第36話「筆記試験」
大変お待たせしました。今日から更新を再開させていきたいと思います。しかし、話のストックが完全に切れてしまったため、週一ペースになりそうです。申し訳ありません。ですが、いつもお読み頂けて本当に嬉しいです! これからもよろしくお願いいたします。
第36話「筆記試験」
ルルネは泣き止むと、そこから二言三言話したからその通信を切った。
明日絶対に頑張ろう! 勇気をくれたグレンさんの気持ちを無駄にしないために!
ルルネは決意を改めて固めるとベッドに入った。
ルルネはその日夢を見た。それはルルネが魔法薬師になろうと決意した日を思い出すようなそんな夢だった。
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それは十二年前のことだった。十二年前、南区画【スーザック】ではとある事件が起きていた。それは【スーザック】の町に大量の魔物が侵入してきてしまったのだ。その魔物は町の近衛団の活躍のおかげですぐさま撃退することには成功したが、町には甚大な被害が及んでいた。建物は壊され、負傷者も多数出ていた。
そのため【スーザック】にいる魔法薬師達は、薬の製作に追われていた。それはルルネの両親も例外ではなく、朝から晩まで薬を作り続ける日々を何日が送っていた。
当時八歳だったルルネは、出来上がった薬を各所に届けたりをして両親のお手伝いをしていた。その時にルルネは子どもながら、魔法薬師という職業に強い憧れを持っていた。
薬を作る両親の背中に強い憧れを持つのと同時に、薬を届けた時にお客さんの嬉しそうな顔を見て、あたしもお客さんのことを笑顔にしたいとその時強く感じたのだ。
パパとママはずっと薬を作り続けていた。怪我や病気になってしまった人々を治すために必死で。
そんな両親みたいな人間になりたいと強く憧れていたのだ。
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アラームの音で夢の中から、現実に引き戻された。
朝の目覚めとしては悪くないそんな目覚めだった。
ルルネはぐーと背伸びをするとベッドから降りて、カーテンを開けた。朝の陽ざしが起きたての体に染みわたり、試験日当日だと言うのに不思議な落ち着きがあった。
どうして、あんな夢を見たんだろう?
ルルネはさっきまで見ていた昔の夢を思い出してそう思ってしまうが、しかし、大事なことを思いだすことも出来たとも感じていた。
そうだ。あたしはあの時の出来事がきっかけで、魔法薬師になりたいと思ったんだ。だから、今日から始まる試験を絶対に落とすわけにはいかないんだ。
ルルネは自分の両手でパンと自身の頬を叩いた。
よし! 大丈夫!
ルルネは気合を入れ直すと、身支度をするためにドレッサーの前に座った。
身支度を終えて下に降りると、すでにリアムとルナちゃん。それにリアムのお母さんであるマリアさんに妹のニアちゃんもリビングに揃っていた。
ルルネがリビングに入ると、それを見ていたルナがルルネに駆け寄って行った。
「ルルネさん、大丈夫なんですか?」
「うん。ルナちゃん、心配かけてごめんね。それとおにぎりありがとね。勉強してた時、ちょうどお腹空いてたからものすごく助かったよ」
「いえ、少しでもルルネさんのお役に立てたなら良かったです」
ルルネはそう言いながら、ルナのあたまをよしよしと撫でた。ルルネがルナの頭を撫でていると、そこにリアムもやって来た。
「ルルネ、何だか落ち着いてるな。もう少し緊張してるのかなって思ったよ」
ルルネはリアムのああと納得したような表情を浮かべている。
「あたしも不思議な感覚なのよね。あたしだって試験日の当日は緊張でガッチガチになると思ってたわ。だけど、不思議よね。いざなってみたら、全然緊張なんてしてないんだもん」
「そっか。なら、良かったよ。一時期はどうなるかと思ったし」
「ごめん、ごめん。でも、もう大丈夫だから。あたしがどうして魔法薬師になろうと思ったか、改めて分かったし」
