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【完結】錬金術師と幼な妻~俺に嫁が出来ました~  作者: 瞳夢
最終部 スーザックの錬金術師
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第63話「芽吹き始めた種」

  第63話「芽吹き始めた種」


「このように【新・万能霊薬(エリクサー)】を結晶化して使うことによって、【新・万能霊薬】は本当の力を発揮します。液状でも十分な効力は発揮すると言えますが、この薬の真価は結晶化してこそ発揮されるんです。()()、よろしく」


「任せて、お兄ちゃん」


 ニアは俺の声に反応すると、記録結晶が映し出している映像を切り替えてくれる。


 記録結晶とは、そこに記録したものを映し出せる便利な錬金道具だった。


 そこにはこれまでにまとめた研究の結果が記されていた。そこにこれまでに俺が導き出した答えが記されていた。


「今、記録結晶が映し出しているのは、私がこの数年間でまとめた【新・万能霊薬】の研究結果のまとめみたいなものです。知り合いの魔法薬師から得たヒントで、【新・万能霊薬】を結晶化して、それを一つの触媒とすることにより、今まで実現不可能だった薬を作りだすことが可能となりました。例を上げるとするならば、アソル症を治すために作った特効薬ですね。この薬はずっと素材同士の調和が上手く取れず、薬の完成は不可能だと考えられていました。しかし、【新・万能霊薬】を触媒にすることによって、素材同士の調和が上手く行き、素材同士が掛け合い、アソル症に効く特効薬は完成しました。つまり、【新・万能霊薬】は結晶化することによって、あらゆる薬の触媒になりえる可能性が秘めていると考えることが出来るようになったんです」


 俺は一度言葉を切ると、今日集まった錬金術師たちを見回した。


 俺は今、このグリゼルダ国の王女であるセシル・グリゼルダの頼みで、王都【キーリン】にいる錬金術師たちに講義を開いていたのだ。


 そして、妹のニアは俺の一時的な助手を務めてもらっているのだ。ルナが妊娠してしまっているため、無事に錬金術師の学校を卒業したニアに、研修ついでにこうして手伝ってもらっていたのだ。


 錬金術師たちの様子を見ると、俺の研究内容に興味津々なのか食い気味にその映像を見ている。


 そもそもこの【新・万能霊薬】は俺にしか作り出すことが出来ない薬だった。それは万能霊薬が作られて数年経った今でもそうだった。なので、錬金術師たちはこの講義で我が物にしようと必死なのだろう。


 それに万能霊薬を作り出すことは、錬金術師にとって大課題の一つとされていた。だから、なおさら錬金術師たちにとって、この万能霊薬の講義は興味深い話なのだろう。


 それは当たり前の事か。と俺は思い直すと、再びニアに手伝ってもらいながら講義を進めていくのだった。


****************************


 リアムが王都で講義を開いている頃、南区画【スーザック】にあるアトリエ【クレアスィオン】では賑やかな時間が流れていた。


 もともと、リアムがいないため、アトリエ本来としての機能はしていないのだが、ルナが始めたカフェが大盛況なので、主がいなくても忙しい時間をルナは過ごしていた。


「ルナちゃん、こっちに紅茶とパウンドケーキ追加で!」


「ああ! こっちは紅茶とクッキーで!」


「はーい。ちょっと待っててくださいね」


 ルナはそう告げると、テキパキと注文された物を用意していく。その動きには一切の無駄がなかった。


 そんなルナの姿を見て、ルルネはただただ感心するしかなかった。ルルネ的には、リアムが不在のうちは、このルナが発案で始めたカフェも休業すると考えていたのだが、こうしてルナはカフェを開ているので、本当にルナには感心してしまう。


「ルナちゃん、これはあっちの席に運べばいいのかな?」


「あっ! はい! ありがとうございます、ルルネさん!」


「いいの、いいの気にしないで」


 ルルネはルナにそう伝えると、出来た料理を次々に運んでいく。


 こうして、二人は忙しい時間を過ごして行くのであった。


 二人のチームワークで、何とかピークは越え、ルナとルルネはピーク後のまったりとした時間を過ごしていた。いわゆる休憩時間である。


「ルルネさん、手伝って頂きありがとうございました!」


 ルナはルルネにそう告げると、簡単に作った料理をルルネの前に出した。


「ううん、気にしないでルナちゃん。あたしが好きでしたことなんだからさ。それにルナちゃんは妊娠中なんだから、自分の体を気にしないとダメだよ」


 ルルネのルナは「はっはい……」と恥ずかしそうに答えている。いくつになっても、ルルネはルナにとってはお姉さんみたいな存在なのだ。なので、ルナはルルネのことが大好きだった。


「しかし、ルナちゃんが妊娠かぁ~。ここに来た時には想像つかなかったなぁ~」


 ルルネはルナが作ってくれたお昼ご飯を食べながら、ルナが押しかけて来た時のことを思い出していた。何だかんだ言っても、もうあの時から三年と言う月日が流れようとしているのだ。


