がなかったのだ。
そんなことを思っていると、ルナが歩き終えたようで目の前にルナとお義父さんの姿があった。
「娘をよろしくな」
「はい」
俺はお義父さんの言葉に力強く頷くと、お義父さんからルナの手を引き継いだ。
俺とルナは一度頷き合うと、祭壇の前に二人で立った。
聖歌を歌い、司祭が聖書を朗読していく。
「新郎リアムさん、あなたはここにいるルナを、病める時も健やかなる時も、富める時も貧しき時も、妻として愛し、敬い、慈しむことを誓いますか?」
「はい、誓います!」
司祭の問いかけに俺は力強く答える。司祭は俺の返答に頷くと、今度はルナの方に視線を向けた。
「新婦ルナさん、あなたはここにいるリアムを、病める時も健やかなる時も、富める時も貧しき時も、夫として愛し、敬い、慈しむことを誓いますか?」
「はい、一生誓います!」
そんなルナの言葉に俺はくすりと笑みがこぼれてしまう。
本当に俺はこんな一途な子に、愛してもらえて幸せだ。
「よろしい、それでは指輪の交換を」
司祭の言葉で、俺とルナは指輪をはめ合った。
「それでは誓いのキスを」
俺はルナのベールをあげると、真っすぐにルナの子を見た。
「ルナ、絶対に君をこれからも幸せにすることを誓うよ。だから、一生こんな俺だけどついてきてもらえるかな」
「もちろんですよ」
俺のそんな情けない問いかけにも、ルナは笑顔で頷いてくれる。
そんなルナの姿を見て溢れ出す愛おしさと共に、俺はルナに「ありがとう」と伝えると唇を重ね合わせるのだった。
その瞬間、会場は拍手で包まれていた。
挙式が終わり、ルナの周りには女性陣が集まっていた。
これからもう一つ大切な儀式があるのだ。
これからルナはブーケトスを行う段取りになっている。
これはルナがやりたいと言ったことで、ブーケトスは幸せのバトンタッチとも呼ばれているので、ルナは絶対にやりたいと言ったので、俺はそれを快く受け入れたのだ。
ブーケトスの話を聞いた時、まさにルナらしい考えだなと俺は思っていて、そんな彼女がやりたいと言ったのだから、全力で叶えてあげたいと思ったのだ。
ルナは笑顔で集まった女性陣に説明している。
「それではいきますよ」
ルナはそう叫ぶと、女性陣に背を向けた。
そして、ルナは腕を振り上げた。
ルナが投げたブーケは綺麗に宙を舞った。次の幸せを届けるために。
面白いと思って頂けましたら、ブックマークや評価のほどをよろしくお願いいたします。




