第77話「ミアのいる日常」
完結まで残り2話となります!
第77話「ミアのいる日常」
ミアが生まれてからというもの、生活の基準は一変した。今までは仕事に集中しながら、ルナとの時間も大切に過ごしていたのだが、その基準は大きく変わり、今ではミアが中心として生活は回っていた。
もちろん、仕事に対して手を抜いたりとかはしていないのだが、ルナがミアのことを見ていてくれてるとは言え、ミアのことが気になって仕方ないのだ。それにすべてルナに任せっきりと言うわけにもいかないし。
そんなこんなで、ルナは仕事に集中しても大丈夫と言ってくれてはいるのだが、俺の気が済まなかったので、ルナと協力しながら今まさに子育てに奮闘中だった。
ミアが生まれて二年が経とうとしているが、毎日探り探りの一日を送っていた。
生まれたばかりの頃は、まだベッドの上で眠っているだけだったので、大変は大変だったがまだ平気な方だったが、今は歩き出したと思ったら、今度はアトリエの中をキャッキャッと騒ぎながら走り回っている。
大きくなったらなったで、今度は動き回るから目が離せないんだよなぁ~。
新生児の時はそれはそれで目が離せなかったのだが……
「ほら、ミア。お父さんはお仕事中なんですから、向こうでお母さんと絵本を読んでましょう」
ルナがそう言ってミアをあやしているが、ミアは「やー!」と言って、ミアは部屋を駆けずり回っている。
「ミア!」
そんな駆けずり回るミアのことを、ルナが追いかけている。
最近では毎日見る光景となっている。見ている分には微笑ましい光景なのだが、毎日毎日追いかけっこじゃ、これじゃあルナの体力が持たないよな。子どもの体力は無尽蔵だって言うし。
なので、俺はミアにおもちゃを作ってあげることにする。
錬金釜に材料を入れると、早速錬成を始める。そこまで難しくない錬成だったため、錬成反応はすぐさま納まった。
「よし完成だ」
俺はその完成したものを早速ミアに渡すことにする。
「ミア、新しいおもちゃだぞ」
「おもしゃ?」
走り回っていたミアは、その動きを止めると首を傾げながら、小さい歩幅でてくてくと歩きこちらに近づいてくるので、俺は手に持っていたものをミアに渡した。
「ミア、これはなこうやって積み重ねて遊んだり、こうして色々な形にしたりして遊ぶんだ」
俺が作ったのは積み木だった。
積み木なら動き回らないで遊べると思ったのだ。その俺の読みは当たっていて、積み木を受け取ったミアは早速、それで遊び始めている。
詰み上げたり、並べたりしながらきゃいきゃいと騒ぎながら遊ぶ愛娘の姿に、俺の口元は自然と緩んでしまう。
「ふふ、あなたお顔がだらしなくなってますよ」
「こればかりは仕方ないな。ミアが天使なのがいけない!」
親バカ全開なセリフであることは自覚しているのだが、ミアが天使なのだからしょうがない。
「あなたそれってとっても親バカですよ。まあ、ミアが天使なのは分かりますけど」
そう話しながらもルナも微笑んでいる。
ミアはどちらかと言えば、ルナに似たと俺は思っている。俺譲りの黒髪以外は全部ルナのパーツが濃いと今のところは感じていた。
「ルナに似てるってことは、将来美人になることは決まりだな」
俺が一人で納得していると、「あんたはまた親バカ発動中なのね」と呆れを含んだ声が聞こえてくる。
声のした方に視線を向ければ、そこにはミアと同い年ぐらいの子どもを抱いて、俺のことを見ているルルネの姿があった。
ルルネの腕に抱かれているのは、ルルネとグレンの娘である『レイ』だ。レイはどちらかと言えば、グレンの特徴の方が出ているらしく、ミアはかわいくてふわふわ系に対して、レイはかわいいの中に凛としたクールな雰囲気があるのだという。
ミアはレイの姿を見ると、「れー!」と嬉しそうにレイの名前を呼んでいる。
レイはレイで、ルルネに床に降ろされるとミアの元にゆっくりと歩いて行っている。
確かに二人のテンションの差を見ると、レイは少しドライ気味かもしれない。そして、二人は先ほど俺が錬成した積み木で遊び始めている。
そんな微笑ましい子どもたちの姿にほっこりしながら、俺はルルネへと視線を戻した。
「それでお前はなんで来たんだ?」
「はぁ? あんたそれ本気で言ってんの」
「ん? 今日って何かあったっけ?」
やばい、まったく心当たりがないんだが。
俺は必死に思い出そうとするが、何分心当たりがないので思い出すことは無理だった。
そんな俺を見かねてか、ルナが助け舟を出してくれる。
