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【完結】錬金術師と幼な妻~俺に嫁が出来ました~  作者: 瞳夢
第三部 蔓延る病魔
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第55話「病床の母」

新年明けましておめでとうございます! 今年もよろしくお願いいたします。

第55話「病床の母」


 ルナとルナの実家に行こうと話をしてから、一週間が経過していた。


 俺とルナは今まさに西区画【ビャッコン】に来ていた。


「何だか、ここに来るのすごい久しぶりな気がするな」


「わたしも何だか懐かしいです」


 俺はルナの一件以来、ここには訪れてはいなかったし、ルナはルナで一年ぶりの帰郷ということになる。お互いで懐かしく思うのは当然の感情であろう。


 ルナに手を引かれて、俺は【ビャッコン】の街の中を歩いて行く。


 街並みはあの時の何も変わってはいなかった。


 レンガ造りの家が建ち並び、ルナに手を引かれながらその商店通りを歩いて行く。その途中、所々から香しい香りが漂ってくるため大いに食欲を刺激されたが、目の前を歩くルナがどこか急ぐように歩いている気がするので、俺はその欲を押し殺した。


 きっとルナも久しぶりの実家が楽しみなんだろうな。


 俺はそんなルナをどこか微笑ましい気持ちで眺めていた。


***********************


 やがて、ルナに連れて来られたのは小さな一軒家だった。白い塗装を塗られているごくごく一般的にある家だった。


「まさか、ここがルナの実家なのか?」


「はい! そうですよ。はう~、ついにお母さんとお義父さんにあなたを紹介するんですね。何だか緊張してきました」


「やめてくれよ、何だかこっちまで緊張してくるって」


 これからルナの両親に会うと思うと、少し、いや、かなり緊張してきたな。


「すっすみません、あなた」


「いやいや、責めてるわけじゃないからって、はは、二人して緊張してるんだな」


「ふふ、そうですね。でも、絶対にお母さんもお義父さんもあなたのこと気に入ってくれますよ。だって、あなたはお母さんとわたしを救ってくれたヒーローなんですから」


「俺はそんな大層なことはしてないよ。ただ目の前の病人を助けただけだって」


「ふふ、謙虚な所も大好きですよ。あっ、あなたネクタイが曲がってます」


 ルナはそう言うと、俺のネクタイを直してくれる。一応、いつものローブ姿では、これないと思い、俺なりの正装をしてきたつもりなのだが、これで大丈夫なのか?


「あなた、とっても素敵なので胸を張ってください」


 俺の心を見透かしたかのような、ルナの言葉に俺は驚きながらも「ありがとう」と言葉を返す。


「そう言うルナだっていつも通り可愛いさ」


 ルナはルナで白を基調としたニットワンピースに黒タイツ、それにブーツにペレ―帽と言った格好だった。それに俺が前に贈った青いリボンの髪飾りは、一房結った髪を留めるのに使われている。ルナにとっては精いっぱい背伸びをした格好だった。その背伸びは決して無理した背伸びではなく、彼女の魅力を最大限に引き出すコーディネートだった。


「本当によく似合ってるよ」


「ありがとうございます! あなた」


 俺の言葉に、ルナは本当に嬉しそうに微笑んだ。


「それじゃあ、鳴らしますね」


「ああ、頼む」


 ルナは俺に確認を取ると、家に備え付けてあったベルを鳴らした。そして、しばらく待つこと数十秒。


 ガチャリと音がして、家の扉が開き中から五十代ぐらいの長身の男性が出てきた。


「お義父さん!」


 ルナはその男性を見た途端、抱き着いている。


「おかえり、ルナ。また一段と綺麗になったね」


 その男性はルナのことを優しく抱きしめると、ルナの頭を撫でた。


「お義父さんも前より渋くかっこよくなってる気がする」


「あはは、それは嬉しいね。それでルナ。そちらにいる男の人は?」


 ルナのお義父さんは、そう言うと鋭い赤い瞳でこちらを見てくる。それを見て、俺は慌てて背筋をピンと伸ばした。


「お義父さん、紹介しますね。わたしの夫のリアムさんです」


 ルナはお義父さんから離れると、俺の隣に立ち俺のことを紹介した。


「初めまして。リアム・ラザールです。錬金術師をしております」


 大丈夫だよな? 失礼な態度取ってないよな?


「そうか。君がリアム君か。私はユーゴ・アルサーノ。よろしく」


 そう言ってルナのお義父さん改め、ユーゴさんが手を差し出してきたので、俺も慌てて手を差し出して握手を交わした。


「さあ、ここでの立ち話も何だ。どうぞ、中に入ってくれ」


 俺たちはユーゴさんの案内でリビングに通された。


「うわぁ~、一年前と何も変わってませんね」


「あはは、そりゃあそうさ。むしろ、変わっていたらびっくりだろ?」


「それもそうですね」


「ああ、ルナ。帰って来て早々で悪いんだけど、お茶の用意をしてもらってもいいかな? お義父さん、久しぶりにルナが淹れてくれたお茶が飲みたいな」


「はっはい! 任せてください!」


 ルナがお茶を淹れるためにキッチンに向かってしまったということは、必然的にリビングには俺とユーゴさんの二人が残されているということで。


 めちゃくちゃ緊張してきたんですけど!


