第37話「修羅場2」
活動報告にて錬金術師と幼な妻~俺に嫁が出来ました~のゲリラSSを投稿いたしました。本編に全く関係ない上に、中身もないようなお話ではありますが、読んで頂ければ嬉しいです!
第37話「修羅場2」
俺はルナを引き連れて王城に訪れていた。
俺はここで王女様であるセシル・グリゼルダに会わないといけないのだ。月に一度はここに顔を出して、王女様自らに研究成果を提出しないといけないのだ。
俺とルナは王城の入り口にいる近衛兵に、挨拶を告げてから王城の中に入ると、今度は中にいる近衛兵の一人に、そのまま謁見の間へと案内される。
「それではリアム様、ルナ様。中で王女様がお待ちしておりますので」
ここに案内してくれた近衛兵は一礼して後ろへ下がった。
俺は謁見の間の扉を少し躊躇いながら、謁見の間の扉をノックした。
その少し後に「どうぞ」と声が聞こえてくる。
俺とルナは頷き合うと、扉を開けて中に入った。
中に入るとセシルは以前の様に、広大な広間の中央にいた。しかし、以前と違う所はその中央には一目見て高級品だと思われるテーブルとイスが置かれているところだろう。俺が叙勲式を執り行ってもらった時にはなかった代物だった。
俺とルナはセシルに一礼すると、そのテーブルの前まで歩み寄って行った。
「腰を下ろして大丈夫よ」
セシルの許可が出たので、俺とルナはイスに腰を下ろした。
腰を下ろすと、セシルの侍女である女性が俺とルナの分のお茶を用意してくれる。
「それで、今回はどこまで進んだのかしら?」
ティーカップを口に運びながら、セシルがいきなり本題を切り出してくる。
「今回の研究成果も、前回提出した時とさほど変化はないぞ。やっぱり、今のままだとコスト削減も、量産化も難しいだろうな。未だに代わりになる素材も見つかっていないし。もしかしたら、この方面での新・万能霊薬の改良は難しいかもしれない」
俺の話し方は以前に比べると、かなり素に近い感じになっていた。何でもセシル自身が、畏まった態度は嫌だと言い、俺も素に近い感じで話すことになったのだ。それに、普通ならルナだってここには入れない筈なのだが、この王女様の権限でこうして同席を許されていた。
何でもルナは可愛いから目の前で愛でていたいんだとか。その気持ちはものすごく分かります!
あとはもう一つの理由があるのだが……
「う~ん。それは困ったものね。とりあえず、リアムはコスト面と量産化の方をどうにか出来ないか研究を続けてみてはくれないかしら」
「別に構わないが、良い結果は得られないと俺は思うけどな」
「それは大丈夫よ。何事もチャレンジすることは重要よ。出来る出来ないは抜きとしても、失敗してしまったと言う結果は残るのだもの。そしたら、今度は次に進めばいいだけよ」
「それもそうか」
確かにセシルの言う通りだと俺は感じた。
それが完全に駄目なことだと分かれば、今度は次の算段を付けることも可能となる。セシルって、本当に王女様だんだなと失礼極まりないことを思ってしまう。しかし、それには理由があったのだ。それが……
「それじゃあ、つまらない仕事の話も済んだことだしルナちゃんッ!」
セシルが両手をテーブルについて立ち上がるのと、ルナの口から「ふぇっ!」とかわいらしい声が漏れたのはほぼ同時だった。
「今回もさせてくれるよね?」
一応、相手に問うような口調でセシルは言っているが、期待に満ち溢れている瞳が拒否は認めないと、何よりも雄弁にそのことを語っている。
「あなたぁ~」
隣に座るルナがすがるように上目遣いでこちらを見てくるが、俺にはどうすることも出来なかった。
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ルナが王女に捕まり、解放されるのはそれから小一時間が経とうとする頃だった。
「あなたぁ~」
ルナは疲れ切った様子で、俺の元に歩み寄ってくると、そのまま俺の胸に顔を埋めるように倒れ込んでくる。俺がそんなルナのことを抱きとめると、そのままルナのことを膝の上に乗せ抱きしめた。
ルナは小柄なために、俺の上に乗せてもそこまで重さは感じないのだ。そして、その反面、目の前に座り直したセシルは、どこかやり切ったと言うか達成感に満ち溢れていた顔をしていた。
この小一時間ほどルナがセシルに何をさせられてたかと言うと、簡潔に言うと着せ替え人形にさせられていたのだ。
セシルは一目見て、ルナのことを気に入ると女王命令でルナに服を着ることを命じたのだ。完全な職権乱用も良いところである。
つまり、ルナはずっとセシルに良いように遊ばれていたのである。俺はお疲れ様の意味も込めて、ルナの頭を優しくよしよしと撫でてやる。
「さ~てと、小休憩を挟んだらルナちゃんもう一回戦行こうか!」
「ふぇぇぇぇっ」
先ほどよりも驚きの声を上げたルナ。さすがにもルナが不憫すぎるので、俺は口を挟むことにする。
「セシル、さすがにこれ以上はルナが不憫すぎるから勘弁してくれないか」
