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【完結】錬金術師と幼な妻~俺に嫁が出来ました~  作者: 瞳夢
第一部 突如、嫁が出来ました
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第6話「死者が蘇る森2」

第6話目になります。よろしくお願いします。

           第6話「死者の蘇る森2」


それからいつも通りに仕事をこなして、ルナお手製の料理を食べてから、俺とルナは南門に向かっていた。

グレンの提案でこれから俺たちは、その死者が蘇ったと言われている森に向かうことになっているのだ。


俺は一緒に南門に向かっているルナに声をかける。


「ルナ、本当にアトリエで待っていていいんだぞ」


俺の言葉にルナは首を横に振った。当初は俺一人で行くつもりだったのだが、ルナが付いて行くと言い張ったのだ。


「あなたの役に少しでも立ちたいですから! それに、あなたが疑われるなんて許せませんし!」


「いや、まだ疑われてないからね!」


しっかりしているようで、たまにぬけてるよなルナって。


何だかんだ話しながら歩いていると、南門が見えてくる。そして、すでにそこにはグレンとなぜかルルネの姿もあった。


「何でルルネがここにいるんだ?」


俺の言葉を聞いたルルネは、あからさまに不機嫌な顔をする。


「そのセリフ、あんたにそっくりそのまま返してあげるわよ。どうして、ここにルナちゃんがいるのよ?」


「ルルネさん、申し訳ありません。わたしが夫にお願いしたんです。一緒に連れて行ってくださいって」


ルナの言葉にルルネは「そっそう」と呟いている。


「リアム、来てくれて嬉しいよ」


グレンの言葉に、俺は手を上げて応えた。


「それとルルネのことだけど、これは僕からお願いしたんだ。もしかしたら、魔法薬師の知識も必要になるかもしれないと思ってね」


「そうだったのか。だけど、ルルネの両親がよく許したな」


確か、ルルネのご両親って超過保護だった気がする。それに、何かと俺には突っかかって来るんだよな。ルルネの親父さん。


「誠心誠意、お願いしたら許してくれたよ」


そう言ったグレンは爽やかに笑っている。


「取り敢えず、無駄話もここまでにして森へ行こうか。それとリアム。武器は持って来ているね?」


「ああ、一応な。森に入るわけだし何があるか分からないからな」


俺はそう言いながら、腰に下げている剣の鞘を撫でた。


森には魔獣と呼ばれているモンスターが存在している。この近辺では比較的に少ない方ではあるのだが、存在しているので、用心として武器を携行するのは当たり前だった。


それに俺はたまに魔獣の素材が必要で狩りに行ったりもしているので、剣術はそれなりに身についてはいた。錬金術師の学校にいた時も、それなりには習っていたし。


グレンは頷くと歩き出したので、その後にルルネ、ルナ、俺の順番で森へ向かって行く。


その死者が蘇ると噂された森は、南門から出て数十分歩きたところにあった。


「意外に近いところにあったな」


「確かに。けど、ここで死者が蘇っているとしたら、何とも不気味な話よね」


俺とルルネが口々の感想を呟いていた。


「それでグレン、その死者が蘇っている場所の目星はついているのか?」


森と一口に言っても、広さはかなりあるので、どこで蘇っているのか分からないと、その真相だって確かめようがなかった。


「もちろん、ついているよ。どうやら、死者が蘇っているのは湖の近くにある大きな木の下だそうだね。しかも、蘇る時間は決まって日付が変わる直後だそうだ」


「どうして、そこまで詳細なことが分かっているのに、噂のレベルで留まっているのでしょうか?」


ルナの疑問に俺は確かにと思ってしまう。


ルナの言う通り、そこまで分かっているのなら、騒ぎになっていてもおかしくないはずだ。それなのになぜ、そこまで噂は広まらず、なおかつ騒ぎは起こっていないのだろうか?


「それにも理由があるらしいんだ。どうやら、蘇った死者は蘇るとすぐに霧の様に消えてしまうらしいんだ。だから、幻を見たと言う噂の広まり方をしたそうだよ」


「幻……ね」


まるで物語か何かだな。


「それでルルネ。魔法薬師にも死者を蘇らせる方法ってあるのか?」


「ええ、一応ね」


ルルネはこちらに向き直ると、説明してくれる。


「あんたは、万能霊薬(エリクサー)についてはどこまで知ってるの?」


「万能霊薬は飲めば不老不死にもなれるし、あらゆる怪我や病気も治すと呼ばれている霊薬だな。錬金術の中では、賢者の石と同等に扱われてもおかしくない程の霊薬だ。賢者の石同様、未だに創り出せたものはいない程の幻の薬だと言われているな」


「そう。その薬があったからこそ、過去の魔法薬師は発展したと言えるのよ」


「どういうことなんですか? ルルネさん」


「あのね、万能霊薬何てものがあるんだったら、魔法薬師の存在意義はなくなってしまうのよ。こっちがいくら新しい薬を開発して売り出したとしても、万能霊薬を作られてしまえば、どうしたってみんなそっちに行くでしょう。何でも治す薬何て本当に夢みたいな話よね。それで、ここからが本題なんだけど、その薬を恐れた魔法薬師たちはそれに対抗する物を生み出そうとした。それが世界樹の雫と呼ばれている薬なの。それは万能霊薬を超える薬として生み出された。つまり、万能霊薬は何でも治してしまう薬に対して、世界樹の雫に関して言えば、死者を蘇らせる薬だと言われているの」