「確かに、前よりもルルネ良い顔してるよ。俺は今の顔の方が好きだな」
「あっあんた! いっいきなり何言ってんのよ!」
ルルネはリアムのいきなりの言葉に、思わず赤面してしまう。
「べッ別にそこまで深い意味はないぞ!」
リアムも自分の言った言葉の意味に気が付いたのか、慌てて訂正している。
「あなた、妻の目の前で堂々と浮気ですか?」
今まで静かに二人の様子を見ていたルナが、笑顔でリアムにそう問いかけている。
「うっ浮気? してない、してない! 誤解だよ!」
リアムは慌てて否定している。が、そこに助け舟ならぬ、泥船がやってくる。
「そうよ! お兄ちゃんが浮気するはずないわ! だってお兄ちゃんの愛人枠はニアで決まってるのよ! そして、そのまま愛人からの正妻一本ルート確定でしょ!」
「ニアは少し黙ってろよ! 本当に!」
三人のそのやり取りに、ルルネは声を上げて笑っていた。
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「それじゃあ、行ってきます」
朝食を食べ終えたルルネは、リアムやルナ、マリアにニアにそうあいさつを告げると家を出た。
四人から色々な言葉をかけられた。色々な気を使わせてしまった。ルルネはそれが大変申し訳ない気持ちだった。
けど、みんなのおかげでこんなにも試験日だと言うのに落ち着いていられる。
あいつには感謝しかないわね。
王都に来る前、両親が言っていたことが何となく分かった気がする。
友人がいてくれることは心強いか。確かにそうなのかもしれない。
ルナちゃんにはいっぱい支えてもらったし、悔しいけどあいつにも。そして、グレンさんには折れかけていた、魔法薬師になりたいと言う気持ちを思い出させてもらった。もちろん、マリアさんやニアちゃんに多大なお世話になってるし。
本当にあたしは沢山の人に支えられている。だから、今日の試験を絶対に落とすわけにはいかなかった。明日の試験に繋げるため、支えてくれた友達や人に感謝を示すために。
しばらく王都を歩き、とある場所へとルルネはやってくる。
「ここなのよね」
ルルネは案内書と目の前にある建物を見比べた。
そこは魔法薬研究機構だった。試験会場はこの施設の一室ということとなっていたのだ。
ルルネは何だか萎縮する気持ちになってしまうが、ここでやると言うんだから仕方がないと気持ちを切り替えてルルネは中に入ろうとするが、そこで声をかけられた。
「ルルネちゃん、やっぱり来たんだ」
声のした方に視線を向けると、そこにはアーリが立っていた。
「アーリ」
ルルネは小さくそう呟いた。
「まさか、あんだけ言われてここに来るとか、ルルネちゃんってバカなの?」
「少なくともアーリよりはバカじゃないつもりよ」
「ふ~ん、そこまで言うからには、今回の試験絶対に受かるのよね?」
「それは当然よ。そのために今までやってきたし。そのつもりでここに来たんだから」
「へぇ~、まあ精々頑張ることね。落ちこぼれのルルネには無理だと思うけど」
アーリはルルネを一睨みすると、建物中に入って行く。
絶対に試験に合格してみせる。そのために今までやって来たのだから。
ルルネは深呼吸をしてから建物の中に入って行った。
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「俺たちもそろそろ行こうか」
俺は時間を見て、ルナにそう声をかけた。
俺も今日は王城に赴いて、研究成果を提出しないといけないのだ。
俺が研究していた内容は、主にコストを安くする方法といかに量産化出来るかという問題だった。
今のままでは新・万能霊薬を作るにはコストがかかり過ぎてしまい、とても販売出来る値段には収まりそうにはなかったのだ。しかし、材料をケチってしまってはあの薬にはならない。何とも難しい問題だった。そして、量産化の方だがこちらも難航していた。
この状態で研究成果を提出しても大丈夫なのだろうか?
