第38話「筆記試験2」
この作品のアクセス数が10000Pvを突破致しました。いつもお読み頂きありがとうございます!
第38話「筆記試験2」
カリカリカリ。
試験会場となっている一室は、今回試験を受けている四十名ほどがペンを走らせる音がその一室を支配していた。
ルルネもその中の一人だった。
ルルネは次から次へと問題を解いていく。
最初は簡単な○✕問題や選択問題などを解いていき、今は記述問題に差し掛かっていた。
記述問題は薬の作り方、病気に対する対処法など色々なことが問われていく。ルルネは次から次へとその問題を解いていく。
残り時間は三十分を切っている。
早い。時間が経つのが早過ぎる。とルルネは感じてしまう。
問題はまだ三分の一程度に残っている。
でも、時間をかけた分、前半の問題はかなり丁寧に解けていると思う。
残されている問題は四問で、そのどれもが薬の製薬方や、その薬の使用用途、どの病気に効果的かを記述していく問題だった。
その出題されている四問の全てが、見習い魔法薬師では扱ったことのない薬の記述をしていかなきゃいけないため、見習い魔法薬師にとってはかなり厳しい問題ではあるのだが、そんな難解の前でもルルネは落ち着いていた。
ルルネは確かに調整の腕はこの四十人の中では、一番劣っていると言えるだろう。しかし、ルルネはそれを自覚し、日々努力してきた。確かに調整は失敗してばかりではあるが、その分、知識の方では負けまいとたくさんの薬のことを学んで来た。そんなルルネにとって、今更目の前の問題に焦ることはなかった。
ルルネは問題を読むと、一度頷き問題に取り掛かっていく。
***********************
はぁ~、やっとルナ、機嫌直してくれたかな。
俺とルナは、王城前でラーと別れると、中央通りに戻りと休憩ついでに、オシャレなカフェに入っていた。
目の前ではルナが幸せそうにケーキを頬張っている。その顔を見るだけで、俺の胸の中には幸せな気持ちが溢れてくる。
「美味いか?」
ルナの顔を見れば聞くまででもないだろうと思ったが、俺はそれでもルナに問いかけてしまう。
「とっても甘くて美味しいです! あっ! あなたあ~んです!」
ルナは幸せのお裾分けと言った感じで、フォークを俺の口元に運んでくる。
「はい、どうぞ」
にっこりと言った表情でルナは微笑んでくる。
そんな魅力的なルナの笑顔に俺は逆らえず、こんな所でこういった行為をするのは恥ずかしいかったが、俺は自然に口を開いてしまう。
「あ―ん」
ルナから食べさせてもらったケーキはいつも以上に甘い気がした。けど、ルナの嬉しそうな顔を見ていたら、その甘さはゆっくりと胸の内に溶けていくような気がした。きっと、幸福とはこういうことを言うんだろうなっと、俺はぼんやりと考えていた。
カフェでの小休憩を終えると、俺とルナは家に帰るために中央通りを歩いて行く。俺の家は、王都の住居エリアと呼ばれている住居が密集している所にある為、こうして中央通りを歩いて行った方が早く着くのだ。
「ルルネさん、大丈夫でしょうか?」
「多分、大丈夫だろう。今日の筆記試験は、ルルネにとっては得意な分野だし。ルルネは調整が不得手な分、魔法薬師として薬の知識や製薬方、それにどんな薬が、どんな薬に効果覿面かをずっと勉強してきたんだ。だから、きっとルルネなら大丈夫だって俺は思ってるよ」
俺はルルネが必死に勉強する姿をずっと見てきたし、この日のためにやって来たことも知っている。だから、絶対に大丈夫とまでは言わないが、ルルネならきっと大丈夫だろうと俺は考えていた。
「だからさ、ルナはルルネの前でいつもみたいにニコニコと笑っていて欲しいんだ。そうしたら、きっと明日の試験も大丈夫だと思うからさ」
ルナの笑顔には、周りの空気を和やかにする効果があると俺は以前から思っていた。きっと、ルナが笑っていてくれれば、ルルネも明日はリラックスして試験に望めるはずだから。
家に着くと、すでにルルネは帰っていたのかリビングでお茶を飲んでいた。
「一日目の試験、終わったんだな」
「まあね」
俺は椅子に腰をかけながら、ルルネにそう声をかけるが、ルナに手洗いうがいをしなさいと怒られてしまう。
まさか、この歳でそんなことを怒られるとは思ってもいなかった。おい、ルルネ笑うんじゃない。そんなに肩を震わせなくても良いじゃないか。
俺はそう思いながら、洗面所で手洗いうがいをしてから再び席に着いた。
「そう言えば、あんなその格好何なの?」
俺が席に着くなり、ルルネは笑いながらそう問いかけてくる。俺は自分の服装を見直しながら答えた。
「仕方ないだろ。王城に行くにはそれなりの格好で行かないといけないんだから」
俺だって分かってるよ。スーツが似合ってないってことぐらい。
「それに比べて、ルナちゃんは本当に何を着ても似合うわよね」
「それは否定しない」
今もルナは王城に行った時の格好のまま、上からエプロンを身に着けて俺たちのお茶の用意をしてくれている。
本当にいつも至れり尽くせりな感じで申し訳なくなってくる。
