第56話「リアムの考え」
第56話「リアムの考え」
「それで君から見た妻の容態はどうなんだ?」
再びリビングに戻り、俺たちは今後のことについて話し合っていた。
俺はルナが淹れてくれたお茶で、口を潤してからお義父さんの問いを返した。
「そうですね。今のまま放っておいたら確実に筋肉は硬直し、動けない体になります。当然、口も動けないわけですから喋れなくなりますし、物も食べられなくなります。こんな言い方はしたくはありませんが、死を待つ体と言ってもいいのかもしれません」
「そうか。それで治療法はあるのか?」
「現時点でアソル症の治療法は見つかっていません。何分、珍しい病気ですから。俺も昔このアソル症に効く薬はないかって研究をしていた時期があったんですよ。結論から言うと、その薬は完成しませんでした。ですが、基本理論は完成しています。あの時どうしても足りなかった最後のピースもあります。なので、この薬が完成すれば、サラさんが助かる可能性はまだあります」
今話した通り、俺は以前にアソル症に効く特効薬の開発をしていた時期があった。ただその時は、素材同士の調和が上手く取れずに、まったくもって話にならないありさまとなってしまったのだ。
だけど、今ならば俺はその薬を完成させられるようなそんな予感がしていた。
「リアム君。君を信じてみてもいいかな?」
今まで黙って俺の話を聞いていたお義父さんがたがてそう口を開いた。
「はっはい! もちろんです!」
信じてくれたお義父さん、何よりも愛する妻の為にも何としても薬を完成させてみせるさ。
俺を見て一度頷いたお義父さんは、今度は俺の隣で座って妹のシャーナをあやしていたルナの方に向き直った。
「ルナも今まで黙っていてすまなかった。けど、これだけは分かって欲しい。お前の母さんは、楽しく過ごしているであろうルナに心配をかけたくなくて、ずっと黙ってて欲しいって言ったんだ。だから、母さんの気持ちだけは分かってやってくれ」
「お義父さん。わたしは別に怒ってはいませんよ。確かに具合が悪いことを教えてくれなかったのはショックでしたけど。だけど、お母さんの気持ちだって分かってますよ。それに……」
ルナはシャーナを抱っこしたまま俺に寄り添った。
「リアムさんがいてくれます。リアムさんなら絶対にわたしのお母さんを助けてくれます。わたしは信じてます!」
「はは、奥さんにそこまで言われたんじゃやるしかないな、リアム君」
「ええ、頑張りますよ」
俺はそう答えると、早速薬を作るために動き始めるのだった。
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「置いてないだって⁉ それは本当なのか?」
「だから、さっきからそうだって言ってるだろうが!」
俺は今、【ビャッコン】にある珍しいものを取り扱った素材屋に来ていた。そこで俺はどうしても手に入れないといけない素材があった。
それは仔竜のウロコだった。
それがなければ今回の薬作りを始めることは出来なかった。
「どうして仔竜のウロコがないんだ?」
この仔竜のウロコは珍しいが割と手に入りやすい素材だった。それは何故かと言うと、昔から竜と人間は意思疎通が出来たのだ。それで、竜の住処を人間が脅かさない限り、人間が必要だと言う素材を竜が提供してくれると言う契約があるからだと言う。
なので、素材屋に行けばあったりなかったりということがあるのだが、ここ最近は入荷すらないらしく、この先の入荷すらも目処が立っていない状態だと言う。
「知らんが、いきなり竜が怒り始めたらしくてな。素材の提供を拒み始めたのがその理由らしいが、俺も詳しくは知らないんだ」
竜が素材の提供を拒否? まさか誰かが竜との契約を破ったのか?
