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【完結】錬金術師と幼な妻~俺に嫁が出来ました~  作者: 瞳夢
第三部 蔓延る病魔
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第53話「スラム街の少女と新米錬金術師の会遇」

第53話「スラム街の少女と新米錬金術師の会遇」


「ゴホッ、ゴホッ」


「おっお母さん! 大丈夫⁉」


 激しく咳き込む女性に、一人の少女が慌てて駆け寄って背中の擦っている。


 ここは西区画【ビャッコン】にあるスラム街だった。この【ビャッコン】では、他の区画に比べて貧富の差が激しいと言う特徴があった。


 そして、この年この【ビャッコン】ではとある問題が発生していた。それは【ビャッコン】にあるスラム街で一種の流行り病が蔓延していた。その流行り病は一昔前に流行った流行り病で、その病のことがまだ何も解明されていなかった時代はそれはもう大変な猛威を振るい人々を苦しめたものだった。しかし、今ではちゃんとその病は解明されちゃんと薬を飲めば治る病となっていた。


それはつまり、見る人が見ればすぐにその流行り病は蔓延せずに治まった事態だった。


 しかし、その時の【ビャッコン】は、突如として現れた大型魔獣の対応や、それに伴って起きてしまった街の混乱が重なり、区画長もその対応に追われ、とてもスラム街で流行り病が蔓延していることを把握すことが出来ていなかったのだ。そして、さらに不幸は重なることになる。


 あくまでもその話は区画長の耳に入らなかっただけで、スラム街の近くに住んでいる住人の耳には入っていた。そして、そこから新種の病気に罹っているため、スラム街には誰も近づいてはならないと言う噂が流れ出し、こうしてスラム街で流行り病が蔓延してしまう状況が出来上がってしまったと言う訳だった。


 そして、その流行り病はここぞとばかりに猛威を振るい、次々にスラム街に住む人々から死者を出して行ったのだ。


 少女が背中を擦る女性、その少女の母親も時は一刻を争う状態だった。このまま放置しておけば、体は衰弱していき、このままだと他の人々と同じ末路を辿る状態だった。


 その少女もこのまま状態だと、母親がどうなってしまうかを十分に理解していた。


「待っててお母さん! わたしがお医者さんを探してくるから!」


 その少女は奇跡的に流行り病に感染していなかった。なので、少女は自身の母親を救うために駆けだした。


***********************


 しかし、現実はどこまでも非情だった。


 少女は自分が知っている医者に向かい助けを求めるが、少女がスラム街の住人だと知ると、どの医者も少女のことを激しく突き放したのだ。少女は懇願し医者に母を救ってくれるよう縋ったが、どの医者も少女の願いを聞き入れてくれる医者は誰一人としていなかった。


 それはひとえに、独り歩きして広まってしまった噂の所為だったのだ。その噂の所為でスラム街には誰一人として近寄ろうとはしなかった。


 しまいには少女のその姿を見て、スラム街の人間だと辺りを付けて話を聞かずに追い出す者もいれば、殴ってくる者もまでいた。


 それでも少女はめげずに助けてくれる人を探し続けていた。


 医者が駄目なら薬屋へと行ってみたりもした。しかし、どんなに訪ね回っても助けてくれるところはなかった。


 どうして、どうして誰も助けてくれないの? どうしてわたしの話を誰も聞いてくれないの?


 少女は路地裏で膝を抱え涙を流してしまう。


 わたしとお母さんが何をしたの? ただスラム街で生まれてしまっただけ。それだけなのに、どうしてここまでされなきゃいけないの?


 少女はしばらくの間泣いていた。世の中の理不尽を恨んで。


 しばらく泣いて、泣いて。だけど、泣いてるだけじゃ母を助けることは出来ないと考え直し、少女は再び歩き出した。しかし、その少女の顔には、先ほどのような明るさはなかった。


***********************


 気が付けば明るかった空は夕暮れ時となっていた。


 あの後も結局、断られ続けていた。


 ここまでダメならもうダメなのかな?


 少女は弱気になっていた。だけど諦めきれずこうして回り続けていた。


 そして、何度目か分からないノックをする。


 ドアから出てきた大柄な男性に、少女はこれも何度目か分からない言葉を告げたのだ。


「お願いします! お母さんを助けてください!」


 少女は泣いて懇願した。この人にまで断られたらもう当てがないことを分かっていたから。


 心から母を救いたいと言う想いで、少女は言葉を繰り返した。


「お願いします! お母さんを助けてください!」


 少女の言葉にその男は静かに口を開いた。


「そのボロボロの外套(がいとう)、スラム街の住人か?」


 少女が着ていた外套は、もともと綺麗とは言えなかった外套はここまで来るので殴られたりしたのもあってボロボロになってしまっていた。


 少女は答えられず黙っていた。男はため息を吐いた。


 そして、少女のその願いも虚しく、その男は苦々しげに舌打ちを一つするとこう吐き捨てたのだった。


「ざけんじゃねぇ! 金も持たねぇで偉そうに命乞い何てしてんじゃねぇ!」


 そう言葉を吐き出すと、その少女を突き飛ばしたのだ。


 少女は力なく地面に倒れてしまう。男はそんな少女に目もくれず「けっ」とツバを吐くとそのまま扉を閉めてしまう。


 

「お母さんを……助けて」


 少女は弱々しく手を伸ばすがその手もすぐさま地面に落ちてしまう。


 どうしてなの? もう誰でもいいからお母さんを助けてよ!