「とは言ってるけど、リアムだってかわいいルナちゃんの姿を見たいくせに」
有無も言わせぬセシルの言葉に、俺は言葉を失くしてしまう。
確かに見たいけど! 見たい気持ちは確かにあるけど、俺の胸の中で綺麗な翠色の瞳が涙目になっているルナの姿を見てそんなことは口が裂けても言えない。
「まあ、冗談はここまでにしておきましょうか。これ以上好き勝手にやってルナちゃんに嫌われたくないしね」
自覚はあったんだな。
俺は苦笑いでセシルに応じると、俺の腕の中にいるルナのことを撫で続けていた。
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ルナが落ち着きを取り戻したのを見て、俺たちは謁見の間を後にした。
「ルナ、大丈夫か?」
俺は隣を歩くルナにそう問いかけた。
「はい、もう大丈夫です。ご迷惑をお掛けしてしまって申し訳ありません」
ルナはそう言いながら頭を下げてくるので、俺は慌ててルナに頭を上げさせた。
「別にルナは悪くないだろう。むしろ、あの王女様に付き合いきれてるルナがすごいぐらいだよ」
俺がそう言うと、ルナは微笑んでくれる。その姿にほっとしながら、俺はルナの手を掴むと、出口に向けて歩いて行く。
王城を後にすると、出口の付近でうろうろと動き回る一人の少女の姿を視界が捉えた。しかも、それが俺の良く知る人物であることも同時に分かった。
なので、俺は放っておくわけにはいかなかったため、その少女に声をかけた。
「おい、ラー。こんなとこで何やってんだ?」
ラール・レーメル。十五歳にして魔法薬師の称号を授かっている天才少女だ。
「リアムを探してた」
「俺を?」
ラーの言葉に俺は首を傾げてしまう。
俺が不思議に思っていると、スーツの裾がぎゅっと掴まれる感触が伝わって来る。ルナが掴んだのだとすぐに理解して、そう言えばちゃんとラーのことをルナに紹介していなかったことを思いだした。
「ルナ、紹介が遅れたけどこいつが前に言っていた、魔法薬師のラール・レーメルだ」
俺の言葉にルナはどこか納得したように頷くと、一歩前に出た。
「初めましてラール・レーメルさん。わたしはリアムさんの妻のルナ・ラザールです。よろしくお願いします」
「ラール・レーメル。こちらこそ、よろしく」
表面上はちゃんとした挨拶をしている二人ではあるのだが、何でだろう? 空気が震えている気がするのは俺の気のせいなのだろか?
「それで、ラーはどうして俺のことを探していたんだ?」
「明日の実技試験の監督はラーがすることになってる」
いつもの様に眠たげな藍色の瞳で、真っ直ぐこちらを見ながらラーはそう告げてくる。
「そうなのか。そういや、ラーが監督するのって……」
「うん、初めて」
「でも、どうしていきなり? お前去年依頼が来てたけど断ってなかったか?」
「無論、断った。けど、今年は状況が違う。リアムの友達が出てる」
「ああ、ルルネか。確かに出てるな」
「リアム言ってた。ルルネが普通の魔法薬師じゃないかもしれないって。それラーも気になる。だから、今回監督を引き受けた」
「ラーが監督を引き受けた理由は分かったけど、それで俺を探してた理由が分からないんだが」
「明日の試験会場、ラーの特別権限でリアム入ることが出来る。だから、どうする?」
ラーの話をまとめると、明日のルルネの実技試験の様子を間近で見れるということらしい。その確認をするために俺を探していたわけか。
さてと、どうするか。ルルネのあの連続の失敗理由は未だに分からないままだ。けど、俺が行ったらルルネに迷惑がかかるじゃないのか? とも思わないでもないが、けど気になるのも事実だ。
「ラー、明日の試験行かせてもらっても良いかな?」
「もちろん」
俺の言葉にラーは即答で答えた。
「あなた、わたしもついて行っても良いですか?」
「そこのちびはついてこなくても大丈夫」
俺が良いぞと答える前よりも早く、ラーがそう答えてしまう。
「誰がちびですか! それに身長ならあなたと大して変わらないと思いますけど!」
普段、温厚なルナが人に噛みつくところを俺は初めて見たかもしれない。
「うるさいぞ、泥棒猫!」
「誰が泥棒猫ですか!」
ルナとラーが睨みあってしまい、俺はそこで遅まきながら気が付いた。
ああ、この二人って出会わせちゃいけなかったんじゃね? と。しかし、今気が付いたとしても、今更どうすることも出来ないと言う状況で。
俺の目の前では未だにルナとラーが言い争いを続けている。
「二人とも落ち着けって」
俺は仲裁に入ったが、
「あなたは黙っててください!」「リアムは黙ってる!」
と口々に言われてしまい、それ以上は何も言えなくなってしまう。
そして、俺は一つ思うのだった。
年上、年下とか関係なく女性って怖いんだなっと。
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