番外編「ガールズトーク」
番外編「ガールズトーク」
ふんふんふ~ん。
ルナは鼻歌を歌いながら女子会の用意を進めていく。
今日はルルネと一緒に、お茶やお茶菓子を飲みながら食べながら他愛のない話をしようと約束していた日だった。
夫であるリアムはただいま出来たモノの配達やら材料の仕入れに行ってしまっているために、不在にしていた。その時間を使って普段は喋れないことをこうして喋ろうとルルネが提案したのだ。そして、ルナとルルネがこうして二人で女子会を開いてガールズトークをするのは、今日が初めてと言う訳でもなかった。時々の二人はこうして女子会を開いては、女の子同士でしか話せない話をしていた。
よし、これで用意は完璧ですね。
ルナは一つ頷くと、お茶やお茶菓子を乗せたトレイを持ってルルネの元に向かって行った。
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「お待たせしました、ルルネさん」
「ううん、全然待ってないよ。いつもごめんね、ルナちゃん」
「気にしないでください、わたし料理とかするの好きですから」
ルナはそう言って笑いながら、テーブルにトレイを置くとポットから紅茶をティーカップへと注いでいく。
「どうぞ、ルルネさん」
「ありがとう、ルナちゃん」
ルルネはルナからティーカップを受け取ると、それをそのまま口に運び一口含んだ。
その紅茶は、ルナの人柄を表すかのように優しい味がする。
「うん、やっぱりルナちゃんが淹れてくれる紅茶は美味しいわ。自分で淹れてもこういう風にはならないのよね」
「誰が淹れたって変わらないと思いますけど」
その言葉はルナにとっては、紛れもない本心だった。だって、自分よりも美味しい料理や美味しい紅茶を淹れられる人なんていくらでもいると思っていたからだ。しかし、ルナのその考えをルルネはすぐさま否定する。
「確かにルナちゃんが思っている通りなんかもしれないけど、最終的にはその人の好みでどれが一番美味しいかなんて決まるわけじゃない? あたしはルナちゃんが作ってくれた料理、淹れてくれた紅茶が一番美味しいと思うの。きっとあいつだって同じことを言うと思うわよ。だから、ルナちゃんがそう思う必要はないのよ。それとも、あたしとあいつの気持ちが嘘だとでも思う?」
ルルネは少しずるいかなとも思ってしまったのだが、こうでもしないとこの少女は自分の評価を改めることはないだろうとも思っていた。
ルルネから見ても、ルナの自己評価は低すぎると感じていた。確かに凄腕の錬金術師に近衛団の隊長、そして魔法薬師が揃っている中で、ルナだけが一般人であった。しかし、その中でもルナは輝きがくすむことのない才能があるのだ。だから、そんな才能までそうやって低い評価をして欲しくないとルルネは思っていた。
「いいえ、思いません」
やがて、ルナはそう言って頷いた。
「でしょ。だったら、自分のことをそんな風に言わないでね」
「はい」
ルナが微笑むのを見て、ルルネも笑うとそんなルナの頭を撫でた。
「それでルナちゃん。あいつとの生活はどんな感じなの?」
ルルネはルナに気を使わせないように、明るい声を出すと本来の話へと軌道を修正した。
「う~ん、わたしとリアムさんの生活って普通だと思いますけど」
ルナは首を傾げて考えてみるが、特に変わったことはないと思っている。
「だけど、キスはもう済ませてるもんね」
「……はい。改めて言われるのは恥ずかしいですね」
ルナはそう言いながら、頬を赤く染めている。
そう言えば、この二人はあたしたちが見ている中でキスをしていたなっと、ルルネはあの森での出来事を思い出していた。
「それでキス以外では何かしてるの?」
「キス以外ですか⁉ えっと……それは……」
頬をさらに赤く染めて、恥ずかしそうにもじもじとしている。
そんなルナの姿を見て、ルルネはルルネで焦ってしまう。
ルルネ的には何となく聞いた質問であった。やっぱり、乙女的には新婚生活ってどんな感じなのだろうとか気になったりするのだ。それにルナならば、間違っても『そう言った行為』までは至っていないだろうと予想していた。のだが、この反応はもしかして…………
えっと、まさかのまさかなの? あいつこんなに幼い子に手を出したの? いや、それ以前にそもそもこんな子と結婚してること自体問題があるような気がするんだけど、それは百歩ぐらい譲ったとしても、手を出すのはさすがにアウトなんじゃ…………
本当に本当なの? この二人は『そう言った行為』をしてしまったの?