考えていても仕方ないと俺は割り切り思考を切り替える。何とかして仔竜のウロコを手に入れなくてはいけない。
「なあ、おっちゃん。この近くで仔竜のウロコが売ってる場所を知らないか?」
「ああん? 止めておきな。今はどこの店にも置いてないだろうな。少なくともこの【ビャッコン】にある店には置いてないだろう。東区画【セイリュウン】の店にはあるかもしれないが」
「東区画に? それはどうして?」
「何だよ、おめー知らないのか? 竜の住処って言ったら、東区画【セイリュウン】の近くにあるって言われてるっじゃねぇか」
「えっ? そうなんですか」
「ああ、だから、もしかするとそこにはあるかもしれないな」
「なっなるほど」
これは一度東区画の【セイリュウン】に行く必要がありそうだな。ここでこうしてうじうじしていたら、サラさんの病状は悪化する可能性だってある。
取りあえずそうと決まったら、すぐにその準備だな。
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俺はルナの実家に戻ると、すぐさま【セイリュウン】に行く準備を整える。
「あなたどこか行くんですか?」
「ああ、ちょっと素材を集めに【セイリュウン】まで行ってくるよ。どうしても必要な素材がそこにしかないなしいんだ」
「そうなんですか。分かりました」
ルナはそう言って頷くと、身に付けていたエプロンを取ると自身の荷造りを始めていた。
「るっルナ?」
「はい、どうかしましたか? あなた」
「いやいや、どうかしましたじゃなくて、【セイリュウン】には俺一人で行くから大丈夫だよ。ルナはここで待っててくれ。それにお母さんのこと心配だろ?」
「確かにお母さんのことは心配ですよ。けど、あなたのことも心配なんです。あなたはわたしが見ていないと、すぐに無茶をするんですから」
「ぐっ……」
前科があり過ぎて何も言い返せない。
「それにお母さんにはお義父さんが付いててくれますから。問題ありません。なので、わたしは全力であなたを支えます!」
そう言って真っ直ぐ見てくるルナの翠色の瞳には、拒否権はありませんと言う色を秘めていた。
ああ、これは何を言っても曲げない時のルナの瞳だな。それに、『ミアズマ』の一件以来、俺は一人で抱え込むのではなく仲間に頼ることにしていた。だから……
「俺は君のお母さんを絶対に助けてみせる。だから、一緒について来てくれるか? ルナ」
「はい、もちろんです」
ルナはそう言って笑顔を見せると、俺に抱き着いてきたのだった。
俺はそんなルナを優しく抱き留めたのだった。
荷造りを終えた俺たちは、【セイリュウン】に向かうためにお義父さんあいさつに向かった。
「そうか。【セイリュウン】に向かうのか」
「はい。どうしてもそこに必要な素材があるので」
「なるほどな。リアム君。これを持っていきなさい」
そう言って渡されたのは、何やら書かれた手紙だった。
「これは?」
「それは飛行船に乗れるフリー券みたいなものだ。私はこれでも【ビャッコン】で役員をやっていて、役員の特権で飛行船が乗り放題なんだ。それを乗組員のラーザに見せればリアム君たちも飛行船に乗れる。陸路を行くよりもよっぽど早いだろう」
「ありがとうございます。有り難く使わせてもらいます」
「それから、ルナ。家のことはお義父さんに任せなさい。その代りにリアム君をしっかり支えるんだよ」
「はい、お義父さん! 任せてください!」
ルナの返事にお義父さんは満足そうに頷くと、もう一度俺の方に向き直った。
「リアム君、今回は本当にすまない。来て早々こんなことをお願いしてしまって」
「いえ、気にしないでください。仮に言われなくてもこの事実を知ったら、全力で助けましたよ」
「はは、そうか。いや~、ルナは本当に良い旦那さんを持ったんだな」
「うん!」
そう言われたルナは頬を赤らめながらも、力強く頷いた。そんなルナの姿を見て、何だかこっちまで恥ずかしくなってしまう。
そんな俺たちの姿を見て、「初々しいなぁ~、まったく」と言って笑っていた。
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「それじゃあ、お義父さん」
「おう」
「「いってきます」」
「ああ、いってらっしゃい。必ず帰って来るんだよ」
お義父さんの言葉に俺たちはしっかりと頷いてから、そこを後にした。
お義父さんが言っていた発着場は、ルナの実家から少し離れた所にあった。
「ここがお義父さんが言っていた発着場か」
「そうみたいです。一緒に渡された地図にもここと記されていますし」
「それに目の前にあるのが飛行船だろ。俺、初めて見るわ」
「わたしもそうですね」
今、俺たちの目の前には全長はどれぐらいあるかは分からなかったが、二百メートル以上はあると思われる。その大きさに俺たちは言葉を失ってしまう。
「おい! ここは一般人は立ち入り禁止だぞ!」
俺たちがあまりのスケールの大きさに言葉を失っていると、後ろからそう叫ばれる。
俺とルナはいきなりの声に肩がビクッとなってしまう。
俺たちが恐る恐る後ろを振り向くと、そこには一人の乗組員らしき人物が立っていた。
「ああ、えっと……俺たちラーザさんって人を探してるんですけど? 心当たりありませんか?」
「ラーザ? ラーザはオレだけどそれがどうかしたのか?」
「あのユーゴさんからこれをあなたに渡せって言われて」
俺はお義父さんから預かっていた紙を、そのラーザと言う人に渡した。
ラーザさんは俺から受け取った紙を見て、顔色を変えた。
「はぁ~、あの人何考えてんだ? これって職権乱用もいいところじゃねぇか! でも、あの人には恩があるからそんなこと言ってられねぇか! ああ! もう! おいお前ら!」
「はっはい!」
「乗れ!」
「えっ?」
「乗れ!」
ラーザさんはそれだけ言うと、スタスタと歩いて行ってしまったので、俺たちは後を追った。
何はともあれ飛行船に乗れるようなので、一安心? のようだ。
「取りあえず行こうか、ルナ」
「そっそうですね」
うん、そりゃあ戸惑うよね。
とにかく、俺たちは【セイリュウン】に向かうのだった。
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また、前回も告知させて頂きましたが、私の拙作『錬金術師と幼な妻~俺に嫁が出来ました~』が1月15日に一周年を迎えます。一周年を記念いたしまして、その日に一周年記念SSを上げようと思っております。良かったらよろしくお願いいたします。
これからも私の拙作である『錬金術師と幼な妻~俺に嫁が出来ました~』をよろしくお願いいたします。




