第61話「プロローグ」
この話から最終部がスタートになります。
今さからプロローグって何だよって思うかもしれませんが、よろしくお付き合いのほどをよろしくお願いいたします。
第61話「プロローグ」
少年が森の中を歩き回っている。
素材を採取するためだった。
少年は白いローブを羽織り、その襟元には見習い錬金術師だと言うことを示すバッジ型の記章が取り付けられていた。
この記章は錬金術師の学校を通っている者に配られているもので、学校に通っている者は付けることを義務つけられていた。
この少年も、錬金術を学ぶ学校に通っているため襟元にその記章を付けていたのだ。
そして、今少年が森の中で歩き回っているのは、学校で出された課題を達成するために必要な材料を採取するためだった。
少年が通っている学校は結構な実践方式で、課題を出した時は、その課題の薬を作るための材料を各自で用意しなきゃいけないのだ。
そのため、少年はこうして森へと繰り出していたのだ。
辺りを見渡せば、少年と同じような格好をした少年、少女が同じように材料採取をしていた。
この森はよく学校の材料採取で使われる森なので、少年たちにとっても勝手知ったる森と言った所なので、安全に材料を採取できる場所なのだ。
よし、後はエズウコギ草を集めれば素材集めは完了か。それで学校に帰って薬を錬金して、担当官に提出すれば課題は終了か。後は担当官が出来を見て、それが合格ラインに乗れば課題達成の扱いになる。
さてと、とっとと最後の材料を集めて学校に帰るかな。
少年はそう考えて、最後の材料を探そうと歩き回ろうとすると、突然森の中に悲鳴が響き渡った。
少年が驚いて悲鳴のした方に向かうと、そこには一人の少年が腰を抜かして地面に座っていた。そして、その少年の先には怪我をして立ち上がれなくなっている一匹の狼の姿があった。
狼の体の下には血だまりが出来始めていて、早く治療しないと狼の命が危ない状態だった。
「おい! 状況は?」
少年は先に来ていた少年に状況説明を求めるが、その少年は放心状態で返ってくる言葉はなかった。
少年は内心で思わず舌打ちをすると、腰のポーチから一つのフラスコを取り出した。
そこには人間用の回復薬が入れられていた。何があってもいいようにと、ここに来る前に錬成して持ってきていたのだ。
人間用だけど、少しは効果があってくれればいいんだけど。
少年はそう思いながら狼に薬を飲ませるために近づくが、狼は警戒して「グルルル」と威嚇するようにうなり声を上げている。
「大丈夫、大丈夫だ。俺は錬金術師だ。お前を今助けてやるからな」
少年は狼のそばでしゃがみ込むと、その狼を安心させるように狼の体を優しく撫でると、次第に威嚇していた声はなくなっていき、やがて甘えるような、助けを求めるような声音に変わっていく。
「よしよし良い子だ。それじゃあ口を開けてくれ」
狼はその少年の言葉に従うように口を開いた。
少年も少年で一つ頷くと、フラスコの中身をゆっくりと狼の口の中に入れていく。
最初は吐き出していた狼ではあったが、次第にそれは自分のことを救うためのものだと理解したのか、おとなしく飲んでいた。しかし、その反面、少年は顔に険しい表情を浮かべている。
「やっぱ、人間用じゃ完全には治しきれないか。さて、どうするか?」
少年は狼の傷の具合を見ていたのだが、本当に気休め程度の効果しか得られていなかったのだ。
「まずいな、このままだと狼の命が危ない」
少年がどうするか考えていると、「リアム!」と少年を呼ぶ声が聞こえてくる。
リアムと呼ばれた少年が声のした方に顔を向けると、そこには少年のクラスメイト達が続々と集まって来ていた。きっと、全員先ほどの悲鳴を聞いて慌てて駆けつけてきたのだろう。
クラスメイト達の姿を見て、リアムは咄嗟に声を上げた。
「なあ、この中に誰か錬金ポットを持ってる奴はいるか」
リアムのその言葉に一人の生徒がおずおずと名乗り出た。
「私持ってるよ」
「貸してもらってもいいかな」
「ええ、もちろん」
リアムは女子生徒から錬金ポットを受け取ると、すぐさま錬金を始めることにする。
回復薬に狼の体毛に血。それから先ほど手に入れていたマリーシルバーと言う名の薬草。
これらを錬金ポットに入れて調合していく。すると、すぐさま一つの薬が完成した。
リアムはそれをすぐさま取り出すと、今度も狼に飲ませてみた。すると、先ほどとは違った反応が現れた。
先ほど人間用に回復薬は、狼の傷口を少しだけ小さくする程度しか効果がなかったのだが、今回は狼専用にアレンジした回復薬だったので、傷口の回復を促すことに成功し、狼の傷は見る見るうちに治っていった。
そして、それからしばらくして狼の傷口は塞がり、体力も回復したのか狼は立ち上がった。
周りから歓声にも似た声が上がる。
狼はリアムのことを見て、リアムの頬を一舐めすると森の奥へと走り去って行ってしまった。きっと今のが狼なりの感謝の気持ちの伝え方なのだろう。
「必死に生きろよ」
リアムは狼の走り去った方を見ながらそう呟いているのだった。
そんなリアムにクラスメイトは駆け寄っていき、お祭り騒ぎのようにクラスメイト達はリアムのことを称賛していた。
そんな中で、最初の狼を見つけた少年が悔しそうに歯噛みしていることに、その場にいたものは誰一人として気が付かなかった。
面白いと思って頂けましたら、ブックマークや評価のほどをよろしくお願いいたします。