グレンに言って、本当に逮捕してもらうべきなのだろうかと、ルルネは真剣に考えてしまう。
あいつってマジで幼い少女しか愛せない特殊性――――
ルルネがそこまで考えていると、恥ずかしさで悶えていたルナが口を開いた。
「リアムさんと毎日一緒のベッドで寝ています!」
「えっ?」
両目を閉じてそう叫んだルナだったが、恥ずかしさがピークを迎えてしまったのか、両手で顔を覆ってしまう。
そして、ルルネはルルネで盛大に固まっていた。
もしかして、もしかしなくてもあたしってどんでもない勘違いしてたんじゃない⁉
「リアムさんの隣で眠ると、安心できてぐっすり眠れるんですぅ~」
うん、勘違いだった。完全なあたしの勘違いだった。
ルルネはそのことに気が付いた時、魂が抜かれたようにぐったりとしていた。
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「すみませんでした。取り乱してしまいました」
「ううん、こっちも何かごめん。とんでもないかんち……いえ、何でもないわ」
ルルネのその言葉に、ルナは不思議そうに首を傾げている。
うわぁ、ピュア! 何だかこれじゃああたしが汚れてるみたいなんですけど。と言うか、あたしは十四歳の女の子に何を聞いているのかしら。
ルルネは今更ながらの感想を抱いていた。
「でも、何だかんだ言っても、仲良くやってるみたいで良かったわ」
まあ、この二人の様子を見たら、仲が悪いなんて微塵も思わないんだけど。
「リアムさんは本当に優しくしてくれるので、わたしは幸せです」
紅茶を飲んでいたルルネは、思わずそれを噴きだしてしまう。
「だっ大丈夫ですか⁉ ルルネさん」
「大丈夫よ、大丈夫」
ルルネはタオルで口元とテーブルを拭きながら、ルナの天然恐るべしを思っていた。
「ねぇ、ルナちゃん。ルナちゃんって子どもがどうやって出来るのか知ってるの?」
「子どもですか? そっそれは……」
頬を赤らめてくねくねしているルナの姿を見て、ルルネはこれは知ってるはと確信を持った。持ったのだが……
「仲の良い夫婦の所にシュバシコウさんが運んで来てくれるんですよね」
ああ、この子はどこまでもピュアだった。
目をキラキラさせながらそんなことを言われてしまえば、事実を言うことを憚られた。そもそも、ルナにはまだ知らなくて良いことのため、言うつもりは最初からなかったと言えばなかったのだが。
でも、変にキスして出来るとか言われなかっただけマシよね。キスしたのに子どもが出来ませんとか言われた日には、あたしもフォローのしようがない。
本当にルナちゃんが良い子で良かったわ。
「でも、ルナちゃん。ルナちゃん的には子どもとか欲しいと思ったりするの?」
だから、あたしは十四歳の子に何を聞いてるんだ! と内心では思ってたりしないが、ここまで来たら聞いてしまえと、なぜか謎のテンションになっているルルネであったりする。それもそうだろう。惚気以上の惚気の爆弾を何発も当てられたのだ。それでテンションがおかしくなるなと言う方が難しいか。
「子どもですか! そうですね。リアムさんとの子どもだったら欲しいです。きっと、リアムさんの子だったら、凛々しくて優しくてとってもかっこいい子が生まれてるはずですから!」
あれ? あいつってそんなにかっこよかったっけ?
笑顔で嬉しそうに語ってくれたルナに対して、ルルネはどこかずれた感想を抱いてしまう。
あいつがかっこいいとか断じてないような気がするのは気のせいだろうか? あいつっていつも抜けてるような、間抜け顔をさらしている気がするんだけど。
「ルナちゃんみたいに可愛い女の子が生まれてくるかもよ」
「わたしみたいにですか? そんなことはないと思いますけど、でも、可愛い子でも良いですよね」
「ルナちゃん、子どもとか好きそうだもんね」
「はい、大好きです! だってかわいいじゃないですか!」
「そうね。小さい子って可愛いものね」
何だろう、紅茶が最初に飲んでいた頃よりも甘さを増しているのは気のせいだろうか? きっと気のせいだと思いたいんだけど。
ルルネはそう感じながら、お茶菓子として出されていたクッキーに手を伸ばした。考えるまでもなく、そのクッキーもお砂糖たっぷりと言ってもいいかもしれないぐらいに甘く感じた。
あたしの死因って糖分の過剰摂取だったら嫌だな。しかも精神的な糖分の過剰摂取だし。
ルルネが精神力が尽きかけてぐったりとしていると、ある意味そうなった元凶がこの家へと戻ってくる。
「あなた、おかえりなさい!」
ルナが笑顔でリアムへと駆け寄っている。そんな姿を見て、ルルネはルナがどれだけリアムのことを愛しているのかを感じ取ってしまう。
だから、次のルナの発言には驚きはしたものの、何だか予想通り過ぎて何にも言えなかった。
「あなた、あなた!」
目をキラキラさせながら上目遣いで見てくるルナに対して、リアムは「どうした?」と優しく問いかけた。
「あなた、わたしあなたとの子どもが欲しいです!」
ルナのその発言に、リアムは盛大に慌てるのだった。
その様子をルルネは、微笑ましい気持ちで見守っていた。
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