 少女がそう強く感じていると、いきなり「大丈夫か?」と声をかけられた。


 少女が恐る恐る顔を上げると、そこには一人の青年が立っていた。


 藁にも縋る思いだった。少女は少年の姿を見るや否や飛びつき言ったのだ。


「お願いです、お母さんを助けてください!」


 お願いします、お願いします、お願いします。


 少女の声は今にでも消え入りそうな声だった。


 お願いしながらも、少女はまた断られるんだろうなっとも思ってしまう。だから、ぎゅっと瞳を固く結んでいた。だけど、少女が思っていた結末はやっては来なかった。


「詳しく話を聞かせてくれないか」


 今まで誰一人として取り合ってはくれなかったのに、目の前にいる青年は少女の視線に自身の視線を合わせるとそう言ったのだ。


 少女は驚きながらも急いで母親の状況を説明した。


「なるほどな。一度診てみる必要があるな。その場所に案内してくれないか」


 青年の言葉に少女は頷くと、青年の手を引いて自身の母親の元に案内した。


***********************


「これは間違いなくニューモニアだ。大丈夫。ちゃんと薬を飲めばみんな助かるよ」


「ほっ本当ですか⁉」


「大丈夫、君のお母さんは俺が絶対に助けてみせるよ」


 青年はそう言うと駆けだしてしまうので、少女も慌てて青年の後を追った。そして、青年がやって来たのは錬金術師のアトリエだった。


 医者でも魔法薬師でも薬屋でもなくどうしてここに?


 少女は疑問に思ってはいたが、青年が入って行ってしまったので、慌てて後を追うように中に入った。


 中に入ると、青年とそこの主が言い争っている所だったが主の方が折れ、青年は奥に入って行った。


 ここで一体何をするのだろう?


 少女はそう思わずにはいられなかったが、青年が作業を始めてしまったので黙って見ていることにする。


 そして、待つこと数十分。


「よし! これだけあれば大丈夫だろう。戻ろう、君のお母さんの所に」


 青年がそう言ったので、少女も慌てて母親の元に帰って行く。


 結果を言えば、青年が作った薬でスラム街の住人は救われた。


「いつか必ずこのお礼をさせてください!」


 青年が帰る時、少女は少年にそう告げた。青年はそれを笑顔で答えたのだった。


 この時から、少女の中には青年に対する恋心があった。


 またいつか会いたいと強く少女は思っていた。


***********************


 少女と青年の再会は驚くほど早かった。


 少女が道を歩いていると、目の前にはあの青年が歩いて来ていたのだ。少女は慌てて青年に駆け寄ると、外套を取って一礼した。


「先日は母を助けて頂き本当にありがとうございました。なのに、ちゃんとお礼もしないですいませんでした」


 少女の言葉に青年は首を横に振っている。


「いやいや、前にもお礼はいっぱい言ってもらったし、何より君のお母さんを助けることが出来たから良かったよ」


 青年はこうは言っているが、あの時は無償でスラム街の人々全員を助けてくれたのだ。


「ですが、母を助けて貰ったのに、何もしないのはこちらとしても、何だか申し訳なさが残ってしまうんです」


「んなこと言われてもな」


 謙虚過ぎるな、この人は。少女が言ったところでは誰もが自分の利益を考えて動いていた。そんなことを考えないで動いてくれたのは目の前の青年ぐらいだった。だからこそ、少女はそう思ってしまうのだ。


「だったら、いつかあなたにお礼をさせてください!」


 少女はここで食い下がるわけにはいかないと思っていた。それに、青年と再会したことによって確信した。あの時に感じた恋心は本物だということに。


 少女の言葉に青年は頷くと、手を振って立ち去ろうとしてしまう。少女は慌てて青年の手を掴んだ。


「ちょっと待ってください」


 少女の言葉に青年は首を傾げている。


「母を助けたアレは一体何だったのですか?」


 ずっと気になっていたことだった。あの時、青年がやったことを。


 青年は「ああ」と呟いた後、その答えを教えてくれる。


「アレは錬金術って言うんだよ。そして、俺は錬金術師なんだ……っと、そろそろ行かねぇと、依頼が終わらなくなるな。悪いけどまた今度な」


 錬金術。そんな方法があったんだ。


「最後に名前だけ教えてくださいませんか?」


「ああ、リアム・ラザール。【スーザック】で錬金術師をやってるんだ」


 これがスラム街の少女だったルナと、新米錬金術師として活動していたリアムの出会いだった。





面白いと思って頂けましたら、ブックマークや評価のほどをよろしくお願いいたします。

また、今話からルナ編がスタートいたします。よろしくお願いいたします。

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2021年8月11日より新連載始めました。よろしくお願いいたします。 リンクスとステラの喫茶店~ステラと魔法の料理~
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