 死者を蘇らせる薬を、魔法薬師までもが開発していたとは思わなかったな。


「けど、そんな薬があるなんて聞いたことがないぞ?」


 俺は魔法薬師のことについてはある程度知識はあったつもりなのだが、その薬の存在に関して言えば、まったくもって聞いた覚えがなかった。


「それはそうよ。だって、世界樹の雫の存在は魔法薬師の中で秘匿されてきた。あたしが知ったのだってたまたまだったし。それに、あんたが言う賢者の石と同じで、魔法薬師としての最終目標と言われてるのよ。その薬を作り出すことが出来れば、その魔法薬師には莫大な富が手に入ると言われているし。けど、あくまでも言い伝えで聞いたことがある程度だから、その薬が実在したかどうかまでは分からないけどね」


「なるほどな。グレンはこのことを知った上でルルネを連れて来たと言うわけか」


「いや、僕も今の話は初耳だったよ。まさか、魔法薬師のご先祖達がそんな薬を開発していたとはね。ルルネにはリアムでも分からないことがあっても困るからと思ってついてきてもらったんだけど、まさかのまさかで、ものすごい収穫があったものだね」


 グレンも今の話には驚いていたようで、驚きを露わにしていた。


 しかし、賢者の石に世界樹の雫か。何だか厄介な話になってきたな。


 それからしばらく歩くと、グレンが言っていた場所まで辿りついた。


「ここが死者が蘇る場所か」


 俺は辺りを見渡してみるが、特に変わったところのない普通の場所だった。目の前には結構な広さの湖があり、その湖は月明りを反射して幻想的な雰囲気を出していた。そして、その湖の近くに一際目立つ大きな大樹がそびえ立っていた。きっと、グレンが言っていた木と言うのはあれのことだろう。


 俺がそんな感想を抱いていると、ローブの裾が掴まれる感触が伝わってくる。気になって視線をそちらに向けると、ルナが俺のローブの裾を握っていた。そのルナの表情がどこか怯えたような怖がっているように見えるのはきっと気のせいではないだろう。


「ルナ? 大丈夫か?」


 俺が声をかけると、ルナは申し訳なさそうに口を開いた。


「あなた、申し訳ありません。思った以上にそう言う雰囲気が濃い場所だったので。出そうだと考えてしまったら、足がすくんでしまって」


「そう言う雰囲気って……」


 そこまで言って俺はルナが何を言いたいのかを理解する。


「ルナって、幽霊とか苦手だったんだな。なのについてきてくれたのか?」


「はい、少しでもあなたの役に立ちたかったので。けど、逆にご迷惑をかけてしまいました。本当に申し訳ありません」


「別に気にすることじゃないさ。それに年相応でかわいらしいと思うよ」


 俺は恥ずかしいけど、素直な言葉を口にする。


「あっありがとうございます」


 ルナは顔を真っ赤に染めて、ローブに顔を埋めている。


 俺はそんなルナの姿を微笑ましい気持ちで見ながら、ルナの頭を優しく撫でるとそのままルナの手を握った。


「これで少しは怖さが和らぐんじゃないかな?」


 自分でやっておいて何だか、とても恥ずかしいと思えてきてしまう。ルナもルナで赤かった顔をさらに赤く染め、「はわわわ」と漏らしていた。


「あんたたち、ナチュナルにイチャつくの本当にやめなさいよね」


 ルルネの方を見ると、ルルネがかなり呆れた目でこっちを見ていた。その隣に立っているグレンは、笑っているだけだった。


 俺は誤魔化すように、ルナの手を引いて歩き出す。


 俺たちは草の茂みに身を潜めて、その大樹の様子をうかがっていた。


 持ってきていたランプの光は最小限に抑えておく。


 隣ではグレンが懐中時計を取り出して、時間を確認していた。


「そろそろ日付が変わる時間だ」


 グレンの言葉に俺たち三人は気を引き締めた。そろそろ、その光景を目の当たりにすることになると考えると、体に緊張が走るのを感じる。


「ルナ平気か?」


「はい、あなたがいてくれるので大丈夫です」


 ルナは俺に体を摺り寄せてくる。俺は彼女の肩に手を回して優しく抱き込むと、目の前の大樹に意識を集中する。


「リアム、変わるよ」


「ああ」


 俺とグレンは目の前を凝視していた。しかし、いくら待っても何も起きる気配はなかった。


「何も起きませんね」


 前を見ていたルナが不思議そうに首を傾げている。


「ああ、特に変わった様子もなければ、蘇る感じもしないな。どういうことなんだ?」


「やっぱり、噂だったってことですかね? 幻だったのかな?」


 俺たちがうんうんと首を傾げていると、いきなり目の前が光りだした。そして、光が止んだ頃に、そこには一人の女性が立っていた。


「っ⁉」


 なんだあれ?


 俺たちが不思議に思っていると、その女性は一分もしないうちに霧になり消えてしまう。


 本当にその場が見せた幻の様に。

面白いと思って頂けましたら、ブックマークや評価のほどをよろしくお願いいたします。


【訂正】

申し訳ありません。一つ訂正がありまして、万能霊薬と言う言葉で振り仮名を振り忘れていました。申し訳ありません。正しくは万能霊薬エリクサーです。

これからも、こちらの作品をよろしくお願いいたします。

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2021年8月11日より新連載始めました。よろしくお願いいたします。 リンクスとステラの喫茶店~ステラと魔法の料理~
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