「それにルナちゃんも気が付いたら、女の子から女性らしくなってるし、本当に時が経つのは早いわね」


 ルルネがそう言うように、この三年間でルナは見事に成長していた。


 最初は十四歳の少女らしい、身体つきをしていたというのに、今ではメリハリの付いた身体つきとなっている。唯一の欠点と言えば、身長がたいして伸びなかったその一点だけだろう。それ以外を除けば、ルナは完全にモデル顔負けの女性になっていただろう。


 それに今のルナの姿でさえ、同性のルルネを引き寄せる魅力があるのだ。男性が見たら、それこそ破壊力が比べるまでもないだろう。


 心底、ルナちゃんが結婚しててよかったわ。これで独身だったら、そこらじゅうの男が放っておかないわね。


 ルルネは内心でそうこぼしてしまう。それほどルナは魅力的な女性へと成長していたのだ。


 しかも、性格はあの時のままだし、天然だって抜けてない。うん、モテる要素が満載だわ!


 ルルネは改めて見せられたルナのハイスペックぶりに、感心することしか出来なかった。


「ルナちゃん、体調は大丈夫?」


「はい。今のところは大丈夫ですよ。心配してくれてありがとうございます! ルルネさん」


「いいの、いいの。こっちが好きでやってることだから気にしないで。それにあたしの両親も何かあったらすぐに言ってって言ってるし、だから、気にしないで欲しいな」


 ルルネはそう言って笑うと、ルナが作ってくれたお昼ご飯を口に運んでいく。


 ルナもルルネに「ありがとうございます」とお礼を告げると、自身もお昼ご飯を食べていく。


 しばらくの間、二人の間には和やかな空気が流れていたが、それは突然の来訪者によって一転してしまう。


 アトリエにやって来たのはグレンだった。しかし、そのグレンの姿を見て、ルナとルルネの二人は驚いてしまう。何故なら、グレンの表情がとても険しいものだったからだ。


「ぐっグレンさん⁉ どうかしたんですか?」


 ルルネが驚きから回復しないまま声を上げると、グレンは二人の名前を呼ぶと静かに告げた。


「ルナにルルネ。落ち着いて聞いて欲しい」


「はい」


 ルナとルルネも大人しくグレンの言葉を待っている。そして、グレンの口から告げられた言葉は驚くべきものだった。


「リアムに逮捕状が出た。だから、僕は今からここを家宅捜査しなきゃならないんだ」


****************************


 グレンがアトリエに訪れている頃、リアムの所には王城の専属の近衛兵たちがやって来ていた。その輪の中心には驚くべきことに、王女様であるセシルの姿があった。


「セシルこれは一体?」


 俺はただただ困惑することしか出来なかった。何故なら、一時間の休憩を挟み講義を再開しようと準備をしていたところ、いきなり近衛団の兵とセシルがやってきたのだから。


 それにセシルからいきなり告げられた言葉が「リアム・ラザール。あなたを逮捕します」だったのだから。


 まったくもって理解が出来なかったのだ。


「セシル、説明してくれ。どうして俺が逮捕されるんだ?」


 俺の疑問にセシルは苦しそうに言葉を告げた。


「リアム、あなたには麻薬を製造して、売りさばいた疑いがかけられています」


「まっ待ってくれ! 俺が麻薬を製造? バカを言わないでくれよ。俺がそんな物作るわけないだろ!」


 俺はセシルのその言葉に激しく困惑してしまう。だって、俺は麻薬を作った覚えなんて一つもないし、麻薬なんてものを作る気もさらさらないのだから。だから、どうしてセシルからそんな言葉が出たのかが分からなかった。


 隣に立つニアも今起きているのかが理解できずに固まっている。


「ええ、私も最初はそう思っていました。しかし、その麻薬の成分からとある一つの薬の成分が検出されました」


「一つの成分?」


「ええ、それは間違いなく万能霊薬でした。そして、万能霊薬を作れるのはリアム、あなたしかいません。なので、その麻薬を作ったのはリアムあなたですね」


「ちっ違う! 俺はそんな物作ってない!」


 確かにセシルが言うように、万能霊薬を作れるのは俺だけだった。それに万能霊薬自体、市販で売っているものではないので、現実的に考えれば俺が万能霊薬を作り、そのまま麻薬を作ったと考えられる。セシルの言っていることは筋が通ていた。しかし、しかしなのだ。


 俺は麻薬なんて作ってない。作っていないんだ。


「リアム、抵抗せずに大人しく捕まってください。抵抗するようならば、こちらは武力行使に出なければなりませんから」


 セシルの一切容赦がない言葉に、俺はすでに抵抗する気力が失せていた。いや、ただあまりの衝撃に呆然としていただけなのかもしれない。セシルに告げられたことがあまりの衝撃だったからだ。


 俺が抵抗しないのを見たのか、セシルは一つ頷くと近衛兵に「連れてきなさい」とだけ告げた。


 俺は腕に手錠をはめられ、両脇を近衛兵に掴まれ連行されていく。


 どうして? どうして?


 俺の頭の中はその言葉だけが渦巻いていた。そして、思い浮かんだのは愛する妻の顔だった。


 


 

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2021年8月11日より新連載始めました。よろしくお願いいたします。 リンクスとステラの喫茶店~ステラと魔法の料理~
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