「あなた、前から今日はルルネさんとレイちゃんが遊びに来るって話してましたよ」
「そうだっけ?」
「そうですよ。ふふ、あなたは仕方がない人ですね」
ルナはくすくすと笑っている。俺は俺でまったく覚えていなかったので、笑って誤魔化すことしか出来なかった。
そんな俺たち二人の様子を見て、ルルネは「あんたたちは子どもが生まれても、ナチュナルにイチャつくんかい!」とツッコミを入れていたのだった。
それからしばらくして、ミアとレイがお昼寝タイムに突入したのを見て、俺たちもティータイムに入ることにした。
「そんで、ルルネの方は子育てはどうよ」
「もう大変よ。レイが生まれてくれて確かに賑やかになって、毎日が新しい発見の連続だけれども、それと大変さは別ね。上手くレイのことを育てられるか自信がないわね。今のままだと」
「いやいや、そこは頑張れよ。まあ、俺もそこは自信ないんだけどさ。ミアをちゃんと育てていけるかなって」
「それはそうでしょ。あんたが父親とか今でも信じられないわ。それを考えるだけで笑いが込み上げてくるもの」
「お前、それは何気にひどくないか」
ルルネのその言葉に俺はそう思わずにはいられない。
「あはは、でも、そう思っちゃうのは仕方ないでしょ」
「まあ、それもそうか」
考えてみれば俺とルルネは、俺が王都からこの南区画【スーザック】でアトリエを構えてから、半年後からの付き合いだ。その時はお互いでこうして結婚して家庭を持っているなんて想像が出来なかったもんな。
「ほんと人生何があるかわからないもんだな。それもこれも、ルナのおかげかな。ルナが俺の人生を大きく変えてくれたんだ」
俺は隣に座るルナに笑いかけると、その頭を撫でた。
「最初、ルナがこのアトリエに押しかけて来た時は何事かと思ったけど、今ならはっきり言えるよ。あの時、ルナがここに来てくれて良かったって。ルナと結婚出来て本当に幸せだって」
「あなた、わたしもです。わたしもあの時あなたと出会っていなかったら、お母さんの命はなかったですし、もしかしたらわたしだって生きていなかったかもしれません。それにわたし育ちだってよくありませんし、それなのにそんなわたしをあなたの、リアムさんのお嫁さんにしてもらえて、本当に嬉しかったんです。普通なら追い出されてもおかしくないのに、あなたはわたしのことを受け入れてくれました。こんなに温かい家族を家庭をくれました。わたしだってはっきりと言えますよ、とっても幸せですと」
「ルナ」
「あなた」
俺とルナが感極まって見つめ合っていると、そこにすかさずルルネのツッコミが入る。
「いやいや、あんたたちは事あるごとに愛を伝え合ってたでしょうに」
ルルネの瞳を見てみると、今更なことを言うなと訴えていた。
俺はそれを笑って誤魔化すのだった。
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それからお昼寝から目覚めたミアとレイが再び仲良く遊んでいると、仕事を終えたグレンが二人のことを迎えに来た。
「ルルネ、レイ迎えに来たよ」
「グレンさん!」
「ぱぱ!」
クールな印象が強いレイであるが、パパにはデレデレでグレンが来たら一目散に、グレンの所に駆け寄っている。
「レイ!」
グレンもグレンでそんな愛娘の姿にデレデレで、駆け寄って来たレイのことを抱き上げている。そんな中にも父親の顔をのぞかせていた。
「リアム、悪かったね。妻と娘がお邪魔してしまって」
「別に気にすんな。それにレイがミアの遊び相手になってくれたから、こっちとしても助かったよ」
「それを言ったらこっちもだよ。また妻とレイのことを頼んでも良いかな」
「ああ、もちろん」
俺がそう答えると、グレンは笑顔で返してくるとルルネとレイを連れて帰って行った。
「なんて言うか、ほんとあっちもあっちで上手くやってるよな」
「ふふ、そうですね。見ていて何だか微笑ましい気持ちになりますよね」
ルナは嬉しそうに笑っている。
「さて、わたしはお夕飯を作りますので、あなたはミアをお風呂に入れてくれませんか」
「ああ、お安い御用だよ。ミア、お父さんとお風呂入ろっか」
「おふろ~!」
はしゃぐ娘の姿を見て、俺とルナも自然と笑みがこぼれてしまう。
俺はそんなルナにキスを一つ落とすと、ミアを連れてお風呂場に向かうのだった。
ルナと二人ならちゃんと親になれる気がする。
俺はそんな想いを胸に抱いていた。
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