第41話「見習い魔法薬師の躍進・続」
活動報告にて錬金術師と幼な妻~俺に嫁が出来ました~ゲリラSS第二弾を公開しておりますので、よろしければそちらにもお立ち寄り頂ければと思っております。
第41話「見習い魔法薬師の躍進・続」
「なっ何? 何なの⁉」
ルルネはいきなり起こった現象に大いに動揺してしまう。調整の途中で光の色が変わる現象なんてルルネは見たことがなかった。
そして、その動揺は魔力まで伝わってしまい、光が急速に萎み始めてしまう。
「そのまま、魔力を注ぎ続けるの! ルルネ」
ルルネが態勢を崩していると、室内に抜けたような、しかし芯のある声が響いた。ルルネはその声でハッとなり、慌てて乱れてしまった魔力を元に戻す。
ルルネが魔力を整えていると、いつの間にかルルネの隣には、今回の試験の監督を務めているラール・レーメルが立っていた。
「これは一体?」
「共鳴反応」
ルルネの疑問にラールは短く答えた。
「共鳴反応⁉ これが⁉」
共鳴反応と言う言葉は、ルルネには聞き覚えがある言葉だった。勉強している時にちょこっとだけ出てきた言葉だった。
「確か、素材が強い結びつきで合成されると起こることがある現象でしたっけ?」
「より正しく言えば、起こることは稀とされている現象なの。いくら強い結びつきで素材が合成されたところで、出来上がるのは普通よりも高品質な薬が出来る程度なの」
話しながらも調整は進んでいき、光が弱くなっていき反応が安定したきたことが分かる。
「もう少しそのままの状態で維持するの。そうすれば薬は完成するの」
「はい」
ラールの言葉に、ルルネは気を引き締めると最後の仕上げに入って行く。
やがて光は完全になくなり、そこには一つの薬が完成していた。
ルルネは薬が完成した途端、ペタリと座り込んでしまう。呼吸も少し荒くなっている。
連続で調整を行い、さらには今まで見たこともなかった反応に対応したのだ。疲れが出てもおかしくはなかった。それに元々ルルネの魔力はそこまで高いわけではなく、あくまで普通よりも少し上と言った感じだった。
「ここまで。薬を完成させた人はこっちに持ってくるの」
ラールの試験終了を告げる言葉が聞こえるが、誰一人ラールの元に薬を届け出る者はいなかった。ルルネを除いて。
ラールは辺りを見渡して頷くと、今ルルネが作った薬を手に取った。そして、ラールの目の色が変わった。
「ルルネ、これどうやって作ったの?」
「えっ?」
「どうやって作ったの?」
ルルネは動揺しながら、ラールの迫力に押されて自身が試した方法を話した。
「錬金術の技術を応用して、素材をアプローチした?」
ルルネはラールの聞き返しに頷いて答えてみせた。
「なるほど。キーリントータスの甲羅の欠片の触媒を作り出し、親和性を高めてから調整をする。確かに考え方は間違ってないの。間違ってはいないけど、そんなことを出来る魔法薬師は限られているの。それに……」
ラールはそう言うと、目の前にある黄色い液体を見つめた。目の前にあるのは間違いなく『マタドールの製薬』で間違いなかった。
ここにある素材では完全な『マタドールの製薬』を作ることは不可能だった。けど、目の前にある薬は間違いなくそれなのだ。
『共鳴反応』は使った素材がお互いに干渉し合い、強く結びつくことで稀に起きる反応とされている。そして、その反応が起きて作られた薬はどれも最高品質となると言われている。
ルルネ・ニーチェ。話では落ちこぼれと言われ蔑まれていたと聞いていたけど、間違いなくこの人は落ちこぼれの凡人なんかじゃなくて天才だ。
きっと今まで調整が成功しなかったのは、きっと素材へのアプローチの仕方を間違えていたのだろう。そして、今回、錬金術と魔法薬師の知識を使いアプローチの仕方を見直した結果、こちらの予想以上のモノを作り出してしまった。これを天才と呼ばずしてなんと呼べばいいのだろうか?