お茶を運んできたルナが、俺とルルネが見ていたのに気が付き不思議そうに首を傾げていた。
***********************
しばらくの間、ルルネはリアムとルナと一緒に談笑を楽しんでいたが、明日の試験の最終確認をしたいと思い、二人に部屋にいると告げて、リアムの母であるマリア宛がわれている部屋に向かった。
部屋に入ると、持ってきていた鞄から調整用の道具を取り出していく。
明日の実技試験に向けて、最後の練習をしていかなきゃいけない。
ルルネは材料を取り出すと、練習を始めていくのだった。
何回かの調整を繰り返していると、いつの間にか窓の外は茜色に染まっていた。
もうそんなに時間が経っていたんだ。
ルルネは窓の外を見て、そう感じてしまう。
ルルネはもう一踏ん張り頑張ろうかと気合を入れ直し、作業に取り掛かろうとするが、それは下からルルネのことを呼ぶルナの声で一時中断となってしまう。どうやら、夕飯の支度が出来たので、ルルネを呼んでいるようだった。
このまま作業を続けたい気持ちも、もちろんルルネの中にはあった。だって、明日は自身が一番苦手としている実技試験なのだ。だから、少しでも合格するように回数を重ねたいのがルルネの本音だった。しかし、このまま続けても良い結果を得ることが出来ないのも、ルルネはしっかりと自覚していた。
なので、ルルネはルナの言葉に甘えて下に降りるのだった。
下に降りてリビングに向かうと、そこにはルルネの好物が用意されていたのだ。
ミートソースパスタ。定番の一品ではあるが、ルルネはそれが一番大好きな食べ物だった。しかも、パスタにかかっているミートソースに関して言えばきっと、ルナの手作りだろう。市販でも売ってはいるものの、目の前のパスタにかけられているそれは明らかに市販の物とは違っていた。
「あっ、ルルネさん。さあ、席についてください。以前、ルルネさんが言っていたミートソースパスタを作ってみたんです。初めて作ったので上手く出来ているかは分かりませんけど、お口に合ってくれれば嬉しいです」
そう言って微笑むルナに、ルルネは「気にし過ぎよ」と短く答えると、早速席について、ルナお手製のパスタを口に運んだ。
「う~ん、やっぱりルナちゃんが作る料理は美味しいわ~」
ルルネは思わず、余りの美味しさに唸ってしまう。
「そう思ってもらえて良かったです」
ルナは優しい微笑みを浮かべている。
リアムもリアムで、そんなルナの姿を見ながら自身の食事を進めていく。
マリアはその三人の様子を慈愛のこもった瞳で眺め、ニアはニアでルナの料理を頬張っているのだった。
ルルネは食事を終えると、すぐさまお風呂に入り部屋に戻ると最後の調整に挑戦することにする。
今日の試験帰りに市場によって買った素材を取り出した。丁度素材も残り一回分しか残ってはいなかった。
ニブル草にフツマの枝。それにキリンオオカミの体液に調整薬を専用の容器に詰めて、手をかざし魔力を放出していく。
すると、容器の中でその素材が分解されていく。その分解されるエネルギーで容器の中は光り輝き始めた。
ルルネは魔力を注ぎ込み中の分解を促していく。容器の周りには魔法陣が展開していき、中では素材が分解されていき、そして再び合成されていく。
この容器に中の光が安定すれば、調整が成功したということだ。
今製薬しているのは、ここ最近流行っている病に効くと言われている薬だった。それに、この薬を作ることは魔法薬師であるならば難しくはないが、見習い魔法薬師達には少し難易度の高い薬となっている。
「大丈夫、あたしには出来る」
ルルネは額に汗を浮かべながら、何とか容器の中の反応を安定させようと試みる。
次第に容器の中の光は弱まっていっている。反応が安定していっているということだろう。
「大丈夫、大丈夫」
一瞬、光が膨張したような感覚に襲われるが、それは本当に一瞬のことで光はしぼんでいき安定していく。
そして、しばらくすると容器の中には一つの薬が完成していた。調整の成功である。
「ふぅ~」
ルルネは詰めていた息を吐き出すと、額の汗をぬぐった。そして、容器の中に入った薬の出来を見て満足そうに頷いた。
ルルネが今日やった調整の数は八回。そして、成功した回数は四回。成功率は半分だが、いつもよりかは成功率は高い。
明日の実技試験では、どんな課題が出題されるかは分からない。だけど、明日ですべて決まってしまうんだ。だから、明日は絶対に成功させる。
ルルネはもう少し調整の練習をしたいとも思うが、素材がないのとこれ以上やると魔力切れを起こしてしまうので、ルルネは大人しくベッドに入った。
きっと、大丈夫だよね。あたし魔法薬師になれるよね。
ううん、絶対に魔法薬師になるだよね。そして……そして……あたしはグレンさんに……
ルルネはそう感じながら目を閉じた。明日の成功を祈りながら。
面白いと思って頂けましたら、ブックマークや評価のほどをよろしくお願いいたします。
※ブックマークや評価、本当にありがとうございます! これからもよろしくお願いいたします。