俺はそう思ってはしまうが、提出することを義務付けられているため拒否権はないのだろう。
俺はいつも通りのスーツに着替えると、ルナが着替え終わるのを待っていた。
母さんとニアに女の子は準備に時間がかかるものと言われてしまっているので、時間を持て余しているのだ。
ルルネの奴、大丈夫かな。だけど、ルルネなら大丈夫だよな。今まで必死になってやって来たのを、俺はそばで見てたんだ。だから、きっとルルネなら大丈夫だろう。
俺は知らずのうちに拳を握り込んでいた。
はは、ルルネが落ち着いていたのに、俺が慌ててどうするんだか。
俺は自分で自分の考えに呆れてしまう。
俺が不安になったってしょうがないんだよな。友達である俺が信じてやらないでどうするよ。だから、頑張れルルネ。
俺は考えを改めると、自身の鞄の中身を再確認した。
そうこうしている内に、ルナの身支度も終わっていたようで、ルナが部屋まで俺のことを呼びに来ていた。
「あなた、お待たせしました」
「ああ、それじゃあ行こう……」
……か。えっ?
俺はルナの姿を見て固まってしまう。何故なら、ルナの服装がいつものドレスではなかったからだ。
白を基調としたブレザーに下は青色の膝丈スカートを身に着けていたのだ。それに胸元には赤いリボンがされていて、それがまた印象的だった。それに、髪型も少しいじられていて、ルナの前側の両サイドの一房ずつ三つ編みに編まれて左右で揺れていた。
端的に言うと、その格好のすべてがルナの魅力を引き出していた。うん、めちゃくちゃかわいいな。おい!
「どうしたの? その格好?」
俺はルナの魅力にクリティカルを食らいながらも、何とかそう言葉を絞り出した。
「はい、お義母さんが用意してくれました。いつもドレスだと疲れるでしょって。それにあなたと一緒に行くのなら、この格好の方が秘書みたいでお似合いよって言ってました」
ああ、なるほどね。
ルナの言葉で俺は全てを察した。
あのバカ親め。ルナを着せ替え人形にしやがったな! だけど、かわいく着せ替えられていたために何も言えない! それに、今ここでツッコんだら絶対にニヤニヤ顔でからかわれると相場が決まっている。
俺は親に対する文句を、ため息一つで相殺するとルナの手を取った。
「さてと、王城に行きますか」
「はい!」
そう言って笑ったルナに、俺は再びノックアウトされるのだった。
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ルルネは建物の中に入ると、案内係の役員の指示に従って試験会場となっている一室へと入っていた。
そこには机と椅子が並べられていて、役員に配られた番号札と同じ席に腰を下ろした。
いよいよ試験が始まるのね。
ルルネは今ようやく試験だと言う実感が湧いてきた。
大丈夫。今日は実技試験じゃなくて、筆記試験なんだ。筆記試験ならあたしにもまだ勝機はある!
ルルネは静かに深呼吸を繰り返して気持ちを落ち着かせる。辺りを見渡すと、次第に席は今日試験を受ける見習い魔法薬師達で埋まっていく。やはり、どの人もそわそわと落ち着きがない感じだった。そして、その中にアーリの姿も発見した。
ルルネとアーリの席は両極端で離れてはいたが、ルルネにとっては何処にいようとも意識してしまう相手ではあった。
アーリには絶対に負けられない。
そこまで考えて、ルルネは首を横に振った。人のことを考えている場合ではなかった。今は試験に集中しないといけない。
ルルネは首を振って考え直すと、再び試験に意識を戻すことを意識する。
そうこうしていると、試験官と思われる人物がこの部屋に入って来た。
「見習い魔法薬師達の諸君、今日と明日に行われる試験で諸君らがこれまで培ってきたすべてが試される。そして、その試験に見事に合格し、晴れて魔法薬師として活躍してくれることを、私は心より期待している。申し遅れたが、私はリーマン・ジョルフ。今日、諸君らの試験官を務めるものだ。よろしく」
試験官――リーマン・ジョルフが一礼してのと同時に、部屋にいた見習い魔法薬師達も一同に礼をした。
「それではこれから一日目の試験である、筆記試験を開始したいと思う。試験時間は六十分。カンニングや制限時間を過ぎても試験を行っているようであれば、その場で失格とする。では、諸君らの知識を見せてほしい」
リーマンは説明を終えると、テスト用紙を次から次へと配っていく。
「良いか、まだ見てはならぬぞ」
ルルネの所にも裏返しにされた用紙が回ってくる。
リーマンは全員に用紙が回ったことを確認すると、試験開始を宣言する。
「では、初め!」
ルルネの戦いが始まった。
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