ラールはそこまで考えると息を吐き出した。
こんな人が今まで落ちこぼれと呼ばれていた理由が分からないの。
ラールは気を取り直すと監督の仕事を進めていく。
「ルルネ・ニーチェを合格にするの。そして、残ったメンバーはこれから本当の試験を始めたいと思うの」
「「「「「「「「「「えっ⁉」」」」」」」」」」
「ん? 言ってなかった? あくまでも今やってたのはラーの試験であって、今日行う試験ではないの。けど、もし薬が出来るようであるならば、合格にしても良いことになっていたの」
ラールが最初、この薬で試験は行くと上層部に話したところ、満場一致で却下されていたのだ。さすがに試験で出すには難易度が高すぎるためだった。その為、ラールは個人的な試験として話を通した上で、本試験も行うと約束をしてこのような形をとっていた。
ラールが首を傾げて不思議がっているが、そんなラールと上層部のやり取りを知らない見習い魔法薬師達は一斉に言い返したのだ。
「「「「「「「「「「聞いてない!!!!!!!!」」」」」」」」」」
周りの見習い魔法薬師達はとことん不憫ではあったが、何はともあれルルネは無事、魔法薬師の試験に合格できたのだった。
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「ルルネさ~ん」
多目的室から出ると、ルナが笑顔でこちらに駆け寄って来てくれる。そして、ルナはそのままの勢いでルルネの胸に飛び込んだ。
ルルネもルルネで、飛び込んで来たルナを難なく抱き留めた。
「ルルネさん! おめでとうございます!」
「ありがとう、ルナちゃん」
ルルネはそんなルナの頭を撫でた。ルナはルナでくすぐったそうにしているが、嬉しそうに顔を綻ばせている。
「ルルネさん、家に帰ったらお祝いしましょうね!」
「えっ? 別に良いよ悪いし」
「悪くないですよ! それにおめでたいんですからお祝いしないといけないですよ!」
ルナの謎の迫力に押されて、ルルネは頷いた。
「それじゃあ、お願いしてもいいかしら」
「はい!」
ルナのヒマワリが咲いたような笑顔を見て、ルルネも自然と笑ってしまう。
「ルナちゃん、そう言えばあいつは?」
ルルネはそう言えばと思い、リアムの姿がないと今更ながら気が付きルナにそう問いかけた。
「リアムさんなら、王城からの急な呼び出しで、王城に行ってしまいました」
「なるほど、そう言うことね。でも、こんなに可愛い奥さんを置いて仕事に行くとかあいつも罪な男よね」
「ルルネさん、それは言い過ぎですよ。それにわたしはお仕事をしているリアムさんの姿も大好きですから!」
顔を真っ赤にしてそんなことを言うルナの姿を見て、ルルネはまったくこの子はいじらしいんだからと思ってしまう。
「ルナちゃん、帰ろっか」
「はい!」
ルルネがルナと手を繋いで帰ろうとすると、「待つの」と後ろから声が聞こえてくる。声に反応して振り返ると、そこにはラールが立っていた。
「ラールさん?」
ルナが不思議そうに首を傾げている。
ルルネもルルネで「どうしたの?」と言葉を返した。
「ルルネ・ニーチェ、ラーの助手になるつもりはないの?」
「助手に?」
ルルネの疑問にラールは頷く。
「そう。助手。ルルネの実力を見込んで、ラーの助手になって欲しいの」
「あたしにそこまでの実力はないと思うんだけど」
「あの薬は絶対に完成しないはずの薬だった。それなのに、ルルネは完成させてしまった。それを実力があると言わずに何と言うの? ルルネは実力がある。それはラーが証明する。だから、ラーの助手にならない?」
ラールの申し出は、ルルネにとっては破格の申し出だった。
今まで落ちこぼれと言われ続けてきたルルネが、一気に天才少女の助手として活躍できる。それは魔法薬師になりたての者には、かなりの出世と言えるだろう。
「一つ聞いても良いですか?」
ルルネの言葉にラールは頷いた。
「どうしてあたし何ですか? あたしよりも優秀な魔法薬師は絶対にいるはずです。それに、『マタドールの製薬』を完成できたのだって、絶対に偶々です。偶々あの時共鳴反応が起きて、薬が完成できた。だから、どうしてもあたしを助手にしたいって言われても、素直には頷けないの」
確かにものすごい良い話ではあるわよね。天才少女と呼ばれている少女の元で魔法薬師として活動できるんだもの。またとない機会だわ。だけど、本当にそれでもどうしてあたしが選ばれたのかが、あたしには分からなかった。
しばらくの間、ルルネたちの間には静寂が降りていた。しかし、それを破ったのは果たしてラールだった。
「ルルネはアルタ―・ゲイルを知ってるの?」
「ええ、知ってるわ。確か一昔前にいた凄腕の魔法薬師だって聞いたことがあるわ。だけど、その割にはあまりその人の話を聞いたことがないような気がするのよね」
「そうなの。それじゃあ、アルタ―・ゲイルがどうやって薬を作っていたか知っているの?」
「えっ? どうやってって、普通にあたしたちと同じように調整して作っていたんじゃ?」
「違う」
ラールはすぐさまルルネの言葉を否定した。
「アルター・ゲイルは普通の魔法薬師とは違う方法で薬を作っていた。それは魔法薬師としては邪道だった。だから、あまり知られていないの。そして、アルター・ゲイルも薬を作る際に、錬金術の知識を取り入れていたの。ルルネと同じように」
「っ‼」
ルルネはラールの言葉に、この日何度目かも知れない驚愕の色を顔に浮かべた。
「アルター・ゲイルも、結晶を作り出してからそれを触媒にすることで『共鳴反応』を意図的に引き起こし、数々の薬を作り出していったの。だけど、その結晶を作り出すには錬金術の知識が必要だったの。だからこそ、他の魔法薬師達には受け入れられず、アルター・ゲイルの技法は失われてしまったの……今日までは」
「それじゃあ、あたしが今日やった方法はそのアルター・ゲイルと同じ方法だったってこと? だけど、意図的に『共鳴反応』を引き起こすなんてこと出来るの?」
「普通は無理。だけど、アルター・ゲイルは可能にしてしまった。魔法薬師の知識と錬金術の知識を使って。そして、ルルネもアルター・ゲイルと同じ方法で『共鳴反応』を起こすことに成功し『マタドールの製薬』を完成させた。これは誰にでも出来ることじゃないの。だからこそ、ルルネをラーの助手にしたい。それが理由」
ラールはそれが全てだとばかりに言い切ると、ルルネに手を差し出しもう一度、ルルネに向かって言う。
「ルルネ・ニーチェ、ラーの助手になるつもりはないの?」
ルルネは今一度、ラールの申し出のことについて真剣に考えてみる。そして、考えれば考えるほど、ラールの申し出は自分にとってかなり良いようなことだと思う。
ルルネは一度深呼吸をしてから、真っ直ぐとラールの藍色の瞳を見据え、口を開いた。自身の答えを口にするために。
「あたしは…………」
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