 俺は内心でそう叫んでしまう。いきなりの二人きっりと言うのはいかんせんハードルが高すぎる。


 俺がどうすればいいのか悩んでいると、ユーゴさんの方から声をかけられた。


「リアム君。ちょっといいかな」


「はっはい! 何でしょうかユーゴさん」


「ユーゴさんなんて改まった言い方はしなくても大丈夫だ。気軽にお義父さんとでも呼んでくれて構わないよ」


「はい、ありがとうございます、おっお義父さん」


 う~ん、むしろこっちの方が言いづらくなってる気が……


「それで君に少し折り入って話がしたいことがあるんだ」


「折り入った話ですか?」


「ああ。君の噂はかねがねから聞いていたよ。何でも錬金術師としての大課題の一つを達成したそうじゃないか。それに、昨年には、北区画【ゲンブン】を襲った大災害も最小の被害で君が解決したそうじゃないか」


「いえいえ、どれも俺一人の力じゃ無理でした。ルナがいて、仲間がいてみんなで解決したんです。だから、俺一人の力ってわけじゃないですけど」


「そうか。だけど、ルナがくれる手紙にはいつも君の自慢話が書いてあったよ。『わたしの旦那さんは本当にすごいんです!』ってね。それで、そんな君にお願い、いや依頼があるんだ。いきなり来てこんなこと言うのはあれだとは思うけど」


「依頼ですか?」


「ああ、実は私の妻、ルナの母親が今、病で伏せているんだ」


「ルナのお母さんがですか⁉ そのことをルナは?」


「まだた知らないんだ。彼女は絶対にルナには知らせないでくれって言っていたから」


「病院などには行かれたんですか?」


「ああ、当然行ったよ。ただどこの病院もお手上げと言われてしまってね。途方に暮れていた所だったんだ。そんな時にルナが帰省すると言う手紙が届いた。私は藁にも縋る思いだったよ。もしかしたら、天才と呼ばれている君なら妻を救ってくれるんじゃないかって。どうか、どうか妻を助けてはもらえないだろうか?」


 お義父さんはそこまで話すと頭を下げてくる。


 まさか、ルナのお母さんの身にそんなことが起きていたなんて。今回、早くここに来られるようにして正解だったな。


「お義父さん、頭を上げてください。もちろん、俺なんかで良ければ、全力でやらせて頂きます」


「ありがとう、リアム君」


***********************


 それからルナに事情を話し、ルナのお母さんが寝ている寝室に向かった。


「お母さんっ!」


 寝室に入ると、ルナが慌てて母の元に駆け寄っている。


「お母さん! 大丈夫?」


「ルナ? 来てくれたの?」


「はい。けど、どうして病気だって言ってくれなかったんですか?」


「ごめんね、心配かけたくなくて」


「もうバカなんですから」


「サラさん。体調はどうですか?」


「あなたは?」


「リアム・ラザールです。こう見えても錬金術師です」


「そう。あなたがルナの旦那さんなのね」


「うん。そうだよ」


「それで体調の方は?」


「ええ、少しだるい気がするわね」


 やっぱりか。


 お義父さんの方から病状は聞いていて、発症が珍しいアソル症だということは分かっていた。そして、発症してからすでに一カ月が経っているということも。


 このアソル症はこの国でも難病指定されている病気の一つでもあった。


 何万人に一人の確率でかかる病気の為、治療法が未だに確立されていない病気の一つでもああった。


 確かにこれは匙を投げられて当然と言えば当然の病気だな。


 治療法が確立されていないということは、助けることが出来ないということも意味する。


 症状としては、発熱や体の倦怠感、体の痺れ、そしてこれが一番厄介なのだが、この症状を放っておくと体の筋肉が硬直してしまい何も出来なくなってしまう体になってしまうことだった。


 取りあえず、あれで様子を見るか。


「ルナ」


「はい、あなた」


 ルナは近くにあった鞄を俺に渡してくれる。


 俺はそれをルナから受け取ると、その中からフラスコと注射器を取り出した。注射器にその中の液体を入れると、そのままサラさんに注射した。


 フラスコの中に入っているのは新・万能霊薬(エリクサー)だった。『ミアズマ』の一件以来、俺は出かける時は必ずこれを持ち歩くことにしていた。これ一本あれば、多少のことならば対応が利くからだ。


 ただ今回のこのような病気に効くのかは何とも言い難いものだった。


「どうです? 体の痺れは取れましたか?」


 俺の言葉にサラさんは弱々しく首を横に振った。


 やっぱり、万能霊薬じゃこの病気は治せない。


「あなた、お母さんは助かりますよね?」


 不安そうにルナが俺のことを見上げてくる。


「ああ、助けてみせるさ。必ず!」


 俺はそんなルナを安心させるように、その小さくて柔らかい手を握った。


 ルナはルナでそんな俺に寄り添ってくる。


 さてと、どうするか? サラさんを助ける最善の方法は?


 俺が考え事するのと、サラさんのベッドのそばにあったベビーベッドから泣き声がするのは同時だった。


 生後三カ月であるルナの妹――シャーナが目を覚ましたのだ。

 


面白いと思って頂けましたらブックマークや評価のほどをよろしくお願いいたします。

そして、1月15日をもちましてこの『錬金術師と幼な妻~俺に嫁が出来ました~』を投稿いたしまして1年が経過いたします。ここまで書き続けられたのも読んで下さる皆様方がいるからです。本当に一年間ありがとうございます! また、1月15日は1周年を記念いたしまして、1周年記念SSを投稿したいと考えておりますので、そちらの方もチェックして頂ければと思っております。

新年早々から長くなってしまい申し訳ありませんが、これからも私の拙作である『錬金術師と幼な妻~俺に嫁が出来ました~』をよろしくお願いいたします。

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2021年8月11日より新連載始めました。よろしくお願いいたします。 リンクスとステラの喫茶店~ステラと魔法の料理~
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